不動産鑑定の費用相場をわかりやすく解説!査定との違いや必要なケース、鑑定士の選び方について

この記事のざっくりしたポイント
  1. 法的かつ公的な効力を有する証明ができるだけでなく、公正な適正価格を知ることが出来るのが不動産鑑定
  2. 不動産を売却及び買い替えるときに「売却できそうな価格」を不動産(仲介)会社などに算出してもらう方法が不動産査定
  3. 公平性やトラブルが想定される事案については不動産鑑定を検討すると良い

不動産を早期かつ適正価格で売却するためには売却価格を見誤って金額に設定してしまったり、市場価格と乖離した金額を提示していても、なかなか売却までの合意形成に至ることはできません。そこで重要な基準となるのが「不動産鑑定(評価)」です。

不動産鑑定は適正な価値を知ることに利用するだけでなく、公的証明力や法的責任を有する証拠物になります。本記事では不動産鑑定と査定の違いをはじめ、不動産鑑定することのメリット・デメリット、不動産鑑定士を活用すべきケースや選び方について解説します。

そもそも不動産鑑定とは?

不動産鑑定とは土地や建物など不動産の適正な価値や価格を判定をするため、不動産の鑑定評価に関する法律や評価基準に基づいて評価額等を算定することを指します。

また不動産鑑定は高度な専門性や知識を有する不動産鑑定士(国家資格)にのみ認められた独占業務にあたるため、公的かつ法的な効力を発揮し不動産価格の評価や公的な証拠資料として用いられることが一般的です。以下では不動産鑑定と不動産査定及び無料査定の違いについて解説します。

不動産鑑定と不動産査定の違い

不動産の適正な価格を知るためには「鑑定」と「査定」の2種類の方法が存在します。類似した言葉のため価値の算出方法や使う用途も異なるため、両者の違いについて理解しておくようにしましょう。

不動産査定とは不動産を売却及び買い替えるときに「売却できそうな価格」を不動産(仲介)会社などに算出してもらう方法を指します。算出方法としては近隣の類似物件の売買成立価格や取引価格、周辺エリアの特徴や市況に基づきながら価値を算定していきます。

そのため不動産鑑定のように公的及び法的に不動産の価値を証明したいときに使うものではなく、不動産の売却を検討する際に「実際に不動産が売れそうな値段」を知るために行うものです。

MEMO
また査定は一社だけでなく複数社依頼すること可能で概ね無料で価格を算出してくれるため、不動産会社によって価格にばらつきが出ることも特徴の一つに挙げられます。

不動産鑑定にかかる費用相場

不動産鑑定は不動産査定などとは異なり、国家資格である不動産鑑定士によって正常かつ適正な価値を把握するための評価です。そのため他の調査とは違い対象である不動産を調査するために、一定の費用が発生します。以下では不動産鑑定をおこなう上で発生する費用相場について見ていきます。

不動産鑑定書の料金相場

不動産鑑定士(事務所)や鑑定する不動産の種類によって、鑑定書にかかる費用が異なるのが一般的です。ここでは不動産売買及び不動産投資の典型的パターンに該当する「土地のみ」・「建物のみ」・「土地と建物」・「マンション」・「賃料」に分類して、それぞれの料金相場について見ていきます。

不動産鑑定書の料金相場
  1. 土地のみ:約20万円~40万円前後(大規模な土地の場合は約30万円~)
  2. 建物のみ:約20万円~40万円前後
  3. 土地と建物:約25万円~65万円前後
  4. マンション:約30万円~85万円前後
  5. 賃料:約35万円~85万円前後

これらの価格はあくまでも目安ですが、不動産鑑定の料金相場は概ね約20~30万円程度が下限と設定されているケースが多いようです。しかし鑑定する対象不動産の種類をはじめ現地調査にかかる手間や、権利関係が複雑化している場合は料金もそれに応じて上がることがあるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

不動産鑑定のメリット

不動産鑑定は不動産の適正な市場(経済)価値を判定できるだけでなく、不動産売買や投資を行う上でさまざまなメリットを享受してくれます。以下では不動産鑑定を行うことによって得られるメリットについて解説します。

