- 地震保険がいらないと言われる理由を解説
- 地震保険がいらない戸建てはどんな条件?
- 地震保険に入るべき人と、いらない人を紹介
近年は地震が多いこともあり、地震保険の重要性が見直されています。
しかし、一方では「地震保険はいらない」という声も聞かれており、火災保険より加入率が低いのも事実です。
本記事では、地震保険がいらない戸建ての要件や、加入が必要であるかなどについて解説します。
地震保険の加入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。
矢口解説員
山口編集者
地震保険とは?入るべきか?意味ない?基礎知識について解説
地震保険は単独で加入できないため、火災保険に加入した上でその保険に付帯して契約します。したがって、火災保険に地震保険料をプラスしなければならず、保険料が高くなるのが悩ましいところです。
最初に地震保険の基礎知識について解説します。
加入率は全世帯の3割以上
近年は大きな地震に備えるため、地震保険に加入する世帯は年々増えています。
福井新聞の調査によれば、2021年度の保有件数は約2,000万件であり、全世帯の3割以上が地震保険に加入している状況です。
内閣府によれば、近い将来発生すると指摘されている大規模地震には、南海トラフ地震、首都直下地震などがあり、保険や共済などで万が一の事態に備える必要があります。
地震による様々なリスクをカバーできる
万が一、大きな地震が発生して住宅が被災してしまうと、修理や建て替えをするには多額の費用がかかります。東日本大震災で全壊被害に遭った住宅の新築費用は、平均して約2,500万円でしたが、公的支援として受給できたのは約400万円程度にしか過ぎません。これでは全壊しても再建するのは難しいでしょう。
地震保険に加入しておけば、地震による様々なリスクをカバーできます。
以下のような損害が発生したときに保険金を受け取れるのがメリットです。
- 地震により火災が発生し、家が焼失
- 地震により家が倒壊
- 噴火により家が損壊
- 津波により家が流された
- 地震により家が埋没
出典:地震保険|日本損害保険協会
地震保険がいらない理由!
地震保険は万が一、地震による損害を受けた場合に受け取れる保険です。
ただ、ケースによっては「いらない」と判断されることもあり、火災保険ほど加入率が高くありません。
地震保険が、いらないとみなされる理由としては以下の5つが挙げられます。
- 全損判定を受けても同じレベルの建物は建てられない
- 一部損になる確率が高く保険料が見合わない
- 火災保険より補償範囲が狭い
- 保険料が高額
- 新築住宅は地震に強い家が多い
それぞれの理由について解説しましょう。
全損判定を受けても同じレベルの建物は建てられない
地震保険は、建物と家財のそれぞれで契約し、限度額は建物が5,000万円、家財は1,000万円となります。契約金額は、火災保険の契約金額の30%~50%の範囲内です。
火災保険の契約金額は、「再調達価額」または「時価」をもとに設定するため、地震による全損の場合でも同じレベルの建物は建てられません。
たとえば、建物の再調達価額が3,000万円で契約金額も同じ場合、火災での全損ならば3,000万円が支払われます。しかし、地震保険の場合は最高でも1,500万円しか契約できないため、再建費用の半分しか受け取れないことになります。
一部損になる確率が高く保険料が見合わない
地震保険は火災保険とは違い、実際の損害額を保険金として支払うものではありません。
保険の対象である建物または家財が全損(契約金額の100%)、大半損(同60%)、小半損(同30%)、一部損(同5%)が支払われます。
ただ、全損、大半損、小半損、一部損の基準は細かく区分されているため、損害を受けても程度により支払われる保険金額には違いが出てきます。
火災保険より補償範囲が狭い
地震保険の補償範囲は、地震による火災や倒壊、流失などに限定されています。
そのため、火災保険より補償範囲が狭いのが特徴です。
火災保険では、特約を付けることにより、以下のような災害でも補償対象となります。
- 火災
- 落雷
- ガス爆発などの破裂・爆発
- 風災・ひょう災・雪災
- 水災
- 給排水設備の事故等による水漏れ
- 騒じょう等による暴行・破壊
- 盗難
出典:火災保険|日本損害保険協会
上記のように、火災保険は火災以外の災害に幅広く対応できるため、日常生活で起こりうるあらゆるトラブルに備えられます。
保険料が高額
地震保険の保険料は、保険対象である建物の所在地で算出されます。
地震保険料はエリアにより大きく違いがあり、関東1都6県・静岡県は高い傾向です。
例えば、東京都の戸建て住宅で2,000万円の地震保険を契約した場合、火災保険料とは別口に地震保険料として1年間で82,200円かかるため、負担が大きいといえます。
