太陽光発電付き住宅を売却する方法!名義変更をしないとどうなる?買取の相場は?

太陽光発電付きの中古住宅を売却するには?

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のまとめ
  1. 太陽光発電付きの家を売却するには?
  2. 太陽光発電付きの中古住宅を名義変更しないとどうなる?手続きは?
  3. 太陽光パネル付きの家の買取の相場は?高く売却するコツ

太陽光発電付きの家を購入後、その中古住宅を売却する場合に太陽光発電設備が古いとそのままの状態で売却した方が良いのか?取り外した方が良いのか迷うところです。

特に補助金交付を受けて太陽光発電設備を設置した場合、売却していいものなのか取り外していいものなのか悩むところです。また、名義変更をしないとどうなるかも気になるところです。

しかし太陽光発電関係者に事前に連絡を入れると、案外すんなり解決します。

多くの住宅に関する相談事に携わった不動産コンサルタントが必要な手続きや注意点、高く売却するコツなどをやさしく解説します。

太陽光発電付きの中古住宅を購入した後、必要な手続きを踏まえて一番有利になる状態で売却できるノウハウがわかります。

太陽光発電付きの中古住宅を名義変更しないとどうなる?必要な手続き

太陽光発電付きの中古住宅を売却するには名義変更等の手続きが必要

 

太陽光発電付きの中古住宅を売却する場合、どの様な手続きが必要ですか?

 

 

経済産業省への名義変更手続きや電力会社への契約者・振込口座変更手続き、太陽光発電協会(J-PEA)への財産処分承認申請を提出・承認を受ける必要があります。

 

必要な手続き
  1. 経済産業省に名義変更を提出する
  2. 契約者と振込口座の変更を電力会社に連絡する
  3. 太陽光発電協会(J-PEA)に「財産処分承認申請書」を提出し、承認を受ける

1.経済産業省に名義変更を提出する|名義変更しないとどうなる?

太陽光発電の名義変更が生じますと経済産業省に対して名義変更手続きが必要になります。固定価格買取制度(FIT)を利用して電力を売却している場合、太陽光発電の「事業計画認定」を受けています。

「事業計画認定」には所有者、設置場所、設置容量・規模などが記載されています。太陽光発電付きの家として売却する場合、所有者が変りますので、経済産業省に対して名義変更手続きが必要になります。

名義変更しないとどうなる?

名義変更する場合、申請義務者は太陽光発電の新たな所有者になる買主になります。

その際、提出書類の一つに売主の印鑑証明書が必要です。

名義変更せずに家の引渡しがなされた場合、将来において太陽光発電設備の取替などの際に、売主の印鑑証明書が必要になり困ることとなります。

2.契約者と振込口座の変更を電力会社に連絡する

太陽光発電の名義変更が生じますと契約者と振込口座の変更を電力会社に対して連絡・手続きする必要があります。手続きをしないと買主に売電価格が振込されずトラブルとなります。変更手続きには時間がかかりますので、家の引渡し後においても売主に売電価格が振込まれることになります。

そのため事前に不動産会社を通して家の引渡し日を境とし、売電価格の受取分を調整・按分し、売主・買主双方において確認することが大切になります。また電力会社の中には経済産業省の名義変更手続き書類を求めることもありますので確認が必要です。

3.太陽光発電協会(J-PEA)に「財産処分承認申請書」を提出し、承認を受ける(※2)

太陽光発電の名義変更が生じますと公的な補助金交付を受けている場合、太陽光発電協会(J-PEA)に対して「財産処分承認申請書」を提出・承認を受ける必要があります。特に補助金交付を受けた場合、太陽光発電設備の法定耐用年数である17年間は保守・管理する条件があります。

注意
処分・売却する場合、その前に申請をする必要がありますので注意が必要となります。

太陽光発電付き住宅を売却する時は3つの選択肢がある

太陽光発電付きの中古住宅を売却する時は3つの選択肢がある
 

太陽光発電付き住宅を売却する場合、どの様な選択肢が考えられますか?

