- 低炭素住宅はエネルギー消費量10%以上削減、断熱性の確保が必須
- 環境にやさしく光熱費などのランニングコストが抑えられる
- 建築費が高くなってしまう点や、申請の手間などがデメリット
事務員
浜崎編集長
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近年さまざまなシーンにおいて環境に配慮した取り組みというのが見受けられます。ハイブリッド車や太陽光発電などが思い浮かびますが、低炭素住宅もエコな観点からつくられた建物です。
しかし低炭素住宅といってもピンとこない人も多いでしょう。この低炭素住宅とはどのような建物で、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
また、エコな住宅といわれるとZEH住宅が代表的ですが、低炭素住宅との違いはどのような点があるのでしょうか?この記事では低炭素住宅について解説します。
低炭素住宅とは
省エネや二酸化炭素を抑えるために低炭素化を推進しています。象徴としているのが2012年に施行された都市の低炭素化の促進に関する法律です。この法律の施行により一気に低炭素化の方向性にシフトしました。
低炭素建築物認定制度が創設され、低炭素住宅を建築した場合に受けることができる減税制度などさまざまな恩恵を受けることができるようになったのです。今後は低炭素住宅を含む、新省エネ基準を満たさなければ新築住宅を建築することはできません。
さまざまな要件を満たす必要があり建築費にも影響するのですが、住宅ローンの控除や金利の優遇などさまざまな恩恵を受けることができる点が特徴といえるでしょう。
長期優良住宅との違い
事務員
そもそもの背景が異なり、低炭素住宅は前述した都市の低炭素化の促進に関する法律が基となり建てられはじめた住宅です。長期優良住宅は2006年に施行された住生活基本法が基となっています。長期間に優良な状態を保つことが目的とされている優良住宅のことを指すのです。
長期優良住宅と低炭素住宅において、税制面での優遇はほとんど変わりがありません。
最も大きな違いは長期優良住宅には耐震性や劣化の対策といった基準においてクリアしなければいけない基準があります。しかし低炭素住宅にはこの部分の基準はありません。
ZEH(ゼッチ)住宅との違い
もう一つ低炭素住宅がよく比較されるものにZEH住宅です。
とはいえエネルギーはどうしても排出されてしまうでしょう。なるべく消費エネルギーを抑え、太陽光発電などによりその分のエネルギーで賄うことができる住宅がZEH住宅です。
低炭素住宅はエネルギーをゼロにすることを目的とはされていませんので、この部分において違いが現れます。コスト面においてもZEH住宅の方が高くなる傾向にありますが、ランニングコストは低炭素住宅の負担が大きい点が、大きな違いといえるでしょう。
認定炭素住宅の申請条件
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浜崎編集長
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せっかく低炭素住宅を建築しようと思っても基準をきちんと満たしていなければ意味がありません。まずは、どのような条件があるのかについてしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
低炭素住宅の認定条件には定量的評価項目と選択的項目において条件を満たさなければいけません。ではどのような項目を満たせばいいのでしょうか?ここからは低炭素住宅と認定される条件などについて解説していきましょう。
定量的評価項目
まずは定量的評価項目について見てみましょう。
定量的評価項目とは必ず基準をクリアしなければいけない項目のことです。主に規定されている項目は以下の通りです。
- 外皮の熱性能
- 一次エネルギー消費量
外皮の熱性能とは断熱性や日射の遮断性についての基準が定められています。基準内容は省エネ基準と同等の断熱性を保有しておかなければいけません。
外皮とは外壁や天井などを指しており、簡単にいうと外気との断熱性に優れていることや日射を遮る要件を満たしていなければいけません。一次エネルギー消費量を満たす基準は、省エネ基準よりもさらに厳しく省エネ基準から10%の削減をしなければ認められません。
選択的項目
次に選択的項目について解説しましょう。選択的項目とは4つの基準のうち2つを満たすことで認定される項目です。
この項目には以下のものがあります。
「節水対策」 | ・食器洗い機や節水のトイレなど節水を目的とした機器の設置 ・雨水や井戸水などを有効活用するための設備がある |
「自家発電など」 | ・家のエネルギーを管理するシステムであるHEMSが設置されている ・太陽光発電や太陽光発電を貯蔵する蓄電池が設置されている |
「ヒートアイランド対策」 | ・敷地や屋上の緑化対策などのヒートアイランド対策がなされている |
「建築の低炭素化」 | ・住宅の劣化対策がとれている ・木造住宅である ・構造耐力上主要な部分に、高炉セメントやフライアッシュセメントといった材質が利用されている |
これらの項目のうち2つを満たせばいいのですが基本的に木造住宅の場合はそれだけで基準のひとつをクリアしています。そう難しい壁というわけではありません。
低炭素住宅のメリット
事務員
浜崎編集長
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前述したように低炭素住宅と認定されるためにはいろいろな要件をクリアしなければいけません。しかも機器の設置などが要件に含まれているので、金額に跳ね返ってくるのではないかと心配する人も多いのではないでしょうか?
