マンションが売れない9つの理由!値下げのタイミングや対策、平均売却期間について徹底解説

この記事を書いた人
中村 昌弘
不動産コメンテイター

都内の私立大学を卒業後、新卒採用で不動産ディベロッパー勤務。 不動産の用地仕入れや、分譲マンションの販売・仲介などを手掛ける。 2016年に独立して以降、不動産関係のライティングも業務の1つに。

この記事のざっくりしたポイント
  1. マンションが売れないのは9つの原因がある。
  2. マンションの売却価格を値下げするタイミングは1月~3月
  3. 値下げ以外にできる対策もたくさんある

住み替えや転勤などで今まで暮らしてきたマンションを売却する必要性に迫られることはよくあることです。しかし、売却活動を開始したとしてもなかなか売れずに困り果てることもあります。

「本当にマンションが、売れるのだろうか?」と、心配されている方はおられませんか?

実は、売れないマンションには、9つの理由があります。

多くの住宅に関する悩み事や相談事を解決してきた不動産コンサルタントが、平均売却期間や売れない9つの理由、売れないときの対策について解説します。

売れない理由を一つ一つ把握し、それぞれを改善していくことがマンション売却成功への第一歩です。

マンションの平均売却期間をデータから紐解く

マンションを売却するには、どれ位の期間を見込めばよいのですか?

 
 

マンションの平均売却期間は約半年です。

 

不動産会社であるat homeの調査によりますと、マンションの平均売却期間は半年となります。

マンションの売主は、不動産会社を通して売却する場合が大半となります。その際、売主と不動産会社との間で媒介契約を締結します。媒介契約の締結期間は、最大3か月と規定されています。3か月以内で売却できない場合、同じ不動産会社との媒介契約を更新するか、他の不動産会社と改めて媒介契約を締結することになります。

MEMO
平均しますと、2回目の媒介契約でマンションを売却できる場合が多くなります。

売却期間データ

一方、不動産鑑定会社である東京カンテイの調査によりますと、より細かいデータが公開されています。

売却開始から6か月経過で、86.7%の中古マンションが、売却されていることがわかります。

Δ中古マンション(首都圏)の売却期間と成約価格乖離率(*)
東京カンテイのプレスリリースを基に作成)
*価格乖離率 =(成約価格-売出し価格)÷ 売出し価格 × 100%

上表より、中古マンションを売却してから、

  • 1か月以内で売却:39.6%
  • 3か月経過で売却:67.3%
  • 6か月経過で売却:86.7%

であることがわかります。

また、売出し価格と成約価格との乖離率を見ますと、

  • 1か月以内で売却:3.00%の値引き
  • 3か月経過で売却:6.83%の値引き

     

  • 6か月経過で売却:11.72%の値引き
  • 12か月経過で売却:15.01%の値引き

であることがわかります。

この結果より、全てのマンションが、希望価格で売却できるわけではないことがわかります。また、売却期間が長くなるほど、値引き率が大きくなることがわかります。

つまり6ヶ月間売却できないマンションは見直しが必要

以上の結果を鑑みますと、6か月経過しても売却できない中古マンションは、13.3%になり、売却方法や売却価格などの見直しが必要になります。

不動産会社の中には、媒介契約を締結するために、高めの売却査定価格を提示することもあります。その価格につられて媒介契約を締結し、売却活動を開始すると相場よりも高いため、買手から敬遠される可能性が高くなります。

注意
査定価格の根拠を吟味した上での売却価格の設定が重要です。

マンションが売れない理由9つ

 

不動産会社選びで失敗していたり、囲い込みされている

売れないマンションには、売れない理由が必ず存在します。その中で、主な理由を9つ挙げます。複数の理由が該当するようであれば、早急に対策を取る必要があります。

売出したマンションの価格が適切ではない

上記においても解説しましたが、不動産会社が媒介契約を締結したいがための理由で、高めに価格設定した状態で売却活動を始めると、相場との価格差により売却できない状態が続きます。

