リノベーション向きの中古住宅とは?内見時のチェックポイントも解説!

この記事を書いた人
徳田 倫朗
宅地建物取引士

株式会社イーアライアンス代表取締役社長。 宅地建物取引士。 国内では、アパート・マンション、投資用不動産の売買や不動産ファンドの販売・運用を手掛けるほか、海外不動産(アメリカ・フランス)についても販売仲介業務を行うなど、不動産・リノベーションに関して幅広い経験と実績を有する。

この記事のざっくりとしたポイント
  1. リノベーションを前提に購入を考えるならば、築20年前後の物件が狙い目。
  2. 構造・工法、修繕履歴、地域の情報、検査済証の有無の4つは、購入前に必ず確認しておきたいポイント。
  3. 内見時に次のような不具合がみつかったら要注意「壁のひび割れ」「天井のシミ」「開閉しづらい窓やドア」「カビや結露」。

一戸建てを購入しようというときには新築一戸建てに目が向きがちですが、中古の一戸建てを購入してリノベーションすることも視野にいれると、一気に物件の選択肢が広がります。

もっとも物件の状態によっては修繕費用がかさんでしまい、新築物件を購入したほうがよかったということにもなりかねません。

今回はリノベーション向きの中古住宅の特徴や、購入時にぜひ確認しておきたいポイントをご紹介します。

リノベーションに向く中古住宅の築年数とは?

リノベーションをする前提なら築何年位の中古住宅がおすすめですか?

事務員

徳田編集者

おすすめは築20年前後です。その理由は以下の通りです。

リノベーションを前提に中古住宅を購入するときには、購入費用とリノベーション費用との兼ね合いを考えなければなりません。

築年数が新しいものは傷みや劣化が少ないですが、その分購入価格も高くなるためにリノベーションには向いていません。

一方で、安いからといって築年数が古すぎる物件を購入するのは考えものです。特に旧耐震と呼ばれる昭和56年5月以前に建てられた建物は、大きな地震のために配慮された構造になっていないために、耐震性の面で問題があります。耐震補強工事をするにしてもかなりの費用がかかるため、おすすめできません。

中古住宅の査定データによると、中古住宅は、築20年までは価格の下落スピードが速く、築20年以降は新築価格の10%から20%程度に落ち着いてきます。これは、減価償却額を計算するときの木造住宅の法定耐用年数が22年と定められていることが大きく関係しているといわれています。

そのため、リノベーションを前提に購入を考えるならば、築20年前後の物件が狙い目といえそうです。

参考:国土交通省「中古住宅流通、リフォーム市場の現状」p11より

リノベーションを前提として中古住宅を購入する際に必ず確認しておきたいポイント

自分の思い通りの住宅をイメージして、リノベーションの計画を立てるのは夢が膨らみます。しかし、住宅の構造によっては間取り変更ができなかったり、購入後に不具合が見つかって修繕費用に予算を取られてしまったりすることもあります。

どのような点に注意して中古住宅を選んだらよいのでしょうか?

事務員

徳田編集者

構造・工法、修繕履歴、地域の情報、検査済証の有無の4つは、購入前に必ず確認しておきたいポイントです。

構造・工法

中古住宅の構造・工法はリノベーション時の間取りや内装の変更のしやすさに直結するために、最初にチェックしておきたいポイントです。場合によっては、インスペクション(建物状況調査)によって建物の現在の状況を調査しておくことも大切です。

まず、構造については、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート(SR)造がありますが、一戸建ての場合は木造がほとんどでしょう。高級住宅には鉄骨造のものもありますが、鉄骨造の場合、木造の場合よりもリノベーション費用が割高になる可能性があります。

木造一戸建ての工法には大きく分けて木造軸組工法(在来工法)と2×4工法(ツーバイフォー工法)があります。

木造軸組工法とは、柱を立てて柱を結ぶように梁を横方向に通し、筋交いを入れて補強するというように建てられる工法です。建物の構造を柱や梁で支えているために、壁を抜いて開口部を広く取るような間取りが可能になります。またリノベーション時に壁を取り払って大きな部屋にするような間取り変更工事については2×4工法よりも自由度が高いといえます。

2×4工法は、2インチ×4インチの角材と木製パネルで壁と天井をつくっていく工法です。角材とパネルで組み立てられた面で建物の構造を支えています。2×4工法は耐震性に優れている頑丈な構造ですが、壁自体で建物の構造を形成しているために、リノベーション時に壁を撤去できないことが多くなります。間取り変更に制限があり、中にはハウスメーカー独自の工法を用いていることもあります。そのため、リノベーション時も建築時と同じ建築会社に依頼しなければならないことも多いようです。

修繕履歴

住宅購入の際に、修繕履歴がわかれば、構造・設備がどの程度劣化しているかについてあたりをつけられます。

水回りなどの設備についてはおおまかな交換時期が定まっています。購入後にどの程度の予算を見積もっておけばよいかをあらかじめ計算しておくことで、しっかりとした資金計画を立てることができるでしょう。

基礎や構造部分についての修繕履歴は要チェックです。シロアリ等で床下の修繕履歴があれば、他の部分についても調査してみたほうが良いかもしれません。

住宅に大規模な修繕が入っている場合には住宅価格が少し割高になっている可能性があります。リノベーションを前提に考えるならば、そのような修繕が入っている物件は優先順位を下げざるをえません。

