一級・二級建築士の平均年収は低い?女性や自営で1000万越えするためには

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  1. 平均年収は一級建築士が642万円・二級建築士が500万円
  2. 独立、自営も可能で1,000万円を超える年収を得ることも珍しくない
  3. 業種別の差は少ないが、高卒と大卒では300万円近く年収に差がつくことも

建築の設計には欠かせない一級建築士や二級建築士ってやはり、企業でも優遇されるようになるのでしょうか?

 
 

建築士になることで、建設系の仕事において幅広く仕事ができるようになります。非常に価値がある資格といえますね。

 
 

建築士になったら年収とかどのくらいになるんでしょうか?

 

建物を建築するときに設計図面が必要です。設計図が建築の基盤となるものですが、設計図面の作成が建築士としての仕事です。建築の設計はデザインだけではありません。耐震構造や強度計算などさまざまな規制の中で設計図面を作成しなければいけませんので求められる役割は非常に重大だといえます。

では一級建築士や二級建築士になると年収はどのくらいになるのでしょうか?ここからは一級・二級建築士の平均年収や性別による年収比較。年収を上げる方法などについて解説します。

建築士の平均年収とは?企業規模に比例して年収も高くなる傾向

 

同じ建築士でも一級と二級では年収も違うんでしょ?他にも年収が異なる要素があるんでしょうか?

 
 

そうですね。同じ建築士でもいろいろな要因によって年収は変化するでしょうね

 
 

一級と二級の建築士による年収の違いなどについて見てみましょうか?

 

建築士の平均年収を見るときに一級と二級建築士では年収に差があります。また企業規模によって同じ建築士でも異なるケースがあり、企業規模が大きい程、年収は高くなる傾向にあります。ここからは一級と二級、木造建築士など、それぞれの年収を見てみましょう。

一級建築士は勝ち組?平均年収は642万円

一級建築士の平均年収を求人募集から見てみましょう。

 A株式会社B株式会社C株式会社
業種設計リフォーム設計
マンション建設設計
雇用条件正社員正社員正社員
年収500万円~900万円500万円以上
500万円~890万円

これらのデータから算出する一級建築士の平均年収は642万円です。一般的な平均年収は414万円といわれています。200万円超も平均年収が高いことから、一級建築士となると勝ち組といわれても不思議ではないほどの高収入が期待できる資格といえます。

二級建築士の平均年収は500万円

同じように二級建築士の平均年収を求人募集から見てみましょう。

 D株式会社E株式会社F株式会社
業種リフォーム設計住宅設計リフォーム設計
雇用条件正社員正社員正社員
年収460万円600万円500万円

業種を見てみると主にリフォームの設計などに関する募集が多いようです。平均年収も約500万円と一般的な平均年収よりは上位の年収ですが一級建築士と比較すると年収ベースで150万円近くの開きがあることがわかります。一級建築士と二級建築士では年収でみると一級建築士の方が多い年収を得ています。

木造建築士の平均年収は350万円

木造建築士は木造の住宅を設計することを主な業務としています。一級・二級建築士ではできない設計監理を行います。木造建築士の平均年収は350万円前後と一級・二級建築士と比較すると若干低めの年収となっており、一級・二級建築士を一緒に資格を取得している人が多いです。

MEMO
しかし木造住宅の建築には欠かせない資格ですので併用して資格を取得することにより、多くの需要を見込めます。

女性の建築士は男性に比べて低い

 

特に一級建築士の年収は非常に高いですね。

 
 

そうですね。設計できる範囲が一級建築士になると大幅に広がりますので、年収は高くなりますね。

 
 

女性の建築士もいるようなんですが、男性と女性を比較してみると年収は低いのでしょうか?

 

建築士は男性だけではなく、女性建築士も活躍しています。しかし年収ベースで比較してみましょう。

建築士の男女別年収の図

引用:転職hack

一級建築士で男性と女性の年収を比較してみると、男性が654万円に対し女性が561万円とおよそ90万円の違いがあることが分かります。男女で比べると一見低いですが、ほかの職業との比較を見てみると年収の幅が狭いのでむしろ開きは少ないと見て取れるでしょう。

職業別で男女の年収を比較してみると、一級建築士の男性建築士は13位に位置していますが、女性は12位ですのでどちらも性別で見る年収は比較的高いことがわかります。事務ワークが多く体力的な仕事が少ない点から男性と女性の年収格差はあまり開いていません。

MEMO
しかもデザイン性などでは女性建築士の方が評価されるケースも非常に多いので、今後の年収ベースにおいても開きが狭まるかもしれません。

業種別の建築士年収

 

男性と女性では開きがあるとはいえ、あまり格差は少ないですね。

 
 

そうですね。今後女性的なデザインが求められるケースも増えるでしょうから、女性の建築士は年収アップにも期待ができますね。

 
 

会社の規模で建築士の年収が違うという話でしたがどのように違うのでしょうか?

