空き家活用方法徹底解説!実情や貸出す際の注意点と相続時の対策

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 民泊は自分で運営が難しいなら専門業社に依頼するのが良い
  2. 賃貸やシェアハウスで貸出すなら管理会社を介入させるのがおすすめ
  3. 空き家の存する自治体とも相談した上で最適な処置方法を模索する必要がある

空き家は年々増加し累計在庫軒数が膨大な数量に至り、地方によっては空き家を売却したくても売却できない状況となっています。さらに酷い場合には逆に空き家の解体費用相当分のお金を渡して処分する人も出てきています。

「空き家を相続することになっているが、どの様に処置すれば良いのかわからない」と、困っている方はおられませんか?実は活用方法にも様々な方法があり、処分方法にも様々な方法があります。

多くの住宅に関する悩み事や相談事を解決してきた不動産コンサルタントが、空き家の活用方法や空き家対策の実情、貸出す際の注意点、相続する際の対処法について解説します。空き家の立地や築年数、傷み具合を勘案して、様々な活用方法や処分方法を検討することができます。その上で空き家の最適な処置を可能にします。

空き家の活用方法

空き家を相続や売買などで所有した場合、空き家の活用方法としては、以下が考えられます。

空き家の活用方法
  • そのままリフォームして貸し出す(シェアハウスや民泊)
  • 新しく建て替えて賃貸として出す
  • 解体して更地活用(駐車場等)

それぞれ下記にて解説します。

そのままかリフォームして貸し出す(シェアハウスや民泊)

空き家を活用する場合、一番費用のかからない方法は、そのまま最低限度のリフォームをして貸し出す方法となります。リフォーム費用については空き家の築年数に伴う経年劣化や損壊箇所の傷み具合により違います。

幸にして目立った故障や不備が無い状態であればハウスクリーニングを施して、貸家として活用できます。ハウスクリーニングだけの経費で済めば家賃が安くても、良い利回りが期待できます。

一方、目立った故障や不備が見受けられる状態であれば、ある程度の投資をしてリフォームを行い、賃貸物件として再生する必要があります。具体的には賃貸住宅の場合、シェアハウスや民泊、戸建て賃貸などの活用方法があります。その他の用途の場合、貸倉庫・物置、貸店舗、貸工房などの活用方法があります。ただし、いずれも需要が見込めることが前提となりますので事前の市場調査を入念に行う必要があります。ここではシェアハウスと民泊を取り上げて解説します。

シェアハウス

若者世代を中心として根強い人気のシェアハウスは賃借人の場合、家賃の費用負担軽減というメリットがあります。賃貸人の場合、水回りの設備・器具を使い勝手の良いものにリフォームすれば需要が見込めるというメリットがあります。ただし、立地にもよります。

MEMO
一般的には2~3人がそれぞれ個別の部屋に住み、キッチン・浴室・洗面所・トイレを共同で使用する形態となります。

民泊

民泊は主に観光地において観光客がホテルに代わる宿泊施設として、利用されてきました。例えば京都市内において古い町家をリフォームして、民泊として利用されている事例が多数あります。政府は経済政策の一環として、観光客数の増加を掲げました。それに伴いホテル数不足が浮き彫りとなり、その不足を補う手段として、民泊は機能しました。

しかし宿泊客とのトラブルや近隣住民とのトラブルが相次ぎ、民泊として打ち出すには地元自治体の許可が必要になりました。したがって民泊としての活用方法にも規制がかかります。事前調査による運営の可能性を判断する必要性があります。

新しく建て替えて賃貸として出す方法もある

次に考えられる空き家の活用方法は建て替えをして、新たな賃貸住宅などにする方法です。工事費用は空き家の解体費と新たな建物の建築費との合算になります。その際、事前調査として家賃収入と総工事費用とから求められる利回りなどの投資指標が、採算ベースに乗るか否かを吟味する必要があります。

解体して更地活用(駐車場等)する

3番目の空き家の活用方法は空き家を解体して更地とし、駐車場の駐車料金を売上に計上する方法です。もしくは事業用貸地として企業などに貸出し、賃貸料を計上する方法です。

駐車場の状態にしておけば先々どの様な形態にでも土地活用を行うことができるメリットがあります。しかし空き家が無くなりますと土地の固定資産税の優遇措置はなくなり、固定資産税が一気に高くなるデメリットがあります。

そもそも空き家って?