MEMO

それでも、立地や建物の状態を考慮して大規模修繕から時間が経っていない物件を購入する場合は、その時に更新した設備をそのまま活かす前提でリノベーションを考える必要があります。

地域の情報

リノベーションを前提に住宅を購入するときには建物に目が行きがちですが、地域の情報もまた大切な情報です。

治安や住み心地のほか、過去の自然災害の情報、避難場所からの距離など、万が一大きな災害に遭った場合にどのようにすればいいのかについてシミュレーションしておきましょう。

現在ではハザードマップや避難場所などの災害情報は国土交通省や自治体のホームページにまとめられていますので、ぜひ参考にしてみてください。

治安の良さは警視庁が提供している犯罪情報マップが役にたちます。

検査済証の有無

検査済証とは、建築確認申請通りに建物が建てられているかを検査し、適法であることを確認したことを証する書類です。現在では、住宅ローンの審査において適法性が重視される傾向にあり、検査済証がないとローン審査が通らないことがあります。

MEMO

単なる紛失ならば、市町村の担当窓口に再発行の手続きをすれば足ります。しかし、数十年前に建てられた一戸建ての場合には、検査済証の発行に必要な手続きをしていないものも多かったために、検査済証がもともとないこともあります。この場合には、適法性を証明する手続きを踏む必要がありますので、建築士や不動産会社等に相談してみましょう。

物件にこれがあると危険!内見時のチェックポイント

内見時にはどのような点に気を付ければよいですか?

事務員

徳田編集者

中古住宅の内見時には、設備の不具合のほか、リノベーションしたときにどのような費用がかかってくるかという視点で建物をチェックしていきましょう。特に、次に挙げるような不具合がみつかったら要注意です。

壁のひび割れ

近年は地震が多いために、壁のひび割れがみつかることは少なくありません。小さなひび割れや壁材の表面の軽微な剥がれであれば問題ありませんが、ひび割れが大きいようならば補修する必要があります。

軽微な壁のひび割れの多くは、壁紙の下地材の継ぎ目が地震などでずれたことによって生じたもので、比較的簡単に補修可能です。

しかし、壁の隅から斜めにひび割れているような場合には、躯体にゆがみが生じている可能性があります。また、地盤沈下や基礎部分のゆがみからひび割れが生じることもあります。

このような症状が疑われる場合には、専門家の目からしっかりとチェックしてもらう必要があります。

天井のシミ

天井のシミが発見された場合には、まずは雨漏りの可能性を疑ってみるべきです。購入時は小さなシミであっても、短期間でみるみる広がっていき、天井が腐食してきますので、甘く見てはいけません。雨漏りがすでに天井部分に染みてきているのですから、構造部分についてもかなり腐食が進んでいる可能性があります。

こうなってしまうと、屋根の修繕のほか、天井を丸ごと取り換えることになり、多額の工事費用がかかります。

雨漏りでなければ、天井裏の結露や排水管の不具合、動物のふん尿などが考えられます。雨漏りでないからといって放っておくのはお勧めできません。細菌やカビ、ダニ、汚れを原因とするアレルギーやシックハウス症候群の原因になります。

開閉しづらい窓やドア

窓やドアが開閉しづらいのも、構造が歪んでいることが原因である場合がありますので注意が必要です。軽微な不具合が原因なのか、構造が影響する重大な不具合なのかについてしっかりと見極めなければなりません。

窓がスムーズに開閉しづらいのは、単に窓のローラー(戸車)が動きづらくなっているだけの場合もあります。この場合にはローラー部分を取り換えたり、潤滑油やろうを塗ったりすれば改善することがほとんどです。

しかし、地震などによって窓枠が歪んでいる場合には、窓枠自体を取り換えるという大がかりな修繕になります。

ドアが閉まりにくい原因についても、すぐに直るものと大がかりな修繕につながるものとがあります。単なるちょうつがいのねじの緩みや劣化、ドアノブ部分の劣化であればそれほど心配はありません。

問題は、構造のゆがみ、地盤沈下、地震などによってドア枠自体が歪んでいるケースです。このような場合には、修繕に多額の費用がかかりますので、購入を見合わせたほうが良いかもしれません。

カビや結露

壁や床のカビや結露、シミも危険信号です。一部分だけ床材が劣化している、盛り上がっているなどの不具合が発見された場合には、表面からは見えない構造部分が劣化していることがあります。

MEMO

カビや結露は、住んでいる人の管理不足という面もあります。しかし一方で、家の立地や構造、間取りによって湿気がたまり、カビや結露が起きやすくなっていることもあるのです。場合によっては、劣化した構造材の修繕をしたり、風通しを良くするための間取り変更をしたりする必要が生じてきます。

リノベーション向き中古住宅を選べばトータルのコストを抑えることが可能に!

リノベーションを前提に中古住宅を購入するときには、住宅の購入資金とリノベーション工事費用を合わせた資金計画を立てる必要があります。

築20年前後の中古住宅を狙うことでトータルコストは抑えられますし、間取りや内装も自分の希望に近いものにすることが可能です。

皆さんも、新築住宅のほかに、リノベーションを前提とした中古住宅の購入についても選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。