不動産経営(マンション・アパート)に役立つ資格7種類を解説!資格以外に必要な知識や有利になる条件とは

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 大半の資格が制約無で受験することが可能
  2. 上場企業の社員や公務員は融資の面で有利になる
  3. マンションやアパート経営で資格は必要ないが知識は必要

マンション・アパート経営を始めるにあたって何を勉強すればいいのか困ってしまいます。資格を取るにしても何の資格を取ればいいのか悩みます。しかし初心者は難易度の低い資格の順に勉強を進めていくと無理なく必要な知識を得ることができます

多数のマンション・アパート経営の相談にのってきた不動産コンサルタントが不動産経営に有利となる資格を7種類説明します。資格を順に取っていくことにより不動産経営を俯瞰することができ、成功者への道のりを早めることに繋がります。

不動産経営(マンション・アパート)に役立つおすすめの資格

 

マンション・アパート経営をするために必要な資格はありますか?

 
 

資格は必要ではありませんが、資格があると有利です。

 

宅地建物取引士とは?不動産経営でどう役立つのか解説

宅地建物取引士は宅地建物取引士試験に合格し、試験を実施した都道府県知事の資格登録を受け、当該知事の発行する宅地建物取引士証の交付を受けたものをいいます。不動産会社には規定された割合で宅地建物取引士を在籍させています。(国家資格)宅地建物取引士の概要を下表にまとめます。

項目 内容
業務 下記は宅地建物取引士が行う必要があります。
・重要事項の説明(宅建業法第35条)
・重要事項説明書への記名押印(宅建業法第35条)
・書面(契約書など)への記名押印(宅建業法37条)
試験実施主体指定試験機関 国土交通大臣が指定した指定試験機関(一般財団法人不動産適正取引推進機構)が全ての都道府県知事の委任を受けて実施します。
試験方法 50問・四肢択一式による筆記試験
受験資格 年齢・性別・学歴などの制約無
難易度 ☆☆☆(5段階評価で3)、合格率15%前後

出典:「宅建試験の概要」 一般社団法人不動産適正取引推進機構

マンション管理士とは?不動産経営でどう役立つのか解説

マンション管理士はマンション管理士試験に合格し、マンション管理士として資格登録を受けたものをいいます。(国家試験)マンション管理士の概要を下表にまとめます。

項目 内容
業務 ・管理組合の管理者やマンション区分所有者からの
相談に対応
・管理規約、使用細則、長期修繕計画などの素案の作成
・区分所有者間のトラブル解決に向けての予備的交渉
・大規模修繕工事の計画・実施、居住者の義務違反、
管理費の滞納などへのアドバイス
試験
方法
50問・四肢択一式による筆記試験
受験
資格
年齢・性別・学歴などの制約無
難易度 ☆☆☆☆(5段階評価で4:やや難関)

出典:「マンション管理士とは?」 公益財団法人マンション管理センター

不動産実務検定とは?不動産経営でどう役立つのか解説

不動産実務検定は不動産運用にまつわる実践知識を体系的に網羅した日本初の不動産投資専門資格です。(民間資格)資格のレベルとして、マスター・1級・2級とあります。以前は「大家検定」といわれ大家さんに対して賃貸住宅経営に必要な知識を高め、入居者に暮らしの良い住環境を提供するために作られた資格です。

項目 内容
業務 ・所有賃貸不動産の満室経営維持、賃貸経営に関する
リスクへの対処
・所有賃貸不動産のコンバージョン
・リフォーム・不動産の競売、借地取引
・所有賃貸不動産の事業収支、ファイナンス計画
試験
方法
50問
・四肢択一式によるコンピュータ試験、合格の目安は
正答率70%
受験
資格
年齢・性別・学歴などの制約無
難易度 2級:☆(5段階評価で1:簡単)、
1級:☆☆(5段階評価で2)

出典:「不動産実務検定講座について」 一般財団法人日本不動産コミュニティー

ホームインスペクター(住宅診断士)とは?不動産経営でどう役立つのか解説

ホームインスペクターはホームインスペクター資格試験に合格し、日本インスペクターズ協会の会員として入会・登録したものをいいます。(民間資格)第三者的な立場を堅持しつつ、目視の範囲で住宅の状態を客観的に診断できる「住宅のお医者さん」です。

項目 内容
業務 ・住宅のコンディションを把握し、不動産取引の安心
・安全化
・目視による屋根、外壁、室内、小屋裏、床下などの
劣化状態を診断
・改修箇所、時期、費用などを見極めたアドバイス
試験
方法
50問
・四肢択一式によるCBT方式
受験
資格
年齢・性別・学歴などの制約無
難易度 ☆☆(5段階評価で2)

MEMO
2018年4月に改正宅建業法が施行されました。それにより不動産業者によるホームインスペクションに関する斡旋の可否などの説明が義務化されました。今後益々需要が増す資格といえます。