 
 

そのままの状態での売却や太陽光発電設備を処分しての売却、太陽光発電を移設しての売却といった3つの方法があります。

 

売却の三つの選択肢
  1. 太陽光発電付きの家として売却する
  2. 太陽光発電を処分して家を売却する
  3. 新しい引っ越し先に持っていく

1.太陽光発電付きの家として売却する

太陽光発電の経過年数が浅い場合には買主にメリットを感じていただけますが、経過年数がかなり経つ場合には買主にデメリットを感じさせることもあります。太陽光発電付きの家として売却する場合、太陽光発電の経過年数により家の売却価格に太陽光発電設備費用の上乗せができるか否かが決まります。

経過年数が浅い場合ですと必要経費(点検検査費・維持修繕費・清掃費など)がそれほどかかりませんが、経過年数がかなり経ちますと必要経費がそれなりにかかります。

2.太陽光発電を処分して家を売却する

古い太陽光発電の場合には必要経費が嵩みますので太陽光発電を処分してから家を売却することを検討される方が良いです。買主候補者に対して古い太陽光発電には必要経費が生じることを説明する義務があります。必要経費が生じることを買主候補者が知るとデメリットを感じて購入を控える傾向になるからです。

また売主側にしても古い太陽光発電が原因で売却できない期間が長くなりますと、その間の太陽光発電の必要経費に加えて固定資産税や火災保険などの家の必要経費も嵩むことになります。結果として太陽光発電の処分費用を売却できない期間の太陽光発電や家の必要経費が上回りかねない事態となります。

MEMO
早く家を売却するための経費と考えて、売却開始前に太陽光発電を処分することも選択肢の一つです。

3.新しい引っ越し先に持っていく

太陽光発電設備を引っ越し先へ移設することも考えられますが、費用対効果は小さくなります。移設する場合、太陽光発電設備の取外し費用、取外し後の屋根・外壁の修繕費用、運搬費用、引越し先での設置費用などが必要になります。場合によっては太陽光発電の新設費用とそれ程変わらない費用になる可能性があります。

また引越し先での設置がマンションであったり障害物などにより、そもそも設置不可となる場合もありますので事前の新居周辺環境の確認が必要です。電力会社との再契約も必要になり売電価格などの条件がこれまでよりも悪くなる可能性もあります。

注意
さらに移設の場合にはメーカー保証が受けられなくなりますので太陽光発電の移設はお勧めできません。

太陽光発電付きの家は売却時に有利になる・ならないケースについて

太陽光発電付きの中古住宅の売却時に有利になる・ならないケース
 

太陽光発電付きの家が売却時に有利になる・ならないケースについて教えてください。

 

 

 

通常、太陽光発電設備を設置して10年未満であれば有利になり、10年を越え収支がマイナスだと有利になりません。

 

 

1.太陽光発電設備を家に付けて10年未満なら有利になる

太陽光発電設備の設置から10年未満ですと発電量10kw未満の場合には「固定価格買取制度(FIT)」(*1)期間中になります。所有者に変更があっても設置時の契約内容を引き継ぐことができます

また発電量10kw以上の太陽光発電の場合には固定価格買取期間が20年となるため、20年以内の家の売却であれば有利に働きます。さらに発電による電気が「全量買取」の場合には売電価格も大きくなり収入もアップしますので、家の売却のアピール材料にもなります。

太陽光発電の保証はJISの基準で最低10年間の無料保証が規定されています。メーカーにより保証期間は異なり確認が必要ですが、少なくとも10年以内の維持・修繕費用はかからないため太陽光発電付きの家の売却は有利になります。

 

太陽光発電付きの中古住宅の場合、太陽光パネルには寿命もありますからね。売却するかどうか早めに検討した方がよいでしょう。

 

 

