リノベーション済み物件のメリットと落とし穴

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のざっくりとしたポイント
  1. 表面は綺麗でも設備配管等の老朽化はそのままの可能性がある
  2. 新築に比べ、住宅ローン審査では不利
  3. 事前に物件や管理状態を見極める必要がある

新築物件には手が届かないけれど、綺麗な家に住みたい。そんな方にとって、リノベーション済みの中古物件は有力な候補の一つです。ただし、リノベーション済み物件は、リノベーションの知識や手間が不要な点から不動産投資初心者の方でも購入しやすい反面、中古物件ならではのデメリットも複数存在します。

浜崎編集長

そこで今回は、リノベーション済み物件のメリット・デメリットや失敗事例を紹介しながら、購入する前に確認しておきたい注意点を解説していきます。

中には意外な落とし穴もありますので、これを機に確認しておきましょう。

リノベーション済み物件のメリットとは?どんな人におすすめ?

リノベーション済み物件のメリットを教えてください。

事務員

浜崎編集長

リノベーション済み物件を購入するメリットは主に以下の5つです。

新築同様に綺麗な物件を、手間をかけずに安い価格で手に入れることができる

なんと言っても、安くて綺麗な物件に住めることはリノベーション済み物件の魅力です。中古物件を中心に探されている場合、購入後に老朽化した部分について別途リフォームが必要な場合も少なくありません。

浜崎編集長

その点、リノベーション済み物件であればその手間がかからず、購入前にイメージした居住環境と近い居住体験ができるでしょう。

すぐに住み始めることができる

戸建てのスケルトンリノベーションの場合、打ち合わせと工事で約6~8ヵ月はかかると言われています。その間仮住まいをしなければならないことも考えると、すぐに住み始めることができることもリノベーション済み物件のメリットと言えます。

 資金計画が立てやすい

中古物件を自らリノベーションする場合、工事内容により金額が大きく変わるため、資金計画が立てづらい側面があります。一方、リノベーション済み物件であれば購入価格にリノベーション代金が含まれているため、支払う総額が分かりやすいメリットがあります。

住宅ローンに一本化できる

自らリノベーションする場合で、購入からリノベーションまでの期間が空く場合、住宅ローンとは別にリフォームローンを組む必要が生じます。

MEMO

書類記入や抵当権の設定、司法書士への手数料の支払いなどの手間が二重に発生することに加えて、金利負担も重くなりますので、そういった心配がないこともリノベーション済み物件の魅力の1つです。

購入後の保証期間が長い場合がある

リノベーション済み物件の販売は不動産会社が売主となるケースも多く、その場合は保証期間が2年以上に長く設定されることもメリットです。不動産の売買契約では、契約内容にあった物を引き渡す「契約不適合責任」が売主に義務付けられています。物件に不具合がある場合、買主は売主に対して減額や損害賠償等の対応を請求することができます。

その保証期間については契約で定めるのが一般的ですが、売主が個人の場合は3か月と短く設定されることが多いのに対し、売主が不動産会社(宅建業者)の場合は2年以上に設定しなければならないと法律で定められています。

浜崎編集長

以上お伝えしたこれらの特徴から、リノベーション済み物件は「中古価格で物件を購入したいが、リノベーションの知識や手間がかけられない」人にお勧めです。

 リノベーション済み物件のデメリットとは?

浜崎編集長

メリットも多々あるリノベーション済み物件ですが、中古ならではのデメリットも複数存在します。

綺麗なのは見た目だけかもしれない

リノベーション手法の一つに、クロスやフローリングの張り替え、古くなった設備の入れ替えなど、目に見える範囲のみのリノベーションを行い修繕しコストを削減する「表層リノベーション」というものがあります。表層リノベーションしか行っていない物件の場合、目に見えない設備配管等の老朽化はそのままであるため、購入後にトラブルが発生する可能性があります。

物件や内装・設備の選択肢が少ない

購入後に自らリノベーションする場合、内装や設備は購入後に変更する前提のため、築年数・立地・広さなどの変更できない条件だけ合致すれば良く、物件探しの幅が広がります。また、内装・設備も好みものを後付けすることができます。

MEMO

その点において、リノベーション済み物件から内装・設備など条件を兼ね備えた物件を探すとなると選択肢が少なく、思い通りの物件に出会えない可能性があります。

 新築に比べ、住宅ローン審査では不利

中古物件購入全般に当てはまることとして、住宅ローン審査では新築に比べ不利な傾向があります。ローンでは、借りる人の返済能力を確かめるために年齢・勤続年数・年収などを審査します。

MEMO

対象の不動産を担保に入れるため、物件の担保価値も審査項目となります。中古物件は新築に比べ担保価値は低く判断されるため、各審査項目の評価次第では借りることができない可能性があります。

 リノベーション済み物件のよくある失敗事例

浜崎編集長

よくあるリノベーション済み物件の失敗事例を3つ紹介しましょう。

見えないところはリノベーションされていなかった!

先述の通り、表層リノベーションしか行っていない物件は、目に見えない箇所の老朽化がトラブルになる場合があります。よく出る不具合として、水回り(キッチン・トイレ・風呂場)の劣化による水漏れ、耐震・防音・遮熱などの性能が低いことによる各種被害が挙げられます。

注意

特に、築30年~40年近く経過している物件は、給排水管などの水回りで水漏れ等の欠陥が見つかることが多い傾向にあります。住み始めてからわかることも多く、中古物件で陥りがちな失敗事例と言えるでしょう。

 購入後マンションの建て替え決議が浮上した!

