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火災保険の建物評価額計算方法を解説!マンションの場合や新価と時価、契約内容の注意点とは

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

火災保険の建物評価額計算方法まとめ
  1. 被災した際に同等の住宅の新築・購入に要する金額を得られる契約がおすすめ
  2. 経年劣化等を差し引いた建物評価は、保険料は安く抑えられるが被災した際に困る
  3. 古い保険契約の場合には「超過保険」か「一部保険」になっていないか確認する

これから火災保険の加入を検討する方や、既に加入している方にとって被災した場合の保険金は生活再建の足掛りとなる大切な資金源となります。仮に火災で家屋が全損になった場合「保険金で被害額を全て賄うことができるだろうか?」「一部しか保険金が出ないのでは?」と不安になっている方はいませんか?実は「全部保険の原則」を守れば、過不足なく保険金がおります。

多くの住宅に関する相談事や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントが、火災保険の建物評価額や建物評価基準、建物評価額の計算方法、火災保険を十分に受け取れないケースについて解説します。仮に火災で家屋が全損になった場合でも過不足なく保険金がおりる火災保険の加入・見直し方法を知ることができます。

火災保険の建物評価額とは

火災保険の契約時、現在の建物価値を計る建物評価が行われます。建物評価額は再調達価額で算出されるのが通常です。再調達価額は新価もしくは再取得価額ともいわれます。建物の所在地や構造・部材、延床面積などから計算されます。

保険金額=建物評価額(全部保険)にしておくのが基本

再調達価額を建物評価額として採用し、その金額を保険金額として設定するのが基本となります。保険金額=再調達価額=建物評価額として設定することは新築住宅や中古住宅でも同じです。一般的に中古一戸建ては約20年で建物評価額はゼロになるといわれています。したがって、築年数の長い建物については不動産市場価格と同様に、保険金額も低く設定した方が良いと考える人もいます。

MEMO
しかし火災保険は建物の築年数が長くても再度その建物を再築する金額を保険金額として設定することが可能となりますので建物評価額(再調達価額)と同じ保険金を掛けるのが良策といえます。

事例1

新築住宅の購入価額が3,000万円の場合、もしくは築年数のかなり経過した中古住宅の場合です。再建築する金額が3,000万円ならば、それぞれ保険金額は3,000万円を掛けることになります。火災などで被災した後に、これまで同様の住宅が再建築可能となる保険金額を受け取ることが可能となります。また生活再建もし易くなります。

したがって建物評価額=再調達価額=保険金額と設定しますと被災時に建物再建に必要な保険金を受け取ることができます。

注意
逆に建物評価額=再調達価額>保険金額(一部保険)と設定しますと被災時に十分な保険金を受け取ることはできません。

建物評価基準の「新価」と「時価」について

建物評価基準には「新価」と「時価」がありますが新価(再調達価額)については上記で簡単に解説しました。ここでは「新価」と「時価」を比較しながら解説します。

損害をしっかりカバーしたいなら「新価」

「新価」は火災などで住宅などが被災した後に同じ住宅を新築もしくは購入するために要する金額です。新価による損害保険金を受け取ることができれば被災した住宅をすぐに再建することができます。最近の火災保険契約は新価にて行われることが一般的となっています。

MEMO
仮に新価での契約になっていない場合、損害額を十分に補填するためにも新価での保険契約にて見直しをすることが大切になります。

保険金受け取り時点での価値を表す「時価」

「時価」は「新価」から経年劣化や使用損耗による価値の減少分を差し引いた金額です。過去の火災保険契約は時価にて行われることもありました。仮に時価での契約の場合、新価での契約金額から経年劣化・使用損耗分を差し引かれて損害保険金を受け取ることになります。そうしますと被災して住宅を失った場合、住宅を再建するために必要な金額を賄うことができなくなります。

また不足分に対して住宅ローンを組んで住宅を再建したとしても生活費もかかるため家計を圧迫することにもなります。時価にしますと新価よりも保険料は安くなりますが、被災した時に困ることになります。ここで上記で解説した新価と時価の違いを下表にまとめます。

建物評価基準 内   容
新  価 再建するために新築する場合の価額
(再調達価額や再取得価額ともいう)
時  価 時価=新価-経年劣化・使用損耗分

建物評価額の計算方法は新築・中古、マンションで変わる

建物評価額の計算方法は新築・中古一戸建て住宅とマンションとで異なります。下表のように分類して解説します。

ケース ケースの内訳
新築一戸建て ・住宅を新たに建てる場合
・建売住宅を購入する場合
中古一戸建て ・建築年と建築価格が分かる場合(年次別指数法)
・建物延床面積と建築構造がわかる場合
(新築費単価法)
マンション ・専有面積と建築構造がわかる場合(新築費単価法)

新築一戸建ての建物評価額計算方法

新築一戸建ての建物評価額計算方法は住宅を新たに建てる場合と建売住宅を購入する場合とで異なります。

住宅を新たに建てる場合

一戸建てを新たに建てる場合、建築に要する総費用から土地代や建築時諸経費(設計費・測量費・税金など)を差し引き家屋を建てるための金額を算出します。その金額が建物評価額となります。

