- 日本ではシックハウス対策として、換気システムの導入が義務付けられている
- 第1種換気は、コストよりも健康面を中心に住まいを考えている人におすすめ
- 第3種換気は、導入コストを抑え、室内換気にはあまり気を使わない地域に住んでいる人におすすめ
これから戸建てを購入する場合、換気システムを導入しなくてはいけません。
換気システムの導入をしなくても、窓を開けて空気の入れ替えをするのが一番!
と思われがちですが、日本ではシックハウス対策として、2003年に建築基準法の改正により換気システムの導入が義務として定められました。換気システムは第1種換気から第3種換気までの3種類があり、いずれかを導入する必要があります。
今回は第1種換気と第3種換気、それぞれの導入メリットや費用について解説いたします。どの換気システムを導入すべきか悩んでいる人は、ぜひ参考になさってください。
第1種換気と第3種換気の比較表
まず最初に、比べやすいように第1種換気と第3種換気の比較表を作成しました。
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浜崎編集長
換気方法 | 初期費用 | 光熱費 | メンテナンス方法 | 空気環境 | おすすめの家庭 | |
第1種換気 | ・機械吸気 ・機械排気 | 一般的におよそ50万円ほど (第3種より30万円以上の差) | 一般的な家庭の場合 2500円/月 (給気+排気 のセットが2階分) | 最低でも2カ月おきにフィルター清掃、交換が必要。 年単位でダクトの清掃も行う必要がある。 | 給気、排気ともに機械で制御されている。花粉などもフィルターでシャットアウト。 | ・花粉症に悩んでいる ・窓を開けにくい環境 |
第3種換気 | ・自然吸気 ・機械排気 | 一般的におよそ10数万円 | 一般的な家庭の場合 600円/月 | 排気口のフィルター清掃が必要。 メンテナンスは簡単。 | 自然給気であるため、汚れた空気も入れやすい。 | ・コスパ重視 ・簡単なメンテナンスを希望 |
それぞれの項目について、記事の中で詳細を説明していきます。
換気システムの種類について
冒頭で触れたとおり、換気システムには「第1種換気」「第2種換気」「第3種換気」の3種類があります。給気・排気方法がそれぞれ異なるため、まずは前提知識としてそれぞれの特徴を簡単にご説明します。
第1種換気
第1種換気は、給気も排気も機械で制御しておこなうものです。
24時間稼働したままで、結露も起こりにくく、さらに「熱交換換気装置」を使用するため、室内の温度は一定のまま。窓の閉めたままの状態でも、機械が換気をおこないます。
熱交換換気装置とは、換気で室内に入って来る暖気や冷気を冷やしたり温めたりすることで、室内の温度を一定に保つ装置です。
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浜崎編集長
第2種換気
第2種換気は、給気を機械で行います。
排気は自然に行われ、室内の空気が押し出されていきます。そうすることで、室内の空気圧は高めになり余計な空気がはいってきません。室内の空気は常にクリーンな状態になるため、無菌室や手術室で採用されている方法です。
ただし、湿気を含んだ空気が室内にとどまってしまい結露を招くので、木造家屋ではほぼ使用されていない換気システムになります。
一般的な家庭ではほとんど利用されないため、今回の比較では対象から外しています。
第3種換気
第3種換気は、給気を自然に行い排気を機械で行います。
室内を負圧(室内より外の気圧が高い状態)にすることで、自然給気させる方式です。そのため室内の気密性が低いと、第3種換気を採用する意味がなくなってしまいます。(気密性はC値=1.0以下が望ましい状態です)
導入コストが低いこと、メンテナンスが容易という点で一般住宅の大半で導入されている換気方法です。
デメリットは、熱損失が大きい点。熱損失の結果、冷暖房にて室内温度調整を行う必要があり、光熱費がかさんでしまいます。
初期費用は第3種換気のほうが安い
気になる初期費用は、圧倒的に第3種換気システムが安く収まります。
第1種換気システムを導入すると50万円ほど必要なのに対し、第3種換気システムを導入すると10数万円ほど。
ちなみに第1種では、次のような費用が発生します。
- 給気と換気にそれぞれ換気扇の設置
- 熱交換機械の導入
- 全熱型を導入した場合、トイレや風呂は別途換気扇が必要
- ダクト式になら部屋の中にダクトを張り巡らせる必要がある
第3種ならこうした費用はゼロ。初期費用だけを考えるなら第3種換気のほうが断然安くできますね。
光熱費(ランニングコスト)はケース次第
初期費用は、第1種換気のほうが高いことがわかりました。では、光熱費(ランニングコスト)になるとどうなのでしょう。
第1種換気は給気も排気も機械式でした。「室内の温度を常に維持」してくれています。お金がかかりそうなイメージがありますよね。
一方、第3種換気は排気だけ機械式。単純に考えると第1種換気のほうが光熱費はかかりそうです。
事務員
浜崎編集長
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第1種換気では常に室温を一定に調整している(急激な温度調整が不要)ため、省エネになります。
