- 家族会議で必要な項目を出し合い優先順位を付けることが先決
- 数十年先の生活スタイルを想定し優先項目が将来の生活スタイルに対応できるか否かの見極めが大切
- 誰を中心とした生活スタイルにするのかが鍵となる
住宅の新築を検討されている場合、平家か二階建てで迷っておられる方はいませんか?選択する判断材料に乏しいと考えておられる方はいませんか?実は将来において重視する生活スタイルが決め手となります。
多くの住宅に関する悩みや相談ごとを解決してきた不動産コンサルタントが平家と二階建ての相違点やメリット・デメリット、固定資産税を抑えるコツ、迷った場合の選択するコツ、向いている人の特徴などを解説します。この記事により迷うことなく平家か二階建ての選択をすることができ、将来の住生活に対して安心に暮らすことができます。
平家とは?
平家は1階建ての戸建住宅です。二階建て・三階建ての戸建住宅が多くなりますが、あえて平屋建てを選択する方もおられます。シンプルライフを標榜される方や物を持たない方針の方が増えており、むしろ平屋建ては増える傾向にあります。
二階建てと平家建ての違い
二階建てと平屋建てを比較しての一般的な違いを下表にまとめます。
上表により二階建てと平屋建てと比較した場合、それぞれ一長一短があります。自分自身の生活スタイルや経済性、外力に対する安全性(災害など)を考慮して検討することが必要です。
平屋のメリット
平屋のメリットは何ですか?
バリアフリー化のし易さや部屋内の移動が楽、コミュニケーションの取り易さ、構造的に安定、メンテナンスのし易さとなります。
バリアフリー化に対応しやすい
階段が無くワンフロアのみの生活動線となりますので、大きな段差が無くなりバリアフリー化し易いメリットを有します。若い時期は段差に対して気にも留めませんが、徐々に年齢を重ねると小さな段差に対しても気になるようになります。
特に子供が入学や就職を機に巣立っていきますと、夫婦二人だけの生活が始まります。還暦を過ぎた頃からバリアフリー化することを考え始めます。家を建てる際、老後の生活まで長期で考えますと平家はバリアフリー化するには経済的にも有利になります。
部屋内の移動が楽
階段での上り下りが無く身体への負担も小さくなります。特に腰痛や膝関節の悪い人にとっては階段での1歩1歩が負担となり、手すりなどの設置が必須となります。しかし平家ですと、そこまでの設備的な負担は不要となります。住戸内の移動が気楽にでき落下などによる怪我も無くなりますので、生活し易くなります。
特に高齢者の場合、二階建てですと上り下りすることが億劫になり、二階にある物が放置され続ける状態になることが多くなります。平屋建てですと放置され続けることが少なくなり、所有物を活かすことができます。
コミュニケーションが取りやすい
ワンフロアに家族が生活をしますとお互いの距離が近くなり、自然とコミュニケーションが生まれます。子供が思春期を迎えて多感な状態になり二階の自身の部屋に閉じこもり、家族とのコミュニケーションが全く無くなるということもあり得ます。酷い場合には、そのままうつ状態になり、学校にも行かなくなるということにもなり兼ねません。
構造的に安定している
平屋建てですと平家の柱が支えるのは屋根部分の重みだけとなります。二階建てですと一階の柱が支えるのは二階部分と屋根部分を合わせた重さになります。特に地震発生時には上階が重いほど耐震性は下がりますので、平屋建てが有利となります。
また住宅の設計時において二階の柱の位置は原則一階の柱の位置に重ねることが基本です。しかし、その基本を抑えずに間取りだけを考えて設計する住宅設計者が多々見受けられます。そうなりますと現場任せになり梁の組み方が複雑になり耐震性の低い二階建て住宅となります。
メンテナンスしやすい
家のメンテナンスのし易さは平屋の方が圧倒的に良くなります。階段を掃除する場合、上り下りしながらとなりますので億劫になりがちです。平屋ですとフラットとなりますので、それほど苦痛ではなくなります。
照明などの電球・電灯などの交換の場合でも、階段の上り下りが負担に感じてしまい放置したままになりがちです。平屋ですと身体の負担が軽減される分、楽にメンテアンスをすることができます。
平屋のデメリット
平屋のデメリットは何ですか?