 

建築士が必要な企業としては、ゼネコン、ハウスメーカー、建築会社、設計事務所など多岐にわたります。ここからは企業ごとの一級・二級建築士の年収を比較してみましょう。

 一級建築士二級建築士
ゼネコン約650万円約500万円
ハウスメーカー約660万円約470万円
建築会社約640万円約480万円
設計事務所約600万円約480万円

一級・二級建築士とも各業種別で大きな開きはありません。一級建築士ともなれば、学校や病院といった大きな建築物の設計管理ができるようになるのでゼネコンからの需要は非常に高いといえるでしょう。

建築士は建築系の企業であればどこの企業においても需要が高いので、高年収ですが求人も非常に多い傾向です。しかし建築系の設計にはさまざまな建築物があり、ただ資格を持っていても勤まりません。

MEMO
いくつかの建築物を設計し、経験を積むことでさらなる年収アップにも期待が持てる資格ともいえるでしょう。

学歴で見る建築士の年収

 

各業種でみるとあまり大きな開きはありませんが一級・二級建築士ではやはり開きがありますね。

 
 

そうですね、しかも一級建築士ならばさまざまな設計にかかわり経験を積むともっと年収が上がる可能性もありますね。

 
 

では学歴別での年収は、どのように違うんですか

 

建築士の年収を学歴別で見てみると、資格が同じであれば一級・二級建築士とも業種別の開きは少ないです。では学歴別で見てみると、どのように年収は異なるのでしょうか?

次の表は50代の建築士の学歴別年収を表したものです。

学歴年収
大卒約870万円
短大卒約654万円
高卒約557万円

引用:平均年収.jp

年齢を重ねるほどに学歴により差が出ることがわかります。特に大卒の50代となると900万円に近づくほどの平均年収となるのです。キャリアを重ね、有名建築家ともなるとさらに年収が増えることが予測されます。

また重なるキャリアが長ければ長い程に年収は増加傾向にもあります。これは前述しましたが経験により建築物設計の取り扱う幅が広がり需要が高まることが要因の一つです。特に一級建築士は設計できる建築物が2級建築士や木造建築士よりも非常に多いので設計できる建築物に差が出ます。

MEMO
そのため年数を重ねると年収に反映することが多いといえます。

建築士で年収1000万円を達成するには?

 

あまり体力的なところは影響がないので経験が大きく年収に反映しますね。

 
 

そうですね。50代以上でも有名建築家として多くの設計にかかわるケースも多いので建築士の仕事は息が長いといえます。

 
 

建築士で年収1,000万を超えるのもそう難しいことではないようですね。

 

一級建築士は非常に年収も高く、経験によりさらなる年収アップも見込めそうなので1,000万円を超えることもそう難しいことではなさそうです。しかし1,000万円になるためには普通の業務だけではなかなか見込めないでしょう。では1000万円を超えるためにはどのような点に力を入れればいいのでしょうか?ここからは年収1,000万円を達成するための方法について解説します。

年収1000万円を達成するポイント
  • ゼネコンで実績を積む
  • 会社の役職につく
  • 独立、自営する

ゼネコンで実績を積む

ゼネコンで実績を積むことで年収は大きく増える可能性が高まります。ゼネコンが取り扱う建築物は多岐にわたっており、特に大型の商業施設やマンションなどを手掛けることができると何十億、何百億といったプロジェクトになるでしょう。そのような建築物の設計を担当するとなると年収は大幅に上がる可能性は高くなります。

実際に大手ゼネコンなどでは年収1,000万円の社員も少なくありません。前述しましたが建築士にはデザインだけではなく強度や耐震設計と法律に沿った建築物にしなければいけないので、建築の知識とデザイン性が求められます。

MEMO
大型のプロジェクトは建築士の腕によるところも非常に大きく、大型物件を手掛けるだけの実力がある建築士には年収1,000万円を支払ってでも決して高くはないのです。

