測量士とは?年収、受験資格と難易度

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

測量士のまとめ
  1. 測量士とは土地の位置や面積、距離などの測量を行う職業
  2. 測量士は将来性が高いため、取得する価値がある資格だと言える
  3. 専門知識のない方は通信講座や専門の養成施設などの利用がおすすめ

測量士とは土地の位置や面積、距離などの測量を行う職業です。建設工事を行う際にはかならず測量を行う必要があるため、測量士には一定のニーズがあります。とはいえ測量士について詳しくご存じない方も多いでしょう。

そこで本記事では測量士の仕事内容や年収、将来性や資格の難易度について解説していきます。測量士に似た職業である、測量士補との違いについても紹介します。測量士・測量士補に興味のある方はぜひ参考にしてください。

国家資格の測量士とは

測量士とは取得難易度が高く国土交通省国土地理院が管轄している国家資格。資格の種類は「測量士」「測量士補」の2種類があり、それぞれ難易度や仕事の内容が異なるため、資格を取得する前には違いを確認しておきましょう。測量士の資格を取得するための方法は大まかに以下2つです。

測量士の資格を取得するための方法
  1. 測量士・測量士補の国家資格に合格する
  2. 大学や養成施設などで専門科目を修め、実務経験を積む

ひとつめの方法は「国家資格に合格する」というシンプルなルートですが、資格の取得難易度が高いため、入念な準備が必要になります。一方で大学や養成施設に通い実務経験を積む方法は、試験の合否に左右されずに資格取得できる点が魅力です。つぎに測量士・測量士補の違いについて見ていきましょう。

測量士・測量士補の違い

測量士と測量士補の違いは行える業務の範囲にあります。測量士は行える業務に制限がありませんが、測量士補の場合は「測量計画」の作成ができません。測量士補も測量業務は行えますが基本的に測量士が作成した「測量計画」に沿った作業となります。そのため資格試験においても測量士補のほうが難易度は低めです。

MEMO
資格試験の受験傾向としては測量士の方が受験者が多く、それに伴い測量の現場でも測量士の方が多いようです。

測量士になるには一定の資格が必要

測量士になるためには、まず測量士の国家資格を取得しなければなりません。前述したように資格を取得するための方法は資格試験に合格する方法と大学などで専門科目を修めて実務経験を積む方法の2つです。大学などに通い測量士を目指す場合は、さらに以下3つの選択肢があります。

大学などに通い測量士を目指す場合の選択肢
  • 文部科学大臣の認定した大学、短期大学、高等専門学校において、測量に関する科目を修め卒業し、測量に関する実務経験を積む(大学の場合は1年以上の経験、短大・高等専門学校は3年以上)
  • 国土交通大臣の登録を受けた、専門の養成施設において測量士補となるための専門の知識・技能を修得し、測量に関する実務経験を2年以上積む
  • 測量士補の資格を持ち、国土交通大臣の登録を受けた専門の養成施設において、高度の専門の知識・技能を修得する

参考:公益財団法人日本測量協会

MEMO
上記のようにさまざまな方法があるため自身の年齢や経験などをもとに、資格取得方法を選びましょう。

女性の測量士も少ないが一定数いる

測量士と聞くと「男性ばかりで女性はいないのでは?」というイメージを持つ方も多いと思います。たしかに女性の割合は少ないものの、女性でも測量士として活躍されている方はいます。国土交通省国土地理院が実施した「測量士・測量士補に関する実態調査」によると、女性割合は以下のとおりです。

測量士の女性割合
  • 測量士:1.9%
  • 測量士補:8.2%

参考:平成30年度測量業における測量士・測量士補に関する実態調査報告書

測量士の仕事では重い荷物を運んだり山の中で測量を行ったりなど、体力が求められる仕事が多いため測量士を目指す女性が少ないのでしょう。とはいえ女性ならではの丁寧さや手先の器用さなどを活かして、測量士として活躍されている方もいます。そのため「女性だから」といって測量士になることを諦める必要はありません。

令和4年測量士・測量士補試験について

2023年(令和5年)の試験申し込み・受付については下記のとおりです。

受験資格特になし※学歴や実務経験等に関係なく受験可能
試験方法筆記試験
試験日時

令和5年5月21日(日曜日)

測量士試験:午前10時から午後4時まで(午後0時30分から午後1時30分まで休憩)