広い土地を必要とすることや建築コストが高くなること、日当たりの確保が難しいこと、プライベートと防犯の不安が大きいこと、税金が高くなることなどが挙げられます。
土地が広い必要がある
一階部分に全ての間取りを納める必要あるため必然的に建築面積(=延床面積)は大きくなり、それに伴い広い土地が必要になります。地方都市の郊外であれば広い土地でも価格は安いかもしれませんが、都心部となると土地価格は高騰します。
二階建てに比べて建築コストが高い
平屋建ては延床面積が同じ場合、二階建てと比較して建築コストが高くなります。高くなる主な理由は基礎面積と屋根面積が増えるためです。総二階建て住宅(*1)の二階部分を単純に一階部分の横に繋げて平屋とした場合、延床面積は同じですが建築面積は2倍になります。
そうじますと基礎面積と屋根面積も2倍になりますので、建築費は概ね3割前後高くなります。基礎工事と屋根工事は工事単価が高くなる工事であり建築費の中に占める割合が高くなる工事です。
*1 総二階建て住宅:1階部分の床面積と2階部分の床面積が同じであり、外壁も1階部分と2階部分が同じになる住宅
日当たりの確保が難しい
平屋は建物の形状によっては日当たりの確保が難しくなります。例えば東西に細長い平屋であれば南面する面積が大きくなりますので、日当たりを確保できます。一方、南北に細長い平屋であれば南面する面積が小さくなりますので、日当たりの確保が難しくなります。
南北に細長い平屋の場合、対策として採られる方法の一つに天窓を数か所設けることがあります。また平家の中間部に中庭を設けることもあります。さらに屋根形状として「片流れ屋根」を採用し外壁から採光を確保することもあります。
プライベートと防犯の不安が大きい
平屋は「2-3.コミュニケーションが取りやすい」と表裏の関係になりますが、プライベートの確保が難しくなります。また一階部分の外壁が長くなる分、開口部の数も多くなり二階建てと比較しますと侵入され易く防犯面の不安が大きくなります。
平屋は同じフロアに家族全員が生活するため、家族個々のプライベート空間の確保に若干の難点があります。また平屋の周辺に二階建て住宅が密集している場合、周囲から覗かれるという外からのプライバシーの確保に難点があります。
二階建てに比べて税金が高い
平屋は二階建てと比較して土地や建物価格が高くなります。土地や建物価格が高くなる分、不動産取得税や固定資産税・都市計画税も高くなります。不動産取得税は購入時だけに課税されますが固定資産税・都市計画税は毎年課税されますので、負担は大きくなります。
平屋の固定資産税をなるべく抑えるには?
固定資産税を抑えるには、どうすれば良いですか?
木造や安い土地を選択しシンプルな構造にしますと固定資産税を抑えることができます。
固定資産税は土地や家屋に対して毎年課税される市区町村税です。納税額は土地や家屋の固定資産税評価額に対して最高限度1.4%を乗じて算出されます。
可能であれば木造にする
家屋の固定資産税は木造<重量鉄骨造<鉄筋コンクリート造の順に高くなります。可能であれば建築構造を木造として平家を建築しますと、毎年課税される固定資産税が他の構造と比較して安くなり負担減少に繋がります。
また1階の上部空間は屋根だけになりますので2階建てと比較しますと、1階の柱が負担する重量は格段に減りますので、木造でも十分な強度や耐震性を持つことができます。
なるべく土地の安い場所に平家を建てる
安い土地価格の方が土地の固定資産税は安くなります。土地の固定資産税評価額は土地の地目や土地面積、固定資産税路線価、評点を基にして決められます。大都市よりも地方都市、都心部よりも郊外の土地の方が安くなり、固定資産税も安くなります。
シンプルな構造にする
建物はシンプルな構造で安価な建材や製品を使用することにより、固定資産税を抑えることができます。建物の固定資産税評価額は評点が基準になります。屋根や基礎、外壁など11種類に分類され、それぞれの分類に対して、どの様な建材や製品などが使用されているのかを点検し評点が決まります。
ここで建築構造が一つの大きな要因になります。また豪華な製品や特注品を使用しますと評点は上がります。各評点に数量を乗じて合計された数値が建物の固定資産税評価額となります。
平家か二階建てで迷った時に選ぶコツ
平家か二階建てかで迷った場合の選ぶコツは何ですか?