不動産売買で損をしない

不動産鑑定を行うメリットの一つに不動産売買で損しないことが挙げられます。多くの不動産売買のケースで見受けられたのが不動産を売却する際に複数社の不動産業者に査定を依頼し、そこから算出された相場価格や平均価格から売却価格を設定してしまうと言ったケースです。

確かに不動産業者もプロフェッショナルと言った位置づけにはあるものの、売主からの要望に応えるためやビジネスの回転率を高めるために査定金額を低く見積もりったりすることもあるため、金額に対する根拠や公的証明力も存在しません。

その一方国家資格を有する不動産鑑定士が行う不動産鑑定であれば、鑑定結果に対する信憑性や公的証明力、法的責任も確保できるため、不動産売買で損することなく不動産を取引することが可能です。

不動産投資に値する物件かどうか判断できる

これから新たに不動産投資をはじめる人や初めて不動産を売買する人にとっては、どんな不動産を購入すべきかまた現在投資している物件自体が投資に適しているのかなど、対象となる不動産の適正価格を把握することはとても大切な要素と言えます。

MEMO
そこで不動産鑑定を行い不動産投資に値する物件を精査することで、投資価値のある不動産かどうかを判断することができます。

遺産分割や財産分与、共有不動産を公平にすることができる

不動産相続や遺産分割、離婚の財産分与などの際に、共有不動産を公平に分割(分与)することにも不動産鑑定は役立ちます。親族間や夫婦間で不動産を共同して所有している場合、相続発生時や財産分与を行う際に揉めるといったケースや公平に分割できていないといった事例が見受けられます。

このような場合、不動産鑑定を活用することで適正な財産価値を評価することができるだけでなく遺産や財産を分与する相続人間で不平等なく、公平な分割することが可能です。

相続税の圧縮

不動産鑑定を行うことは不相応に高い相続税の圧縮にも一定の効果があります。通常、相続税を算出する場合、路線価方式や倍率方式で算出された金額の80%程度の評価額になるケースが一般的です。

しかし間口が小さい不動産や宅地が整形されていない、用途が限定される土地でなど土地及び建物に特有の理由があっても、そのような条件が評価額に反映されることなく相続税が算出されてしまい、高額な相続税を支払わなければならないと言ったケースも見受けられます。

しかし不動産鑑定を活用することで適正な評価額を算出することに寄与するため、これまで不相応に高かった相続税であっても鑑定を行うこと適正価格まで軽減することができます。

不動産鑑定のデメリット

不動産鑑定には不動産の合理的かつ適正な市場価格を算出できる点や不動産査定とは異なり、法的根拠や公的証明力を有する評価を得られる一方、不動産鑑定を行う上であらかじめ押さえておきたいデメリットや注意点が存在します。以下では不動産鑑定をおこなう上でのデメリットについて解説します。

費用がとにかく高い

不動産鑑定におけるデメリットの一つに不動産査定とは異なり、およそ数十万円単位の費用がかかる点が挙げられます。多くの不動産鑑定事務所では国が用地買収・取得などを行うときの報酬基準となる「基本鑑定報酬額表」をもとに、独自の基準や案件ごとの内容に照らし合わせて費用を決定しています。

また不動産鑑定はできる人が資格保有者に限定されているため、どうしても割高になってしまうと言ったデメリットが挙げられます。そのため不動産の正確な市場価値を知れる一方で高い費用を費やしてしまっては売却にかかるコストがかかりすぎてしまうため、物件や不動産の規模によっては不要なコストと位置付けられることも少なくありません。

鑑定にかかる時間が長い

不動産鑑定士に対象不動産の鑑定を依頼した場合、さまざまな調査や分析を行うためある程度の時間がかかってしまう点はデメリットと言えるでしょう。不動産鑑定は鑑定士による対象不動産のヒアリングをはじめ、現地確認や関係法令等の詳細な調査、市場分析、評価額の算出など、さまざまなプロセスを経て鑑定評価書の作成に至ります