買手にとって、同じ立地で似たような規模・仕様のマンションであれば、価格に対する優先順位が上がる傾向にあるためです。

また、売却価格を高く設定した場合、

  • 最寄り駅から徒歩10分圏内など、立地が良い
  • 買い物・習い事・通院など、生活がし易い
  • 共用部分や専有部分の設備など、グレードが高い

などのプラスに働く根拠があれば、売却できる可能性はあります。

しかし、価格が高いばかりで他にセールスポイントが何もないマンションであれば、確実に売れ残るでしょう。

不適切な価格設定であれば是正し、改めて売却活動を始めなければ時間ばかりが無駄に過ぎることになります。

MEMO
不動産会社任せにせず、客観的に売却するマンションのセールスポイントや周辺の相場・環境などを分析し、把握する必要があります。

同マンションに競合物件がいる

住戸数が100戸以上の大型マンションになると、同じマンション内で複数の住戸が売却活動を行っている場合があります。

そうした場合、立地は同じなので単純に

  • 売却価格
  • 住戸の位置(上階・角部屋)
  • 床面積・間取り

との比較になります。

それらが、同じマンション内の他の住戸と比較して見劣りする場合、他の住戸が先に売却され、自身のマンションが売れ残る可能性もあります。

MEMO
この様な場合、事前調査による売却価格の設定が売却期間を短くするポイントになります。他の住戸の価格・位置・床面積・間取りを正確に把握しましょう。

価格以外の要因は変更できないので、買手が比較したとき選んでもらうためにも適切な価格設定を行う必要があります。

築年数が古すぎる

築年数が古すぎると、買手としても優遇税制や融資などの様々なメリットを享受できなくなります。

例えば、築25年超の場合

  • 住宅ローン控除が使えない。
  • すまい給付金がもらえない。
  • 不動産取得税が、控除額が少なくなることにより、高くなる。
  • 都市銀行・地方銀行など、比較的低金利の住宅ローンが、利用できなくなる。

などのマイナス要因が働きます。

また、毎月支払う修繕積立金が、築年数とともに上昇する方式が採用されている場合、どんどん高くなります。

買手にとって築年数が古いマンションを購入するメリットは、価格だけになる場合が多くなります。

したがって、値交渉により買いたたかれる可能性も高くなってしまうのが現状です。

マンション売却エリアに需要がない

買手としても通勤・通学の便利さや生活のし易さ、周辺環境の良さなどを吟味してマンションを購入します。したがって、それらにそぐわない立地や周辺環境にあるマンションを売却しても需要が無く、なかなか売却できません。例えば、

  • 最寄り駅まで徒歩20分以上かかる場合やバスに乗車しなければいけない
  • マンション周辺に買い物できる商業施設が無く、車やバスで移動しなければ行けない
  • マンション下層階の住戸で日中も日陰になる時間帯が多く、風通しも悪い住戸

などです。

不動産会社選びで失敗していたり、囲い込みされている

マンションが売れない1つ目の原因は不動産会社選びで失敗していたり、囲い込みされていたりするからです。 営業力のない不動産会社に仲介を依頼すると、集客や交渉が上手くいきません。

注意
また他社からの紹介を全て断ってしまう「囲い込み」をされてしまうと、集客が減ってしまうというデメリットがあります。

対策:囲い込みはステータスをチェック

囲い込みへの対策はREINSのステータスをチェックすることです。REINSとは不動産会社が物件を登録するサイトであり、以下3つのステータスが設定されています。

REINSのステータス
  1. 公開中
  2. 書面による購入申し込みあり
  3. 売主都合で一時紹介停止中

REINSは基本的に不動産会社しか閲覧できませんが上記のステータスだけは売主も閲覧可能です。 たとえば、申し込みが入っていないのに「書面による購入申し込みあり」のステータスになっていれば、囲い込みされているリスクがあります。 そのときは、すぐに不動産会社へ指摘しましょう。

 

囲い込みなんて本当にあるんですか??何のためにするんですか??

 

 

囲い込みは残念ながら未だにあるよ…。囲い込みすることで不動産会社は「買主」も自社で仲介できるから、売主だけじゃなくて買主からも仲介手数料をもらえるからだよ。

 

対策:不動産会社を変更する

また不動産会社を変更するというのも対策の1つです。 やはり、どうしても信頼できないのであれば、不動産会社へ媒介契約解除の旨を伝えましょう。 ただし、媒介契約の期間は大抵3か月間なので、基本的には契約期間が終わるまで解約はできません。

MEMO
たとえば「売却報告義務を行わない」など媒介契約違反があればすぐに解約できるので、その旨を不動産会社に伝えスムーズに解約することも可能です。

 

その際は前もって不動産会社へ査定依頼して、次に媒介契約を結ぶ不動産会社を決めておこう!

