中古マンションをリノベーションする際に知っておきたい注意点とは?

この記事を書いた人
徳田 倫朗
宅地建物取引士

株式会社イーアライアンス代表取締役社長。 宅地建物取引士。 国内では、アパート・マンション、投資用不動産の売買や不動産ファンドの販売・運用を手掛けるほか、海外不動産(アメリカ・フランス)についても販売仲介業務を行うなど、不動産・リノベーションに関して幅広い経験と実績を有する。

この記事のざっくりとしたポイント
  1. 中古マンションの価格の下がり方は一定ではない
  2. リノベーションにかかる費用を加味して考える
  3. 築30年以上のマンションは、耐震基準を満たしているか確認が必要

ここ数年は不動産市況が好調で、全国の新築マンション価格指数は2010年の平均に比べて1.5倍程度に上昇しています(国土交通省発表 2020年不動産価格指数より)。ここまで新築マンションの価格が高騰してしまうと、少し安い中古マンションを購入しようかと考える人も多いことでしょう。

徳田編集者

最近では、中古マンションをリノベーションして楽しむ人も増えています。しかし、中古マンションをリノベーションするときには、築年数や管理規約などマンション特有の注意点があることをご存じでしょうか。

今回は、中古マンションをリノベーションして活用するときに知っておきたい注意点を紹介します。購入した後に制約の多さに気づいて後悔しないためにも、ぜひ参考にしてみて下さい。

中古マンションの購入はどの程度お得なのか?

同じエリア・床面積であれば、新築マンションの価格よりも中古マンションの価格の方が安くなります。しかし、築年数の経過に比例して価格が下がっていくのではなく、特徴的な下がり方をします。下の表をご覧ください。

首都圏の中古マンションの成約状況(2019年)

 –価格(万円)床面積(㎡)㎡単価(万円)下落幅(万円)
築0~5年5,61966.5884.39
築6~10年4,88566.5673.3811.1
築11年~15年4,39170.2262.5310.85
築16年~20年3,94171.6055.047.49
築21年~25年2,84666.6542.7012.34
築26年~30年1,78758.2030.7111.99
築31年~1,83556.5932.42

出典:東日本レインズ 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)

上記の表を見ると、築浅のうちは下落幅が大きく、築20年前後で下落のスピードが一旦落ち着き、築21年~30年ぐらいではまた下落スピードが加速し、築31年を過ぎると再度価格が落ち着くことがわかります。

なんで価格の下がり方が一定ではないのですか?

事務員

徳田編集者

これは、新築マンションの価格の値付け方法と、中古マンションの価格の決定方法が違うが大きな理由なんだ。
なんだか難しそうですね…

事務員

徳田編集者

新築マンションは、“新築プレミアム”といって築浅のマンションよりも1.5~2割ほど上乗せされた価格で販売されることが多いんだ。築浅の物件は新築時の価格と不動産相場とで価格の開きが大きいから、価格の下落幅が大きいんだね。

下落幅が大きい傾向は、築20年前後で落ち着いてきます。ここから築30年前後までは外観や内装に老朽化が目立ち、また大規模修繕等もあって管理費・修繕積立金が高くなるマンションも見受けられます。築16~20年より、築21年~30年の下落幅が大きくなっているのはそのためです。

MEMO

築30年以降になると、建物の価格は下がりきってしまう一方で土地の価値はそれほど変わらないことから、価格はまた落ち着くのです。

 一番お買い得な築年数は?

このように価格下落の傾向に特徴があることから、中古マンションをリノベーションするならば価格が落ち着いたタイミングで購入するのがよい判断です。具体的には築年数が20年~30年ぐらいの傷みの少ないマンションを狙うとよいでしょう。築30年以上のマンションの購入を考えるときには、耐震基準を満たしているかという点をぜひチェックしてみてください。

近年では大地震が多いために耐震基準は年々厳格になっていますが、特に大きな耐震基準の変更があったのは、昭和56年(1981年)6月です。昭和56年5月以前の建物に適用された基準は「旧耐震基準」といわれ、その時期の建物はかなり耐震性が劣ります。

MEMO

築古のマンションの中には耐震補強に大きな費用がかかったり、耐震工事ができずにそのまま建て替え(取壊し)が決定したりしたものもあります。築古の物件を購入するときには、耐震性が鍵になってきますので、気に留めておきましょう。

 リノベーションにかかる費用を加味して考えよう

中古マンションは新築マンションよりも安い価格で購入することができますが、リノベーション費用をあわせて予算に組み込んでおく必要があります。

徳田編集者

例えば、壁や床、天井をスケルトンにしてすべてを交換し、キッチンや浴槽も新しいものに取り換える、ということになると1,000万円以上かかる計算になります。これだと、合計価格が新築マンション価格よりも高くなってしまうこともあるために注意が必要です。

では、300万円から500万円の予算のリノベーションでどの程度の工事が可能か考えてみましょう。

 (例1)300万円で水回りをリニューアルする

築古のマンションで一番気になるのは水回りでしょう。築年数が2,30年経過すると、設備のグレードやデザイン、素材がかなり変わってきて気になるところが多くなります。

リフォーム例
  • 浴室:100万円
  • キッチン:80万円
  • トイレ:30万円
  • 洗面台:30万円
  • 壁紙、床材その他:60万円

リフォームを水回りだけにして、中程度のグレードにするならば200万円から250万円程度で済みます。残りはリビングや部屋の壁紙のリフォームなどに使えます。

(例2)500万円でフルリノベーションをする

60㎡程度の2LDKマンションでしたら、500万円で、水回り、壁紙・床材の取り換え、軽微な棚やクローゼットの増設などの工事が可能となり、室内は見違えるようになります。フローリングや壁材の色調を統一したり、照明の位置や形状を変更したりすると、高級感のある室内することもできます。

リフォーム例
  • 水回りリフォーム:250万円
  • 壁紙・床材・天井の取り換え:200万円
  • 棚や収納の増設等:50万

リノベーションの費用は交換する設備やグレードによって異なりますが、住戸の床面積の広さで大まかな費用が定まります。同じようなリノベーションでも、床面積の広い住戸であれば工事費用がかさみますので注意が必要です。

 【購入前のチェックポイント】中古マンションならではの注意点とは?