*1 固定価格買取制度:再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。対象となる再生可能エネルギーは、太陽光・水力・風力・バイオマス・地熱の5つです。(※1)

2.10年経過すると売却金額に影響しないが売りやすくなることが多い

太陽光発電設備の設置から10年経過した段階で査定価格は0になる可能性が高くなります。しかし電力を自家消費できますので災害時には非常用に使用できるという理由で家の売却には有利に働くこともあります。

査定価格が0になる理由は家庭用太陽光発電の売電価格は通常10年間の「固定価格買取制度(FIT)」での契約が大半を占めます。10年を経過しますと固定価格買取制度が終了し自動継続の契約の場合にはこれまでと同じ電力会社へ売電することになります。

自動継続の契約がなされていない場合には、いずれかの小売電気事業者へ申込をした上で買取契約を結ぶことにより売電することができます。いずれにしても売電価格は大きく下がることになり太陽光発電の査定価格は0になる可能性が高くなります。

査定価格が0になるもう一つの理由は太陽光発電設備の保証期間は通常10年間となりますので、維持・修繕費用の出費が伴うようになり収支がマイナスになる可能性があるからです。

3.年数の他にも蓄電池付きならかなり有利になる

蓄電池付きの家となりますと災害時などに非常用電源として電力使用ができますので有利に働きます。太陽光発電設備だけになりますと電気の使用時間は昼間に限られます。蓄電池が付加されますと昼間に発電した電力を蓄電することができますので、夜間での使用も可能となります。

地震・水害などの災害が増加している中、「太陽光発電設備+蓄電池設備」は強力なセールスポイントになります。

MEMO
最近では電気自動車の普及も高まり家と自動車の電力の相互交換もできる様になりました。それも蓄電池設備のある家ならではのメリットとなります。

太陽光発電を設置した状態で家を売却する注意点

太陽光発電付き中古住宅を売却する際の注意点
 

太陽光発電付きの家を売却する場合の注意点を教えてください。

 
 

補助金を受けている場合には売却前に申請・承認を受ける必要があります。その際、補助金返還が伴う場合がありますので注意が必要です。

 

売却する際の注意点
  1. 国から補助金を受けていた場合、全額返納が必要になる場合がある
  2. 都道府県や市町村の補助金を受けていた場合、自治体への確認が必要

1.国から補助金を使って設置し、17年未満の売却時は全額返納が必要になるケースもある(※2)

太陽光発電に対して国から補助金交付を受けた場合17年未満での家の売却は補助金返還が必要になります。法定耐用年数である17年間は補助対象システムを保守・管理する必要があります。

17年未満での補助対象システムの全部もしくは一部を撤去もしくは手放すなどの処分をする場合、事前の「財産処分承認申請」が必要になります。太陽光発電協会へ「財産処分承認申請」をしますと、「補助金返還通知」が郵送され、通知発送日から20日以内に補助金の一部返還が必要になります。

2.都道府県や市町村の補助金を使って設置した場合は自治体に確認が必要

都道府県や市町村の補助金を使って太陽光発電設備を設置した場合、家を売却した際に手続きが必要か不要か自治体により異なりますので、事前の確認が必要になります。

太陽光発電を撤去・移設する際の手続きについて

太陽光発電を撤去、移設する際の手続き

太陽光発電付きの家を売却する場合、売却する前に全員が必要な手続きは下表の通りです。

 手 続 き必要書類
経済産業省「軽微変更届」を提出前所有者の印鑑証明書
電力会社契約者名と振込口座の変更届経済産業省への変更届が受理された証明書を求める電力会社も有り

1.太陽光発電を撤去して売却する際の手続き

国から補助金交付を受けた場合、太陽光発電を撤去する前に太陽光発電協会へ申請・承認を得る手続きが必要です。 太陽光発電設備の設置から10年以上経過しますと、固定価格買取制度が終了して売電価格が下落します。またメーカーによる保証期間も大半が終了しますので、修繕・維持費がかかるようになります。