しかし低炭素住宅にはさまざまなメリットがあります。ここからは低炭素住宅を建築する場合のメリットについて解説します。
税金の優遇措置
最も大きなメリットといわれるのが住宅ローン減税の拡充です。多くの人はマイホームを建築する場合、住宅ローンを利用します。
住宅ローンを利用した場合、金一括購入よりも利息分支払う金額が多くなるのですが住宅ローン減税により少しでも利息分の支払いを和らげることが可能です。
しかし低炭素住宅の場合、この限度額が5,000万円まで広がり、それに伴い10年間の最大控除額が100万円もアップするのです。また登録免許税も引き下げられるなど国が省エネ住宅の推進を行っていることから、税金面での優遇措置が多いといえます。
地域型住宅グリーン化事業の補助金が受けられる可能性がある
地域型住宅グリーン化事業の補助金が受けられる可能性があります。
低炭素住宅と認定された住宅でかつ国が認定した事業者グループが建築した住宅の場合、戸あたり110万円の補助金を受けることができるのです。
しかし建設する会社や工務店がこの認定を受けていなかった場合には、この補助金を受けることができません。建築会社や工務店は大手に多いのかといえばそうではなく、中小工務店が一つのグループとなっているケースが多いのです。
低金利で住宅ローンを組むことができる
住宅ローンの金利面での優遇を受けることができます。
住宅ローンといわれて思い浮かぶ商品にフラット35という商品があります。フラット35の場合、低炭素住宅も含む省エネルギー住宅と認定されると金利優遇措置の対象となるのです。この商品はフラット35Sプランといわれる商品で一般的な住宅ローンが1.3%だった場合、10年間は1.05%の金利が適用されます。
金利は住宅ローンの利用において最も重要な割合を示しており、多くの人が少しでも金利が安い金融機関で住宅ローンを利用したいと思っているでしょう。10年間の限定ではありますが低炭素住宅の場合大きく金利が優遇される点もメリットです。
容積率が算入されない
マイホームを建築する場合、どのような建て方をしてもいいというわけではありません。建築しようとするエリアの土地には一定の制限があります。
例えば土地の敷地面積に対し建築できる建物の延べ床面積を容積率といい、容積率を越えた建築はできません。いくら大きい建物を建てたくても、土地の容積率によって制限がかかってしまうのです。
しかし低炭素住宅の場合、一定の容積緩和があります。低炭素住宅と認定されるに必要な設備を設置している場合、この設置部分に関しては容積率に算入されないようになっています。
高い断熱性能の住宅にすることができる
先ほど前述しましたが低炭素住宅に認定されるために外皮の断熱性能や日射の遮断性を認定する必要があります。そのため低炭素住宅は冬場は室内の暖かい空気を逃がすことがありません。
夏場は日射の遮断性に優れているので外の熱気が入り込みにくいのです。つまり冬は暖かく、夏は涼しく快適な生活を送ることができます。
低炭素住宅の省エネ性が快適な生活へと導いてくれることからも、これも低炭素住宅の大きなメリットです。
光熱費が月々安くなる
先ほどの断熱性や日射の遮断性に優れていることが要因なのですが毎月の光熱費を安く抑えることが可能です。そもそも一般の住宅より冬は暖かく、夏は涼しく過ごすことができます。つまりエアコンなどの使用量が自然と抑えられることに繋がるのです。
もう一つのメリットが節水対策です。低炭素住宅は、節水対策やヒートアイランド対策といった基準を満たさなければいけません。
例えば節水型のトイレを設置できると水道代の節約などに繋がります。
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低炭素住宅のデメリット
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浜崎編集長
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低炭素住宅にはメリットばかりではありません。デメリットもありますので双方をしっかりと認識して、低炭素住宅を選択するかどうかを判断する必要があります。