 

そもそも空き家って何が問題なのですか?

 
 

空き家の割合が限界基準を超えますと、自治体の存在基盤が危うくなります。

 

そもそも空き家の問題は、その割合が限界基準を超えますと、自治体の存在基盤が危うくなる危険性を秘めている点が問題です。その限界基準は30%といわれています。ちなみに北海道夕張市が経済破綻した時点での空き家率は33%でした。地方の自治体の中には空き家率が30%に近付きつつある自治体が他にもあります。その解決への取組みは緊急を要する事案となります。

空き家対策の実情

空き家数は846万戸(13.6%)と平成25年と比較して26万戸(3.2%)増加し、過去最高を更新し続けています。ちなみに平成30年10月1日現在における日本の総住宅数は6,242万戸あり、平成25年と比較して179万戸の増加となっています。

空き家数の推移を見ますと、これまで一貫して増加が続いており、昭和63年から平成30年までの30年間で452万戸(114.7%)の増加となりました。短期間で倍増していることがわかります。ただし平成27年に「空き家対策特別措置法」が施行されたこともあり、空き家率の伸びは鈍化する傾向にあります。

図1.全国の空き家数及び空き家率の推移(昭和38年~平成30年)

空き家等対策の推進に関する特別措置法

空き家問題が深刻となったことから平成26年に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」が制定され、平成27年(2015年)に施行されました。通称「空き家法」ともいわれています。この法律策定により以下のことができるようになりました。

「空き家法」施行により可能になったこと
  1. 空き家への立ち入りによる実態調査、空き家の所有者に対する管理・指導
  2. 空き家の跡地の活用促進
  3. 適切な管理がなされていない空き家を「特定空き家」に指定
  4. 「特定空き家」に対して、助言・指導・勧告・命令が可能
  5. 命令に従わない場合、固定資産税の特例の解除や罰金、撤去などの行政代執行が可能
  6. 行政代執行により家屋が撤去された場合、撤去費用は所有者が負担

近隣住民へ悪影響を及ぼしている空き家に対して、この法律を適用することにより、長年放置され続けてきた空き家問題に対して、一定のメスを入れることが可能となりました。

特定空き家に認定されると固定資産税が6倍になる

特定空き家に認定されますと固定資産税の軽減措置が解除され、200㎡以内の敷地の固定資産税が6倍になります。特定空き家は倒壊の危険性が高く、近隣への環境悪化に繋がる可能性が高い空き家のことです。特に景観・衛星・防犯などの観点から、危険や危害を加えると判断されますと特定空き家に認定されます。

固定資産税に関しては土地に家屋などの建物が建ちますと、土地の固定資産税は、敷地面積200㎡までの部分について6分の1に軽減されます。

家屋を解体し土地を更地状態にしますと、土地の固定資産税は6倍になりますが、家屋の固定資産税はかかりません。家屋が建っている状態と更地の状態を比較しますと一般的に更地の状態の方が固定資産税は高くなります。したがって、納税額が増加するのを避けるために家屋を放置し続けることになり、空き家の原因の一つとなります。

空き家を貸し出す際の注意点について

上記において「空き家の活用方法」を解説しました。ここでは、それぞれの活用方法に対する注意点について主に解説します。

賃貸やシェアハウスで貸出すなら管理会社を介入させる

空き家の活用方法として戸建賃貸やシェアハウスとして貸出す場合、管理方法を事前に考慮する必要があります。管理形態としては以下の3つの方法があります。

管理形態
  1. 自主管理
  2. 管理会社を介入
  3. サブリース契約

それぞれにメリット・デメリットがあります。貸出物件が自宅の近くにあり、時間的にも余裕のある方は自主管理を選択するのも良いです。しかし貸出物件が自宅から遠方にあり、仕事なので管理する余裕のない方にとっては貸出物件を管理会社に任せる方法もあります。また転貸借を基にしたサブリース契約を締結し、家賃保証を依頼する方法もあります。それぞれ解説します。

