マンション維持修繕技術者とは?試験の難易度、合格率【国家資格】

マンション維持修繕技術者のまとめ
  1. マンションの維持管理や修繕に関して、一定水準の知識や技術を有する人
  2. 資格要件があるので誰もが受けることができる資格ではない
  3. マンションの維持管理技術者は必要性と将来性において年々需要は高まるといえる

 

マンションの全体改修工事などの大きな修繕工事って、管理会社が修繕積立金から手配しますよね。長期修繕は修繕する場所も金額も大きいですが、誰かにアドバイスを求めたりするんですか?

 
 

最近ではマンション修繕のスペシャリストでもある、マンション維持修繕技術者にアドバイスやコンサルを求めるケースが増えていますね。

 
 

マンション維持修繕技術者ってあまり聞いたことがありませんが、どんな資格なのか興味がありますね。

 

一般的にマンションは一定のサイクルで維持管理のために修繕を行わなければいけません。管理会社が施工業者との打ち合わせやマンションの長期修繕計画に基づいて修繕の手配を行っています。近年マンションの修繕において力になるのがマンション維持修繕技術者です。所定の試験を受けて合格し、登録した人がマンション維持修繕技術者の称号を得ることができます。

では、このマンション修繕技術者とはどのような資格でどの程度の合格率なのでしょうか?この記事ではマンション維持修繕技術者の資格試験などについて詳しく解説していきます。

 

マンション維持修繕技術者とは

マンション維持修繕技術者とはマンションの維持管理や修繕に関して、一定水準の知識や技術を試験で認定された人が有する資格です。国家資格ではありません。社団法人高層住宅管理業協会が主催する民間資格です。

マンション維持修繕技術者の業務内容
  • マンションの修繕診断・修繕設計
  • マンション修繕に関するコンサルティング
  • 工事監理

マンション維持修繕技術者はマンションの維持、修繕に関するプロフェッショナルとしての位置づけです。円滑な維持管理、修繕作業を行うことで、マンションの住人に安心感を与え適切なタイミングや費用を考えた修繕を行う役割を担っています。どんどんマンションが建築されマンションの総数自体も増えている中、マンションの維持管理や修繕に関して、さまざまなトラブルや事故も見られるようになりました。

特に管理会社や管理組合は修繕や維持管理など工事監理については、長期修繕計画に沿った維持、修繕を行うことに注力しています。修繕のタイミングや費用などはある程度、工事業者に任せてしまっているのが現状です。しかし最初の長期修繕計画から時間も経過しているので、果たして適切な時期の修繕なのかといった点で不安が残る場合があります。必ずしも適切な維持管理や修繕ができているとはいえないマンションも見受けられるのです。

MEMO
つまり、マンションの維持管理や修繕においてプロフェッショナルの視点が求められており、マンション維持修繕技術者の資格が生まれました。

マンション維持修繕技術者の合格率

マンション維持修繕技術者の資格を得るためには所定の試験を受験し、合格する必要があります。過去10回の合格率を表にまとめました。

試験実施年月合格率
平成24年2月28.6%
平成25年2月27.4%
平成26年2月28.0%
平成27年2月28.0%
平成28年1月27.1%
平成29年1月27.8%
平成30年1月28.0%
平成31年1月28.4%
令和2年1月27.0%
令和3年1月28.2%

毎年30%弱の合格率となっており、すごく狭き門というわけではありません。合格者の中には独学による問題集アプリ、テキストなどで合格したケースもあります。また5chなどで情報を得て受験に向かうなどさまざまな方法で受験しています。誰もが受けることができる試験ではありません。一定の実務経験や資格保有者など、受験要件を満たす必要があります。

つまり全くの未経験者が受験できる資格ではないにもかかわらず、30%弱の合格率ですので、マンション維持修繕技術者の資格は非常に価値ある資格ともいえるでしょう。

【令和2年度】マンション維持修繕技術者試験結果

令和2年度の試験結果を解答速報などで見てみましょう。試験形式は択一試験50問が2時間で行っています。第18回までは記述式の試験がありましたが、第19回・第20回は択一式試験(1問2点 50問100点満点)に変更となっています。令和2年度の合格率は28.2%と例年並みの合格率でした。

