- 不動産取得税の概要と注意点
- 不動産取得税の軽減措置・免税の種類
- 不動産取得税の軽減措置を受ける方法と必要書類
戸建などの不動産を購入すると意外に忘れがちな税金である「不動産取得税」には注意が必要です。というのも不動産取得税は軽減措置があるものの物件によっては高額になる可能性もあるからです。
そこでこの記事では主に新築戸建てを購入したときにかかる不動産取得税について解説していきます。なおマンションや中古戸建てでも概ね同じなので、この記事を読めばどの不動産を取得するときでも対応できます。
中村編集者
不動産取得税とは?
まずは不動産取得税に関して以下を解説します。
- 不動産取得税の概要
- 不動産取得税に関する注意点
不動産取得税の概要
不動産取得税とは土地や建物といった「不動産」を購入(取得)したときにかかる地方税のことです。不動産を「取得」したときといっても以下のように課税されるケースとされないケースがあります。
- 購入:課税される
- 譲渡:課税される
- 建物の増改築:課税される
- 等価交換:課税される
- 相続:課税されない(相続税がかかる)
「購入」には新築の建物を建築したときも含まれますし、新築マンションや中古戸建てを購入したときも含まれます。等価交換とは等価(同じ価値)の不動産を交換することであり、あまり多いケースではありません。一般的に等価交換の場合は金銭の受け渡しはありませんが不動産取得税はかかります。
不動産取得税に関する注意点
不動産取得税に関しては以下注意点があることを認識しておきましょう。
- 不動産取得税の請求は忘れたころに送付される
- 購入時の諸費用になっていないことがある
不動産取得税の請求は忘れたころに送付される
不動産取得税は地方税なので都道府県の税事務署から納税通知書が送付されます。ただ送付されるのは不動産を取得してから半年~1年後なので注意が必要です。
事務員
中村編集者
購入時の諸費用になっていないことがある
また一戸建てやマンションを購入するときは、不動産会社から購入時の諸費用の概算が提示されます。しかし不動産取得税は「不動産購入で発生する税金」になるので、諸費用として提示されないことが多いです。
たとえば諸費用の項目の欄外に「不動産取得税:○○万円(参考)」と表記されていたり、不動産会社によっては表記すらされなかったりすることもあります。しかし当然ながらどの不動産にも不動産取得税がかかる可能性があるので、その点は認識した上で不動産の購入に臨みましょう。
不動産取得税の税率と計算方法について
不動産取得税の概要や注意点が分かったところで次は税率と計算方法について解説します。なお詳しい軽減措置などに関しては次章で解説しますので、この章では税率について理解しておきましょう。
不動産取得税の税率と計算式
不動産取得税の税率と計算式は以下の通りです。
- 土地:評価額(課税標準額)×3%
- 住宅:(建物):評価額(課税標準額)×3%
なお上記は軽減措置を適用しているため令和6年3月31日までの税率になります。原則は宅地も住宅も4%の税率なので、令和6年3月31日以降は軽減措置がどうなっているか再確認が必要です。
中村編集者
不動産の評価額とは?
不動産取得税の「評価額」とはその不動産の固定資産税評価額になります。たとえば中古の戸建を購入する場合、その土地と建物には固定資産税がかかっています。税事務所から送付される納税通知書に固定資産税評価額が記載されているので、その金額が評価額です。
なお一戸建てなど「建物を新築する場合」では、建築段階では固定資産税評価額は分かりません。そのため一般的に不動産会社が評価額の概算を算出して、その評価額を基に不動産取得税のシミュレーションをすることが多いです。
不動産取得税の軽減措置・免税を受けられる
前項で税率の軽減について解説しましたが不動産取得税はほかにも軽減措置・免税を受けられます。これらの軽減措置や免税が受けられるかどうかで税額は大きく異なるので、受けられる条件や概要などについて詳しく解説していきます。
固定資産税評価額が控除額よりも低い場合、不動産取得税は免税される
まず固定資産税評価額が控除より低い場合、不動産取得税は免除されます。どういうことかというと、たとえば住宅の不動産取得税の計算式は「評価額(課税標準額)×3%」で、評価額とは固定資産税評価額のことでした。
都道府県によって免税措置がある
また都道府県によっては前項以外の免税措置があります。たとえば東京都主税局では課税標準額(控除などを加味した評価額)が、以下の金額未満の場合には免税となります。
- 土地:10万円
- 住宅(新築、増築、改築の場合):23万円
- 住宅(売買など):12万円
居住用の場合、税率3%の軽減措置(標準税率軽減)、宅地なら、課税標準額は半分に
次に居住用不動産を取得した場合の軽減措置である以下を解説します。
- 税率3%の条件
- 宅地の軽減措置
税率3%の条件
上述のように令和6年3月31日までは税率が4%から3%に軽減されます。しかし土地に関しては投資用でも3%に軽減されますが、建物に関しては住宅のみ3%に軽減されます。つまり住宅以外の投資用建物や倉庫などに関しては、税率は4%のままです。
宅地の軽減措置
また住宅を建築するための宅地であれば、宅地(土地)の課税標準額が1/2となる特例もあります。ただしこちらの軽減措置も令和6年3月31日までなので、その日以降は軽減措置を確認しなければいけません。
事務員
中村編集者
そうだね。ここまでをまとめると、たとえば新築の一戸建てを建築する場合には…