新築住宅は地震に強い家が多い
新築の建物は全て現在の耐震基準に則って建築されているため、地震に強い家といえます。新耐震基準(1981年に制定、2000年に大きな改正)は、震度6強~7程度の大地震でも建物が倒壊しないように定められた構造基準です。
近年では、建築基準法の求める耐震性能の1.5倍以上の性能(住宅性能表示制度 耐震等級3)を持つ建物が増えているため、大きな地震が発生しても被害を最小限に食い止められます。
矢口解説員
山口編集者
地震保険がいらない戸建て対策
通常、戸建てを所有していると火災保険に加入しますが、地震保険に関しては各住宅の状況により入らないケースもみられます。
たとえば、以下のようなケースでは地震保険は不要と考える人も少なくありません。
- 耐震性能が高い
- 地震リスクが低い地域に建てている
- 住宅ローンの残債が少ない
ここでは、地震保険がいらない戸建て対策について解説します。
耐震性能が高い
近年の新築木造住宅は耐震性能が高いため、震度6〜7程度の地震が発生しても倒壊するリスクが多くありません。したがって、全損・大半損など大きな損害を受ける可能性は低いと言えるでしょう。
したがって、耐震性能が高い住宅ならば建物が損害を受けるリスクが少ないため、マイホームを建てるときは地震に強い家を提供するハウスメーカーを選ぶとよいでしょう。
地震リスクが低い地域に建てている
地震保険は家を建てるエリアによって保険料に大きな違いがあります。
日本は地震が多い国ですが、なかには比較的地震が少ないエリアもあるため、地震リスクが低い地域に建てるのも得策といえます。
気象庁がまとめた、令和4年(2022年)の都道府県別の震度観測回数で、地震が多いエリアは以下の通りです。(震度1〜7)
【令和4年(2022 年)の都道府県別の震度観測回数表】
順位 | エリア | 地震回数 |
1位 | 福島県 | 338 |
2位 | 宮城県 | 315 |
3位 | 岩手県 | 237 |
4位 | 北海道 | 229 |
5位 | 石川県 | 202 |
出典:気象庁)令和4年(2022 年)の都道府県別の震度観測回数表
ただ、地震の頻度が少ない地域でも大きな地震が発生する可能性があるため、耐震性能の高い住宅を建てることが必要です。
住宅ローンの残債が少ない
地震で倒壊あるいは損害を受けたために自宅に住めなくなったとしても、住宅ローンの債務は消えません。そのため、家を再建するには、すでにある住宅ローンを支払いながら新たなローンを組む可能性があります。地震保険に加入していれば、現在返済している住宅ローンの残債の支払いに充てられるため安心です。
一方、住宅ローンの残債が少ない人は、新たな住居費との二重負担が少ないため、あえて高額な地震保険に入らなくてもよいケースがあります。
矢口解説員
山口編集者
地震保険は必要か?不要な人は?
地震保険は任意での加入のため、個人の判断で必要かどうかを決めます。
ここでは、地震保険が必要な人・不要な人のケースについてみていきましょう。
地震保険が必要な人
地震保険に加入したほうがいいのは以下のような人です。
- 住宅ローンが残っている人
- 新築住宅を購入したばかりの人
- 地震で住宅・家財が損害を受けたときに生活の再建が難しい人
- 地震・噴火・津波のリスクが高い地域に住んでいる人
火災保険は住宅ローン契約時に加入が必須となりますが、地震保険については金融機関によってそうでないケースもあります。ただ、住宅ローンが多く残っている、あるいは新築住宅を購入したばかりの人は、地震保険に加入しておいたほうが安心でしょう。自宅を再建する際に、住宅ローン残債と再建費用の二重負担に陥る可能性があるからです。
地震保険が不要な人
地震保険が必ずしも必要ではない人はこちらです。
- 住宅ローンの残債が少ない
- 災害の発生リスクが低いエリアに住んでいる
- 建物の耐震性能が高い
住宅ローンの残債が少ない人は自宅の再建費用と二重負担にならないため、必ずしも地震保険に加入しなくてもよいでしょう。
地震の発生リスクが低い地域に住んでいる人も同様といえます。
耐震性能が高い住宅は、大きな地震が起きても被害の度合いが少ないため、よく検討してから加入するのをおすすめします。
矢口解説員
山口編集者
地震保険の加入率が低い理由
地震保険は火災保険と比較すると加入率は低い傾向があります。
主な理由は以下の通りです。
- 地震保険料が家計を圧迫する
- 損害を受けても十分な補償がされない
- 地震で家が損壊しても住宅ローン債務は免れない
それぞれの理由について解説しましょう。
地震保険料が家計を圧迫する
地震保険は補償内容の割には高額な保険料のため、家計を圧迫するケースがあります。
地震保険料は地域により差があり、東京都・神奈川県・千葉県・静岡県では保険金額1,000万円あたり保険期間1年につき、マンションでは27,500円、木造戸建て住宅では41,100円も支払わなければなりません。
