戸建て住宅をリノベーションするなら知っておきたい!費用、期間、注意点を解説!

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のざっくりとしたポイント
  1. スケルトンリノベーションと表層リノベーションの2種類がある
  2. 工事期間中は物件を使用することはできない
  3. 物件の特徴や長期保有の有無によって、最適なリノベーションを選ぶことが大切

物件の内装・設備や間取りを変更できるリノベーション。マイホームであれば自分好みにアレンジできますし、投資用物件であれば家賃収入アップにつなげることもできます。

浜崎編集長

今回は、戸建て住宅をリノベーションしようと考えている人を対象に、リノベーションする際に知っておきたい注意点について解説していきます。

一般的に戸建て住宅はマンションより規模が大きいため、工事期間は長く、費用は高くなる傾向にあります。コストを抑えたリノベーションの手法もご紹介しますので、確認していきましょう。

スケルトンリノベーションと表層リノベーション

戸建て住宅をリノベーションする上で知っておきたい2つの選択肢として、スケルトンリノベーションと表層リノベーションがあります。

スケルトンリノベーションとは…?

事務員

スケルトンリノベーションの「スケルトン」とは、建物の骨組みである構造体(鉄骨や木柱)が現れた状態を指します。

浜崎編集長

つまり、スケルトンリノベーションとは、建物の内装や設備、間仕切りなどをすべて撤去したのちに、一からリノベーションすることを指します。同じ意味の単語として「フルリノベーション」があります。
なるほど!では名前で想像すると、表層リノベーションは表面だけのリノベーションということでしょうか?

事務員

浜崎編集長

そうですね。スケルトンリノベーションとは対照的に、物件の壁紙や設備など目に見える範囲だけリノベーションをすることで、安価に雰囲気だけを変えるリノベーション手法です。

それでは、それぞれの概要やメリット・デメリット、どのような人に向いているかなどを解説していきます。

スケルトンリノベーションと表層リノベーションの違いは?

スケルトンリノベーションと表層リノベーションの違いを表にまとめました。

表層リノベーションスケルトンリノベーション
工事内容クロスやフローリングの張り替え、古くなった設備の入れ替えなど、目に見える範囲の修繕・交換構造体(鉄骨や木柱)以外の全工事が可能。間取りや設備位置の変更や、目に見えない設備配管、下地材、断熱材の交換も含む
規模小規模大規模
費用感安い高い
物件価値見た目の部分のみ上げることができる大幅に上げることができる
メリット安価に物件の雰囲気を変えることができ、空室解消に繋がる高い競争力を得ることができ、賃料アップも期待できる
デメリット抜本的な改修ができていないため、老朽化した水回り設備などから不具合が生じる恐れがある費用が高い
おすすめの物件一時的な空室を解消したい売却予定の物件比較的築年数の浅い物件長期保有を予定している物件老朽化が目立つ物件

  スケルトンリノベーションのメリット・デメリット

スケルトンリノベーションのメリットは、何と言ってもその自由度です。柱などの構造体を除いて、全てを自分好みに変えることができるため、物件の価値を大幅に向上させることが可能です。投資用物件であれば、新築や築浅物件にも負けない魅力で空室率の低下や、賃料の維持向上も見込めます。

また、普段は目に見えない天井や床下などの配管・配線まで交換できることもポイントです。築古物件ほど目に見えない箇所で劣化が進んでいるので、スケルトンリノベーションにより建物の寿命を伸ばすことが可能です。

浜崎編集長

一方、デメリットはコストが高いことと、工期が長くなることです。

単純に工事の内容が多岐に渡る分、必要となるコストは高くなります。また、決める項目が多い分打ち合わせも長くなる傾向にあり、計画から住むまでには長期間かかること前提で挑んだほうがよいでしょう。