第3種換気の場合、急激な温度調整が必要になるので光熱費が高めになります。
このあたりは実際お住いになる地域の年間の気温などを考慮する必要があります。そのため、あらかじめハウスメーカーに相談しランニングコストの見積もりを出してもらうことをおすすめします。
メンテナンスは第3種換気のほうが楽
第1種換気のメンテナンスにおいては、フィルターの掃除を基本毎月もしくは、2ヶ月毎に実施する必要があります。本体は天井近くに設置されていることも多く、脚立を用意し、点検口を開け中を掃除することになります。
簡単にメンテナンスできるようなものではなく、段々と億劫になってきて3ヶ月や半年に一回と、頻度が下がってしまう人もいるでしょう。
また、季節によっては小さな虫がフィルターに引っかかっている事もあります。それを処置するのがイヤで放置するというケースもあるため、虫嫌いな人は注意が必要です。
それに比べ第3種換気のフィルター清掃なら、まず虫をみかけるような事はありません。洗面所やトイレの天井についている排気口のフタを外し、なかのフィルターを清掃。多少の手間はかかりますが、第1種と比較すると断然楽です。
メンテナンスをさぼってしまった場合、第1種換気だと、目詰まりを起こし空気の循環が行われなくなり、室内の空気環境に影響が出てしまう事も考えられます。
空気環境は第1種換気のほうが良い
第1種換気では、給気口にフィルターを使用しています。
高性能フィルターは10ミクロンの粒子までカット、PM2.5フィルターでは2ミクロンの粒子までカット可能。フィルターを通すため、きれいな空気が室内に入ってきます。なお一般的なマスク(不織布)では、0.5ミクロンの粒子までカットできます。
外気中に漂っている粒子の大きさは次の通り。
- 花粉 30ミクロン
- PM 2.5 2.5ミクロン
- 細菌 1.0ミクロン
- ウイルス 0.1ミクロン
第3種換気だとフィルターがないものも多いです。そのため室内の空気環境は第1種換気にしたほうが良いものとなります。
おすすめのケース
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浜崎編集長
第1種換気がおすすめのケース
給気も排気も機械で行っている第1種換気は、使い勝手は非常に良く、このような方におすすめです。
部屋の窓をほとんど開けない | 公害や自動車の騒音などで、ほとんど窓をあけることがない。 |
花粉症に悩まされている | 給気システムにフィルターがついているため、花粉が部屋に入るのをカットしてくれます。 |
外気との温度差が高い | 夏冬ともに室内と外気の温度差が高くても、第1種換気なら室内温度は常に一定です。 |
第1種換気は、コストよりも健康面を中心に住まいを考えている人におすすめの換気システムです。
第3種換気がおすすめのケース
第3種換気の魅力は何といってもコストです。第3種換気は、次のような方におすすめです。
とにかく換気システムの導入費用をおさえたい | 第1種換気にくらべ30万以上導入コストを抑えられます。 |
窓を開けることが多い | 空気の綺麗な地域にお住まいで、窓を開けての換気に抵抗のない方におすすめです。 |
メンテナンスを簡単にすませたい | 第3種換気は、メンテナンスが簡単です。排気用のフィルターを清掃するだけですみまます。 |
第3種換気は導入コストを抑え、室内換気にはあまり気を使わない地域に住んでいる方におすすめの換気システムです。
まとめ
換気方法 | 初期費用 | 光熱費 | メンテナンス方法 | 空気環境 | おすすめの家庭 | |
第1種換気 | ・機械吸気 ・機械排気 | 一般的におよそ50万円ほど (第3種より30万円以上の差) | 一般的な家庭の場合 2500円/月 (給気+排気 のセットが2階分) | 最低でも2カ月おきにフィルター清掃、交換が必要。年単位でダクトの清掃も行う必要がある。 | 給気、排気ともに機械で制御されている。花粉などもフィルターでシャットアウト。 | ・花粉症に悩んでいる ・窓を開けにくい環境 |
第3種換気 | ・自然吸気 ・機械排気 | 一般的におよそ10数万円 | 一般的な家庭の場合 600円/月 | 排気口のフィルター清掃が必要。メンテナンスは簡単。 | 自然給気であるため、汚れた空気も入れやすい。 | ・コスパ重視 ・簡単なメンテナンスを希望 |
第1種換気も第3種換気 もそれぞれ良い点も多く、どちらを導入したらいいのか悩むところです。
導入する切り口がコストなのか空気の質なのか。メンテナンスのしやすさなのかによって違ってきます。
- 常に室温が一定
- 花粉やPM2.5が室内に入ってくるのをシャットアウト
- 室内の空気がきれいに保たれる
- 導入費用が高い
- 定期的なメンテナンスが大変
- メンテナンスを怠ると、汚れた空気が循環してしまう
- 導入費用が安い
- メンテナンスが簡単
- 自然給気のためよごれた外気が入りやすい
どちらを導入したらいいか、ご自身の希望と、導入する地域を考慮した上ハウスメーカーの担当者と相談していきましよう。
ぜひ今回の記事をベースに換気システムの基礎知識を身につけておき、後悔のない選択をしてください。