会社の役職につく

会社の役職に就きデザインの設計だけではなく、人材の育成や会社の重要なプロジェクトに関わると年収にも反映するでしょう。要職に関わる建築士になると会社の一大プロジェクトの建築士としての責任ある設計部門を任されます。

そのような人材の確保はなかなか難しいので企業側も年収1,000万円でも不思議ではありません。会社の要職になるくらいの実力を身に着けることにより大きく年収は上がるでしょう。また会社の要職に就くことにより建築士の人材育成も任されます。会社にとって財産となる建築士を育てることも誰にでもできることではありません。

MEMO
人材育成のような重要な役職を任されることにより年収は大幅に上がる可能性が高まります。

独立、自営する

最も年収が上がる方法でかつ、リスクもあるのが独立、自営することです。独立して建築家となり設計した建築物が大きな評価を得ることができると、一気に仕事も増え以来の単価も増えることでしょう。年収1,000万円などは通過点でそれ以上の年収を得ることも決して難しいことではなくなります。

しかし依頼が増えなかったら年収を得るどころか赤字になってしまい、最悪の場合は廃業、倒産となってしまう可能性もあるのです。しかし、ある程度キャリアを積んで取り扱いが増えると建築士として独立する人も少なくはありません。独立して設計事務所を構えるとなると建築士の資格のほかに管理建築士の資格も必要になります。

MEMO
このようにいくつかの段階や実績、また能力に自信がある人に関しては独立、自営して高収入を得るという選択肢も可能といえるでしょう。

まとめ

建築士の資格をもって仕事をすると基本的にはほかの職業よりも高年収を得ることができます。しかも独立、自営も可能で1,000万円を超える年収を得ることも珍しくはありません。一級建築士の方が二級建築士よりも年収が高く、経験を重ねることで年収に大きな開きが出ます。

高年収を得たいならば二級建築士のあと一級建築士の資格を狙いましょう。更に男性と女性と比較しても男性の方が年収が高いとはいえ、ほかの業種と比較しても開きは大きくありません。つまり女性でも十分に高年収を得られる可能性がある仕事といえるのです。

年収を増やす方法はゼネコンで働く、独立するなどいくつかの方法がありますが、そもそも年収ベースが高いので年収1,000万円もそう難しくありません。高年収に期待が持てる職業だといえます。

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2021年の記事

この記事のまとめ
  1. 建築士とは「一級建築士」や「二級建築士」などの国家資格を保有し、建物の設計や工事監理を行う仕事
  2. 未経験から目指すなら二級建築士の資格が良い
  3. 建物の増加や需要が伸びていることから将来性のある職業と言える

建物の設計や工事の監理などを行う職業の「建築士」。「建築士ってどんな仕事をするの?」「建築士になるにはどうすればいいの?」とお悩みの方も多いでしょう。そこで本記事では建築士の仕事内容や種類、やりがいや向いている人の特徴について解説していきます。

この記事を読めば建築士についての理解が深まり建築士になるための方法もわかります。気になる建築士の年収も紹介しますので建築士に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

建築士とは

建築士とは「一級建築士」や「二級建築士」などの国家資格を保有し、建物の設計や工事監理を行う職業を指します。建物を建てるためには依頼主の要望を受け、さまざまな法令に適合するような設計・工事を行う必要があります。

利用者が使いやすい建物を建築したり、地震に強い建物を建てるためには建築士が必要不可欠なのです。建築士は個人住宅や高層マンション、百貨店など幅広い建築に携われますが、資格によって取り扱える建物は異なります。つぎに建築士のやりがいや、種類ごとの違いについて見ていきましょう。

建築士のやりがい

実際に建築士として働いている方の口コミなどを参考にすると建築士のやりがいとして以下の3つが挙げられます。

建築士のやりがい
  1. 自分が設計した建物が世の中に残る
  2. 建築を通して、依頼主に感謝される
  3. 他の建築士や現場の職人と一緒に、目標を達成できる

特に多かった意見は「自分の設計が建物というカタチになり、世に残ること」といった意見です。自分が設計した建物は建築されてから何年も残り続けるため、その建物を見るたびにやりがい・達成感を感じられるでしょう。また依頼主から感謝されることも、やりがい感じるポイントです。

建築士は店舗のオーナーや家族など、さまざまな人から建築の依頼を受けます。店舗を建築すればオーナーから、個人住宅を建築すれば依頼主の家族から感謝されるため、「誰かのためになっている」というやりがいを感じられます。

