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転勤時のマンション売却完全ガイド!売却タイミングや流れ、注意点をわかりやすく解説

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

この記事のざっくりしたポイント
  1. 2~3年で戻るなら賃貸にしよう
  2. 転勤前と転勤後のマンション売却は売り方や価格に違いがある
  3. 転勤でマンションを売却する場合の注意点とは

会社から転勤辞令が突然出されたら住まいのマンションを売却するか?賃貸にするか?空家にするか?途端に悩むことになります。売却するにしても、売却の仕方や流れなどがわからず途方に暮れるものです。

しかし転勤期間が分かり、転勤前と転勤後に分けて売却を考えると、意外と整理や付きやすくなります。多数の人にマンション売却のアドバイスを行ってきた宅地建物取引士が、売却・賃貸・空家の選択方法、転勤前後に分けての売却の違い、注意点などを説明します。

さらにマンション売却価格と毎月の出費(管理費・ローン返済額など)を考慮した手残り額の最大化を図る方法を解説します。

転勤時にマンションを売却した方が良いケース

 

転勤時にマンションを売却した方が良いケースはどんな場合ですか?

 
 

3年が目安となります。3年以上戻ってくる目途が立たないようであれば、売却した方が良いです。

 

1年以内に戻るならそのままに

1年以内に戻ることが確実ならば、売却や賃貸などを考えずにそのままの状態にした方が良いです。賃貸を検討するにしても家具や器具、備品類などをそのままの状態で置いておくことはできません。

注意
レンタル倉庫や物置などに1年間保管するなどの手間がかかります。また1年間の条件付きならば、入居者を見つけるにも時間を要し、家賃設定も低くせざるを得ません。

2~3年で戻るなら賃貸にしよう

3年以内で戻ることが確実ならば売却か賃貸にするかの選択肢となります。

売却する場合

現在住んでいるマンションが気に入らない場合や家族が増えるなどして手狭になった場合、売却を検討することもあり得ます。気に入っている場合には、そのまま空家にするか3年間に限り賃貸物件にする方法もあります。

賃貸にする場合

賃貸にする場合、不動産仲介会社に相談しながら家賃設定などを行う必要があります。家賃査定をするために住戸内の内覧が必要になります。

注意点1:定期借家契約を利用

入居期間は2~3年と決まっていますので、更新できないような条件設定が必要です。「定期借家契約」ならば更新できない契約内容となりますので、契約期間が完了すれば入居者は退去します。

注意
ただし契約期間満了半年前に入居者に対して退去通知を出す必要がありますので、注意を要します。

一方「普通借家契約」で入居者付けを行うと自動更新されますので入居者は退去しません。退去通知を出しても「普通借家契約」は元々入居者保護の観点に立った契約ですので通用しません。2~3年で入居者に必ず退去してもらうためには「定期借家契約」を利用することが条件となります。

注意点2:住宅ローン

住宅ローンを抱えている場合、賃貸に出す前に金融機関に相談しておくことが必要です。住宅ローンは借入者が住むためのローンであり、賃貸などの不動産投資用ローンではないからです。事前に金融機関に通知することなく賃貸物件にしますと、契約違反となりローン全額返済を求められる場合もあります。

もう戻ることがないのなら売却がおすすめ

戻るか否か目途が立たない場合、こちらも売却と賃貸の選択肢がありますが、お勧めなのは売却です。

売却する場合

売却しやすくするために、最低限度のハウスクリーニングを行っておくことが必要です。見た目が綺麗ですと、早期売却や希望価格での売却の可能性が高まります。見た目が汚いと、売残りや値下げ交渉の可能性が高まります。

賃貸する場合

これを機に不動産投資物件に切り替える方法もあります。立地が人気エリアで賃貸需要が多ければ、賃貸物件に変更することも考えられます。ただし注意点として事前に金融機関に通知して、金利が安い住宅ローンを金利が高くなる不動産投資ローンに変更する必要があります。

また住んでいたマンションを投資用にして新たに住宅を購入する場合、担保力という観点から融資審査は厳しくなります。さらに家賃設定や管理費・修繕積立金・ローン返済額などを考慮して、事業収支が成立するのか否かも検討しなければなりません。

転勤前と転勤後のマンション売却は売り方や価格に違いがある

 

転勤前と転勤後のマンション売却に違いはありますか?