測量士補試験:午後1時30分から午後4時30分まで

試験手数料測量士試験:4,250円 測量士補試験:2,850円
必要書類等受験願書1部 写真票等1部(下記3点が貼付されているもの)
試験手数料の収入印紙
顔写真1枚(縦4.5cm横3.5cm)
63円切手
受験願書受付期間令和5年1月5日(木)から1月30日(月)まで
※郵送の場合は、令和5年1月30日(月)までの消印があるものに限り受付可。
電卓の持込み不可※測量士の試験のみ、
国土地理院で用意された電卓が使用可能
合格発表

令和5年7月11日(火)午前9時

・国土地理院、国土地理院各地方測量部及び国土地理院沖縄支所において合格者の受験番号及び氏名を公告するほか、全受験者宛てに試験の結果(合否)を通知します。

・国土地理院のホームページ上に合格者の受験番号、解答例を掲載します。

参考:国土地理院HP

試験の最新情報については、国土交通省国土地理院の公式サイトにてご確認ください。

測量士の仕事内容

測量士の主な仕事内容は建物や道路の建築工事を行う前に土地を測量することです。具体的には土地の形状や角度、面積や距離などを計測します。計測した結果をもとに建物などの設計図ができあがっていくのです。

MEMO
測量士の仕事は「外業」と「内業」に分類され、それぞれ仕事内容が異なります。

外業とは

外業とは野外で土地の測量を行う仕事です。数名のチームで現地に向かい、専用の機器を使用し測量計画に沿った測量作業を行います。測量を行う場所は街中や道路が整備されていない山・海など。外が明るいうちに作業することが多く、遠方で作業する場合もあるため早朝に出発することが多いようです。

MEMO
ここ数年で測量機器の性能が上がっており、より効率的に測量が行えるようになっています。

内業とは

内業とは事務所内で行うデスクワーク作業であり具体的には以下のような作業を行います。

内業の作業内容
  • 測量計画の作成
  • 外業の準備(機器の手配、手順確認など)
  • 測量データをもとにした図面作成
  • 予算管理や書類作成

外業よりも体力は使わないものの測量計画の作成や図面作成など、頭脳を使う業務が多いです。測量ソフトを使ったデータ分析も行うため専門的な知識がなければできない仕事だと言えるでしょう。

測量士の年収や将来性について

測量士に興味があっても年収や将来性について気になる方も多いでしょう。ここでは測量士の年収や将来性、独立開業などについて解説します。

年収は平均400万円台とサラリーマンの平均と変わらない

求人検索エンジンである「求人ボックス」によると、測量士の平均年収は439万円です。また、国税庁の調査によると給与所得者(サラリーマン)の平均給与は441万円とされています。上記を比較すると平均年収の差はわずか2万円ほどであるため、サラリーマンの平均年収と変わらないと言えるでしょう。

MEMO
測量士として年収アップを狙うなら測量機器の専門的な知識を身につけたり、平均年収が高い企業に転職するなどの方法があります。

独立開業も可能な仕事

測量士は将来性に独立開業も可能な職業です。ただし独立開業するためには測量士以外の知識や、業界関係者との人脈などが必要になります。独立開業を目指す場合は、まず測量士として企業へ就職し実務経験を積んだり人脈を構築することから始めると良いでしょう。また測量士の仕事は以下3つのカテゴリーに分けられます。

カテゴリー特徴
土木測量・大規模な工事を行う際の測量作業依頼主は
官庁や役所などが多く、
・大手建設会社が受注しているケースがほとんど
・個人で受注できる可能性は低い
地図測量・地図情報を作るための測量作業
・高価な機器が必要で、人手も必要
・個人で受注できる可能性は低い
地籍測量・土地の広さについて測量調査を行う
・個人や一般法人などの依頼主が多い
・個人でも受注できる可能性がある

上記のうち、もっとも独立開業向きなのは「地籍測量」であるため独立開業を目指すなら「地籍測量」の知識を身につけておきましょう。独立開業で成功すれば年収が800万円以上になる可能性もあります。

いわゆる「独占業務」のため仕事がなくなることはなく将来性がある

測量士が行う測量計画や測量業務などは測量士の資格がなければできない「独占業務」です。なんらかの建築工事をするためには測量を行う必要があり、そのたびに測量士は必要とされます。よって今後も仕事がなくなることはなく、将来性がある職業だと言えるでしょう。

ただしAIの発達により、人間が行う測量作業が減ることも予想されています。需要のある測量士として活躍するためにはコミュニケーション力や専門知識などを磨いていくことも重要です。また測量業務に関連する資格である「行政書士」「土地家屋調査士」などを取得することで、幅広く活躍できるでしょう。

