- 火災保険とセットの地震保険は家財も対象にできる
- 一定の基準を満たしていなければ家財を補償の対象にすることはできない
- 地震保険の契約時期によって損害基準と保険金の支払い金額が異なる
日本で頻発する地震災害に備えて、あらかじめ準備しておきたいのが地震保険。地震保険に加入することで地震によって被害を受けた建物自体の損害を補償するだけでなく、家財も保険の対象にすることで、有事の際でも幅広い損害範囲をカバーすることができます。
しかし家財を補償対象にするためには補償金額の対象範囲や限度額、査定方法や計算方法と言った基本的な知識を知っておくことが重要です。
本記事では家財を保険の対象とした地震保険の必要性を知っていただくために、家財を補償対象にする際に押さえるべき基礎知識をはじめ損害基準や保険の限度額や査定方法、計算方法などについて解説します。
火災保険とセットの地震保険は家財も対象にできる
地震保険は火災保険とセットで加入する必要があり、その際に家財を保険の対象として地震保険に契約することで家財も補償対象にすることが可能です。しかし家財を保険の対象にしていても、対象になるものとならないものが存在したり、最悪の場合、保険金が支払われないケースもあるのです。
以下では地震保険で対象となる家財の種類、保険金が支払われないケースについて見ていきます。
地震保険で家財の対象になるものとならないもの
火災保険とセットで地震保険に加入することで自宅の家財を保険対象にすることが可能です。しかし地震及び噴火等の原因で損害を被った場合でも、一定の基準を満たしていなければ家財を補償の対象にすることはできません。
以下では地震保険で家財の対象になるものとならないものについて解説します。
保険の対象になる家財
地震保険で家財が保険対象となっている場合、対象になる家財は居住用建物に収容されている家具が該当します。具体的にはテレビや冷蔵庫などの家電や食器類や机、ベッド、衣類などが含まれます。
保険の対象にならない家財
地震保険で対象にならない家財は次のとおりです。
- 1個または1組あたり30万円を超える宝石や美術品、書画などの嗜好品(高額貴金属等)
- 自動車
- 現金、有価証券、通貨、印紙、預貯金証書
- 営業用に使われる什器、または備品や製品などの動産
- 稿本、設計書、図案、帳簿などに類する物
保険金が支払われないケースについて知っておこう
地震等(噴火や津波なども含む)を起因として建物が損壊や火災、埋没、流失した際に損害を補償する地震保険ですが、以下のケースに該当する場合、保険金が支払われないことがあるので注意が必要です。
- 地震等による被害の範囲が一部損に至らない損害
- 地震等が発生した日の翌日から起算して10日以上経過した際に生じた損害
- 地震等の際における保険の対象の紛失や盗難によって生じた被害
- 門や塀、垣など一部分にのみ生じた損害
地震保険の契約時期によって損害基準と保険金の支払い金額が異なる
地震保険の認定基準は「地震保険に関する法律施行令」の改正を機に、2016年12月末と2017年1月1日以降で大きく異なります。そのため地震保険を契約するタイミングによっては損害の対象となる基準やそれに伴う保険金の支払い金額にも違いがあります。
以下では、それぞれのタイミングでどのように変化したか見ていきましょう。
2016年12月31日より前に契約した場合
2016年12月31日以前に地震保険を契約した場合は次のような損害基準や支払われる保険金額が定められています。
地震等の災害を原因とする火災、損壊、埋没、または流失によって保険の対象について生じた損害が、建物の全損や半損、または一部損に該当する場合、実際にかかった修理や修繕費ではなく地震保険保険金額の一定割合(100%、50%または5%)を保険金として支払うこととされています。
損害の程度 | 支払われる保険金額 |
全損 (家財全体の時価の80%以上) | 100%(時価が限度) |
半損 (家財全体の時価の30%以上80%未満) | 50%(時価の50%が限度) |
一部損 (家財全体の時価の10%以上30%未満) | 5%(時価の5%が限度) |
2017年1月1日以降に契約した場合
2017年1月1日以降に地震保険を契約した場合は次のような損害基準や支払われる保険金額が定められています。
地震等の災害を原因とする火災、損壊、埋没、または流失によって保険の対象について生じた損害が、建物の全損や大半損、小半損または一部損に該当する場合、実際にかかった修理や修繕費ではなく、地震保険保険金額の一定割合(100%、60%、30%または5%)を保険金として支払うこととされています。