出典:「ホームインスペクター(住宅診断士)になるには」 NPO法人日本インスペクターズ協会

賃貸不動産経営管理士(国家資格)とは?不動産経営でどう役立つのか解説

賃貸不動産経営管理士は賃貸不動産経営管理士試験に合格し、登録手続きを行うことで認定されたものをいいます。賃貸マンションやアパートなどの賃貸住宅の管理に関する知識・技能・倫理観をもった専門家です。(民間資格)賃貸不動産経営管理士の概要を下表にまとめます。

項目 内容
業務 ・管理業務委託契約:市場調査、賃貸用建物の
企画提案など
・入居者募集~契約:入居審査、重要事項説明、
賃貸借契約締結など
・管理業務:建物維持管理・修繕、法定点検、
建物清掃、クレーム対応など
・管理業務(契約終了):退去立会、原状回復工事、
敷金精算など
・支援業務:管理業務報告、節税や相続に関する相談
試験方法 50問
・四肢択一式による筆記試験
受験資格 年齢・性別・学歴などの制約無
難易度 ☆☆(5段階評価で2)

出典:「賃貸不動産経営管理士とは」 一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会

ファイナンシャルプランナー(FP)とは?不動産経営でどう役立つのか解説

ファイナンシャルプランナーの資格には国家検定であるFP技能検定(1級~3級)と民間資格であるAFP認定者とCFP認定者とあります。それぞれの指定試験に合格するとファイナンシャルプランナーとなります。

項目 内容
業務 ・住宅資金の相談:住宅ローンなど
・資産運用の相談:不動産投資
・金融資産(株式投資・投資信託など)
・相続・贈与の相談:相続税対策、遺言など
・老後の生活設計、年金・社会保険の相談など
試験
方法
FP技能検定:択一式・記述式による筆記試験
受験
資格
FP技能検定:3級は年齢・性別・学歴などの制約無、
2級・1級は制約有
AFP認定者:2級FP技能検定合格
CFP認定者:AFP認定者
難易度 3級:☆☆☆、
2級・AFP:☆☆☆☆、
1級・CFP:☆☆☆☆☆

出典:「FPとは」 NPO法人日本ファイナンシャル・プランナーズ協会

管理業務主任者とは?不動産経営でどう役立つのか解説

管理業務主任者は管理業務主任者試験に合格し、管理業務主任者として登録し、管理業務主任者証の交付を受けたものをいいます。(国家資格)マンション管理業者は規定された割合に応じて管理業務主任者を在籍させています。管理業務主任者の概要を下表にまとめます。

項目 内容
業務 下記は管理業務主任者が行う必要があります。
・マンション管理業者が管理組合などに対して、
管理委託契約に関する常用事項説明および
重要事項説明書(第72条書面)への記名押印
・管理委託契約書(第73条書面)への記名押印・
管理事務の報告(第77条書面)
マンション管理士との違い ・マンション管理士は、管理組合の立場から、
管理組合の運営に関し、適切な助言などの支援を行うものです。(管理組合・区分所有者サイド)
・管理業務主任者は、マンション管理業者が受託した管理業務の的確な実施を目的として設けられたものです。(管理業者サイド)
根拠法令 マンションの管理の適正化の推進に関する法律
試験方法 50問・四肢択一式による筆記試験
受験資格 年齢・性別・学歴などの制約無
難易度 ☆☆☆(5段階評価で3)

出典:「管理業務主任者とは」 一般社団法人マンション管理業協会

マンションとアパート経営で有利になる条件

 

マンション・アパート経営で有利になる条件は何ですか?

 
 

上場企業の社員や公務員は融資の面で有利となります。また土地所有者や多額の自己資金、入居率の高い立地、数字に強いなども有利となります。

 

上場企業の社員、または年収が高い

上場企業などの大会社の社員や公務員、年収が高い人に対して、金融機関は属性が高いと評価します。不景気になったとしても安定的に給料が振込まれ、ローン返済が滞る可能性が小さいと判断するからです。特に融資審査の厳しいメガバンクである三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行などは融資審査を通過する高い属性の人に対して数千万円から数億円の融資を行う可能性があります。

MEMO
したがって、1棟マンションやアパートにも投資することが可能となりますので資金調達の面では断然有利となります。

土地を元々保有している

相続などで土地を所有している場合、立地条件が良ければ土地活用をすることができます。新築物件を購入する場合と比較して土地購入費用が不要となる分、価格を抑えることができます。

ただし立地条件に相応しい活用方法を調査する必要があります。土地所有者に対してマンションやアパートを理由もなく建築することを勧める営業マンは多々います。鵜呑みにせず参考までに情報収集する程度にとどめておいて、自身で調査をする必要があります。自らが建築する方法や駐車場、太陽光発電、売却、借地など様々な方法が考えられます。