建築士の種類と違い、年収

建築士の種類は、一級、二級、木造、構造設計建築士、設備設計建築士の5種類です。それぞれの特徴や年収などをまとめましたので、参考にしてください。

種類特徴年収取扱可能な建造物
一級建築士・取り扱える建造物に制限がない
・資格取得の難易度が高い
・大規模な建造物を取り扱える
約600万円すべての建造物
例:学校、病院、高層マンション、大規模なスタジアムなど
二級建築士・取り扱える建造物に制限がある
・一級建築士よりも難易度は低め
・主に個人住宅を建築したい人向け
450~550万円ほど・延べ面積1,000平方m以内の建造物
※特定の建造物の場合は
(学校・病院など)
延べ面積が500平方m以下階数は
・3階建てまで
(木造の場合)
・高さ13m、軒高9m以下、延べ面積300平方m以下
(木造以外の場合)
木造建築士・木造建築に特化した資格
・歴史的建造物に興味がある人向け
約360万円・木造の建造物
・階数2階建て以下
・延べ面積が300平方m未満の建造物
構造設計建築士・2008年に創設された資格一級建築士よりも資格取得の難易度が高い
・一級建築士による構造設計の確認も行う
500~900万円ほど・高度な構造設計が義務づけられる建築物
例:鉄筋コンクリート造で高さ20m以上、鉄骨造の4階建て以上など
設備設計建築士・一級建築士の資格を取得していないと受験できない
・建造物の設備関係の設計や確認を行う
490~850万円ほど・3階建て以上、かつ床面積の合計が5,000平方mを超える建造物

資格ごとの年収は求人情報や口コミなどから算出した参考値です。一級建築士は資格の取得難易度が高い分、年収も高めとなっています。一級建築士と二級建築士の大きな違いは取り扱える建造物の制限有無でしょう。建築士として「個人向けの住宅を建てたい」と思っているなら、二級建築士の資格があれば問題ありません。

しかし「大規模な施設や高層ビルを建てたい」と考えている場合は一級建築士の資格が必要です。木造建築士は、その名の通り木造建築に特化した資格であり、歴史的建造物の維持管理・修繕にも役立ちます。構造設計建築士と設備設計建築士は創設されてからの歴史は浅いものの、難易度が高い資格として知られています。

注意
どちらも取得するためには一級建築士としての実務経験が5年以上必要なため、まったくの未経験から取得するには時間がかかるでしょう。

建築士の仕事内容と1日の流れ

建築士の仕事内容は設計や工事監理、図面作成など多岐に渡ります。ここでは建築士の仕事内容と1日の流れについて見ていきましょう。

一般的な建築士さんの1日の流れ

一般的な建築士の1日の流れは以下の通りです。

  • 9:00   出社・メールチェック
  • 10:00 依頼主との打合せ
  • 12:00 昼食
  • 13:00 設計業務、書類作成
  • 18:00 業務終了、退勤

基本的には午前中に打合せを行い、午後から設計や図面の作成を行います。ただし月末・月初などの忙しい時期や、納期が近づいている場合は残業も発生します。また打合せは依頼主に合わせるケースが多いため、午後や夕方以降に打合せをする場合もあるでしょう。特に依頼主が一般家庭の場合は打合せが夕方以降になるケースが多いです。そのため、建築士の1日の流れは依頼主や作業の進捗具合によって変動します。

設計業務

設計業務とは、その名の通り建物のデザインや構造などの設計を行う作業です。最初に依頼主から「どんな建物を建てたいか」というヒアリングを行い、以下のようなポイントを把握していきます。

ヒヤリングで把握するポイント
  1. 建物の用途
  2. 建物のデザインや構造
  3. 予算
  4. 必要な設備

依頼主の要望が把握できていないと、建築作業はもちろん設計業務も進められません。ヒアリングした条件をもとに建物の安全性や法規制なども考慮し、建物のイメージを固めていきます。建物のイメージが決まれば、つぎに行うのは図面の作成です。以下3つの設計を進めながら、建物の図面を作成していきます。

  • 意匠設計
    • →建物の内部・外観のデザインを行う
  • 構造設計
    • →地震などの災害に耐えるため、建物内部の構造を設計する
  • 設備設計
    • →電気や水道などの設備を選定・設計する

