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再建築不可物件とは?可能にする方法や買取りのメリット・デメリット

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 再建築不可物件は建物が建っている場合、その建物を解体して更地にしても、新たに建物を建てることができない物件のこと
  2. リフォームは可能となりますので補修工事を行いながら、自身の生活スタイルにカスタマイズすることが可能
  3. 再建築不可物件のメリットは購入価格が安いこと、デメリットは、建替えが不可であること

中古戸建を安く購入する方法の一つとして再建築不可物件の購入があります。しかし名前の通り建物を解体して建替えをすることができません。「建替えできない再建築不可物件を購入するメリットは、あるのだろうか?」と考えておられる方はいませんか?実は、非常に安く購入することができます。

多くの住宅に関する相談事や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントが、再建築不可物件の概要や建築可能にする方法、リフォーム可能であること、買取りのメリット・デメリット・注意点について解説します。再建築不可物件はメリットを活かしデメリットを克服できれば、有用な中古住宅購入方法であることがわかります。

再建築不可物件とは

再建築不可物件は建物が建っている場合、その建物を解体して更地にしても、新たに建物を建てることができない物件のことです。再建築不可物件は都市計画区域(*1)と準都市計画区域(*2)のみに存在します。

再建築不可物件
  • *1 都市計画区域 :計画的に街づくりを進めるエリア
  • *2 準都市計画区域:人口が少ないが、重要なので制限を設けるエリア

接道義務

建築基準法により上記区域内では建物を建てる場合「接道義務」が設定されています。接道義務は住宅地の場合、「前面道路幅員4m以上の道路に対して2m以上接する必要あり」というものです。2m未満しか接していない土地の場合、住宅を建てることはできません。この規定の背景は、

建築基準法第1条(目的)この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。

にあります。例えば、火事や病人・けが人などが出た場合の緊急時に消防車・救急車などの緊急車両が入り、消防活動・救助活動をスムーズに行うことが可能なまちづくりを行うためです。

再建築不可物件の具体例は以下などの場合です。

再建築不可物件の具体例
  • 前面道路に対する接道幅が、2m未満
  • 道路に接道していない。
  • 道路に接道していても、建築基準法上の道路ではない

また前面道路幅員が4m未満の場合でも建築基準法第42条2項により、建築基準法上の道路とみなされます。(みなし道路)その際、道路の中心線から2m後退した線上に道路境界線があるとみなされ、建物を建築する場合、セットバックが義務付けされます。

再建築不可物件は規定内のリフォームは可能ですが、建替えは不可となる瑕疵物件となります。そのため売却価格は、周辺相場よりも安く販売されます。再建築不可物件の不動産案内広告には「再建築不可」と明記されていますので、注意する必要があります。知らずに購入しますと、建物を建てられない羽目に陥りますので、よく確認する必要があります。

再建築不可物件が生まれる理由

再建築不可物件が生まれる理由は、法律の成立年に関係します。

  1. 昭和25年(1950年):建築基準法成立
  2. 昭和43年(1968年):都市計画法成立

となりました。

そのため建築基準法成立年までに既に建っていた建物の中には接道義務を果たしていない建物が数多く存在しました。その建物の一部が建替えや解体など施されることなく今日まで残り続け再建築不可物件となっています。東京都の場合、総務省による「住宅・土地統計調査(平成30年)」によりますと再建築不可物件と疑われる住宅数は約24万戸にもなります。

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再建築不可物件はリフォームで住むことができる

再建築不可物件は建替えをすることはできませんが建物をリフォームして住み続けることはできます。所有者が変更しても同様です。ただし建築確認申請が不要な場合に限られます。建築基準法第6条1項4号(4号建築物)の規定により以下となります。

建築確認申請が不要なケース
  1. 木造建築物の場合、2階建て以下、または延べ面積:500㎡、高さ13mもしくは軒の高さ9m以下であれば、建築確認申請は不要です。したがって、リフォームは可能になります。
  2. 木造建築物以外の場合、平家建て、延べ面積:200㎡以内であれば、建築確認申請は不要です。したがって、リフォームは可能になります。

