リノベーションで後悔しやすいポイントと対策

この記事を書いた人
渡邉 悠子

8年間にわたり不動産会社で開発・運営の仕事に従事し、退職後は不動産Webライターとして執筆活動に専念。 専門用語が多く難しそうな不動産業界をもっと身近に感じてもらうべく活動中。

この記事のざっくりとしたポイント
  1. あまりに個性的なデザインにすると、飽きがきたり、次の入居者探しに苦戦することがある
  2. 施工内容や施工会社によっては新築よりも高くつくことがある
  3. 不動産会社を通じて情報収集し、実物を見ながら計画していくことが成功への近道

リノベーションは、新築よりも安価な上に設計の自由度が高いのが特徴です。魅力が多いリノベーションですが、注意点を見落とすと失敗してしまうリスクもあります。

渡邉編集者

今回はリノベーションで後悔しやすいポイントと対策を解説していきます。

多くの人がリノベーションで後悔する内容には共通点があります。後悔を生まないためには、失敗しやすいポイントを意識しながら進めることが大切です。これからリノベーションを検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。

リノベーションで後悔しやすいポイントとは?

実際にリノベーションをした人たちは、どのようなポイントに後悔しているのでしょうか。後悔する内容は千差万別ですが、大別すると4つに分類できます。

ここからはリノベーションで後悔しやすい4つのポイントを見ていきましょう。

使いにくい

後悔の声の中でも特に多いのが「間取りや動線が使いにくい」という意見です。

  • 洗濯機と干し場が離れていて移動が大変
  • アイランドキッチンと冷蔵庫に微妙な距離があって調理が不便
  • 誰かが入浴中は洗面所が使えない

頻繁に使う家事動線や生活動線に不満があると、毎日ストレスが溜まりますよね。

また「必要なスペースが足りずに使いにくい」という後悔も少なくありません。

  • 収納が少なくて全然部屋が片付かない
  • お気に入りの家具を置くスペースがない
  • 狭い洗面所に室内干しすると非常に窮屈

スペースにゆとりがないと、雑然としたイメージになってしまいます。

さらに「寸法や高さが合わずに使いにくい」という声も聞かれます。

  • 使いたい高さにコンセントがない
  • キッチンの高さが合わない
  • 通路が狭くてすれ違えない

寸法や高さが合わないと何かと不便に感じることが多く、快適に暮らすことはできません。

自分の理想を形にしたはずなのに使いにくいと感じてしまうのは、実物や過去事例を見ずに計画していることが原因です。

デザインに不満

リノベーションは自由にデザインを選ぶことができるため、自分の趣味趣向をふんだんに詰め込もうとする人も少なくありません。しかしあまりに個性的なデザインにすると、後で飽きてしまうことがあります。

また、将来結婚や転勤が原因でその物件に住めなくなった時も、奇抜なデザインでは次の入居者探しに苦戦するでしょう。

壁紙などは飽きたら張り替えることができますが、間取りや設備は簡単に変えることができません。長期的に住み続けることを意識して、飽きの来ないデザインを選ぶことが重要です。

費用をかけすぎた

リノベーションのメリットは費用が安いという点ですが、施工内容や施工会社によっては新築よりも高くつくことがあります。

「あれもこれも」と理想を詰め込みすぎるとあっという間に予算を超過してしまうので、施工内容には優先順位をつけなければなりません。

そもそも物件に水漏れや傾きなど重大な欠陥がある場合は、補修工事だけで莫大な金額になってしまいます。物件購入前にどの程度の補修工事が必要になるか、確認しておきましょう。

注意

どの施工会社に依頼するかも費用に大きな影響を及ぼします。施工会社を決める際は、必ず複数社に相見積もりをとって比較検討することが重要です。施工会社の見積もりを精査しないまま発注して、相場よりも割高になる展開は避けましょう。

希望するリノベーションができなかった

構造や規約の問題で、希望どおりのリノベーションが叶わない場合もあります。構造上の理由で壁の撤去や水回りの移動が難しいと、柔軟な間取り変更ができません。

またマンションの管理規約や使用細則では、リノベーションを行う際のルールが定められていることが多いです。その内容によっては、間取り変更自体ができなかったり希望の材質が使えなかったりする可能性があります。

リノベーションで後悔しないための6つのチェックポイント

リノベーションで後悔しやすいポイントを4つあげましたが、いずれも事前のチェック不足が原因と考えられます。事前に確認・対策をしておけば、余計な後悔をせずに済むはずです。

ここからはリノベーションをする前にチェックすべき6つのポイントをまとめました。1つずつ見ていきましょう。

①構造や規約を事前に確認する

構造や管理規約を事前に確認しておけば、リノベーションでできること・できないことの線引きができます。まずは不動産会社に問い合わせて、建物の構造が何かを確認しましょう。

マンションの構造として採用されることが多い「壁式構造」と「ラーメン構造」では、間取りの自由度に大きな違いがあります。

壁式構造は耐力壁が建物を支える構造です。室内のところどころにある壁のうち、耐力壁は撤去できないので注意しましょう。一方でラーメン構造の場合は柱と梁がメインの構造なので、多くの壁は撤去できます。