図面を作成しただけでは依頼主に建物のイメージが伝わりにくいため、図面に加えて建物の模型も作成しなければなりません。完成した設計図や図面、模型などをもとに、依頼主と打合せを進めていきます。

建築士の独占業務である工事監理

工事監理とは実際に建築現場に足を運び、工事の状況をチェックする作業です。これは建築士の独占業務であり建築士の資格がなければ工事監理はできません。工事監理の業務では主に以下のような点のチェックを行います。

工事監理の業務でのチェック内容
  • 設計通りに建築されているか
  • スケジュール通りに工事が進んでいるか

設計の段階では実現可能だと思われていたことも実際の現場では思うように実現できていない場合があります。そのため現場監督との打合せや現場のチェックを行い、必要に応じて設計を見直すこともあるのです。

建築確認申請時の添付図面作成

建築士は依頼主に代わって建築確認を申請する際の添付図面を作成できます。建築確認とは建設工事をする前に建物が建築基準法などの基準を満たしているかを確認することです。建築確認の承認が降り「確認済証」が交付されることにより、建築工事を始められるのです。

建築確認の申請は依頼主が指定確認検査機関や、都道府県・市町村が指定する建築主事に対して申請を行います。確認内容としては建物の構造や設備、敷地などに関する法令に適合しているかの確認が行われます。建築確認を申請する際には図面が必要なため添付図面の作成は重要な業務なのです。

資格ごとに異なるが、取扱が可能になる建物がある

建築士の資格ごとに取り扱える建物の種類は異なります。たとえば一級建築士の場合は制限なくすべての建物を取り扱えますが、二級建築士が取り扱える建物には「延べ面積1,000平方m以内」などの制限があります。そのため建築士の資格を取得する際は「自分がやりたい仕事ができる資格か」を確認し、取得しましょう。

建築士になるには?

「建築士として働きたい」という方のために建築士になるための具体的な方法を紹介します。建築士になるためには建築士の資格を取得する必要があります。建築士の資格を取得するため方法を、3つのステップで確認していきましょう。

STEP.1 どの建築士の資格が欲しいか決める

まずは、どの建築士の資格が欲しいかを決めましょう。どの資格を取得するか決まっていない方は「建築士として何を建てたいか」という目標から逆算すると良いです。ただし、それぞれの資格には受験資格が設けられてますので、「受験可能な資格であるか」という点も考慮しましょう。参考までに、建築士資格の受験資格をまとめました。

種類受験資格
一級建築士・二級建築士の資格を持っている者
・大学、短期大学、高校、専門学校などにおいて、
指定科目を修めて卒業している者
・その他、国土交通大臣が上記2点と同等以上の知識、及び技能を有すると認める者
二級建築士
木造建築士
・大学、高校、中学、専門学校、職業訓練校などに
おいて、指定科目を修めて卒業している者
・建築実務の経験を7年以上有する者
(建築に関する学歴がない場合)
・その他、都道府県知事が上記と同等以上の知識、
及び技能を有すると認める者
構造設計
建築士
・一級建築士として5年以上構造設計の業務に従事し、
国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う、
講習の課程を修了した者
設備設計建築士・一級建築士として5年以上設備設計の業務に従事し、
国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関が行う、
講習の課程を修了した者

参考:https://www.jaeic.or.jp/

一級建築士を受験するためには二級建築士の資格を持っている必要があります。また構造設計建築士と設備設計建築士を受験するためには、一級建築士としての実務経験がなければなりません。そのため未経験から建築士を目指すなら、二級建築士や木造建築士を目標にすると良いでしょう。

STEP.2 自分が取得する資格取得までの流れを確認する

欲しい資格が決まったら応募から合格までの流れを確認しましょう。流れを確認・把握しておくことで「何をどのくらい勉強すればいいのか」などの、学習プランが立てやすくなります。一般的な資格取得までの流れは以下の通りです。

手順1
受験申込
手順2
受験資格の審査
手順3
学科試験
手順4
設計製図試験
手順5
合格発表
手順6
資格・免許の取得申請

上記はあくまで一般的な例であるため受験前にはかならず流れを確認しておきましょう。

STEP.3 資格取得試験に合格する

資格取得までの流れを確認し学習プランを立てたら試験に合格するための勉強を進めていきます。二級建築士の資格を取得する場合、取得するために必要な勉強時間は、500~700時間といわれています。また合格率は約25%と決して高い数字ではありません。参考書や過去問などを繰り返し読み込み、入念に試験対策を行いましょう。