中古マンションの購入を検討する際に、室内の現状や外観を確認しなければならないのは当然ですが、戸建てにないチェックポイントがいくつかあります。

中古マンションをリノベーションするときには、新築マンションや戸建と比べて注意することが多そうですね。

事務員

徳田編集者

マンションのルールを考える必要があるからね。特に注意しなければならないのは、修繕積立金の状況と管理規約かな。マンションには専有部分と共有部分があって、共有部分の修繕費や管理費用はみんなで資金を出し合ってまかなうんだ。マンションによっては管理がうまくいっていなくて、修繕積立金や管理費用が高額になっているところもあるようだよ。

では、修繕積立金や管理について詳しくみていきましょう。

 修繕積立金に関する注意点

マンションは、建設時に長期修繕計画が立てられ、分譲するときに購入者に配布されます。外壁や廊下、照明、エレベーターなど共有部分の修繕は修繕積立金でまかなわれますが、近年の大地震や風水害によって修繕積立金があまり残っていないマンションもあります。このようなマンションでは、近い将来修繕積立金の引き上げが決定される可能性が高いといえるでしょう。

また、築古のマンションを検討する場合には、建て替えの話が管理組合で持ち上がっていないかについても併せて確認しておく必要があります。

徳田編集者

リノベーションしても建て替え決議が可決されてしまうと元も子もありません。この点については、仲介の不動産会社に詳しい調査を依頼しましょう。

 管理に関する注意点

マンションの寿命は管理の良し悪しに左右されます。外壁の汚れ、バルコニー等のひび割れ、タイルの剥がれ、屋上防水などはマンションの管理会社の質によって痛み度合いに差が生じるところです。築年数が似ている他のマンションに比べて、痛みがひどいようだと要注意です。

注意

エントランス、ポスト周り、駐輪場、ゴミ捨て場などがきちんと片付いているか、汚損がないかについては住人の使い方によっても大きく変わってきます。このような共用部分がきれいで整っているならば、住人の質が高いマンションだといえるでしょう。

 要事前確認!中古マンションを買ってからリノベーションをする場合の注意点とは?

次は、リノベーションをするときの注意点に目を向けてみましょう。中古マンションをリノベーションするときには設備や建材の質や予算に気を取られがちです。リノベーションの内容や費用を検討することは大切ですが、マンションの構造や管理規約、スケジュールについても注意しましょう。

MEMO

理想のリノベーションプランができたのはいいものの、構造上、管理規約上、あるいはスケジュールがネックになって工事できないということもあります。以下の点については購入前にきちんと確認しておくことが大切です。

構造上希望するリノベーションが実現できるのか?

マンションの構造によっては希望するリノベーションが実現できないこともあります。3LDKを2LDKにしたかったのに、構造上壁を抜くことができなかった、配管の関係でアイランドキッチンにすることができなかった、ということはよく聞かれる失敗例です。

徳田編集者

特に浴室やトイレの大きさについては、マンションの規格や間取りに合ったものを設置するしかないことが多くなります。配管が関係する大規模なリノベーションを考えている時には、購入前に工事業者と綿密な打ち合わせをしておくことが大切です。

また、マンションは構造上、上下の階が同じ間取りになっていることが多く、寝室に使う部屋も上下の住人で共通していることが多くなります。しかし、リフォームして間取り変更すると、上の階のリビングの下が寝室になることも考えられます。

床の音を気にするのであれば、間取りをどのようにするのかについても気を配った方がよさそうです。

事務員

 マンションのルールを確認しておこう

マンションの管理規約や使用細則によっては、一部のリノベーションが制限される場合があります。特に、共用部分(コンクリート壁、バルコニー、玄関周りに外壁やタイルに穴をあけたりする工事など)については制限されていることが多くあります。このような事項についても事前に規約や細則を入手して、工事業者に相談しておきましょう。

リフォームにかかる期間を考慮して計画を立てよう

実際にリフォーム工事に入れるのは、中古マンションの代金決済・引渡後になります。実際に室内を確認してリノベーション工事を行い、入居するまでの期間は数か月を要するため、その間は従前の住居に住み続けることになります。また、居住中のマンションをリノベーションする場合には仮住まいの準備も必須です。子どもの入学や転勤などを見込んで引越しするときには、スケジュールに余裕をもって購入することが大事です。

MEMO

その間の住居費用や購入のために組んだローンの元利払いについても、予算に見込んでおかなければなりません。余裕を持った資金計画を立てることで不安を軽減することができるでしょう。

 リノベーションでお得に理想の住まいを手に入れよう

中古マンションを購入してからリノベーションする場合、新築マンションや一戸建てにはないさまざまな制約や注意点があることに気づくと思います。買ってからこんなはずではなかった…と後悔しないために注意点をしっかりと理解し、事前に必要な情報を手に入れて不動産会社や工事業者に相談しながらすすめましょう。

チェックしておくポイントは多いですが、良い物件に巡り合えばお得に理想の住まいを手に入れることが可能です。これからの住まい探しに、中古マンションをリノベーションして活用することを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。