予算や家族構成、土地の広さ、生活動線などとなります。
予算で決める
予算で検討する場合のポイントは下表の通りです。(前提条件として家屋の延床面積は同じとします。)
予算で決める場合、余裕があれば二階建てと平屋の両方ともに選択することができます。しかし余裕が無ければ二階建ての一択にならざるを得ない可能性が大きくなります。
家族構成で決める
家族構成で検討する場合のポイントは下表の通りです。
土地の広さで決める
土地の広さで検討する場合のポイントは下表の通りです。(前提として家屋の床面積は同じとします。)
具体的に数字で比較してみることにします。
【事 例】
延床面積:40坪を有する家屋を希望する家族がいます。平屋にするか二階建てにするかを検討していますが土地面積としていくら必要なのかを算出する必要があります。先ず、その立地の建蔽率(けんぺいりつ)を知る必要があります。建蔽率は、
建蔽率 = 建築面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)
の計算式で求めることができます。
ここで建築面積は家屋を上空から見た場合の平面的な投影面積となります。また延床面積は各階の床面積の合計となります。
建蔽率は用途地域により規定されていますが、代表的な建蔽率である40%、50%、60%を検討してみることにします。例えば延床面積:40坪の平屋の場合、必要な敷地面積の計算式は、
必要な敷地面積 = 建築面積 ÷ 建蔽率 × 100
= 40坪 ÷ 40% × 100 = 100坪
となります。
平屋の場合と二階建ての場合の延床面積:40坪に必要な敷地面積を下表にまとめます。(ただし、二階建ての場合の建築面積は、総二階建てを想定して20坪とします。)
総二階建てと平屋の必要な土地面積の違いは単純に2倍であることがわかります。したがって土地費用に2倍の資金投入してまで平屋にするか否かは、予算の他にも生活面などの要因により決められることとなります。
生活動線で決める
生活動線で検討する場合のポイントは下表の通りです。
平家or二階建てに向いている人の特徴
下記に平家と二階建てに向いている人の特徴を挙げました。該当する項目の多い方が向いている家となります。判断材料の一つにしてください。
平家に向いている人の特徴
平家に向いている人の特徴を挙げますと下記の通りです。
- 家族の中に年配者や小さな子供がおり、安全面を重視する人
- 家族間のコミュニケーションを活発に取りたいと考える人
- 家事動線を楽にしたい人
- 耐震性や耐風性が気になる人
- 老後の生活のし易さを重視する人
これら全てに該当する人は平家が向いていると考えられます。
二階建てに向いている人の特徴
二階建てに向いている人の特徴を挙げますと下記の通りです。
- 家族間のプライバシーを重視したい人
- 立地周辺の家屋が二階建てや三階建ての場合が多く、覗かれる心配をしたくない人
- 防犯面が気になる人
- 水害が発生した場合、階上への避難が条件の人
- 土地や家屋の費用を抑えたい人
これら全てに該当する人は二階建てが向いていると考えられます。
まとめ
以上、平家と二階建ての相違点やメリット・デメリット、固定資産税を抑えるコツ、迷った場合の選択するコツ、向いている人の特徴などを解説しました。先ずは家族会議で必要な項目を出し合い優先順位を付けることが先決となります。
その上で数十年先の生活スタイルを想定し優先項目が将来の生活スタイルに対応できるか否かの見極めが大切になります。結局、誰を中心とした生活スタイルにするのかが鍵となります。上記内容を参考にしながら、平家か二階建てかを選択されることをお勧めいたします。