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消費税増税後の中古マンションの価格は上がる?下がる?

この記事を書いた人
中村 昌弘
不動産コメンテイター

都内の私立大学を卒業後、新卒採用で不動産ディベロッパー勤務。 不動産の用地仕入れや、分譲マンションの販売・仲介などを手掛ける。 2016年に独立して以降、不動産関係のライティングも業務の1つに。

2019年10月に消費税増税が予定されており、「そろそろマンション売ろうかな…」と考えている人は、今後の中古マンション価格が気になっていることでしょう。結論からいうと、今後中古マンションの価格は下がる可能性が高いです。

この記事では、そもそも、中古マンション価格と消費税の関係性とは?を解説し、中古マンション価格が今後下がる理由を2点解説していきます。

■中古マンションの価格と消費税の関係

 

そもそも、消費税が増税することで、なぜ中古マンションの価格に影響があるの?

 
 

良い質問だね。その理由は、①新築マンションが増税によって受ける影響、②増税後のマンション需要という2点を理解すると分かると思うよ。

 

中古マンション価格の価格がどうなるか…の前に、まずは前提としてこの2つの点を理解しておきましょう。

新築マンションが増税によって受ける影響

消費税増税による不動産価格の影響は以下の通りです。

増税の影響
  • 新築マンション:建物部分のみ増税される
  • 中古マンション:非課税(個人が売主の場合)

つまり、一般的な中古マンションの売却時は消費税増税の影響は受けません。しかし、新築マンションは宅建業者である不動産会社が売主なので、建物部分のみ消費税増税の影響を受けます。

増税後のマンション需要

前項のような事情なので、消費税が8%から10%に上がった影響で新築マンション価格は上がります。

そのため、「増税前に新築マンションを買おう!」という駆け込み需要が多くなれば、増税後にマンション需要は下がる可能性があるということです。

というのも、中古マンションを検討する人の中には、新築マンションも並行して探す人もいるからです。つまり、増税前に新築マンションを購入する人が多ければ、増税後に中古マンションを検討する人(マンション需要)も減るというわけです。

また、マンション需要が下がる要因として、もう1つ「供給数」が重要になります。というのも、商品の価格は需給バランスで決まり、供給が増えて需要が一定なら中古マンション価格は下がるからです。

 

要するに、増税前に駆け込み需要があれば増税後は中古マンション価格が下がる可能性がある…それと今後のマンション供給数はどうなっていくのか?をチェックすれば、今後の中古マンション価格の推移が予測できるということだね。

 

■理由1:増税前の駆け込み購入による需要の減少

この章から、「今後は中古マンション価格は下がる可能性が高い」という理由を解説します。1つ目の理由は、増税前の駆け込み購入により需要の減少するからです。

振り返ってみると大きな駆け込み需要は起きませんでしたが、増税前の8月中旬以降の問合せ数や引渡件数は通常の1.5倍ほどでした。

増税前にマンションを購入する人が増えたことにより、その後は不動産購入者の購入意欲は若干落ち着いていると感じています。逆にいうと、増税してからは駆け込み需要の反動でマンション需要は低くなり、マンション価格の下落につながります。

2018年時点での駆け込み需要は?

人気の都心部はマンション用地が不足し供給が減ったほか、販売価格の高騰で需要が減退した。消費増税を前にした駆け込み需要も、19年3月末の契約分までは消費税率が8%に維持される経過措置の影響で顕在化していないとみられる。

日本経済新聞より

2019年4月17日の日経新聞の記事によると、2019年4月の時点では駆け込み需要は起きていません。

というのも、2018年度の首都圏の新築マンション発売戸数は3万6,651戸となり、前年の2017年と比較すると微減しているからです。

もっというと、2018年の発売戸数は2013年度と比較すると約3割減、過去最多を記録した2000年度からは6割以上も減っています。

つまり、発売戸数は下落していっている状態であり、現時点では「増税される!」ことが発奮材料となって購入者が増えているわけではないということです。

今後駆け込み需要が来る可能性は?

しかし、2018年時点で駆け込み需要がない大きな理由として、「新築マンションは2019年3月末までの契約分については8%を適用する経過措置がある」ことが挙げられます。

10%の消費税の適用は、「2019年9月末までに引渡しを受ける」ことです。ただ、不動産は建築から物件完成後に引渡しを受けるので、2019年3月に契約しても引渡しが9末以降だと消費税が10%になります。

そうならないための時限措置として「2019年3月末までの契約なら引渡し日はいつでも消費税8%」という経過措置になったのです。

 

この経過措置によって、「急いで買わなくてもまだ時間はある…」と考えた人が多かった可能性が高いのです。

 

まだまだ増税前にマンションは買える

しかし、既に完成しているマンションであれば、2019年8月に売買契約を結び、2019年9月に引渡しを受けることは可能です。

また、まだ完成していなくても2018年9末までに完成して引渡しを受けられる物件にも同じことがいえます。つまり、まだまだ増税前のマンションを買えるチャンスはあるということです。

