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空き家問題とは?原因や放置のリスク・デメリット、解決策についてわかりやすく解説

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 空き家問題は緊急の課題であり、放置し続けると様々な悪影響が生じる
  2. 中古住宅の売買促進に繋がる施策や空き家の有効活用などが必要
  3. 空き家バンクや民泊の活用など最新情報を入手・駆使しながら、スムースに解決することがおすすめ

空き家問題がメディアでも採り上げられるようになり、社会問題化されています。しかし空き家問題は他人ごとではなく、特に相続などで受け継いだ実家などが対象になり易い問題です。その時、あなたならどうしますか?解決の糸口は放置しないことです。

多くの住宅に関する悩みの相談に応じてきた不動産コンサルタントが、空き家問題の現状や原因、リスク・デメリット、対策について解説します。空き家問題をスムースに解決できる方法や解決策などを知ることができます。将来において空き家になる可能性を秘めている家屋を所有する方には、この記事を参考にされることをお勧めいたします。

空き家問題とは

 

空き家問題はどの様な傾向にあるのですか?

 
 

全国の空き家数は年々増加し、空き家数・空き家率ともに過去最高を更新し続ける状態にあります。

 

そもそも空き家問題はその割合が限界基準を超えると、自治体の存在基盤が危うくなる危険性を秘めている点が問題となります。その限界基準は30%といわれています。ちなみに北海道夕張市が経済破綻した時点での空き家率は33%でした。

MEMO
地方の自治体の中には空き家率が30%に近付きつつある自治体が他にもあります。その解決への取組みは緊急を要する事案となります。

空き家の種類と割合

総務省統計局が公表(平成31年4月26日)した資料に基づき、空き家の種類、特徴、戸数、割合をまとめますと下表の通りです。

空き家の
種類
特徴
(平成25年と比較した増加割合)
戸数 割合
賃貸用
住宅
2万戸(0.4%)の増加 431万戸 50.9%
売却用
住宅
1万戸(4.5%)の減少 29万戸 3.5%
二次的
住宅
3万戸(7.3%)の減少 38万戸 4.5%
その他の
住宅
29万戸(9.1%)の増加 347万戸 41.1%
合計 26万戸(3.2%)の増加 846万戸 100%

*1 賃貸用住宅 :新築や中古の賃貸住宅(アパート・マンション・戸建てなど)で空き家になっている住宅。

*2 売却用住宅 :新築や中古の売却のために空き家になっている住宅(マンション、戸建てなど)。

*3 二次的住宅 :別荘や残業などで遅くなった場合にたまに寝泊まりする住宅。

*4 その他の住宅「賃貸用住宅」、「売却用住宅」、「二次的住宅」以外の住宅。転勤・入院などのため居住世帯が長期に亘り不在の住宅、建替えなどのために解体することになった住宅、空き家の区分の判断が困難な住宅など。

出典:「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」(平成31年4月26日) 総務省統計局

空き家数は846万戸(13.6%)と過去最高に

空き家数は846万戸(13.6%)と平成25年と比較して26万戸(3.2%)増加し、過去最高を更新し続けています。ちなみに平成30年10月1日現在における日本の総住宅数は6,242万戸あり、平成25年と比較して179万戸の増加となっています。

空き家数の推移を見ますと、これまで一貫して増加が続いており、昭和63年から平成30年までの30年間で452万戸(114.7%)の増加となっており、倍増していることがわかります。ただし平成27年に「空き家対策特別措置法」が制定されたこともあり、空き家率の伸びは鈍化する傾向にあります。

空き家率を地域別にランキングで解説

空き家率を都道府県別に見てみますと、最も高いのは山梨県(21.3%)で、2番目が和歌山県(20.3%)、3番目が長野県(19.5%)、4番目が徳島県(19.4%)となります。一方、空き家率が最も低いのは埼玉県と沖縄県(10.2%)で、3番目が東京都(10.6%)、4番目が神奈川県(10.7%)となります。

空き家率の高い都道府県と低い都道府県をまとめますと下表の通りです。

空き家率の高い都道府県ランキング

空き家率の高い上位10県の中で、空き家率の増加傾向が続いているのは8県となりました。

空き家率の低い都道府県ランキング

空き家率の低い上位10都府県の中で空き家率の減少傾向が続いているのは7都府県となりました。このことより空き家率は地域格差が年々広がる傾向にあることがわかります。

出典:「平成30年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計 結果の概要」(平成31年4月26日) 総務省統計局

空き家問題が起きる原因

 

空き家問題が起きる原因は何ですか?