 

駅から遠かったり物件周りの環境が悪い

マンションが売れない3つ目の原因は駅から遠かったり物件周りの環境が悪かったりする点です。 マンションは立地が非常に重要なので、残念ながら立地が悪いことが原因で売れないことは良くあります。

立地が悪いことが原因でマンションが売れない場合は集客がないのか?成約しないのか?という2パターンが考えられます。 集客への対策は後述するので、ここでは「集客はあるものの成約しないパターン」の対策を解説します。

対策:物件の魅力を営業担当者に伝える

立地が悪いことは変えられないので検討者への伝え方を変えましょう。 たとえば、以下のようなイメージです。

検討者への伝え方イメージ
  1. 駅から遠いが歩道が広く歩きやすい
  2. 北西向きだが目の前がひらけているので十分明るい
  3. 工場が目の前にあるが騒音はほぼない

上記に関しては特に居住者である売主が良く分かっています。 そのためこのような点を営業担当者に伝え、営業担当者がきちんと検討者へ営業できるようにしましょう。

 

営業担当者もプロだけど営業力は担当によって全然違います。だからこそ、売主しか知らない情報をきちんと伝えてあげましょう。

 

管理費や修繕積立金が高い

マンションが売れない5つ目の原因は管理費や修繕積立金が高いという点です。 この点への対策は管理費や修繕積立金(ランニングコスト)が高い理由とメリットをきちんと整理することです。

たとえばランニングコストが高い理由、およびメリットは以下が考えられます。

ランニングコストは高いがメリットとなる点
  1. 管理人が常駐しているので防犯面に強い
  2. 周辺のマンションに比べて共用施設が充実
  3. 修繕計画がしっかりしていて修繕がきちんと行われている

これらはマンションの資産価値につながるので、きちんと整理してランニングコストが高い点を納得してもらうことが重要です。

売り手の印象や部屋の状態が良くない

マンションが売れない6つ目の原因は売り手の印象や部屋の状態が良くないときです。 その場合の対策は以下になります。

部屋の状態改善対策
  • きちんと清掃する
  • ものを片付ける

まずは基本的なことですが、まずは部屋中をきちんと清掃しましょう。 水まわりは衛生面を気にする人が多いので、特に重点的に清掃することをおすすめします。

また、床面の露出量が多いほど部屋は広く見えるので、室内にあるものは片づけましょう。 せめて、検討者が内見しているときは、できるだけ収納内に格納して部屋がすっきり見えるような工夫をします。

写真が少なかったり、そもそも認知されていない(広告出稿されていないなど)

マンションが売れない7つ目の原因は写真が少なかったり、そもそも認知されていなかったりする場合です。 この点への対策は以下になります。

認知度向上対策
  • 自ら写真を撮影して営業担当者へ送る
  • 広告を自らチェックする
  • 3つめの文

自ら写真を撮影して営業担当者へ送る

最近はネット広告で集客することも多いため、写真はたくさん点数があっても検討者はストレスなく閲覧できます。 ただ「写真を増やして欲しい」と営業担当者に頼んでも、営業担当者が忙しければ写真が増えるまで時間がかかるでしょう。

そのため、売主自らがスマホなどで外観や室内などを撮影し、営業担当者に送るのがベストです。

広告を自らチェックする

また営業担当者に広告計画を事前に聞いて、広告がきちんと反映されているか自らチェックすることも重要です。 営業担当者は複数物件を担当しているので、どうしても抜け・漏れの可能性があります。そのため売主側でも広告をチェックすることが重要なのです。

 

売主がここまでやらなくてはいけないんですか!?

 

 

もちろん営業担当者に全部任せても売れることはあるよ。ただ、売れていない状況であれば、売主も最大限協力した方が、マンションは高く・早く売れるよ!

 

売り手が知っておきたい!マンションが売れない時の対策

 

上記で解説した「売れない理由9つ」を改善することが、取るべき対策となります。その改善による対策を下記で解説します。

マンションが売れる相場をしり適切なタイミングで値下げする

マンションを売却する場合、不動産会社に相談・媒介契約を締結する前に、自身でマンションの相場価格を把握しておきますと、最低限度の情報を基にして、交渉などで有利になります。

お勧めのWEBサイトとしては、成約価格を基にした不動産取引情報提供サイトであるREINS Market Informationを利用しますと、近隣物件の相場価格を知ることができます。

