不動産の物件調査とは?役所調査などのやり方とは

不動産の物件調査まとめ
  1. 不動産の種類によって調査内容は変わる
  2. 初めての不動産売買の場合3つのポイントを押さえておくことが重要
  3. 調査結果に納得行くまでは焦って契約を結ばない

不動産の購入前に行われる「不動産物件調査」についてご存知ですか? 不動産購入は高額な買い物なのでうまくできるか不安……という方は少なくないかと思いますが、不動産会社が行った不動産物件調査の結果をよく確認すればその不安は解消できます。 さらに、より良い物件とも出会いやすくなります。

そこで今回は不動産会社が必ずと行っていいほど実施している不動産物件調査の内容や、購入者が確認すべきことをまとめたチェックシートを紹介していきます。 この記事に沿って確認を行えば、ハズレの不動産を惹かされる可能性を大幅に減らすことができますので、よく読み込んでいってください。

不動産購入で行われる物件調査とは

物件調査とは不動産会社が売買する物件の詳細・特徴を色々と調べる作業のことです。 物件を適正な価格でトラブルなく売買するためには欠かせない工程です。

不動産取引は通常、不動産に関する知識のない個人や法人同士で行われます。 知識のない者同士で直接取引をすると適切な値段がつかなかったり、後々のトラブルに発展したりしかねません。

そういった問題を防ぐのが不動産会社(仲介業者)の役割であり、不動産会社は適切な価値の把握やトラブル防止のために詳細な物件調査を行います。

不動産の種類によって調査内容は変わる

物件調査の内容は物件の種類にも大きく左右されます。 例えば一戸建て住宅の場合は境界線の確認がとても重視されますが、マンションやアパートなどの集合住宅などの場合はあまり重視されません。

一方でマンションは管理の実態が把握しづらいため規約や管理会社などの確認が入念に行われます。 また、土地が海や川に近い場合は洪水や液状化などのハザードマップの調査が重視されます。

MEMO
不動産の種類やそれが位置する地域によって調査の内容は大きく変わると言えるでしょう。

不動産物件調査の流れ

不動産物件調査は一般的に以下のような流れで行われます。

STEP.1
売主からの聞き取り調査
STEP.2
現地調査
STEP.3
登記事項調査
STEP.4
役所調査
STEP.5
インフラ施設の調査

売主からの聞き取り調査

不動産物件調査で最初に行われるのが売り主からの聞き取りです。具体的には以下のことが行われます。

売り主からの聞き取り内容
  • 住宅ローンの借入先と借入残高
  • 税金やマンションの管理費などの滞納の有無
  • 法定相続人の存在
  • 収益金の確認
  • 第三者による貸借や不法占有などの有無
  • 付帯設備及び物件助教確認書の確認

住宅ローンが残っている物件を売買する場合、通常は抵当権が設定されており売り主はこれを解除する必要があります。

現地調査と内容

現地調査とは不動産会社の担当者が実際に不動産がある場所まで赴いて物件を調べることです。 具体的には 以下を確認します。

現地調査の内容
  1. 地勢
  2. 隣接地利用譲許
  3. 交通機関の存在
  4. 公園や利便施設の存在
  5. 道路調査

交通機関や公園などの存在自体は最近はインターネットで調べられることも多いですが、インターネットに載っている情報が必ずしも正しいとは限らないため実際に目視での確認が行われます。

また道路調査では隣接する道路の舗装状況や敷地との高低差、幅員(道路幅)などが確認されます。幅員が狭い場合、一般的に物件の価値は下がります。

登記事項調査と内容

登記事項調査とは法務局(法務省の地方支分部局)で行われる調査です。 法務局には 以下のような不動産に関する資料がまとめられています。

法務局の不動産に関する資料
  1. 登記簿謄本(不動産の記録をまとめた資料)
  2. 地積測量図(土地の測量図)
  3. 公図(土地の図面)

登記簿謄本は現在の所有者の名義、共有名義の場合は持ち分の配分はどうなっているか、抵当権は設定されているかなどが記載されています。

この資料に記載されている情報こそが不動産の公式情報であり、ここに不動産の所有者として明記されている者だけが、その不動産を売買できます。

役所調査と内容

役所調査とは文字通り役所内で行われる調査のことです。 役所では 以下のことが確認できます。

役所調査の内容
  • 建築基準法や都市計画法の制限有無
  • その他法令による制限の有無

これらの資料を確認することによって、その不動産が将来リフォームできるのか、電気やガスなどの設備はどの様になっているかなどを確認できます。 売主側の仲介業者はこれらのデータをもとに適切な販売戦略を立てます。