 
 

少子高齢化による転居、相続や税制的な問題、所有者が放置、中古住宅の需要の低さなどあります。何らかの理由により放置していることが原因です。

 

少子高齢化による転居

家を所有している高齢者が身体が不自由になることにより、老人ホームや介護施設などへの入所や、子供の家に転居する場合が増加します。空き家が増える原因の一つになります。これから団塊の世代が後期高齢者になるため、その傾向はいっそう拍車がかかります

相続や税制的な問題

親が亡くなり相続が発生しますと、法定相続人による遺産分割協議が必要となります。ここで意見が対立してまとまらず、苦肉の策として共有名義にする場合があります。共有名義にしますと売却するにしても解体するにしても、共有名義人全ての同意が得られないと何もできず、結果として空き家の状態で放置されることになります。

また固定資産税・都市計画税の問題があります。土地に家屋などの建物が建っていますと土地の固定資産税は、200㎡までは6分の1に軽減されます。それに家屋の固定資産税が加わりますが、経年劣化とともに家屋の評価額が下がり続け固定資産税も下がります。

家屋を解体し土地を更地状態にしますと、土地の固定資産税は6倍になりますが家屋の固定資産税はかかりません。家屋が建っている状態と更地の状態を比較しますと一般的に更地の状態の方が固定資産税は高くなります。したがって納税額が増加するのを避けるために家屋を放置し続けることになり、空き家の原因の一つとなります。

小規模住宅用地の特例

所有者が空き家を放置

所有者が空き家を流通させるなり建て直しするなり解体して更地にするなど、何も手を打たずに放置している場合もあります。上記にもあるように高齢者の転居や相続のもつれ、固定資産税の問題など、手続きの煩わしさから空き家のまま放置している場合もあります。中には所有者の物置代わりや商売上での倉庫代わりとして、人が住むことなく利用されている場合もあります。

新築住宅の需要と中古住宅の需要の差

日本では新築住宅に対する人気が高く需要も高いのに比較して、中古住宅に対する人気は低く需要も低いことが原因の一つとなっています。人口減少が顕著となる中、中古住宅は増加し続け売却しても売れ残りが多数出るのは当然の結果といえ、空き家が増加する大きな原因となります。

都市部の場合、借地問題や地価の下落、登記の問題なども

都市部では特に1990年前後のバブル経済までは地価が高騰し続けて土地の購入がままならず、借地による住宅建設が進みました。しかし借地は建替えやリノベーションなどを行う前に土地所有者の承諾を得なければならず、その調整がスムースになされずに放置される住宅が多くなりました。改善されない住宅に居住する人は徐々に減少し、空き家が目立つようになりました。

また都市部においてもバブル経済崩壊から約30年経過しているとはいえ、地価が下落し続けている地域はいまだにあります。評価の低い土地が活用されることはなく、その上に建つ家屋が取引されないまま放置され続けることになります。

さらに家屋の所有者が亡くなった場合、相続による所有者移転登記がなされます。しかし遺産分割協議の不調や相続人が皆無などの場合、登記がなされないまま放置されることも原因です。所有者が不明の土地建物となり、誰も手をつけられずに空き家となります。

空き家のリスクやデメリット

 

空き家のリスクやデメリットは何ですか?