そして、わたしは以下の理由で今後駆け込み需要が高くなると考えています。

駆け込み需要が予想される理由
  • 完成在庫が多い
  • 初月契約率が上がってきている

完成在庫が多い

「完成在庫」も14年2月時点(1109戸)の3倍以上に積み増した。販売を始めた月の戸数のうちどれだけ契約に至ったかを示す「初月契約率」も平均で62%と、3年連続で好調の目安とされる70%台を割り込んだ。同研究所は「各地域ともぎりぎりの高値となっている」と指摘

日本経済新聞より

まずは、完成在庫が多いという点です。日経新聞によると、2019年2月時点の完成在庫は、2014年と比べて約3倍…つまり完成在庫の数は非常に多いといえます。一般的には、売買契約締結~引渡しまでは約1か月ほどです。

ということは、2019年8月末あたりで売買契約を結んでも、消費税8%が適用される物件がたくさんあるということです。

 

つまり、消費増税ギリギリまで『駆け込むことができる物件が多い』ということです。

 

初月契約率が上がってきている

駆け込み需要が高くなるという理由の2つ目は、初月契約が上がってきているという点です。その根拠としては、不動産経済研究所が発表している以下の初月契約率の推移を見ると分かりやすいでしょう。

・2018年10月度:68.3%

・2018年11月度:53.9%

・2018年12月度:49.4%

・2019年1月度:67.5%

・2019年2月度:66.5%

・2019年3月度:72.2%

初月契約率とは、販売をはじめた月の戸数のうちどれだけ契約に至ったかを示す数値なので、数値が高ければ高いほどマンション需要は高いといえます。

徐々に駆け込み需要になりつつある

前項のように、2019年に入ってから初月契約率は上昇しており、2019年の3月度には好不調の境目である70%を突破しています。もちろん、今後も初月契約率が上昇しつづけるとは言い切れません。

しかし、初月契約率が70%を超えたのは2018年3月以来であることを考えると、需要が上がってきているのは事実です。これは、増税前の「駆け込み需要」と無関係とは言い難いでしょう。

つまり、現時点で駆け込み需要は起こっているとは言い切れませんが、最近の初月契約率を見る限り徐々に駆け込み需要が増えつつあるということです。

 

さらに完成在庫が多いので、2019年8月に『やはりマンション買おう!』と思っても、増税前に買える可能性があります。

 

■理由2:オリンピック後の大量供給による価格減

前項のように、駆け込み需要が高まり、その反動による需要減…マンション価格の下落可能性があります。そして、中古マンション価格が下落する2つ目の理由は、オリンピック後の大量供給による価格減です。

オリンピック開催後の供給増

価格はまだ確定ではないが、周辺相場よりも低くなりそうだ。タワー棟も含め分譲住宅の総戸数は計4145戸に上る。19年7月下旬から段階的に販売するが、他のマンションの価格に影響が出るとの見方もある。

日本経済新聞より

日経新聞の記事によると、東京五輪・パラリンピック後の選手村は、2019年7月下旬から段階的に販売される予定です。

その戸数は計4,145戸にも上り、さらに「周辺相場よりも価格は低くなりそう」と報じています。この4,145戸という数は、東京23区の年間発売戸数の4分の1に当たる大量供給です。

しかし、今までの初月契約率の推移や、上述した「駆け込み需要による反動」によって、マンションの需要が爆発的に上がるとは考えにくいです。

 

つまり、供給増・需要減少(or一定)によりマンション価格は下落する可能性が高いでしょう。

 

ほかのエリアへの影響

選手村は東京都中央区の晴海エリアにあるので、関西方面など首都圏以外への影響は限定的でしょう。しかし、東京都内…特に東京23区内では影響を及ぼす可能性があります。

というのも、仮にマンションの大量供給により、中央区全般の価格が下がれば中央区でマンションを買いたいという人は増えるでしょう。

そうなると、本当は江東区で検討していた人が…目黒区で検討していた人が中央区に流れる可能性があります。多少の供給であれば近隣の区に影響することはありませんが、前項のように東京23区の年間販売戸数の4分の1に当たる大量供給です。

注意
そのため、特に中央区と中央区に近しい区の中古マンション価格が下落する可能性は高いといえます。
 

そうなんだ~。『増税後の反動』『オリンピック後の大量供給』という2点が中古マンション価格の下落要因なんですね。

 
 

そうだね。両方起こる可能性もあるし、どちらか片一方だけでも中古マンション価格の下落要因にはなり得るね。

 
 

■将来の中古マンション価格は不安定

そもそも、2019年の初月契約率を見ても、まだ高水準を継続しているわけではありません。つまり、現時点で需要は高くないのに、さらに駆け込み需要の反動が数か月後に控えています。

また、駆け込み需要の反動がなくても、選手村の大量供給が待っていますので、いずれにしろ将来的に中古マンション価格が下落する可能性は高いでしょう。