自己資金が多いこともリスク回避面で有利

マンション・アパートを購入もしくは建築する場合、総投資額に対して自己資金の割合を大きくすると、その分毎月のローン返済額の割合が小さくなります。結果として空室がある程度出たとしても、安定的に不動産経営を行うことができます。下図はマンション・アパート経営の家賃収入に対するローン返済額やキャッシュフロー(手残り額)などの割合(目安)を表したものです。

家賃収入に対するローン返済額などの割合(目安)

*エレベーターがあると必要経費は約25%前後となり、キャッシュフローは約15%前後となります。

必要経費は固定費となります。上図から自己資金の割合が大きくなりますとローン返済額の割合が小さくなり、キャッシュフローの割合が増えます

日常的な修繕費用はこの中に含まれていません。例えばエアコンや給湯器などの設備・器具の修繕・交換費用です。これらに対応するためにも自己資金をある程度所有していることは有利となります。

入居率が高い立地で不動産経営が始められる

不動産経営を行う上で不動産購入は最も重要な事項となります。購入における優先順位は、第1に立地、第2に価格・築年数、第3に利回りとなります。入居率が高い立地での不動産経営は非常に有利となります。

しかし入居率が仮に100%を維持できる立地であるとしても、購入価格の判断を間違えて利回りが非常に低い物件になると、赤字経営になることもあります。立地だけで判断することはリスクを伴います

注意
必ず立地、価格・築年数、利回りをセットにして検討することが大切です。

数字に強いことも有利になる

不動産購入時にはキャッシュフローやローン返済額、利回り(表面利回り・実質利回り・ROIなど)、イールドギャップなどの数字を検討しながら購入します。不動産売買時や所有中にも様々な税金や必要経費がかかります。

不動産経営を成功させるためには、それらの数字の把握をすることが必須といえます。数字の把握は客観的に不動産経営の現状を把握するためにも重要となりますので数字に強いことは非常に有利に働きます。

マンションやアパート経営で資格は必要ないが知識は必要

 

マンションやアパート経営で必要な知識は何ですか?

 
 

不動産知識や建物知識、税金知識、経営知識などとなります。実際に所有してからは経営知識が重要になります。

 

不動産経営に必要知識①:不動産知識

ここでの不動産知識は土地・建物に関する規定などが主になります。その基になる法律は建築基準法や都市計画法などです。用途地域や建蔽率・容積率などの最低限の知識は身に付けておいた方が良いです。例えば、以下のような知識です。

不動産知識
  • この立地に建ててよい用途の建物は何か?
  • この立地に建ててよい規模は平面的・立体的にどこまでか?
  • 隣地境界や道路境界と建物との距離をどれ位開けないのいけないのか?

これらの知識は、宅地建物取引士などの資格勉強で学ぶことができます。

不動産経営に必要知識②:建物の知識

ここでの建物知識は建物を維持・管理する上で役立つ情報が主になります。例えば、以下のような知識です。

建物の知識
  • 外壁や屋根、共用廊下、階段、エントランスなどに劣化・損傷はないか?
  • 内装材や設備・器具などに劣化・損傷はないか?
  • 劣化・損傷がある場合、どのような修繕・補修工事を施せばよいか?

これらの知識はマンション管理士や管理業務主任者、ホームインスペクター、賃貸不動産経営管理士、不動産実務検定などの資格勉強で学ぶことができます。

不動産経営に必要知識③:税金の知識

ここでの税金の知識は不動産の購入時や売却時、不動産を所有中に必要になる知識です。例えば、以下のような知識です。

税金の知識
  • 不動産購入時の不動産取得税や登録免許税はいくらかかるのか?
  • 必要経費である固定資産税・都市計画税・事業税、確定申告で納税する所得税や住民税はいくらになるのか?
  • 不動産売却時にかかる譲渡所得税はいくらになるのか?

これらの知識はファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士などの資格勉強で学ぶことができます。

不動産経営に必要知識④:経営の知識

ここでの経営の知識は入居者に関する実践的なノウハウが主になります。例えば、以下のような知識です。

経営の知識
  • 空室になった場合の対策:前入居者の退去時期が4月(閑散期)など
  • 滞納者が出た場合の対策:滞納が始まってから2~3か月になるなど
  • 入居者による騒音問題などの対策:夜中に大音量で音楽を流す

これらの知識は不動産実務検定などの資格勉強で学ぶことができます。

まとめ

以上、不動産経営におすすめの資格や有利になる条件、必要な知識を解説しました。大半の資格が制約無で受験することができますので、誰でも資格を取ることができます。

一番大切なことは家賃を支払って入居をしていただく方に対して、いかに快適に過ごしていただく環境を整えることができるかに腐心することです。入居者にストレスを感じさせることなく要望があれば迅速に対応する姿勢が長期安定経営に繋がります。そのための資格取得であることを認識して勉強されることをお勧めいたします。