インフラ施設の調査と内容

インフラとは私達の生活基盤を支える設備、具体的には以下になります。

インフラ施設の調査内容
  • 上下水道
  • ガス
  • 電気

これらの供給状況、設備の有無、設備を設置・更新するのにかかる費用などを確認するのがインフラ調査です。 これらの設備が整備されていない物件が成約する可能性は低いため、ない場合は売主側で費用を負担することになるでしょう。

【チェックシート付き】不動産物件調査シートのテンプレート

不動産物件調査でやるべきことは多岐にわたっており、これらをすべてもれなく暗記するというのは至難の業です。 そこでおすすめしたいのがチェックシートの活用です。これから不動産を購入しようと考えている方は、以下のチェックシートを使ってください。

不動産物件調査のチェックシート

調査結果を一番右の列に書き込んでいきましょう。 すべて埋めることができれば、優秀な資料になります。

不動産物件調査時の注意点

不動産物件調査の内容は上記の通り非常に多岐にわたっており複雑に見えますが、全てを完璧にこなそうとする必要は全くありません(というよりも、それは不可能に近いです)。 初めての不動産売買の場合は特に以下の3点を押さえておくことが重要です。

不動産物件調査時の注意点
  • 売主の本人確認はしっかり行う
  • 権利関係をしっかり把握しておく
  • 法令による制限を理解しておく

売主の本人確認はしっかり行う

「売主がなりすましなんてことあるの?」と思われるかもしれませんが、過去にはそのような事件が複数起きています。 不動産の所有者になりすまして飼い主に対して売却を持ちかけ、多額の代金を騙し取る詐欺行為を行う人を「地面師」といいます。

2017年には大手住宅メーカーの積水ハウスも地面師の偽造書類に騙され、約55億円を騙し取られています。大手ハウスメーカーの担当者ですら騙されることがあるのです。

実際に地面師の被害に合うケースは稀ですが売り主の意思確認ができなかったり、売り主が実は所有権を持っていなかったりということは十分ありえます。

例えば、売り主が認知症で所有権の移転確認ができない、というケースは十分考えられます(日本の認知症患者数は2015年1月現在で約462万人!)。 また不動産を相続してから売りに出すつもりだった売り主が相続できなくなるということもありえます。

このような事態を防ぐためにも本人確認は大切です。 本人確認は契約時に本人確認書類の提出がありますのでそちらで行いますが、本人確認書類がそもそも偽造ということもありえます。 不安な場合は買主自ら売り主の家に赴くか、自宅に確認用の書類を送付するなどしたほうがいいでしょう。

権利関係をしっかり把握しておく

不動産の所有権の移転を妨げる要因は複数存在しています。 具体的には 以下になります。

把握しておくべき不動産の権利関係
  1. 差し押さえ
  2. 破産
  3. 買戻特約(不動産の売買契約から一定期間立ったあと、売り主がお金を返して不動産を取り戻すことができる特約)
  4. 仮登記
  5. 抵当権・根抵当権
  6. 地上権
  7. 賃借権

中でも注意したいのが賃借権です。 賃借権とは賃貸借契約に基づいて発生する貸借人(借り手)の権利のことです。 賃借権はあっても登記されないことが多く、法務局には登録されていなくても有効な権利が存在していることがままあります。

こうした「登録されていない権利」が発生していないかを事前に確認することは非常に大切です。 もしそのような権利がある場合は明確に解除し、所有権移転が確実に行われるようにしましょう。

法令による制限を理解しておく

不動産の利用には様々な法令による制限が付きます。 例えば第一種低層住居専用地域では、住環境を良くするために建築物の高さを10m、もしくは12m以内に収めるように制限されています。 これを「絶対高さの制限」といいます。

また、この用途地域では建ぺい率は30~60%、容積率は50~200%以内に収めるように制限されています。 他にも様々な制限が付きます。 不動産を購入する前には、この法令による制限が不動産を購入する目的を妨げないかよく確認しなければなりません。

MEMO
不動産会社には将来の法令・規則改正の可能性も想定した調査、及び説明を求めましょう。

まとめ

不動産を購入しようと考えている場合は不動産会社が行う不動産物件調査の結果をよく見ることが大切です。 不動産の種類によって調査内容は変わりますが一方で変わらない点も少なくありません。

特に売り主の本人確認や権利関係の把握、法令による制限の理解は種類問わずとても大切です。 一通り不動産会社による調査が終わったら、それをチェックシートにまとめてよく確認しましょう。 その結果に納得行くまでは焦って契約を結ばないようにしましょう。