- 宅地:固定資産税評価額×1/2×3%
- 住宅(建物):固定資産税評価額×3%
ということだよ。
新築戸建て含む住宅は築年数で軽減措置が受けられる
次に新築戸建てを含む「住宅」の場合には、建物と土地についてそれぞれ軽減措置があるので覚えておきましょう。
住宅に関する軽減措置
住宅を建築すると、その住宅(建物)の不動産取得税の評価額(固定資産税評価額)に関しては、評価額から1200万円控除できるという軽減措置があります。軽減措置が適用になる不動産は以下の通りです。
- 住宅全般(投資用マンションも含む)
- 床面積が50㎡以上~240㎡以下
床面積に関しては図面集に記載されている㎡より狭い「登記面積」である点は注意です。登記面積は謄本を見れば確認できます。
土地に関する軽減措置
また住宅用の土地である「宅地」の場合には、上述した軽減措置に加えて以下いずれか「高額な方」を不動産取得税から軽減できます。
- 4万5000円
- 土地1㎡当たりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(200㎡が限度)×税率(3%)
事務員
中村編集者
新築住宅に関する不動産取得税の軽減措置の事例
まず新築住宅の軽減措置をまとめると以下の通りです。
種類 | 税率 | 評価額 | 税額からの控除 |
土地 | 3% | 1/2 | 前項の通り2つのうち高額な方 |
建物 | 3% | 1,200万円の控除 | なし |
たとえば以下のような新築戸建てを建築したときの不動産取得税を、順を追って解説していきます。
- 土地:面積120㎡、評価額1,200万円
- 建物:延べ床面積100㎡、評価額1,400万円
仮に税率の軽減措置さえない場合には不動産取得税は「土地:1,200万円×4%=48万円」、「建物1,400万円×4%=56万円」となり、合計104万円になります。
税率と評価額に対する軽減措置を適用
まずは税率の軽減措置(4%→3%)と、評価額に対する軽減措置を適用させてみます。
- 土地:1,200万円×1/2×3%=18万円
- 建物:(1,400万円-1200万円)×3%=6万円
- 合計24万円
これだけでも節税効果は大きいのが分かるでしょう。
土地に対する税額の控除を計算
土地は以下のどちらか高額な方を、前項で算出した「土地の税額:18万円」から差し引きます。
- 4万5000円
- 土地1㎡当たりの価格×1/2×住宅の床面積の2倍(200㎡が限度)×税率(3%)
下段の方は「1200円÷120㎡(土地1㎡当たりの価格)×1/2×100㎡×2(住宅の床面積の2倍)×3%(税率)=30万円」なるので、こちらの方が4万5000円より高額です。
そのため「土地の税額:18万円」は全額控除され0円になるので、この新築戸建てに対する不動産取得税は建物に課税される6万円のみになります。
事務員
中村編集者
中古住宅の不動産取得税軽減
中古住宅の不動産取得税の軽減措置は土地に関しては新築住宅と同じです。ただし建物に関しては新築住宅が1,200万円の控除だったのに対して、中古住宅は以下のように新築した日によって控除額は異なります。
建物を新築した日 | 控除額 |
1997年4月1日以降 | 1200万円(新築と同じ) |
1989年4月1日~1997年3月31日 | 1000万円 |
1985年7月1日~1989年3月31日 | 450万円 |
1981年7月1日~1985年6月30日 | 420万円 |
1976年1月1日~1981年6月30日 | 350万円 |
1973年1月1日~1975年12月31日 | 230万円 |
1964年1月1日~1972年12月31日 | 150万円 |
1954年7月1日~1963年12月31日 | 100万円 |
上記のように建物を新築した日によって控除額が異なる点は認識しておきましょう。また、この条件を適用できる住宅は以下の要件を満たしている住宅です。
- 床面積が50㎡以上240㎡以下(登記上)
- 居住用かセカンドハウス用の住宅である
- 1982月1月1日以降に建築された住宅
- 上記以外の建物は耐震基準に適合していることが証明されたもの
不動産取得税の軽減措置を受ける方法と必要書類
前項までで不動産取得税の軽減措置や免税について分かったと思います。さいごに、その軽減措置や免税を受けるための方法や必要書類について解説していきます。
不動産取得税の軽減措置申告方法
東京都の場合、不動産取得税の軽減措置は「不動産取得税申告書」に必要事項を記載し管轄する税事務所に提出する必要があります。基本的には税事務所から納税通知書が送られてくる前に申告するので、不動産を取得して1か月以内に申告すれば問題ないでしょう。
中村編集者
不動産取得税の軽減措置の申告に必要な書類
不動産取得税の軽減措置の申告に必要な書類は新築や中古などパターン別に異なります。以下は土地を取得して新築不動産を建築したときの必要書類です。
- 売買契約書
- 最終代金を支払ったことが証明できる領収書
- 建築確認済証
- 建築確認申請書第三面
- 建築工事請負契約書
- 検査済証
- 登記事項証明書(建物)
- 建物引渡証明書および請負業者の印鑑証明書(原本) 以下は必須
- 土地の登記事項証明書(全部事項証明書)
まとめ
今回解説したように不動産取得税は不動産を取得したときの税金であり、住宅であれば土地も建物も税率は「評価額×3%」でした。ただ条件を満たせば軽減措置があり、その軽減措置を受けるためには申告が必要な点は覚えておきましょう。