 
 

見た目・景観が悪くなることや犯罪リスクが増加すること、機会損失が生じることなどがあります。

 

見た目・景観が悪くなる

空き家を放置し続けますと家屋自体は経年劣化が進行し、外観は損傷や汚れなどが目立つようになります。家屋内部におきましても長期間、換気をしないで放置し続けますと、カビやダニ・ノミなどの害虫が発生し損傷や汚れなどが目立つようになります。

また家屋まわりの庭におきましても雑草が生い茂り、ツタなどの直物が家屋を覆いつくす状態になります。さらに放置し続けますと家屋の強度が劣化し、倒壊の危険性にまで及ぶことになります。

一方、空き家に近隣の野良犬や野良猫の溜り場になる可能性もあり、見た目や景観が悪くなるばかりでなく鳴き声による騒音問題や糞による悪臭問題に発展する可能性もあります。

犯罪リスク(不法侵入や不法占拠など)の増加

空き家であることが知られると管理されていない状態であれば、犯罪者やホームレスなどの不法侵入や不法占拠といった事態を生じる可能性が高まります。ホームレスが長居することによりゴミが家屋内に散乱する事態となることもあります。また外部から粗大ゴミを持ち込まれる可能性もあります。さらに最悪の場合、放火による火災に至る場合も実際に起きています。

機会損失を起こしている可能性がある

空き家のままで放置されますと、その土地や家屋が有効活用されないため機会損失を起こすことになります。本来であれば人が居住することにより立地する市区町村に住民税などが納税されますが、空き家であると納税されません。また空き家がある場合、近隣の土地に対して住宅の建築を検討している人が警戒感を抱き、その土地での建築を断念して周辺の発展の阻害要因になることもあります。

*5 機会損失:実際の取引により生じた損失ではなく、最善の方法を選択しないことにより、利益を得る機会を失うことで生じる損失のこと。

空き家問題を解決するための対策

 

空き家問題を解決するための対策はありますか?

 
 

空き家対策特別措置法や空き家バンク、空き家管理サービス、民泊の活用などが考えられます。

 

空き家対策特別措置法を活用する

「空き家対策の推進に関する特別措置法」が平成26年に成立し、平成27年に施行しました。通称「空き家法」ともいわれています。この法律策定により以下のことができるようになりました。

「空き家対策の推進に関する特別措置法」で出来ること
  1. 空き家への立ち入りによる実態調査、空き家の所有者に対する管理・指導
  2. 空き家の跡地の活用促進
  3. 適切な管理がなされていない空き家を「特定空き家」に指定
  4. 「特定空き家」に対して、助言・指導・勧告・命令が可能
  5. 命令に従わない場合、固定資産税の特例の解除や罰金、撤去などの行政代執行が可能
  6. 行政代執行により家屋が撤去された場合、撤去費用は所有者が負担

近隣住民へ悪影響を及ぼしている空き家に対して、この法律を適用することにより、長年放置され続けてきた空き家問題に対して一定のメスを入れることが可能となりました。

*6 特定空き家倒壊の危険性が高く、近隣への環境悪化に繋がる可能性が高い空き家

空き家バンクを活用する

空き家バンクは空き家問題の解決策として注目されています。空き家バンクは自治体や自治体から業務委託を受けた企業により運営されており、空き家の所有者と空き家の購入希望者をマッチングさせるものです。これまでは各自治体が空き家バンクを個別に運営してきましたが、国土交通省が一元化して取組むことになりました。それが「全国版空き家・空き地バンク」(以下、全国版バンク)です。

全国版バンクは全国に点在する空き家などの情報を簡単に検索することができます。平成30年4月より公募によって選定された2社(株)LIFULL、アットホーム(株))により運営されています。平成31年2月時点で全国の603の自治体が全国版バンクに参加し、9,000件を超える空き家などの情報が掲載されています。また成約に至った空き家数は1,900件を超えています

また空き家の流通・活用に関する各自治体の支援制度(住宅購入に対する支援金、子育て応援手当、住まい探しの経費補助)などの情報の充実化を図っています。さらに「地方に移住したい!田舎暮らしがしたい」などの要望が多様化する中で、全国版バンクを通してのマッチングの促進を図っています。