建築士の将来性と求人の傾向について

建築士になりたいと思う一方で「建築士の将来性ってどうなの?」と不安に感じる方も多いと思います。ここでは建築士の将来性と求人の傾向について見ていきましょう。

建物が増える現代では需要はある

近年は建物が増加している傾向があるため建築士の需要は伸びていくでしょう。総務省統計局が実施した土地統計調査の結果を見ても、日本の総住宅数は増加していることがわかります。

年度総住宅数
2018年6,242万戸
2013年6,063万戸
2008年5,759万戸
2003年5,389万戸
1998年5,025万戸
1993年4,588万戸

参考:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2018/pdf/g_gaiyou.pdf

建物が増えれば将来的には老朽化対策や解体作業などが発生します。また高齢化が進むことで施設のバリアフリー化や住宅リフォームといった依頼も増加するでしょう。このように需要が伸びていく一方で建築士の高齢化や人手不足が問題となっています。

建築士の平均年齢は約56歳とされており若手の建築士が不足している状況です。建築に関する仕事は増えることが予想され若手の建築士が不足しているため、建築士の需要は高いといえるでしょう。

建築士の資格にプラスして実務経験がある人を採用する傾向にある

建築士の求人傾向としては実務経験がある人を採用する傾向があります。特に設計業務や工事監理を行うポジションについては、経験者を求める傾向が強いです。建設業界は人手不足が問題となっているため多くの企業は実務経験がある、即戦力を求めているのでしょう。

とはいえ、住宅営業やCADオペレーター、建築に関する書類作成などの職種は未経験者を採用しているケースも多いです。厚生労働省が発表した一般職業紹介状況によると建設業の有効求人倍率は4.04%とされています。

参考:https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/G35-202009.pdf

MEMO
実務経験者を求める傾向があるものの有効求人倍率が高く未経験可の職種もあるため、経験がないからといって諦める必要はありません。

建築士に向いている人の特徴

建築士になるためには資格を取得し就職活動をする必要があります。しかし努力をして建築士になったものの「自分には向いていなかった」と後悔するのは避けたいもの。そこで、ここでは建築士に向いている人・向いていない人の特徴をご紹介します。まず建築士に向いている人の特徴は以下の3つです。

建築士に向いている人の特徴
  • コミュニケーションが得意な人
  • デザインが好きな人
  • 我慢強く、地道な作業が苦にならない人

建築士の仕事では依頼主や建築現場の職人など、多くの人と関わる機会があります。設計業務では依頼主からのヒアリングも行うためコミュニケーションが得意な人は建築士に向いているでしょう。また意匠設計では建物の内装や外観を決めるため、デザインが好き、もしくは得意であるかも重要なポイント。そして建築士の仕事は、数日で完了するものではありません。

MEMO
数か月から数年かかる仕事も多いため、地道に努力できる人は建築士に向いています。

建築士に向いていない人の特徴

一方で以下のような人は建築士には向かないかもしれません。

建築士には向かないかもしれない人の特徴
  • 忍耐力に自信がない人
  • 自分の意見を曲げられない人

建築士は長期間におよぶ作業を行うため忍耐力がないと務まらない仕事です。また、ここまで解説したように依頼主を満足させるためには、相手の要望を聞き入れる姿勢が重要です。依頼主の要望を無視して自分の意見を押しつけてしまっては「他の業者に依頼しようかな」と思われる可能性があります。

MEMO
そのため自分の意見を曲げられない人は建築士として苦労する場面が多くなるでしょう。

まとめ

今回は建築士のやりがいや年収、向いている人の特徴などを解説しました。建築士になるためには、まず建築士の資格を取得する必要があります。建築士の資格にはさまざまな種類がありますが、未経験から目指すなら二級建築士の資格が良いでしょう。一級建築士や構造設計建築士といった資格は受験資格を満たすことが難しいからです。「建築士になりたい」という方は本記事で紹介した以下のステップを参考にしてください。

  • STEP.1 どの建築士の資格が欲しいか決める
  • STEP.2 自分が取得する資格取得までの流れを確認する
  • STEP.3 資格取得試験に合格する

また建築士という職業は建物の増加や需要が伸びていることから将来性のある職業です。有効求人倍率は4.04%と高い数値であり、未経験可の求人も数多くあります。そのため「未経験だけど大丈夫かな」と不安に思っている方も、今回の記事を参考に建築士を目指してみてはいかがでしょうか。

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