細かく地域を選択することができ、近隣の成約価格のみならず、鉄道沿線・最寄り駅・間取り・用途地域・容積率などの情報を取得することができます。

また、売却開始をして1~2か月経過しても問合せなどの反応が無い場合、タイミングを見計らって売却価格の値下げを行うことも効果があります。

MEMO
中古マンションを売却しやすい時期は、異動などが多い1月~3月・9月です。その時期を見計って値下げに踏み切るのも良策といえます。

逆に5月~7月・10月~12月は買手の需要が減少する時期です。この時期の値下げはそこまで効果は出ないでしょう。

築年数の古さはリフォームや買取りで対策する

築年数が古くて売れそうにない場合、水回りなどの部分的なリフォームがお勧めです。

At homeの調査(※1)によりますと、「住宅購入の際、リフォームしておいてほしかった場所は?」との問いに対して、

  • 1位:お風呂 :38.6%
  • 2位:トイレ :35.8%
  • 3位:キッチン:34.7%

でした。その調査結果の表とグラフは、下図の通りです。

Δ住宅購入の際、リフォームしておいてほしかった場所は?(※1)
(アットホーム調べ)

その他にもマンション住戸内の見た目が汚い箇所や、設備の劣化・損傷が酷い箇所に対して、最低限度の修繕工事が必要となります。何も手を加えない状態で買手が内覧を行った場合、汚い箇所や劣化・損傷の酷い箇所などを見ただけで、購入物件候補から外される可能性があります。

また、築年数が古くて買手をなかなか見つけられない場合、不動産会社による買取りという方法もあります。買取りを利用した場合、不動産会社が購入しますので、売却活動は不要となります。

注意
ただし、不動産会社に対する売却価格は、相場の60%~70%になります。

 

60%~70%ですか…。損してしまいますね。

 

 

そうだね。でも売れ残って所有し続けるよりは良策だよ。

 

内覧に向けてハウスクリーニングで綺麗にする

内覧する買手の印象を良くするために、ハウスクリーニングで住戸内を綺麗にしておくことは、売主としての最低限のマナーともいえます。自身でできるクリーニングは徹底して行いましょう。しかし、水回りの油汚れ・水垢などは、専用の洗浄剤を使用しなければなかなか落ちません。その場合にはプロのハウスクリーニング業者に依頼し、新品同様に綺麗にしておくことも売却活動をスムーズに進めるコツとなります。

エリアの需要がない場合は広告掲載情報をより魅力的にする

エリアの需要が無い場合、マンションの広告掲載情報をより魅力的に伝えることで、問合せが増加することもあります。

例えば、大手不動産売却サイトであるHOME’SやSUUMOなどにマンションの案内広告を掲載すると、物件写真や案内文が洗練されたものになり魅力的に映るため売却活動がしやすくなります。

不動産会社や媒介契約の見直し

ある不動産会社と媒介契約を締結した際、その会社の売却活動が思わしくない場合には、不動産会社を見直したり、媒介契約の種類を変更したりという方法もおすすめです。

媒介契約の種類には、一般媒介契約・専任媒介契約・専属専任媒介契約の3種類があります。売主やマンションの特性に応じて使い分けをします。

3種類の媒介契約の違いを下表にまとめます。

Δ3種類の媒介契約の違い

ホームインスペクションや安心R住宅を実施する

ホームインスペクションは、住宅設計・施工の専門家が、第三者的な立場で客観的に、マンションの劣化・損傷状況、欠陥の有無などを目視・計測などで診断することです。

中古マンションの買手は、マンション住戸内の欠陥有無に対して、非常に不安を感じます。その不安解消のために、ホームインスペクションを実施することは、効果があります。

また、「安心R住宅」は住宅性能として耐震性があり、ホームインスペクションが実施された住宅のことを指します。

中古マンションなどに対し、国土交通省のもとで、事業者団体が標章を与える制度です。

Δ安心R住宅の標章

安心R住宅に認定されますと、

  • 既存住宅売買瑕疵保険に加入することができ、住戸に不具合が生じた場合補償してもらえる
  • 築25年を超過しても、住宅ローン控除の適用を受けることができる

など、買い手にとって安心材料になるため積極的に検討してはいかがでしょう。
 

まとめ

このようにマンションが売れない場合は、まずその原因を探りましょう。 そして原因に対して適切な対策を講じますが、その際は必ず不動産会社の営業担当者に相談すべきです。

また不動産会社が思うように集客をしてくれない場合は不動産会社を変えたり契約内容を見直すことも大切です。

まずは自身で相場価格を調査・見極め、適切な価格設定を行った上で気持ちよく内覧してもらえるようクリーニング等万全の状態で整えるのが成功の秘訣と言えるでしょう。