損害の程度 | 支払われる保険金額 |
全損 (家財全体の時価の80%以上) | 100%(時価が限度) |
大半損 (家財全体の時価の60%以上80%未満) | 60%(時価の60%が限度) |
小半損 (家財全体の時価の30%以上60%未満) | 30%(時価の30%が限度) |
一部損 (家財全体の時価の10%以上30%未満) | 5%(時価の5%が限度) |
地震保険の限度額と保険金額について
地震保険は火災保険とセットで契約することで地震や噴火、津波などの自然災害に見舞われた場合でも建物及び家財の損壊などを補償してくれます。しかし地震保険はあらかじめ契約できる保険金額の範囲や上限が定められており、そのなかで損害をカバーしてくれる保険のため適用範囲を知っておくことが重要です。
以下では保険金額の範囲及び最高限度額について解説します。
保険金額は火災保険の30%~50%以内で決定される
地震保険の保険金額は火災保険の保険金額の30%から50%以内の範囲で設定することが可能です。そのため火災保険の支払い限度額(保険金額)を1,000万円の50%と設定した場合、地震保険の保険金額は500万円(30%であれば300万円)と言うことになります。
建物上限5,000万円、家財の上限金額は1,000万円まで
保険金額の範囲内で建物は上限金額5,000万円、家財に関しては上限金額1,000万円までとされています。
家財の査定方法と計算方法
ここまで家財の補償に対する基準や限度額について見ていましたが、一概に家財が破損したからと言って、すべての家財が補償の対象になるわけではありません。事実、家財によっては具体的に種類と構成割合が定められており、その範囲内での支払いになることが一般的です。
以下では家財の査定方法と具体的な計算方法について解説します。
家財の種類と割合について
家財の査定をおこなう際、家財は大きく5つの種類に分けられ、そこで決められた構成割合によって計算されていきます。以下では家財を5種類に分類した内容と構成割合について紹介します。
分類 | 代表品目 | 1品目 | 最大 |
食器陶器類 | 食器、食料品 調理器具、陶器置物 | 1% | 5% |
電気器具類 | テレビ、冷蔵庫 洗濯機、パソコン | 2.50% | 20% |
家具類 | 食器棚、衣装棚 机・椅子、ソファー | 4% | 20% |
その他身の回り品 | 靴、鞄、スポーツ用品 書籍、カメラ | 2.50% | 25% |
衣類寝具類 | 衣類、寝具等 | 15% | 30% |
また5種類に分類された中から、さらに代表品目別にそれぞれ細分化されて分類されています。以下では実際の査定方法を計算していきます。
【例】査定の計算方法を実際に計算してみる
例として地震の揺れによってテレビ1台とパソコン1台、冷蔵庫1台、食器棚1台の4点が破損したとします。電気器具類の構成割合は2.5%、家具類の構成割合は4%となるため、2.5%×3点(テレビ、パソコン、冷蔵庫)と4%×1点(食器棚)の数値を合わせると11.5%の損害となります。
この事例の場合、11.5%の破損は一部損の損害基準に該当するためこれらの家財は補償対象に含まれます。
結局、地震保険で家財も保険の対象に入れて契約するべきなの?
近年大きな地震や広範囲に被害をもたらす地震が全国各地で発生しています。地震調査研究推進本部が発表する「全国地震動予測地区2018」によると、今後30年のうちに震度6弱以上の揺れに見舞われる確率がない地域がどこにもないことが発表されているのです。
そこで、これまで以上に重要性を増すのが火災保険とセットで加入することができる地震保険の存在と言えます。これまでは各地域における地震の発生頻度や確率に応じて、火災保険のみ、または地震保険でも建物だけを補償対象にすることが一般的でしたが有事の際に備えて、これからは家財も保険の対象に入れて検討することが求められます。
まとめ
本記事では地震保険の補償対象に家財を入れるべきかを踏まえ、保険の重要性をはじめ、対象となる損害基準や支払われる保険金額、家財の査定方法や計算方法について解説してきました。近年相次ぐ大規模な地震によって、建物などが被害を受けることは、もはや他人事ではありません。
そのため、これまで火災保険のみに加入していた世帯でも、被災後の生活及び立て直しの基盤(原資)となる地震保険を検討するようにしましょう。