購入してすぐにマンションの建て替えが決議されることもあります。マンションなど区分所有建物を建替える場合、区分所有者の数および議決権の各5分の4以上の賛成が必要となります。あまりにも物件の老朽化が進んでいて他の所有者が建て替えに賛成している場合、建て替えを止めるのは難しいでしょう。

浜崎編集長

その為、購入前に「この物件はあと何年躯体が持つのか」情報収集することが重要です。法定耐用年数では、木造住宅は22年、鉄筋コンクリート造の建物は47年と設定されていますが、これはあくまで税務会計上の指針に過ぎません。
実際の建物はメンテナンスさえしておけばより長持ちしますので、購入前に建物の状態を確認することが重要ですね!

事務員

追加のリノベーションができなかった!

物件によっては、リノベーションの内容が限られ追加の工事ができないというケースがあります。

一つは、建物の構造上の問題です。建物には耐震性を確保するために必要な構造柱・構造壁というものがあり、これらに該当する柱・壁に手を加えることはできません。また、マンションの場合は管理規約により制約がかけられている場合があります。他の居住者に迷惑が掛からないよう、防音性能の高い床材の使用を義務付けていたり、電気・ガス・水道の容量に制約をかけているケースがあります。

戸建て住宅の場合は、物件自体が「再建築不可物件」である場合があります。建築基準法では、救急車等が入っていけるよう「住宅は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない」という接道義務を設けており、この条件を満たすことができていない物件については、再建築(=建て替え)ができませんので注意が必要です。

注意

法改正や周辺の環境の変化により現行の建築基準を満たさない「既存不適格物件」などもあります。特に建蔽率や容積率がオーバーしている物件は少なくありません。既存不適格物件はリノベーションや建て替えに制限がありますので、こちらも要注意です。

 失敗しないために必ず確認しておきたいチェックポイント 

失敗を予防する方法はないのでしょうか?

事務員

浜崎編集長

先ほどお伝えした失敗事例を踏まえて、同じような失敗を予防するために確認しておきたいチェックポイントを解説していきましょう。

 実施したリノベーションの内容を正確に把握しよう

建物が長持ちする要件は立地条件とメンテナンスの有無とされています。 立地条件においては、例えば雨の多い地域で屋根の軒が短い家は外壁のひび割れから雨が浸入しやすい、海の近くの家は塩により鉄部が錆びやすいなどの例が挙げられます。

浜崎編集長

メンテナンスにおいては、購入前に物件の状態を確認することが重要です。

代表的なものとして以下が挙げられます。

購入前に確認すべきこと
  • 補強や補修は適切におこなわれているか
  • 構造体に雨水は侵入していないか
  • 設備配管は老朽化していないか
  • 柱・梁・基礎などは老朽化していないか
  • 床下の換気状況はどうか
  • シロアリ被害はないか

リノベーション済み物件では、リノベーション前の図面や写真などを見せてもらい説明を受けるようにしましょう。

 インスペクションを受けよう   

インスペクションは英語で「調査」を意味し、建築士の資格を保有する検査員が住宅を検査し、住宅の状態や補修の必要がある箇所等第三者視点で報告してもらうことを指します。インスペクションを実施することにより、売主・買主双方が住宅の状況を理解した上で取引を行うことができ、先述したような引き渡し後のトラブルを予防できます。また、購入後のメンテナンス計画が立てやすくなるというメリットもあります。

MEMO

インスペクションは売主・買主どちらでも要望することができます。インスペクションがされていない物件を購入する場合には、事前に調査を依頼するようにしましょう。

 集合住宅の場合は管理状況を確認しよう

マンション・アパート等の集合住宅の1室を購入する場合は、その集合住宅全体の管理状況を確認することが重要です。

確認する方法の一つ目は、売主に対して年間管理計画や決算書を見せてもらうことです。一般的に、集合住宅では長期の修繕計画が設定されています。どのタイミングでどういった修繕を実施するかの計画が落とし込んであり、適切なメンテナンスができる体制が整っているかを判断することができます。

また、住民による修繕積立金の内容が問題なく管理されているかも確認しておきましょう。滞納なく貯まっており、計画に基づいて支出されているようであれば問題ありませんが、不足している場合は工事を実施する度に別途特別修繕金を徴収される可能性があります。

MEMO

確認する方法の二つ目は、現地で目視確認をすることです。廊下や外壁、エレベーターなどの共用部は、住民による共益費を財源に管理されています。管理の行き届いていないマンションは、共用部の植栽がきちんと剪定されていなかったり、ゴミ置き場が汚かったりすることが多く、こういった外見から管理の良し悪しを判断することができます。

よくある失敗事例から学ぼう  

いかがでしたでしょうか。今回は、リノベーション済み物件を購入するメリットとデメリット、購入する際の注意点をお伝えしました。リノベーション済み物件はリノベーションの知識と手間が不要な反面、物件の老朽化を見極めづらいというデメリットもあり、事前に物件や管理状態を見極める必要があります。

今回ご紹介したインスペクションなどを活用して、品質と管理状況の良い物件を購入するようにしましょう。特に管理状況については重要で、管理が悪いマンションを購入してしまうと、年々資産価値が下がってしまう要因になります。先人の失敗事例から学び、事前の対策を打つようにしましょう。