売電による収入よりも、修繕・維持費や点検・管理費などの必要経費による支出の方が多くなることもあります。そのため収支がマイナスになり、撤去した方が売却し易くなります。撤去した場合の費用として、撤去・処分費や屋根・外壁などの修繕費がかかります。

また国から補助金交付を受けて太陽光発電設備を設置した場合、撤去する前に太陽光発電協会へ下表の手続きが必要になります。

太陽光発電協会の必要な手続きの図

2.太陽光発電を新居に移設する際の手続き

太陽光発電設備の新居への移設は技術的には可能ですが、デメリットが多くなります。手続きなどは下表の通りです。

 手続き・費用・他
電力会社設置個所の移設届が必要
メーカー設置個所の移設届が必要、保証が無くなる可能性有
所有者(本人)取外し費、旧居での屋根・外壁の修繕費、運搬費、新居での設置費などが必要トータルで約100万円前後必要

太陽光発電の分野は日進月歩で技術改良が施されているため、性能は年々良くなり売電量は増加しています。したがって、 古い太陽光パネルを移設するよりも新たな太陽光パネルを設置した方が得策といえます。

太陽光パネルの買取の相場は?|太陽光発電付きの家を売却するコツ

太陽光発電付きの中古住宅を売却するコツ
 

太陽光発電付きの家を売却するコツは何ですか?

 
 

太陽光発電の収支を買主に提示して情報開示することや一括査定サイトを利用して頼れる不動産会社を見つけることです。

 

売却するコツ
  • 太陽光発電の収支を買主に提示する
  • 一括査定サイトを利用して、頼れる不動産会社を見つける

1.太陽光発電の収支を買主に提示する

買主にとって売電価格は魅力になります。太陽光発電の必要経費として、定期点検費・維持・修繕費、保険費・パワーコンディショナーの電気代があります。その収支を買主に提示する必要があります。下表に収支項目・内容や確認事項をまとめます。

太陽光発電の収支項目・内容や確認事項の図

点検・検査内容の記録や修繕・補修の記録を残しておくと買主に対して好印象を与えることができます。

収支がプラスになれば家の売却に有利に働きますし収支がマイナスであれば家の売却にやや不利に働く可能性がありますが、何よりも情報開示が重要になりますし、好感を持たれることができます。

2.一括査定サイトを利用して、頼れる不動産会社を見つける

太陽光発電付きの家を売却するにあたり太陽光発電設備をそのままの状態で売却した方が良いのか?撤去して売却した方が良いのか?迷うところです。

そんな場合は一括査定サイトを利用して頼れる不動産会社を探してみるのも方法の一つです。

設置している太陽光発電の正確な情報(築年数、売電単価、売電実績など)を伝えると、すぐに査定してもらえます。

残した方が家を売却し易いのか、撤去した方が家を売却し易いのかを根拠を提示して査定してくれます。

また、太陽光パネルを売却したい等の希望が出てきた場合も相談をして買取の相場なども教えて貰う事をおすすめします。

不動産会社の的確な判断により太陽光発電付きの家をより高く売却することができます。

まとめ|太陽光発電付きの中古住宅を売却!名義変更しないとどうなる?

太陽光発電付きの家を売却する時の選択肢、注意点、手続き、売却するコツなどを解説しました。家を売却する時点で固定価格買取制度期間中(設置して10年以内)にあるのか無いのかがポイントになります。また売却する手続きの主な対象として経済産業省・電力会社・太陽光発電協会の3者があります。いずれも売却する前に手続きを済ませておくことがポイントです。

さらに太陽光発電による整理された収支情報の開示は買主に好印象を与えることになり、スムースに売却へと流れるポイントになります。以上の3つのポイントを押さえれば、太陽光発電付きの家を問題なく売却することができます。

出所

※1 「再生可能エネルギー 固定価格買取制度」 経済産業省資源エネルギー庁

※2 「財産処分承認申請」 太陽光発電協会