ただし増改築をして上記数値の規模以上の建物になる場合、建築確認申請が必要となり、増改築工事は不可となります。

建築可能にするには接道義務を果たす土地にする

再建築物件を建築可能にするには前面道路(建築基準法上の道路)に対して2m以上の接道義務を果たす必要があります。

接道義務
  1. 前面道路に対する接道幅が2m未満の場合、2m以上となるように、隣地所有者から土地を購入する必要があります。
  2. 前面道路に接していない場合も同様に、2m以上接道できるように、隣地所有者から土地を購入する必要があります。
  3. 道路に接道していても、建築基準法上の道路ではない場合、建築基準法上の道路に2m以上接道できるように、隣地所有者から土地を購入する必要があります。

再建築不可物件を安く購入できても隣地所有者から接道義務を満足する分の土地を購入できなければ、建替えはできません。また土地購入費が高ければ再建築物件を安く購入したメリットが無くなります。

ただし書きについて

再建築不可物件について建築基準法第43条には救済措置が謳われています。

建築基準法第43条2項2号その敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの

接道義務を満たしていない再建築不可物件でも敷地周囲に広い空地があり特定行政庁において支障がないと認められれば、建替えすることができます。しかし支障がないと判断される交通上、安全上、防火上、衛生上の基準が明確化されていません。自治体などの独自基準(内規など)によって、判断されることが現状です。

MEMO
ただし書きについて:建築基準法改正により現行の第43条の条文には「ただし」という表記はありません。改正前の第43条の条文は、「~2m以上接しなければならない。ただしその敷地の周囲に広い空地を有する~」となっていました。これを指して、「ただし書き」といわれています。

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再建築不可物件を買取するメリット

 

再建築不可物件を購入するメリットは何ですか?

 
 

購入価格が安くなり、固定資産税や都市計画税も安くなることです。

 

価格が安いのでリフォーム・リノベーション等に費用をかけやすい

再建築不可物件を買取りする最大のメリットは購入価格が安くなる点です。「再建築不可」と不動産広告に記されていますと、一般的には避けるのが通常です。以下となりますと見向きもされないのが一般的です。

見向きもされない条件
  1. 建替えできない
  2. 増改築できない
  3. 自動車の出入りができない

買手がなかなか見つかりませんので売り手も販売価格を売却できるまで値下げし続けることになります。周辺相場と比較して、10%~50%といった成約価格になります。購入価格が周辺相場と比較して極端に安くなる点に着目し、再建築不可物件を買取りして、安くなる分をリフォーム・リノベーション費用にかけることができます。

上記において解説しましたように以下であれば建築確認申請が不要となります。

建築確認申請が不要なケース
  1. 木造建築物の場合:2階建て・延べ面積500㎡以内・高さ13mもしくは軒の高さ9m以下
  2. 木造建築物以外の場合:平屋建て・延べ面積:200㎡以内

再建築不可物件は築古で劣化・損傷が進んでいる場合もありますのでホームインスペクション(住宅診断)を受けた方が無難と思われます。耐震性・耐火性・耐風性・断熱性・瑕疵などを診断してもらい、問題個所を重点的に修繕して住むのも一つの方法です。

固定資産税や都市計画税も安い

再建築不可物件は土地・建物ともに課税標準額が下がりますので、固定資産税・都市計画税ともに安くなります。毎年かかる経費となりますので納税額が安くなれば生活費も楽になります。

再建築不可物件の隣地住人なら土地を広げることも可能

再建築不可物件の隣地住人の場合、隣地が売却に出されれば、自身の土地を広くすることができる良いタイミングとなります。再建築不可物件は、すぐに売却できる物件ではありませんので、様子見しながら、売却価格が下がるのを待つのも一つの方法です。しかし油断をしますと、他者に購入される可能性もあります。

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再建築不可物件を買取するデメリット

 

再建築不可物件を買取りするデメリットは何ですか?