 そういったことから、スケルトンリノベーションは築15年以上の老朽化が懸念される物件を保有しており、資金や余力がある程度ある方に向いていると言えます。

MEMO

一般的に、スケルトンリノベーションにかかるコストは高い分、コスト以上に売却価格が上がるケースは稀です。その為、スケルトンリノベーションは物件を長く保有する前提の選択肢と言えるでしょう

 表層リノベーションのメリット・デメリット

一方、表層リノベーションはスケルトンリノベーションと反対の性質を持っています。

浜崎編集長

メリットはなんと言ってもコストパフォーマンスです。

天井・壁・床の表層の部分だけを新品に変えるだけで、物件を新築同様に新しく見せることができますまた、アクセントクロスなどの手法を用いることで、物件をよりお洒落に仕上げることも可能です。

コストパフォーマンスの良さは、投資用物件の場合に効力を発揮します。短期売買用物件の場合でもコスト以上に売却価格を向上させることが見込めますし、賃貸用物件の場合でも空室率の低下や賃料の維持が期待できます。

逆にデメリットはありますか?

事務員

浜崎編集長

デメリットとしては、やはり目に見えない設備配管などがそのままである為、表層リノベーション後にそういった箇所からトラブルが発生する可能性が残ることでしょう。

そういったことから、表層リノベーションは以下に当てはまる方に向いていると言えます。

・比較的新しい物件を保有している方

・マイホームの場合が手軽に雰囲気だけを変えたい方

・ 短期売買の投資物件の場合は売却価格の向上を図りたい方

・ 賃貸の投資物件の場合は周辺の新築物件と競合できる状態にしたいという方

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戸建て住宅のリノベーションにかかる費用と期間

物件の特徴や長期保有の有無によって、最適なリノベーションを選ばないといけないということですね。それでは、例えば、戸建て住宅をスケルトンリノベーションする場合、どの程度の費用と期間を見積もっておけばいいのでしょうか?

事務員

浜崎編集長

物件の立地や築年数、間取りなどにより工事の規模が代わるため、一概に比較はできませんが……2階建て戸建てのスケルトンリノベーションの場合、費用として、1500万円以上は見ておいたほうがよいでしょう。また期間としては、打ち合わせに約3ヵ月・工事に3~5ヵ月はかかると言われています。
けっこうかかるんですね!

事務員

浜崎編集長

そうなんです。株式会社LIXILの LIXIL リフォームショップでは、中古戸建てをフルリノベーションした事例が紹介されています。築年数35年の平屋 のスケルトンリノベーションで工期6ケ月・費用2500万円(税込)、築年数80年の2階建て物件 で工期 4ヶ月・費用1700万円(税込)という事例が紹介されています。
やはり、物件によって違いがあるんですね。

事務員

浜崎編集長

編集者:はい、費用に関しては特に、物件の状態やリノベーションの実施内容により大きく変わりますので、リノベーション業者に直接見積もりをとることをお勧めします。

戸建て住宅をリノベーションする費用の目安は?

戸建て住宅をリノベーションする費用は、物件の広さや設備の移動の有無などで大きく変わります。また、地域ごとに材料費や職人の人件費も異なりますが、スケルトンリノベーションを行う場合は規模が大きい為1,500万円以上の予算は必要と言われています。

 各工事の費用感の目安として、大手ハウスメーカー大和ハウスリフォーム株式会社 のHPを参照します。リノベーションで人気の水回り工事について抜き出しましたので、相場感の参考にしてください。

場所内容工事費用の目安備考
トイレ洋式トイレ→タンクレストイレ(温水洗浄暖房便座付)に交換、トイレカウンター設置52万円~撤去・処分費用・トイレ1帖分の内装工事費用を含む
和式トイレ→洋式トイレへ変更35万円~撤去・処分費用・トイレ1帖分の内装工事費用を含む
浴室ユニットバス取替え100万円~ユニットバス→ユニットバスへ取替え。(1坪タイプ・撤去・処分費用を含みます。)
洗面化粧台取替え43万円~撤去・処分費用・洗面室2帖分の内装工事費用を含む
浴室に暖房機能付浴室換気乾燥機を取り付け10万円~電気工事費用を含む
キッチンキッチン取替え100万円~I型キッチンを既存の位置で取替えた場合。人造大理石天板、3口コンログリル付、オーブン・食器洗浄乾燥機無し
ビルトイン食器洗浄乾燥機取り付け22万円~電源・給排水工事費用を含む

引用:ダイワハウスリフォーム株式会社

戸建て住宅をリノベーションする期間の目安は?

