下駄履きマンションとは?デメリットや構造、資産価値と気になるゴキブリ被害について

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  1. 「下駄履きマンション」は低層階部分が店舗・事務所・駐車場といった非住居として使用されているマンションの俗称
  2. 1階も居住目的で建てられるマンションより脆弱であることは否めない
  3. どのようなテナントが入っているか、過去にトラブルはなかったかなどを事前に確認することが大切

「下駄履きマンション」という言葉を耳にしたことはあるでしょうか。

低層階部分が店舗・事務所・駐車場といった非住居として使用されているマンションの俗称です。都心部では特によく見かけるかもしれません。

では、下駄履きマンションはどのような構造で、どのようなメリット・デメリットがあるかご存知ですか。この記事では下駄履きマンションについて詳しく解説します。購入を検討している物件が下駄履きマンションだった場合、ぜひ参考にしてくださいね。

下駄履きマンションのデメリット

下駄履きマンションにはデメリットがあることを知っておきましょう。入居者はもちろん、事業者にとってもリスクがあることを把握しておくべきです。

一階が飲食店などの複合型マンションの場合はゴキブリなどができることも

1階部分にどのようなテナントが入っているかは重要です。コンビニやスーパーなら日用品の調達が容易になる、人の出入りがあるため安全といったメリットが入居者にもあります。

反面、深夜にも人が集まることや荷物の運搬などにより騒音が発生するリスクもあります。複合型マンションのテナントで最も多いのは飲食店ですが、騒音、臭い、ゴミ、害虫・害獣(ゴキブリやねずみ)といったトラブルの元を抱えています。

 

ゴミの捨て方が悪いと衛生面で問題が生じますし、ゴキブリは一度発生すれば上層の住宅部分にまで侵入するおそれがあります。また飲食店の種類によっては臭いトラブルに発展することも。

騒音や害虫は1階に近いほど影響を受けやすいですが、臭気は最上階であっても悩まされるかもしれません。

飲食店はカフェなどの「軽飲食」と焼肉店、焼き鳥店、居酒屋などの「重飲食」に分けられますが、後者は排気量が多いので要注意です。

なお入居当初は問題なくてもテナントが入れ替わりトラブルが発生するおそれもあります。「重飲食不可」と謳っていれば少なくとも排気に悩まされる可能性は低くなるので、事前にチェックしておきましょう。

事業者は下駄履きマンションにはリスクがあることを知っておくべきです。収益性の面でメリットはありますが、住民同士のトラブルに発展すれば入居者が減る、資産価値が下がるといったデメリットが生じかねません。使用目的の異なる住民が全員快適に過ごすためには、管理も重要だと認識すべきです。

 

ゴキブリはやっぱり出るんですね…。

 

 

食べ物や水があるところに繁殖しやすく、雨どいや通気口から侵入するそうですよ。一度発生すると根絶するのは難しいので厄介ですね。

 

構造的に地震に弱いと言われている

下駄履きマンションは地震に弱いと言われています。理由は前述したとおり、1階部分の壁量が少ないためです。1階部分が駐車場として使われる下駄履きマンションなら騒音やゴキブリなどのデメリットを避けられますが、壁のない独立した柱は圧縮による大きな力に弱く、大地震が起こった際にリスクがあります。

事実、阪神淡路大震災や熊本地震においてピロティ形式の下駄履きマンションは大きな被害を受けたそうです。一方東日本大震災時の津波ではピロティ形式の下駄履きマンションは水の逃げ場があり被害が少なかったという報告もあります。近年水害も増えているので、安全性について一概に判断することは難しいのが現実です。

注意
こしかしながら柱のような構造上重要な箇所に大きな損傷が発生すると、部分的な補修では済まない可能性が高いでしょう。

下駄履きマンションとは

下駄履きマンションは主に1〜2階部分が店舗・事務所・駐車場といった住居以外の用途で使われているマンションを指します。

上層階は住居として使われます。壁量が少なく下駄の歯のように見えることがこの俗称の由来です。1階部分の住居は嫌厭されがちです。防犯やプライバシーの面が気になるという人が多く、入居率が悪かったり、価格を安くせざるを得ないことも。

反対に店舗の場合は人の出入りがしやすい1階部分のテナントに人気が集まります。住居用よりも高い家賃設定が可能で保証金も受け取れるため、収益性が高いです。

そのため下駄履きマンションは全国で数多く建てられています。1階部分にコンビニやスーパーが入っているマンションはその典型でしょう。

入っている店舗にもよりますが、利便性が増すなど入居者にもメリットがあります。店舗と住宅の出入り口が分かれていれば、プライバシーの面での大きな心配はいりません。

 

事業者に大きなメリットのある下駄履きマンションですが、入居者が気になるのは構造上のリスクやデメリットについてですよね。次章から詳しく解説します。

 

下駄履きマンションの構造について

前述したように下駄履きマンションは1階部分の壁量が少ないのが特徴です。店舗の場合は住居よりも壁や柱が少なく、大部屋状態であることがほとんどです。

また駐車場として利用されている場合柱だけで支える構造、いわゆるピロティ形式となるため、より耐震性への配慮が必要です。特に旧耐震基準(1981年5月31日以前に建築確認)で建てられたマンションには注意しましょう。

 

近く大地震が起こるかもしれないと言われているので、構造の面で下駄履きマンションは心配です。

 
 

面で支える構造の方が強いことは確かなので、強い不安があるなら下駄履きマンションは避けたほうがいいかも。

 
 

下駄履きマンションの資産価値に対する考え方

マンションを購入するにあたって、将来に渡り資産価値が下がらないかは気になるところでしょう。その点、下駄履きマンションは資産価値が下がる心配が拭えません。資産価値は築年数が経過するほどに下がるのが一般的ですが、以下の要素があれば落ちにくいと言われています。

資産価値が落ちにくい要素
  • 立地が良い(都心にある、都心へのアクセスが良い、駅近など)
  • 生活の利便性が高い(周辺に病院や学校、商業施設があるなど)
  • 人気や将来性がある(再開発の予定がある、住みたい街に選ばれているなど)
  • 安全性が高い(犯罪が少ない地域、頑強な構造であるなど)

下駄履きマンションはその構造ゆえ安全性に不安があります。同じ地域に建つ1階部分が住居となっているマンションと比べると、資産価値の下落幅は大きいかもしれません。

マンション購入を検討する際は立地だけでなく安全性も考慮し、将来の資産価値の暴落に備えるのがおすすめです。

 

資産価値が下がると売りたい金額で売れないのはもちろん、入居率が下がって管理費や修繕積立金が集まらないといった結果になりかねません。

 

まとめ|下駄履きマンションはデメリットもあるが便利な面も多い

下駄履きマンションについて詳しく解説しました。階下にコンビニなどがあれば生活は便利になるかもしれませんが、下駄履きマンションにはリスクもたくさんあります。

住民トラブルに発展するケースも少なくないため、どのようなテナントが入っているか、過去にトラブルはなかったかなどを事前に確認しましょう。

また、近年建てられたマンションは厳格な耐震基準に沿っているとは言え、1階も居住目的で建てられるマンションより脆弱であることは否めません。それゆえ、資産価値が下がるリスクも孕んでいます。下駄履きマンションの購入を検討するなら、注意点をしっかり確認して後悔のないようにしてくださいね。