測量士の資格取得難易度

測量士の資格は取得難易度が高く測量士補の難易度はやや低めとなっています。ここでは測量士の資格取得難易度や合格率などの情報を見ていきましょう。

平成29(2017)年~令和4(2022)年の測量士の合格率

測量士の合格率や合格基準などを、以下の表にまとめました。

実施年受験者数合格者数合格率
2022年3,194人460人14.4%
2021年2,773人498人18%
2020年2,276人176人7.70%
2019年3,232人479人14.80%
2018年3,345人278人8.30%
2017年2,989人351人11.70%

引用:JQOS.jp 日本資格取得支援

上記を見ると受験者数に大きな変化はないものの、合格率は上がっていることがわかります。測量士には受験資格の制限がなく誰でも受験できる資格です。測量業界未経験の状態から合格している方も少なくないため、ある程度の知識があれば、独学のみで合格することも可能でしょう。

合格率は例年二桁となっており国家資格の中でも難易度は高い

測量士の合格率は10%前後となっており国家資格の中でも難易度は高いです。試験受験時の経験や知識レベルによって難易度は異なりますが、測量の知識がまったくない場合、合格は高いハードルとなるでしょう。測量士の試験に挑戦する方は可能であれば測量業界での実務経験を積んでから挑戦することをおすすめします。

MEMO
一方で測量士補の合格率は例年約30%~47%であるため「未経験で自信がない」という方は測量士補から受験する手段もあります。

測量士試験に合格するための方法や勉強時間について

国家資格の中でも難易度が高いとされる測量士試験ですが合格するためにはどうすればいいのか。さいごに測量士試験の概要や勉強時間、合格するためのコツなどを紹介します。

測量士試験の試験概要

測量士試験は午前と午後に分けて実施され午前は択一式の問題が28問出題されます。午後の試験では記述式の問題が出題され必須問題と選択問題を合わせて、計20問出題される形式です。出題される問題の総合得点は1,400点とされており、そのうち910点以上を獲得できれば合格となります。

ただし午前の試験にて700点満点中400点以上獲得しないと合格できないため注意が必要です。試験で出題される科目は以下の9つとなっています。

試験で出題される科目
  1. 測量に関する法規及びこれに関連する国際条約
  2. 多角測量
  3. 汎地球測位システム測量
  4. 水準測量
  5. 地形測量
  6. 写真測量
  7. 地図編集
  8. 応用測量
  9. 地理情報システム

引用:国土地理院HP

また測量士試験では国土地理院が用意した電卓が使用できるため計算問題も安心です。

測量士試験に合格するためには約300時間の勉強が必要

測量士試験に合格するための勉強時間は約300時間と言われています。ただし測量や数学に関する知識がない場合は300時間を超えることもあり、中には500時間を超えるケースもあるようです。試験では行列計算や図形の面積、ベクトルなどの問題が出題されるため理系出身者や測量の実務経験がある方は有利になります。

専門外の人は独学で合格することは難しい

測量の知識がまったくない方や文系出身の方などは、独学だけで合格することは難しいでしょう。測量士の試験難易度は国家資格の中でもトップクラスなうえに、問題の難しさから挫折する可能性もあるからです。たとえば数学知識の勉強をしている際、参考書の解説だけでは理解しきれないケースも多々発生するでしょう。

勉強でつまずいたときにサポートしてくれる人がいないと、理解に時間がかかるだけではなく、モチベーションの低下にもつながるのです。もちろん未経験からでも合格している人もいますが専門外の人は通信講座などの利用をおすすめします。

口コミでは数学力が試験を解くカギになるとの声が多かった

測量士試験に合格した人の口コミを調査したところ「数学力が重要」という意見が多く見受けられました。測量士試験では複雑な計算問題が出題されるため、数学力は必須だと言えます。特に普通科の高校や文系大学出身の方は、数学問題の対策を重点的に行うことで、合格できる可能性がアップするでしょう。

MEMO
「過去問が知りたい」という方は国土地理院の公式サイトにて過去5年分の試験問題と解答が公開されているため、そちらをご覧ください。

まとめ

今回は測量士の仕事内容や測量士補との違い資格試験の難易度などについて解説しました。測量士は仕事内容に制限がないことから取得難易度が高く、測量士補は「測量計画」が作成できないなどの制限があるため、難易度はやや低めです。

平均年収は400万円台ですが独立開業に成功すれば年収800万円を超えるケースもあります。また、測量士は将来性が高いため、取得する価値がある資格だと言えるでしょう。測量士試験は実務経験なしでも受験できますが、専門外の方は独学だけで合格することは難しいです。そのため専門知識のない方は通信講座や専門の養成施設などの利用をおすすめします。

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