費用と同じく、工事の内容が大きくなるほど期間も長くなります。その為、老朽化したものを修繕するだけのリフォームに対して、価値を向上させることを目的としたリノベーションはより期間を要する傾向にあります。

また、施工面積の違いにより、マンションよりも戸建ての方が期間を要します。場合によっては、新築よりも工期が長くなる場合もあります。これは、リノベーションの場合は現行住宅の柱など各種制約の中で設計・施工しなくてはならないためです。

浜崎編集長

そういったことから、戸建て住宅のスケルトンリノベーションにかかる工事期間は3~5ヵ月は必要と考えておきましょう。

 リノベーションの費用や期間はどうすれば削れる?

リノベーションの費用や期間は、工夫すれば削ることが可能です。

代表的なポイントは以下の通りです。

共通
  • リノベーションの内容を絞る(物件購入前の場合は、築年数が浅い物件を選ぶ)  
  • そのまま使用できる箇所は再利用する
  • キッチンや風呂など、配管が必要となる水回りの移動は最小限にする
  • 間取りはなるべくシンプルにして、一つ一つの部屋を大きくする
  • 設備・家具は既製品で揃える
  • 物件購入前の場合は、資材運搬のため高層階の物件は選ばない。また、資材搬入にエレベーターが使える物件にする
コスト削減・工期短縮
  • 素材はなるべく標準仕様のものを活用する(グレードの高いものを選ばない)
  • リフォームの繁忙期(年末や年度末)を避ける

戸建て住宅をリノベーション上で知っておきたい注意点

その他、戸建て住宅をリノベーションする際に知っておきたい注意点として、工事期間中に物件を使用できないこと、ローン条件が厳しいことが挙げられます。それぞれ見ていきましょう。

  仮住まいをする必要がある

工事期間中、物件を使用することはできない為、ご自身が住まれている場合は、仮住まいに引っ越さなければなりません。リノベーションの費用に加え、引っ越し費用や仮住まいの家賃支払いが発生する点は注意が必要です。

注意

投資物件用の場合は家賃収入が途絶えてしまいます。リノベーションを行う前に、資金繰りのシミュレーションをきちんと行い、無理のない計画を立てるようにしましょう。

借りられる金額と返せる金額は違う

リノベーションでローンを組む場合に気を付けたい注意点として、融資の条件が厳しいことも挙げられます。

一般的に、金利の安い住宅ローンは融資を受ける人自身が居住するという条件を満たさなければならない為、投資用物件では利用できません。2021年9月現在、みずほ銀行でローンを借りる場合、変動金利では、住宅ローン0.375%に対して、リフォームローンは3.975%と高く設定されています。

浜崎編集長

審査に通って借りることができたとしても、想定外の事態で返すことができなくなるかもしれません。資金計画においては、仮住まいの費用やローンの支払金利など、その他かかる費用も十分考慮しましょう。

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 後悔のないリノベーションを行うために

今回は、戸建てのリノベーションの費用や期間、注意点をご説明しました。物件の状態や目的に応じて、最適なリノベーションにのみ内容を絞ることで、費用も期間も削ることができます。投資用物件の場合特に、コストを意識し、投資回収の視点を持つことが必要となります。

人生にそう経験することのないリノベーション。後悔が生まれないよう、リノベーションの事例や手法を勉強しましょう。