合格基準点が100点満点中70点でしたので他の年度と比較しても例年並みの難易度だったといえます。受験者数 1,220名に対し合格者数が344名と受験する人数自体もまだまだ多くはありません。令和2年度は少し受験者が少なかった傾向にあります。例年2,000名を超す受験者数なのですが、2017年から若干受験者数が減っています。しかしながら資格取得者に対するニーズは年々高まっていますので今後の受験者数増加には期待が持てます。

MEMO
難易度に大きな動きがある年は少なく、例年、合格率や正答率に大きな変化がないのもマンション維持修繕技術者試験の特徴といえるでしょう。

【令和4年】マンション維持修繕技術者の試験概要

なるほど。合格率だけ見たら、さほど難易度は高くないと思いがちですが、維持管理や修繕のプロフェッショナルが受験するので簡単ではありませんね。

 
 

その通り。マンションの全体改修や維持管理は行う業務がとても多いので、生半可な知識や経験では務まりません。しっかりと傾向や対策を勉強して試験に臨む必要がありますよ。

 
 

もう少しマンション維持修繕技術者の試験について詳しく知りたいです。

 

前述しましたがマンション維持修繕技術者は誰もが受けることができる資格ではありません。また出題される分野も広いので出題分野を認識しながら早めの受験勉強を行うことが合格への秘訣といえるでしょう。ここからは受験資格や試験方法、出題される分野を掘り下げてみましょう。

受験資格と試験方法

受験資格は建築に関する課程を勉強し、かつ職業に従事して建築設備に関する実務経験が必要です。実務経験の区分けは以下の表にまとめました。

学歴実務経験
大学卒
(4年間の修行経験とみなす)
1年以上
短大卒
(3年間の修行経験とみなす)
2年以上
短大卒
(2年間の修行経験とみなす)
3年以上
高専卒
(5年間の修行経験とみなす)
3年以上
高卒後専門学校
(2年間の修行経験とみなす)
3年以上
高卒後専門学校
(1年間の修行経験とみなす)
4年以上
工業高校卒
(3年間の修行経験とみなす)
5年以上
中卒後専門学校
(2年間の修行経験とみなす)
6年以上

建築課程以外の学校を卒業している場合は8年以上の実務経験が必要です。また、下記資格を取得していても受験可能です。

受験可能な資格
  1. 大規模修繕コンサルタント実務研修修了者
  2. マンション維持修繕技術専門課程研修受講者一級建築士又は二級建築士
  3. 技術士(建設部門・文部科学省認定資格)
  4. 建築設備士
  5. 区分所有管理士試験合格者
  6. 管理業務主任者試験合格者
  7. 管理業務主任者移行講習修了者(注3)
  8. マンション管理士試験合格者

これらの要件を満たしていない場合においてもマンション管理業協会の理事長が上記の要件と同等以上のスキルを持っていると審査で認めた場合は受験可能です。試験方法は、4肢択一方式と記述式の全47問の試験問題を受験します。試験実施時間は2時間です。

試験日程と会場、合格発表日

試験は年に1回しか行われません。2024年は9月1日(日)13:00~15:00に実施予定です。

試験会場は、東京・大阪・札幌・仙台・名古屋・広島・福岡の7地域8会場で行われます。

合格発表は約2か月後の10月28日(月)です。

引用:一般社団法人マンション管理業協会

出題される分野

出題される分野は例年下記の通りです。

出題される分野
  1. マンションの概論(一般建築知識含む)
  2. 建物・設備の維持保全、劣化、調査診断、修繕設計
  3. 修繕工事の施工・監理
  4. マンション修繕に関わる法律等の知識

法律から実務まで多岐にわたる分野から出題されることも試験の特徴です。

試験に合格したら登録手続きと更新手続きがあること忘れずに!