そのため不動産の種類や依頼内容によって異なるものの、あらかじめ2週間程度から長くて1ヶ月程度の期間を目処に依頼するようにしましょう。しかし正式な書類は必要としておらず自分の土地や建物について概ねの市場価値を知りたいということであれば、より短い期間でおこなえる「簡易鑑定」が最適です。

MEMO
簡易鑑定であれば調査に必要な期間、及びかかる費用を半額程度に抑えることができるため不動産鑑定の活用目的に応じて、それぞれの調査を使い分けるようにしましょう。

不動産鑑定士を使った方が良いケース

不動産売買や不動産投資の場合、時間及び費用がかかる不動産鑑定は行わず売主と買主双方の話し合いや交渉によって、価格の合意形成がなされることが一般的とされてきます。しかし下記に該当する場合は、その後のトラブルな問題を未然に防ぐ意味でも不動産鑑定士に依頼したほうがよいでしょう。

相続などの財産分与及び遺産分割をスムーズに行いたい場合

不動産鑑定士を活用する方が良いケースでは適正な不動産価格を知ることで、相続時などに発生する財産分与及び分割をスムーズに行うなどのメリットが存在します。不動産鑑定士は不動産鑑定評価基準及び不動産の鑑定評価に関する法律を熟知した高度な専門家に依頼することが基本となります。

MEMO
そのため当事者双方が納得いく話し合いや合意形成がなされない場合、不動産の適正かつ公平な評価額の基準を設けることは財産分与や遺産分割において相続のトラブルを回避することに役立います。

相続税を軽減させたい場合

不動産鑑定士に鑑定を依頼する場合、客観的な判断基準を設けられるだけでなく、適正な相続税額まで減額できるといった具体的な対策を講じることも可能です。不動産鑑定のメリットでも先述したように、鑑定を行うことで不相応に高い相続税を軽減させることがでるため節税対策になることもあります。

不動産鑑定士の選び方

最後に解説するのは不動産鑑定士の選び方についてです。国家資格を有する不動産鑑定士と言っても、どこに依頼しても結果や費用が同じということはありません。以下では不動産鑑定士選びで失敗しないためのポイントを列挙して解説します。

経験豊富か不動産鑑定士であるかどうか

不動産鑑定士を選ぶ際にまず注視すべきポイントは経験豊富かつ高い専門性を持っているかどうかになります。例えば「不動産売買取引に関する理解があるか」「長い年数、不動産鑑定業務に携わっているか」「不動産の領域だけでなく、それ以外の知識の有無」など、信頼できるかどうかを見極めるポイントはあげればキリがありません

MEMO
そのため依頼する目的に応じて、鑑定士にどのような知識や経験を求めるかをあらかじめ定義して、それに即した対応をしてもらえる事務所を選ぶようにしましょう。

得意とする専門分野や領域はなにか

鑑定士と一口に言っても不動産を鑑定する地域や得意とする専門分野や問題解決力は異なってきます。そのため経験豊富な実績や知識も大切な要素の1つですが、得意とする分野や領域はどこかも依頼段階で確認しておくようにしましょう。

まとめ

本記事では不動産鑑定と査定の違いをはじめ、不動産鑑定にかかる費用(料金)相場の紹介から、鑑定を行うメリット・デメリット、鑑定士を選ぶ基準に至るまで徹底的に解説してきました。

不動産鑑定は法的かつ公的な効力を有する証明ができるだけでなく、公正な適正価格を知ることが可能です。そのため不動産の売買や相続、贈与、財産分与など公平性やトラブルが想定される事案については検討するとよいでしょう。

しかし不動産鑑定は不動産の種類や状況に応じた費用が発生するだけだなく、さまざまなプロセスを経て発行されるため時間も費やす点がデメリットになり得ます。したがって目的にや用途に応じて不動産鑑定と不動産査定を使い分け、無駄のない不動産売買や不動産投資を行うよう心がけることをおすすめします。