仮に、この地域の木造戸建て住宅で契約金額2,000万円の地震保険に加入するとしたら、毎年82,200円の保険料が必要です。近年では物価高で食料品などが値上げされていることもあり、保険料が家計の負担になるといえます。
損害を受けても十分な補償がされない
地震保険の契約金額は火災保険金額の最大50%までしか設定できないため、火災の場合と違い、地震で損害を受けた場合は建て替え費用をすべて賄えません。
全損でも再建できるだけの保険料を受け取れないため、以前と同じレベルの建物を建てるのは難しいといえます。
地震で家が損壊しても住宅ローン債務は免れない
大きな地震が発生したため、家が損壊し住めなくなったとしても、住宅ローンの債務は免れません。そのため、家を失っても住宅ローンの返済はそのまま続けていくことになります。
新居購入のために新たに住宅ローンを組む場合は、以前のローン返済もあるため二重ローンに悩まされるでしょう。
どうしても返済が厳しくなった場合には、「被災ローン減免制度」を利用するのも良い方法です。被災ローン減免制度とは、自然災害の影響で、住宅ローンなどの返済が困難になった人を対象として、住宅ローンなどの債務免除や減額を申し出ることができる制度です。
最大500万円の現預金や被災者生活再建支援金、災害弔慰金・災害障害見舞金、義援金等の財産を手元に残せるため、生活再建に役立ちます。
矢口解説員
山口編集者
地震保険の相場は?一戸建てはどのくらい?
地震保険は個人の判断で加入する保険ですが、新築住宅や住宅ローンの残債が多い場合は加入しておくと安心といえます。
ここでは、一戸建ての地震保険の相場について解説しましょう。
- 地震保険で支払われる保険金の段階
- 都府県別の地震保険料例
- 一戸建ての保険料相場
地震保険で支払われる保険金の段階
地震保険で支払われる保険金の段階は以下の4つです。
損害のレベル | 地震保険金額のうち、支払われる保険金 |
全損 | 100%(時価額が限度) |
大半損 | 60%(時価額の60%が限度) |
小半損 | 30%(時価額の30%が限度) |
一部損 | 5%(時価額の5%が限度) |
主要構造部の損害額が時価額のうち、どのくらいの割合を占めるのかなど、損害の程度で4つに分けられます。
都府県別の地震保険料例
地震保険料は建物の構造と所在地により一定の違いがあります。
主なエリアの地震保険の基本料率は以下の通りです。
【保険金額1,000万円あたり保険期間1年につき (単位:円)】
エリア | イ構造(鉄骨・コンクリート造建物等) | ロ構造(木造建物等) |
北海道 | 7,300 | 11,200 |
東京都・神奈川県・千葉県・静岡県 | 27,500 | 41,100 |
埼玉県 | 26,500 | 41,100 |
茨城県 | 23,000 | 41,100 |
大阪府 | 11,600 | 19,500 |
徳島県・高知県 | 23,000 | 41,100 |
福岡県 | 7,300 | 11,200 |
沖縄県 | 11,600 | 19,500 |
出典:地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)財務省|
鉄骨・コンクリート造建物などは頑丈な造りであるため、マンションのほうが木造戸建て住宅より保険料は安くなります。
一戸建ての保険料相場
ここでは、木造一戸建ての保険料相場をみていきましょう。
エリア別に地震保険の契約金額ごとに保険料を計算します。
【エリア別 一戸建ての保険料相場】
エリア | 地震保険契約金額1,000万円(単位:円) | 地震保険契約金額1,500万円(単位:円) | 地震保険契約金額2,000万円(単位:円) |
北海道 | 11,200 | 16,800 | 22,400 |
東京都 | 41,100 | 61,650 | 82,200 |
大阪府 | 19,500 | 29,250 | 39,000 |
福岡県 | 11,200 | 16,800 | 22,400 |
沖縄県 | 19,500 | 29,250 | 39,000 |
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○○解説員
山口編集者
まとめ
近年では大きな地震が発生しており、地震保険料も年々上がっています。
地震保険は火災保険の契約金額の最大50%までしか契約できないため、万が一、地震により建物が全損しても以前と同じレベルの家は建てられません。
ただ、新築したばかりの家や住宅ローン残債が多いケースでは、加入しておいたほうが安心です。
地震保険に加入する際は、建物の耐震性能や住んでいる地域の地震発生リスクを考えて判断しましょう。
矢口解説員
山口編集者