自主管理

自主管理は自身で入居者管理・建物管理を行う管理手法です。

メリットは以下などがあります。

自主管理のメリット
  • 入居者とのコミュニケーションを直接取ることによる迅速な対応
  • 建物本体や設備などの状態を自身の目で、定期的に確認取れること
  • 管理費用が不要となり、利益の最大化を図れること
  • 自身の賃貸経営能力の向上

デメリットとしては以下などがあります。

自主管理のデメリット
  • 入居者募集を、賃貸借業務を主とする不動産会社へ依頼する必要があること
  • 退去手続き・家賃集金業務・家賃滞納督促などを自身で行う必要があること
  • 入居者トラブルがある場合、直接対応する必要があること

管理会社を介入

管理会社を介入させる方法は管理会社に入居者管理・建物管理などを委託する管理手法です。

メリットは以下などがあります。

管理会社を介入させるメリット
  • 入居者募集・退去手続き・家賃集金業務・家賃滞納督促などの手続きを任せられること
  • 定期的な清掃や建物・設備の点検・確認を任せられること

デメリットとしては以下などがあります。

管理会社を介入させるデメリット
  • 上記手続きや作業・点検・確認に伴う費用として、家賃収入の5%前後の管理費用が発生
  • 管理会社によっては、入居者対応・建物の維持・修繕対応が遅れる場合があること

サブリース契約

サブリース契約は貸主(貸出物件所有者)が、サブリース会社と転貸借契約を締結し、入居者管理・建物管理の一切合切を任せる管理手法です。

メリットは以下などがあります。

サブリース契約のメリット
  • 入居者の有無に関わらず、毎月安定的に家賃収入をサブリース会社から受領
  • 入居者募集・退去手続き・家賃集金業務・家賃滞納督促などの手続きを任せられること
  • 定期的な清掃や建物・設備の点検・確認を任せられること

デメリットは以下などがあります。

サブリース契約のデメリット
  • 上記手続きや作業・点検・確認に伴う費用として、家賃収入の10%~20%前後の管理費用が発生
  • 敷金・礼金もサブリース会社が徴収
  • 定期的に契約家賃の値下げの可能性があり、家賃収入は減少していく傾向
  • 過去において契約内容に関するトラブルが多発、裁判に発展することも
  • 自身の賃貸経営能力が育たない

いずれかを選択する必要がありますが自身と建物の状況やメリット・デメリットを総合的に鑑みて判断する必要があります。

民泊は自分で運営が難しいなら専門業社に依頼しよう

宿泊客を見つけることや毎日の部屋のクリーニング業務などは、ノウハウ・労力を伴います。自身での運営が困難であれば民泊運営を取り扱う専門業者に依頼するのも良策といえます。2017年6月に「住宅宿泊事業法」が制定され2018年6月に施行されました。この法律では、民泊はあくまでも住宅として定義されています。建物用途は、住宅・共同住宅・長屋もしくは寄宿舎という分類となります。運営に関しては、以下に対して規制が設けられています。

民泊運営での規制対象
  • 家主
  • 住宅宿泊管理業者
  • 住宅宿泊仲介業者

適切な管理・衛生面・安全面の確保を求められます。立地・利便性・宿泊料金設定などを勘案した上で、採算ベースに乗るか否かの事前調査が必須となります。

建て替える場合は収支計算や事前調査を綿密に行う

空き家の建て替えをして新たな賃貸物件を提供する場合、投資費用も大きくなり、リスクも大きくなります。したがって事前調査や収支計算などを綿密に行い採算ベースに乗るか否かの厳しい点検を行う必要があります。