晴れて試験に合格しても試験に合格しただけではマンション維持修繕技術者を名乗れません。登録手続きが必要になります。所定の申請書に記載し登録手数料が6,600円を支払ってマンション維持修繕技術者となるのです。一旦登録しても5年ごとに更新が必要となります。

MEMO
更新講習を受講するか小論文を提出して認められると更新されたとみなされ、新たな登録証を交付といった流れです。

マンション維持修繕技術者の必要性や将来性

 

マンション維持修繕技術者の試験内容がよくわかりました。決してハードルは低くはなさそうですね。実際に今後のマンション維持修繕技術者の需要はどう推移していくと思いますか?

 
 

今後の需要には非常に期待が持てる資格だと思いますよ。特に管理会社あたりからの求人が多いようですね。

 
 

マンション維持修繕技術者の将来性に興味があります。

 

晴れて試験に合格し登録してマンション維持修繕技術者になっても、社会の中で必要性が高くない場合や将来性がないような資格だと取得しても意味がありません。マンション維持修繕技術者の必要性や将来性について解説していきましょう。

マンション維持修繕技術者の必要性

戦後焼け野原から奇跡的な復興を遂げ世界でも有数の経済大国となった日本ですが、高度経済成長の中でマンション建築は順調に件数を伸ばしています。しかしマンションもどんどん築年数が経過し、経年劣化で修繕の必要性がどんどん増してきます。その中で一定サイクルの中で修繕を行うマンションに、維持管理、修繕のプロフェッショナルがいるといないのではコスト面や安心感といった面で大きく変わってくるでしょう。

MEMO
マンションが古くなる中、維持管理、修繕のプロフェッショナルたるマンション維持修繕技術者の必要性はどんどん高まるといえます。

マンション維持修繕技術者の将来性

今後もマンションの維持管理、修繕に関してはマンションが存在する間は、必ず必要なので将来性も明るいといえます。今までの修繕は長期修繕計画通りに行うことを主としていました。あまり良いとはいえない工事業者に依頼してしまうと工事業者の言いなりで修繕する必要がない個所を修繕する、工事費用が高いなどのトラブルも散見されます。

今後は維持管理、修繕のプロフェッショナルであるマンションの維持管理技術者の存在が大きくクローズアップされ、適切な維持管理や修繕に対する期待が高まります。つまり、マンションの維持管理技術者は将来も需要が高まるといえるでしょう。

マンション維持修繕技術者に向いている人の特徴

マンション維持修繕技術者はマンションの維持管理、修繕のプロフェッショナルという位置づけです。つまり維持管理、修繕に関する知識が絶対的に必要といえます。建築の技術は日進月歩で常に新しい工法や商品が出てきます。その中で常に学び続ける姿勢が必要なのです。また維持管理、長期修繕におけるコンサルやアドバイスが求められますが、アドバイスを行うのはマンションの管理会社や住人で形成される管理組合が対象です。

建築に詳しくない人も多い中で分かりやすく丁寧な説明が必要になります。理路整然と分かりやすく説明できることができる人や、修繕に関わる多くの人と円滑に接することができるコミュニケーション能力が必要です。このような人たちは、マンションの維持管理技術者に向いているといえるでしょう。

まとめ

マンション維持修繕技術者とはマンションの維持管理や修繕に関して、一定水準の知識や技術を試験で認定された人が有する資格です。いくつかの資格要件があるので誰もが受けることができる資格というわけではありません。

合格率は30%に満たない程度ですが出題範囲は広く年に1回しか試験がない点も試験の特徴といえるでしょう。試験に合格し登録して晴れて、マンション維持修繕技術者を名乗ることができます。

マンションが増え続ける中で築年数が経過しているマンションは維持管理や長期修繕のニーズが高まり続けます。マンションの維持管理、修繕のプロフェッショナルたる立場のマンションの維持管理技術者は必要性と将来性においても貴重な人材とされ、年々需要は高まるといえるでしょう。

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