出典:「全国版空き家・空き地バンク」の更なる情報の充実化!」(平成31年3月29日) 国土交通省

空き家管理サービスの活用

所有する空き家が遠方にあり仕事が忙しくてなかなか様子を見に行くことができない場合には「空き家管理サービス」を活用する方法もあります。NPO法人空家・空地管理センターでは空き家の管理が高額になり業者に委託できない場合に「100円管理」というメニューがあります。

月額100円で月1回のペースで「目視で建物点検」や「クレーム一時対応」、「報告書のメール送付」を行います。また「管理看板の設置」も行います。

一方、将来に自身が居住する可能性がある場合や賃貸戸建てとして検討している場合、高く売却したいと考えている人には「しっかり管理」というメニューがあります。上記4点のサービスに加え「近隣挨拶」や「敷地内ごみ処理」など計11のサービスを受けることができます。

料金は提供するサービスを月1回行う場合は月額4,000円、月2回行う場合は月額7,500円などリーズナブルに活用することができます。

出典:「管理サービス内容・料金」 NPO法人空家・空地管理センター

シェアリングエコノミー、民泊として貸し出す

シェアリングエコノミーはモノ・場所・スキルといった遊休資産を多くの人と共有・交換することで利用する経済の形式です。空き家という遊休資産を多くの人とシェアすることで、活かす方法の一つが民泊です。例えば空き家として放置されていた一軒家を改装して、観光客用の宿泊施設として再生させ、収入を得ることができます。

シェアリングエコノミーの一つのビジネスモデルです。空き家所有者がいきなり宿泊業を営むことは困難となりますので民泊における宿泊業を代行してくれる業者に委託します。多くの民泊代行業者が存在しますので、空き家の立地や空き家の改装費、宿泊料金などの条件が折り合えば、地域の空き家問題の解決策として有力視されることとなります。

空き家の売却

空き家のまま所有をしているよりは売却した方が必要経費がかからずに得策となる場合もあります。所有し続けても固定資産税は毎年かかりますし、供給停止手続きを取らない限り水道光熱費の基本料金はかかります。特に長期間放置し続けてきた空き家の場合には近隣住民に対して迷惑をかけている可能性もあります。

また、上記で説明しました「空家対策特別措置法」により「特定空家」に指定されますと固定資産税の「小規模住宅用地の特例」が無くなり、土地の固定資産税は6倍になります。

売却方法も様々な方法があります。地元の不動産会社に依頼する方法もあります。上記で説明した「全国版空き家・空き地バンク」に登録しますと、売却しにくい家屋でも売却できる場合があります。また、WEBサイト上には「一括売却査定サイト」がいくつも運営されていますので、それらを活用して売却してみるのも良策となります。

空き家等対策計画の策定状況について

国土交通省・総務省の調査結果によりますと、全国の市区町村の空き家等対策計画の策定状況は下表の通りです。

空き家等対策計画の策定状況(平成30年3月31日時点)

上表から空き家等対策計画が既に策定済みの市区町村は45%、策定予定の市区町村が43%、合計88%になり、大半の市区町村が積極的に取組んでいる様子がわかります。それだけ「空き家問題」は全国に及んでいることが、数字で見えます。

また特定空き家等に対する措置の実績は下表の通りです。

特定空き家等に対する措置の実績(平成30年3月31日時点) 

年々、市区町村による助言・指導、勧告、命令、代執行、略式代執行の措置件数は増加しており、策定計画が浸透していく様子が数字で見えます。

出典:「空家等対策の推進に関する特別措置法の施工状況等について」(平成30年3月31日時点) 国土交通省・総務省

空き家問題のまとめ

以上、空き家問題に対する現状や原因、リスク・デメリット、解決するための対策、空き家等対策計画の策定状況について解説しました。空き家問題は緊急の課題であり、放置し続けますと様々な悪影響が生じます。そうならないためにも中古住宅の売買促進に繋がる施策や空き家の有効活用などが必要となります。

それらの必要性に対し空き家バンクや民泊の活用など、様々な解決策が出ています。空き家を抱えておられる方や将来に抱える可能性がある方は、それらの最新情報を入手・駆使しながら、スムースに解決されることをお勧めいたします。