ここからは低炭素住宅のデメリットについて解説しましょう。
建築前の設計や確認に時間がかかる
低炭素住宅と認定されるためには、いくつかの条件をクリアしないといけないと前述しました。
条件面については解説しましたが、このような条件を満たすためには設計の時点から時間がかかってしまうことが挙げられます。また建築中若しくは建築が完了した後に確認作業も行われますので、一般のマイホーム建築よりも時間がかかってしまうことが挙げられます。
建築にあたり、少し時間に余裕があるスケジュールを組む必要があるでしょう。
設備費用が高くなる傾向にある
少し述べましたが低炭素住宅と認定されるためには、いくつかの設備を設置する必要があります。どの設備を設置するのかは、それぞれ異なりますが、節水トイレかもしれませんし太陽光発電かもしれません。
しかし、このような設備の設置費用がかかってしまうため、建築費用が高くなってしまうことがあります。
メリットでも述べたように、光熱費や住宅ローン減税の拡充など、経済的なメリットはたくさんあります。しかし、建築費が高くなる点も見逃してはいけません。
市街化区域の対象になっている必要がある
ほとんどの場合は問題ありませんが低炭素住宅と認定される要件の一つに市街化区域であることが挙げられます。
都市計画において市街化区域と市街化調整区域に分かれており、基本的に市街化調整区域でマイホームを建てることはできません。
しかし、このいずれにも属さない未線引き区域というエリアがあり、この地域ではマイホームの建築に特に制限がありません。また、まれに市街化調整区域でもマイホームを建てることができる場合があります。
低炭素マンションはほぼない
低炭素マンションはほとんど存在していません。これはなぜかというと戸建てと比べると認定申請が非常に煩雑であることが挙げられます。
例えば日射の遮断性が挙げられていましたが、全ての部屋において遮断性の要件を満たす必要があるなど戸建てに比べると非常に困難なのです。このような点から、低炭素マンションができにくいといえます。
低炭素住宅の申請方法と費用について
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浜崎編集長
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低炭素住宅は一般の住まいと比較すると設計や申請などいくつかの手続きを踏まなければいけない分、時間がかかるといわれています。まずは申請方法について解説しましょう。
低炭素住宅の申請方法は登録住宅性能評価機関等に申請し適合証を交付してもらわなければいけません。登録住宅性能評価機関は技術的な審査を行い、適合証を交付できるかどうかを判断します。
この適合証が交付されると所轄の行政庁に認定申請を行い、行政庁が認定通知書を交付するといった流れです。
個人で行うのは難しいといった場合は認定申請のサポートを行っている企業もありますので、利用してはいかがでしょうか?
基本的には建築会社がこのような申請を行いますが、建築会社によってはこのような上記のようなサポートに依頼しているケースもあります。
申請を代行業者に任せる場合の費用
次に申請にかかる費用面について解説します。
申請にかかる費用は、およそ5万円から6万円程度です。ただし認定申請においてサポートを依頼する場合は、別途5万円前後の費用がかかります。あわせて10万円程度見ておくと申請から認定までの費用としては十分賄えるでしょう。
場合によってはもう少し安い金額でも申請から認定までできますので、申請の費用に関しては建築会社としっかりと打ち合わせしておきましょう。
まとめ
環境にやさしい社会という流れは今後もどんどん進んでいくことが想定されますので省エネ住宅などの需要は今後も高まってくるでしょう。
浜崎編集長
環境にやさしく光熱費などのランニングコストが抑えられるといったメリットがある一方、建築費が高くなってしまう点や、申請の手間などがデメリットとして挙げられます。また低炭素を認定するために設置した設備のメンテナンス費用も計算しておかなければいけません。
このようなメリットやデメリットをしっかりと分析しながらどのようなマイホームにするかを考えましょう。
事務員