建売住宅を購入する場合

完成したばかりの建売住宅を購入する場合、土地・家屋をセットで購入するため、家屋だけの費用が不明となります。しかし売買契約書を見ますと消費税額が記載されています。その消費税額を基にして建物評価額を算出することができます。土地代は消費税の課税対象外となるため、消費税額を消費税率(10%)で除すると家屋の金額が算出されます。その家屋金額が建物評価額となります。

建物評価額 消費税額 ÷ 消費税率(0.10)

事例2

売買契約書に記載の消費税額が200万円、消費税率10%の場合、計算式は以下の通りとなります。

 建物評価額=200万円÷0.10=2,000万円

中古一戸建ての建物評価額計算方法

中古一戸建ての建物評価額計算方法は建築年と建築価額がわかる場合と建物延床面積と建築構造がわかる場合とで異なります。

建築年と建築価格が分かる場合(年次別指数法)

建築年と建築価額(土地代を除いた家屋の価格)がわかる場合、その建築価額に建築年によって決められた指数を乗じて建物評価額を算出します。建築時の評価額に物価の変動などを反映させることにより正確な建物評価額を算出することができます。

建物評価額 新築時の建築費 × 建築費倍率

事例3

ある地域で新築時の建築費が2,000万円、建築費倍率が0.90となる場合、計算式は以下の通りです。

  建物評価額=2,000万円×0.90=1,800万円

建物延床面積と建築構造がわかる場合(新築費単価法)

建築年と建築価額が分からない場合、建物延床面積と都道府県・建物構造が分かれば、建物延床面積と平均建築単価を乗じて概算の建物評価額を算出できます。概算評価額となりますので、保険契約者の要望により実態に合わせてプラスマイナス30%の範囲内で建物評価額を増減することができます。

建物評価額 延床面積 × 平均建築単価 {×(0.7~1.3)}

事例4

ある地域で木造一戸建て住宅の延床面積:140㎡、平均建築単価:15万円/㎡となる場合、計算式は以下の通りです。

  建物評価額=140㎡×15万円/㎡=2,100万円

マンションの建物評価額計算方法

マンションの購入価格の内訳は専有部分の価格と共用部分の価格、土地代とで構成されます。火災保険を掛ける部分は専有部分となりますので、共用部分と土地代を省く必要があります。その場合、上記で解説した新築費単価法により専有部分の延床面積と平均建築単価を乗じて建物評価額を算出します。

事例5

ある地域で鉄筋コンクリート造マンションの専有面積:70㎡、平均建築単価:25万円/㎡となる場合、計算式は以下の通りです。

  建物評価額=80㎡×25万円/㎡=2,000万円

保険金をしっかり受け取れないケース

 

保険金をしっかりと受け取れないケースがありますか?

 
 

超過保険や一部保険の場合、保険金を十分に受け取れない場合があります。

 

保険金をしっかり受け取れないケース
  • 古い保険契約は「全部保険の原則」から外れているかもしれない
  • 保険金額が建物評価額よりも高くなっている超過保険
  • 保険金額が建物評価額よりも低くなっている一部保険

古い保険契約は「全部保険の原則」から外れているかもしれない

古い保険契約の場合、特に保険期間が10年以上と長期間に亘り掛けている場合には、知らない間に「全部保険の原則」の原則から外れていることがあります。上記でも解説しましたが保険金額は建物評価額と同額にする必要があります。このことを「全部保険の原則」といいます。

最近は保険加入時において建物評価額が明確に算出されますので「全部保険の原則」から外れることはありません。しかし古い保険契約には保険金額が建物評価額よりも高い場合(超過保険)や保険金額が建物評価額よりも低い場合(一部保険)など「全部保険の原則」から外れることもあります。

保険金額が建物評価額よりも高くなっている超過保険

超過保険は保険金額が建物評価額よりも高くなっている状態をいいます。

事例6

保険金額を3,000万円に設定したが建物評価額が2,500万円に下落した場合には「超過保険」となります。建物が火災で全損になった場合、保険金額として2,500万円おりますが超過分の500万円分の保険料を無駄に払っていることになります。

申請をすれば超過分の500万円分の保険料の払戻しを請求することができますが、気づかなければ払い損となります。

注意
特に古い保険の場合、建物評価基準が「時価」になっていることがあります。その場合、超過保険となっている可能性がありますので確認が必要です。

保険金額が建物評価額よりも低くなっている一部保険

一部保険は保険金額が建物評価額よりも低くなっている状態をいいます。

事例7

保険金額を2,500万円に設定したが建物評価額が3,000万円に上昇した場合には、「一部保険」となります。建物が火災で全損になった場合、保険金額として2,500万円おりますが不足分の500万円を自己資金やローンで補い、再建する必要があります。もしくは建物評価額を下げて、建築する必要があります。

注意
これも古い保険の場合、建物評価基準が「時価」になっていることがあります。その場合、一部保険になっている可能性がありますので確認が必要です。

まとめ

以上、火災保険の建物評価額や建物評価基準、建物評価額の計算方法、火災保険を十分に受け取れないケースについて解説しました。火災保険は被害額がすべて保険金にてカバーされた場合に効力を発揮したといえます。その効力を発揮させる意味でも、「全部保険の原則」を守ることが大切になります。

特に古い保険契約の場合には「全部保険の原則」から外れて「超過保険」か「一部保険」になっている可能性があります。改めて保険契約の見直しをされることをお勧めいたします。