 
 

価格・経済的負担・売却活動・精神的負担に違いが出ます。どちらにもメリット・デメリットがあります。

 

転勤前と転勤後の売却価格の違い

転勤前と転勤後との違いは、売却期間の長さになります。

転勤前 転勤後
・転勤前に売却を済ませるとなると、売却期間も短くなり売却価格は安くなる傾向にあります。 ・転勤後での売却で良くなると、売却期間にこだわらくても済みます。
・多数の購入希望者と交渉できますので、希望価格に近い価格で成約する可能性が高まります。

売却価格の違い

転勤前と転勤後の売却での経済的負担の違い

転勤前と転勤後の違いは管理費・修繕積立金・住宅ローン返済額の有無にあります。

転勤前 転勤後
・転勤前に売却が決まると、管理費・修繕積立金
・住宅ローン返済額が無くなり、経済的負担は軽くなります。
・転勤後に売却をすると、売却マンションの管理費・修繕積立金
・ローン返済額と転勤先での住まいの住宅費とダブルの出費となりますので、経済的負担は大きくなります。

経済的負担の違い

転勤前と転勤後の売却活動の違い

転勤前と転勤後の違いは、売却するマンションに住んでいるか否かの違いになります。

転勤前         転勤後
・所有者が売却するマンションに住んでいる状態で購入希望者に内覧してもらうことになります。
・劣化、損傷や汚れが残った状態で内覧してもらうとイメージが悪くなる可能性があります。
・所有者の引っ越しが終わり、
物品が無くハウスクリーニングが終わっている状態です。見た目も綺麗になっているので印象も良く、成約し易くなります。

売却活動の違い

転勤前と転勤後の売却での精神的負担の違い

転勤前と転勤後の違いは転勤後に余裕を持つか転勤前に余裕を持つかの違いになります。

転勤前 転勤後
・転勤前の売却だとスケジュール的に短期勝負となりますので、段取り良く進めていかないと間に合わなくなり、とにかく焦ります。
・しかし売却してしまえば、毎月の出費も無くなり肩の荷がおりる気分になります。
・転勤後の売却だとスケジュール的に余裕ができますので、焦ることなく売却活動をすることができます。
・しかし売却できるまでは、毎月の出費が続きますので、逆に後から焦ることにもなりかねません。

精神的負担の違い

転勤時のマンション売却までの流れ

 

マンション売却までの流れを教えてください。

 
 

一番大事なことは、スケジュールを立てることです。実際に売却開始をするまでに準備しておかないといけない項目は少なからずあります。

 

転勤が決まりマンション売却に至るまでの大まかな作業工程を下表にまとめます。

順番 マンション売却作業内容
売却スケジュールを作成
実際に異動する日、ハウスクリーニング実施日、売却価格査定日、引っ越し日、売却日などを想定しながら、スケジュールを作成します。
住宅ローン残高の確認
売却査定価格と比較するためにも必要、住宅ローン残高によっては売却できない場合もあります。
ハウスクリーニング実施
できれば売却価格査定前に掃除して綺麗にしておくと査定価格にも影響し、不動産会社も売却しやすくなります。
売却価格査定
複数の不動産会社に売却価格の査定を依頼します。
不動産会社と媒介契約締結
複数の不動産会社から最も有利な条件と思われる会社と媒介契約を締結します。
売却活動開始
媒介契約を締結した不動産会社と連絡を取り、活動状況などの把握をまめに行います。
購入者が見つかり、売買契約締結
成約価格の代金受取り・マンション引渡し

マンション売却作業工程

転勤でマンションを売却する場合の注意点

 

転勤でマンションを売却する場合の注意点は何ですか?

 
 

住宅ローン残高、媒介契約の締結種類などがあります。

 

住宅ローンが残っているケース

マンション売却価格がローン残高よりも高ければ問題ありませんが、低ければ不足分を補う必要があります。不足分を補うことができなければ売却することはできず、所有し続けなければなりません。

自己資金(頭金)をそれ程入れずに大半を住宅ローンで賄うこともあります。その場合、売却するマンションが築10年以内だと、マンション売却査定価格よりもローン残高の方が高くなる傾向にあります。

不動産会社はしっかり担当者がついているところを選ぶ

担当者が明確になっていますと売却活動状況の確認をし易くなります。担当者が不明確であると売却活動状況が把握しづらくなり、売却活動をしているのかさえ曖昧になります。

「専属専任媒介契約」か「専任媒介契約」で媒介契約を結ぶ

媒介契約を結ぶ場合には「専属専任媒介契約」か「専任媒介契約」がお勧めです。マンションを売却する場合、売主と不動産会社との間で媒介契約を締結します。媒介契約の方法には3種類あり「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属選任媒介契約」です。3種類の媒介契約の違いをまとめると下表の通りです。

  一般媒介契約 専任媒介
契約
専属専任
媒介契約
不動産会社との契約 複数社と可能 1社のみ 1社のみ
売主が買主との
直接取引
可能 可能 不可
不動産会社からの
活動報告義務
無し 2週間に
1回以上
1週間に
1回以上
不動産会社のレインズ(*1)への登録義務 無し 媒介契約から7日以内 媒介契約から5日以内
契約期間 無し 3か月以内 3か月以内

媒介契約の違い

専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約を締結すると、不動産会社からの活動状況報告義務がありますので、売却活動状況がわかります。またレインズ(*1)に登録義務があります。その登録会員(不動産会社)にも目に留まりやすくなりますので、早期売却に繋がることもあります。

*1 レインズ:国土交通大臣の指定を受けた「指定流通機構」である全国の4つの公益法人により運営され、全国の不動産会社が加入しています。標準化された不動産情報が登録されており、WEBサイト上で会員(不動産会社)に公開されます。