建替えには空き家の解体費や賃貸物件の新築工事費が必要になります。その投資額を上回るだけの回収を見込めるのか否かの事前調査結果が、大きなカギとなります。少なくとも10%以上の利回りを確保できる事業計画に仕立てる必要があります。民泊は一般的な賃貸住宅と比較しますと、必要経費も大きくなります。利回りが下がりますと途端に手残り額はマイナスとなりますので、注意が必要です。

更地で貸出しても借り手や買い手がいないこともある

空き家を解体して更地にし駐車場や事業用貸地として貸出すことや住宅分譲地として売却を計画する場合の注意点です。立地によっては借り手も買い手も見つからないケースがありますので、この活用方法についても事前調査が重要になります。目途を立ててからの着手を行うようにします。

空き家を相続することになったら?

 

空き家を相続することになる場合、どうすればよいのですか?

 
 

空き家の築年数や立地などを考慮し、相続放棄や売却、一旦所有、自身で居住などの選択肢となります。

 

相続しない選択肢もある

例えば長期間に亘り空き家になっている実家であれば、相続する気になれない場合もあります。仮に相続したとしても将来において住む予定もなく、固定資産税・都市計画税などの維持費がかかるだけの場合、相続放棄という方法もあります。しかし相続放棄を選択する場合、所定の手続きが必要になります。被相続人の死亡を知った時から3か月以内に相続放棄の手続きを行う必要があります。3か月以内に決められない場合、相続放棄申請の期間延長の申立てが必要になります。

ただし相続放棄は空き家を含めた全ての財産を同時に放棄する決まりがあります。空き家だけを相続放棄し現金や有価証券などの金融資産だけを相続することはできません。また相続人それぞれの考え方も異なるのが一般的ですので簡単にまとまらないこともあります。したがって相続放棄という選択肢はありますが、簡単に手続きが進まないというのが実情です。

空き家を処分か売却する

相続した空き家の処置方法として、次に考えられる方法は売却して処分することです。特に地方の空き家の場合、不動産価格は年々下落傾向にありますので、売却できる時に売却した方が良策といえます。しかし築年数や立地などの要因により、売却したくても売却できない空き家もあります。最近では長期間に亘り売却にて処分できない空き家を、逆にお金を渡して処分する人もいます。

MEMO
万が一、放火などにより火災に見舞われた場合、近隣に迷惑を及ぼさないための処置です。

一旦所有しておく

相続した空き家に直近で住む予定はないのですが将来において自身や子供などが住む可能性がある場合、一旦所有しておく方法もあります。空き家が遠方にある場合、少なくとも3か月に1回程度、窓を全開して換気するなど最低限度の維持管理をしながら所有し続けます。

MEMO
それも困難な場合、比較的低料金にて、空き家の維持管理を行うサービス会社もありますので利用を検討してみるのも良いです。

相続した本人が居住する

相続した空き家を売却や貸すことができない場合、最終的に本人が居住することも、考えにいれておく必要があります。利用の仕方としては週末利用や夏休み・年末年始などの長期休暇利用なども考えられます。自治体によっては補助金や助成金の支給を行います。事前に調査して確認をしますと他にも良い情報を得られる可能性があります。

まとめ

以上、空き家の活用方法や空き家対策の実情、貸出す際の注意点、相続する際の対処法について解説しました。空き家の活用方法や処分方法を積極的に検討することにより空き家の購入戦略と出口戦略に言い換えることができます。不動産価格が高止まりしている状況下において、安価な空き家を積極的に仕入れ、賃貸物件として活用する方法もあります。

一方、空き家を相続しなければならない状況に関しても立地や築年数を勘案して、様々な活用方法や処分方法を採用することができます。空き家の存する自治体とも相談した上で最適な処置方法を模索する必要があります。所有する空き家を最大限に活かすためにも、ここで案内しました活用方法や処分方法を併せて検討されることをお勧めいたします。