 
 

建替え不可、住宅ローン借入不可、災害リスク大などが挙げられます。

 

建て替えや増改築などができない

再建築不可物件の最大のデメリットは建替えや規定以上の増改築ができない点です。建替えをする場合、建築確認申請を行う必要性があり接道義務を果たすことが条件の一つとなります。元々、接道義務を果たしていない再建築不可物件は、建築確認申請を通過することができません。増改築をする場合、上記の規定以内に収まる増改築であれば可能です。しかし規定を超える増改築の場合、建築確認申請が必要になり不可となります。

リフォーム工事は可能ですが、工事費用が高くなる可能性があります。再建築不可物件の敷地までに至る道路は、幅員が狭いケースが多くなります。そのため近くまでは車で資材・機材などを搬入できますが、途中から人手による搬入をしなければならない敷地が多くなります。もしくは敷地まで車で搬入できたとしても、小型車や軽自動車での搬入作業となります。そうなりますと運搬費用が人件費や運搬回数増加などでかさむため、結果としてリフォーム費用が高くなる傾向にあります。

物件によって地質調査もできない

再建築不可物件は敷地が狭いケースが多いため地質調査ができないこともあります。再建築不可物件は築古・劣化損傷のある建物が多くなるため、耐震性・耐風性補強などが必要になります。特に建物の荷重を支える基礎構造が長く住み続ける上では重要となります。その際地質調査を行う必要がありますが、敷地の狭いケースが多く、地質調査を行う最低限度のスペースさえ確保できない場合があります。地質調査ができなければ、基礎構造の補強をどの程度行えばよいのか不明となります。不明のまま推測で補強工事を行ったとしても、強度が不足する可能性が生じます。

住宅ローンも組めない

再建築不可物件は土地・建物の評価が低くなるため、金融機関の融資審査において担保力不足という判断結果になり易く、住宅ローンが組めない可能性が高くなります。リフォームを検討している場合においても金融機関の判断は同様に厳しく、リフォームローンの借入は容易ではありません。

災害で住めなくなるリスクも高い

再建築不可物件は購入後においても、耐震性・耐風性・耐火性などの補強を施さなければ、台風による強風や地震、火災によって建物が倒壊し住めなくなるリスクが高まります。また火災や建物倒壊が発生した場合、道路幅員が狭くなりますと、消防車や救急車、レスキュー車などが入れず救助活動が遅れる傾向にあります。災害時の避難経路などを確保しにくい点もデメリットとなります。

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再建築不可物件を買取する際の注意点

 

再建築不可物件を買取りする際の注意点は何ですか?

 
 

電気配線・ガス管・水道管・排水管などのインフラ設備の確認や日当たり・風通しの確認も必要です。

 

インフラ状況や排水などの確認

再建築不可物件は敷地の周囲に道路が無く他人所有の隣地に囲まれている場合が多いため、インフラ設備(電気配線・ガス管・水道管・排水管)の状況を事前に確認する必要があります。他人所有の土地を占用してインフラ設備が整備されている場合、占用料が必要な場合もあります。

また故障などでインフラ設備が使用できなくなる時、補修工事が必要になります。その際、補修工事を行うにしても、どこにガス管や水道管・排水管が埋設されているのか不明であれば、先ず探すところから始める必要があります。そうなりますと補修工事完了までの時間が、長期化します。その様にならないためにも事前にインフラ設備の埋設位置を確認する必要があります。

日当たりや風通しもチェックしておこう

再建築不可物件は他人所有の隣地に囲まれている場合が多いため、日当たりや風通しの有無を事前に点検しておくことが大切です。悪ければ湿気が多くカビやダニ、シロアリなどが好みやすい環境となりますので、注意が必要です。特に降雨時において雨水排水路が無い場合、敷地が水浸しになり、晴れてもしばらく水浸しの状況になる場合もあります。衛生上も良くありませんので、その様な物件は、避けた方が賢明です。

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まとめ

以上、再建築不可物件の概要や建築可能にする方法、リフォーム可能であること、買取りのメリット・デメリット・注意点について解説しました。再建築不可物件のメリットは購入価格が安いこと、デメリットは、建替えが不可であることです。リフォームは可能となりますので補修工事を行いながら、自身の生活スタイルにカスタマイズすることが可能です。

デメリットを克服するためにも再建築不可物件の取扱い経験のある建築事務所や建築工事会社を自身のネットワークに組み込むことができれば、問題が発生した場合、速やかに解決を図ることができます。再建築不可物件を最大限に活かすことが可能となります。メリットを活かし、デメリットを克服しながら、再建築不可物件も住宅購入方法の一つとして、検討されますことをおすすめいたします。