所有期間5年以内のマンション売却は税率が高い ※1

所有期間5年以内のマンション売却による譲渡所得は「短期譲渡所得」に該当し税率は高くなります。 税額の計算は、マンションの課税譲渡所得金額に税率を掛けます。税率は「長期譲渡所得」になるか、「短期譲渡所得」になるかによって異なります。

マンション売却をした年の1月1日時点で、マンション所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」に、5年以下の場合は「短期譲渡所得」になります。

区分 所有期間 所得税率 住民税率
長期譲渡所得 5年超過 15% 5%
短期譲渡所得 5年以下 30% 9%

長期譲渡所得と短期譲渡所得の税率の違い

MEMO
購入価格よりも売却価格の方が安くなる場合、譲渡所得税はかかりません。

「3,000万円特別控除の特例」があるため、大半のマンションは税金がかからない ※1

長期譲渡所得または短期譲渡所得のどちらに該当しても、課税譲渡所得金額を計算する場合、最高3,000万円が控除されます。

譲渡所得= 譲渡価格(売却価格)―{取得費(購入価格+譲渡費用)}

課税譲渡所得金額=譲渡所得-特別控除

特別控除=3,000万円

【事例】 取得費(購入価格):3,000万円、譲渡価格(売却価格):4,000万円、譲渡費用:200万円の場合
  • 譲渡所得=4,000万円-(3,000万円 + 200万円)= 800万円
  • 課税譲渡所得金額=800万円-3,000万円 = -2,200万円

譲渡所得がプラスになっても課税譲渡所得金額はマイナスになりますので、譲渡所得税はかかりません。逆に譲渡所得税がかかるには譲渡所得が3,000万円を超えることが条件になります。そのようなマンションは現在では超人気エリアに立地し、年数が経過しても値上がりするような一部の高級マンションとなります。

すぐにでも売却をさせたい場合は買い取り制度を利用しよう

 

売却を急いでいる場合にはどうすれば良いのですか?

 
 

買い取り制度があります。メリット・デメリットを説明します。

 

買い取り制度のメリット

転勤までに売却を済ませたいなどスケジュールを優先したい場合には、不動産会社による買い取り制度を利用すると効果があります。メリット1は仲介手数料(成約価格×3%+6万円、消費税別途)が不要となります。メリット2は、瑕疵担保責任が発生しないことです。

買い取り制度には「即時買い取り」と「買い取り保証」の2種類があります。

即時買い取り

売却価格が相場よりも安くなりますが、すぐに売却できる点がメリットです。買い取り依頼してから不動産会社との条件交渉などが早く決まれば、1か月以内での入金・引渡しが可能になります。

買い取り保証

一定期間、仲介での売却を行い、事前に決められた期限に達したら不動産会社に買い取りしてもらうシステムです。決められた期間内での仲介による希望価格での売却を目指し、期限までに売却できなければ買い取りをしてもらえますので、予定を立てやすくなります。

買い取り制度のデメリット

買い取りをする不動産会社は、買い取ったマンションを市場で再度売却しますので、買い取り価格は相場よりも安くなります。概ね相場価格の70%前後での買い取り価格となります。買い取り制度を採用していない不動産会社もありますので、事前の確認が必要です。

マンション売却価格と毎月の出費を考慮した手残り額の最大化

転勤前にマンション売却のタイムリミットを設定すると、売却価格が下がる傾向になることを解説しました。金額的に値下げ交渉の対象となるのは、売却価格の100万円以下の端数部分が多くなり、最低80万円以上です。買取制度を利用すると最低400万円以上の値下げは覚悟する必要があります。ただし買取制度の場合、仲介手数料は発生しません。

一方、転勤後にマンション売却を設定すると、売れない期間に毎月の出費として管理費・修繕積立金・ローン返済額が発生します。毎年支払う固定資産税を月に換算して考慮すると、毎月の管理費・修繕積立金・固定資産税が3~4万円、ローン返済額は10万円前後になります。半年間売れないと仮定しますと、それだけで78万円~84万円前後の出費となります。

したがって売れない期間が半年以上になると、転勤前に値下げしてでも急いで売却した方が良かったということになりかねません。それらを鑑みると、売却開始から3か月前後で売却を済ませると手残り額を一番残せることになります。もちろん売却開始直後に売却できると一番良いのですが、そう簡単にはいかないものです。

まとめ

転勤期間による売却・賃貸・空家の選択方法、転勤前と転勤後の売却の違い、売却の流れ、注意点、買取制度について解説をしました。手残り額の最大化を図るには売却開始から3か月以内を目途にして売却できると良いことになります。

一番大事なことは、売却までのスケジュールを作成し、その通りに進行するように管理することです。スケジュールの一つ一つを確実にこなしていくことが早期売却に繋がり、手残り額の最大化を図ることができます。

出典: ※1 「土地や建物を売ったとき」 国税庁