不動産(土地や家)の権利書を紛失したらどうする?再発行の可否や権利書の種類、売買活動について解説

不動産権利書のまとめ
  1. 権利書の再発行は不可
  2. 不動産の権利書を紛失しても不動産売買を行える
  3. 紛失での大きなリスクは基本ない

不動産には従来権利書というものがあります。 これはその不動産(土地や家)が誰の所有しているものかを記しているもので不動産の所有者、権利者であることを証明する書類です。

不動産は大きな金額によって売買が可能な固定資産です。 誰かの資産であるか、どこにあるかを証明し登記することになりますが、登記済みであることを証明するために権利書が存在します。

大切に保管すべき権利書ですが、これを万一紛失したらどうなるでしょうか。 権利書の種類や紛失時の対応について解説します。

不動産(土地や家)の権利書は紛失すると再発行不可

権利書を紛失した場合、不動産の所有権を証明する書類が手元になくなってしまいます。

これは紛失したとして再発行を願い出ること、再発行してもらうことは可能でしょうか。

実は権利書を紛失しても再発行はできません。

では不動産所有の権利を証明することはできないのでしょうか。 また紛失することで、所有権に左右するなど、大きなデメリットはあるのでしょうか。

権利書を紛失しても不動産の所有権を失わない

権利書は「登記済権利書」という書類で土地所有者を証明するための書類として手元に厳重管理すると考えられてきました。

平成18年(2005年)に法改正されており法改正以降の登記に関しては、すべてオンライン化されています。

そのため登記情報は「登記識別情報」という電子情報として管理されています。 法改正後の登記情報は権利書として発行されません。

MEMO
それ以前の権利書については法務局に保管されている原本の複製です。

土地売買を行うときに権利書を必要とする場合には、法務局の原本と内容が一致していることが証明されれば問題ありません。

所有しているという証明である権利書を紛失しても所有しているという事実は変わらず、もちろん所有権を失うということはありません。

権利書には紙とパスワードの2種類の権利書がある

法改正を挟んでいるため法改正以前と改正後に、権利書とされるものは2種類あります。

従来権利書と呼ばれていた紙による「登記済書」と、パスワードで識別する権利書である「登記識別情報」です。 この違いを説明します。

所有権の権利に関する登記済証

手元に「権利書」を持っている場合それがもっとも重要な書類と考えますが「登録済証」と呼ばれる書類の、この原本は違う場所に保管されています。

不動産を売買する時に法務局に登記します。購入や譲渡により不動産が自分の所有物となったときに、法務省に「土地の申請書」を提出します。

このときに申請書の副本である証明書を受け取りますが、これが権利書です。

MEMO
つまり手元にあるのは副本であり原本は法務局に保管されています。 「登記済証」と言われる書類の副本としての権利書が個人に発行されていたのです。

ただこの登記済証は平成18年の法改正により電子情報の登記識別情報に変わっています。

これは次の項目で説明します。

パスワードの権利書(登記識別情報)

不動産登記をしたとき、それが完了すると登記完了証が交付されますが、このとき12桁の英数字で構成されたパスワードのようなものが知らされます。

これが登記識別情報で、その不動産を所有していることを証明するためのものです。

MEMO
法改正後はこれが電子情報としての権利書になります。

不動産の権利書を紛失しても不動産売買を行える

権利書を紛失してしまい自分が該当する不動産の所有者であるという書類が手元にない場合、不動産売買に支障が出るのでしょうか。

権利書の紛失をしても不動産売買は行えます。

前述のとおり権利書は副本です。 情報としての原本は別の場所で公的に保管されています。 要は不動産を登記した情報にある内容と自分の情報が一致すればいいのです。 これを解説します。

事前通知制度で不動産売買する

不動産売却ではまず不動産登記を行います。 このときに権利書の紛失により自己所有の不動産である証明ができないということが認められるように手続きをすればいいのです。

これが認められると登記所から本人確認のための書類が郵送されてきます。これは土地の登記名義人の住所に対して送られます。

この書類を登記所に返送することにより不動産所有者と証明されます。

注意
これには期日が設けられており日本国内では2週間、海外なら4週間以内に返送しなければなりません。手数料も不要です。

司法書士の本人確認情報提供制度を利用して売買する

事前通知制度の場合、自分で手続きを行い期日も決まっています。 時間が取れない場合は司法書士の本人確認情報提供制度があります。

司法書士や土地家屋調査士など不動産売買にかかわる専門家に頼み、本人確認情報を登記所に送ってもらうなどの手続きを代行依頼します。

手数料が必要ですが、手続きは確実で自分でしなければならない手間を省くことができます。

MEMO
仕事で忙しい場合や書類手続きが苦手な場合には、これを利用するといいでしょう。

公証人による本人確認情報制度を利用して売買する

「公証人による本人確認情報制度」を利用する方法もあります。 公証役場で手続きをします。 公証人の立ち会いのもと所定の手続きを行い、その委任状を権利書として公的に認めてもらうやり方です。

注意
印鑑証明書、実印、委任状が必要になります。

自分で手続きができないものの司法書士など専門家に払う手数料にも躊躇するという場合は、こちらを利用するのがいいでしょう。 専門家に払う手数料より安く済み手続きは公的手続きで確実に進められ安心です。

不動産の権利書を紛失した時のリスクは基本ない

権利書を紛失したときに気になるのが権利書紛失ということで負わなければならないリスクです。 売買に不都合が出るかという点では原本が別保管されていることで、諸手続きを踏めば売買も成立し特に心配はいりません。

本人の所有物件である証明に手続きが必要になるだけで、大きなリスクはありません。 また紛失による悪用も、それほど心配はないと考えていいでしょう。

権利書を個人だけが保有しているのであれば悪用もあり得ますが原本が法務局にあり売買で登記が行われるときには原本との一致を確認するため慎重かつ厳密な審査があります。

MEMO
盗まれて悪用されるという点では、ここで登記可否審査があるため、心配はありません。

また法務局に届け出る「不正登記防止届出」があります。 届出から3カ月間の間に法務局に出された登記情報を知らせてもらえます。 身に覚えがない登記があれば、これでわかります。

注意
これを届け出るには個人は印鑑証明書、法人は資格証明書が必要となります。

まとめ

権利書は不動産所有者が持つ最重要書類であるという認識が強く、これを紛失したら不動産所有者という証明も売買もできないと思っている人も多いかもしれません。

権利書の原本は法務局に保管されており手元にあるのは副本、いわばコピーです。

万一紛失しても不動産所有者である証明をする方法はいくつかあり、権利書の再発行はできませんが売買や登記に大きな支障が出ることはありません。

ただいくつかの手続きを踏む必要は出ます。 権利書や登録実印は大切に保管するに越したことはありません。 紛失での大きなリスクはありませんが大切に保管するようにしましょう。