いずれの構造であっても、物件の詳細な図面が入手できれば撤去可能な壁がわかります。不安な場合は、住宅診断士にホームインスペクションを依頼する方法も有効です。

次に、マンションの管理規約や使用細則を不動産会社経由で取り寄せましょう。管理規約や使用細則には、リノベーションに関するルールが記載されています。

MEMO

多くのマンションでは、リノベーションを行う際管理組合に事前申請を行わなければなりません。事前申請を出してから承認までの時間も見越して、余裕を持ったスケジュールを組んでおくと安心です。

②必ず実物を見て選ぶようにする

物件選びから工事完了までの間は、何を決めるのにも必ず実物を見てから判断するようにしましょう。物件選びの段階では、紙面の物件情報だけでなく現地に赴き内見することが重要です。

室内環境(採光や風通し)や周辺環境(治安、利便性)などは、直接自分の目で確認しないとわかりません。できれば時間帯を変えて、複数回内見をしておくと良いでしょう。

また、施工会社を選ぶ段階では、その会社が過去に施工した物件を見せてもらうことをおすすめします。その会社の技術力を確認できる上に、完成像を具体的にイメージすることができます。

注意

リノベ―ションを進める段階においても、図面だけで物事を判断するのは禁物です。設置する住宅設備や内装材などは、ショールームやサンプルなどを見て決めましょう。特に水回りの住宅設備は、こだわりすぎると費用が嵩みやすい部分です。ショールームで複数の商品と比較検討すれば、費用の節約につながります。

③家具の配置や家事動線をイメージする

現在の暮らしを思い浮かべながら、家具の配置や家事動線をシミュレーションしておきましょう。家具を無視してリノベーションを進めてしまうと、家具を配置した空間が窮屈に感じることもあります。最悪の場合、家具が入りきらず泣く泣く廃棄せざるを得ないケースも。

家具の配置はどのように決めればよいですか?

事務員

渡邉編集者

今使っている家具の寸法を測った後に図面に落とし込むことで、空間をイメージしやすくなります。
MEMO

家事動線については、洗濯・ゴミ出し・調理配膳など家事の動作を細かく思い出すことが大切。子育て中のご家庭では、家事をしながら子どもを見守れるような動線計画も欠かせません。現状の暮らしで不便に感じているポイントを改善すれば、家事をもっと効率化できるでしょう。

④余裕のある返済計画を立てる

リノベーションには多額の資金が必要になるため、多くの人が自己資金とローンを組み合わせて資金を調達します。

費用面で失敗しないためには、ローンの返済計画を考慮した上で予算を決めるのがポイントです。
リフォームローンや住宅ローンなど、ローンの種類によって返済条件が大きく異なるので注意しなければなりません。

リフォームローンとは?

事務員

渡邉編集者

住宅の増改築や修繕など、リフォーム工事に特化したローンのことです。
住宅ローンとはどのような点が違うのですか?

事務員

渡邉編集者

一般的にリフォームローンの方が、金利が高く返済期間が短い傾向があります。

返済条件は金融機関ごとに異なるので、複数社を比較した方が良いです。余裕をもった返済計画をベースに、無理のない予算を立てましょう。

⑤追加のリフォームがしやすいように工夫する

リノベーション直後は新しくて綺麗な空間も、時間が経てば劣化していきます。住宅設備の故障や内装の汚損などが発生した場合に備えて、いつでも交換できるような仕様を選択しておくと安心です。

さらにライフステージの変化に伴うリフォームも想定しておきたいものです。将来家族が増えることを想定して、部屋数を増やせるような間取りにしておくという手もあります。

またバリアフリーを意識した設計にしておくと、介護が必要になった時に余計な手間がかかりません。このように将来起こり得ることを事前に想定しておけば、長く住み続けることができるでしょう。

⑥防音対策を入念に行う

マンションは子どもの足音や話し声などの音漏れが、近隣クレームの原因になりやすい環境です。

さらに幹線道路や線路沿いの立地では、外からの騒音が気になる場合があります。これらの問題を防ぐためにも、リノベーションで防音対策を入念に行わなければなりません。

防音対策はどのような方法がありますか?

事務員

渡邉編集者

具体的には次のような対策があります。
防音対策の例
  • 遮音性能が高い壁を使用する
  • 床材にフローリングやカーペットを使用する
  • 床板に厚みを持たせる
  • 窓を二重サッシにする

管理規約や使用細則で材質の遮音等級を規定しているマンションも多いので、事前に確認しましょう。

後悔のないリノベーションを行うために

今回はリノベーションで後悔しやすいポイントと対策をご説明しました。

自由に設計できるからといって、漠然とリノベーションを進めるのはリスクを伴います。使い心地やデザイン、費用など様々な側面で理想と現実のギャップが生まれ、後悔してしまうでしょう。後悔しやすいポイントのほとんどは、事前に対策しておけば解決するものばかりです。

まずは不動産会社を通じて情報収集し、その物件でできること・できないことを整理することが大切です。物件情報や図面だけで議論せず実物を見ながら計画していくことが、成功への近道になります。ひとつひとつ地道な作業ですが、手間を惜しまずチェックしましょう。