不同沈下はなぜ起こる?沈下による被害や対策、修正工事について解説

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のざっくりとしたポイント
  1. 地盤に関連するさまざまな原因で発生する不同沈下は、建物はもちろん人体にも悪影響を与える
  2. 地盤の状態によって実施できる工事の種類や費用が異なる
  3. スマートフォンアプリで簡易的な地盤調査が可能だが、専門性の高い領域でもあるため、調査会社への依頼がおすすめ

家を建てるうえでの土台となる「地盤」の考慮は、快適かつ安全な家づくりを実現するために必要不可欠です。

安定している地盤に建てないと傾きや倒壊の危険性があるため、できるだけ水平で綺麗な地盤に家を建てたいですよね。

安全な地盤に家を建てるためには、地盤の状態に関連する「不同沈下」について把握しておかなければなりません。

今回は、不同沈下とは何か、原因や被害について詳しく解説します。

事務員

浜崎編集長

また、不同沈下対策や工事の際にかかる費用相場、自分で測定するための方法についても触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

不同沈下とは

不同沈下とは、地盤の一部だけに傾斜が発生し、建物が不均一に沈下する現象です。

建物に偏った負荷がかかるため、壁に亀裂が入ったり窓が開閉しづらくなったりとさまざまな不具合が起こります。

また、建物へのダメージだけでなく、体調不良など人体への影響が出ることも。傾いた家で生活することは、大きなストレスになります。

初期
  • 場合によっては不快感を覚える程度
第一期
  • 壁やコンクリートに亀裂が発生する
  • 初期よりも傾きを感じやすい
第二期
  • 壁・柱の間に隙間ができる
  • ドアや窓が開閉しづらくなる
  • 体に感じる違和感がより大きくなる
第三期
  • 柱の傾きがより顕著になる
  • 健具が開閉しづらくなる
  • 床の傾斜にはっきりと気づく
  • 体調不良になることもある
最終
  • 地震や風で倒壊する危険性が高くなる
  • 生活するのには困難

上記で解説した段階を含めて、地盤により建物や生活に大きな影響を与える不同沈下という現象について、ぜひ覚えておいてください。

不同沈下がおこる原因

不同沈下が発生する原因には、主に以下が挙げられます。

  • 建物の荷重が偏っている
  • 地層の傾斜や軟弱層の厚さが一様でない
  • 切土・盛土で造成している
  • 瓦礫などの埋設物がある
  • 埋め戻し・締固めが十分でない
  • 地下水や雨水で土が動く

ここでは、不同沈下の原因である上記6つの要素について詳しく解説します。

建物の荷重が偏っている

軟弱な地盤の上に、荷重の偏った建物を建てた場合に不同沈下が発生します。

荷重が均等に分散されていれば建物は安定しますが、特定の箇所に重さが過剰にかかってしまうと、他の部分よりも急速に沈下してしまうためです。

地層の傾斜や軟弱層の厚さが一様でない

建物を建てる地形の変化が原因で、不同沈下が発生する場合があります。

軟弱層の間に硬質地層があるなど、地層が不安定な場合です。ほかにも、地層の傾斜や建物下の地盤が軟弱であるなど、さまざまな理由が考えられます。

軟弱層と硬質層では、どちらが沈下しやすいのでしょうか?

事務員

浜崎編集長

軟弱層です。軟弱層が厚ければ厚いほど、不同沈下が発生しやすいと言われています。

切土・盛土で造成している

山や丘などの土地に、切土と盛土をするのも不同沈下が発生しやすい原因のひとつです。

山や丘などに家を建てる場合、山を切り崩した土砂を谷の方に盛土することで土地を造成します。

見栄えは水平な地盤になるものの、土の内部は切土と盛土で分かれているため不同沈下が発生しやすくなるのです。

瓦礫などの埋設物

瓦礫やガラなどの埋没物で盛土を行った場合も、不同沈下が起きやすいです。

盛土を瓦礫やガラなどで実施する場合、雨水が浸透しやすくなります。雨水が浸透すると、瓦礫などの隙間に土砂が流れ込むため、不同沈下が起きる仕組みです。

埋め戻し・締固めが十分でない

いわゆる埋立地と言われる、不安定な土地に埋土している場合も不同沈下に繋がりやすいです。

埋め立て地は締固めが不十分な場合、不同沈下が発生しやすくなります。

どのような土地に埋土すると、不安定な埋立地と判断されるのでしょうか?

事務員

浜崎編集長

主に池やゴミ捨て場、樹木の抜根後などです。ちなみに締固めがより重要になるのは、車庫や地下室などを作った後の余堀を埋め戻す場合です。

地下水や雨水で土が動いた

地盤そのものというよりも、天候などがきっかけで地盤が変動する場合です。

雨水や地下水は、土の中へ浸透しながらより流れやすい方向へと土を動かします。

その流れで表面の土も動くため、地盤が不安定になり不同沈下が発生しやすくなります。

地下水や雨水の動きは、予想しづらいかと思うのですが?

事務員

浜崎編集長

そうですね。過去の水害情報や、地下水の過剰な汲み上げによる影響の観点で地盤をあらかじめ調べることで、ある程度ではありますが予想できます。

不同沈下により生じる被害

不同沈下が発生すると、建物と人体に悪影響があります。ここでは、不同沈下が原因となる被害について詳しく解説します。

建物に与える被害

不同沈下している土地は、建物そのものに多くの被害を与えます。元来家とは水平に建てることが前提となっているため、不同沈下が発生した場合の偏った荷重に耐えられません。

不同沈下した土地が建物に与える影響には、ドアが開閉しづらくなったり壁にひびが入ったりといったことが考えられます。

ちなみに、不同沈下が原因で建物に影響を与えることを「直接的被害」と言います。

人体へ与える被害

不同沈下している土地に建てられた家での生活は、傾きが原因でめまいや吐き気、精神的なストレスといった被害が考えられます。

また、不同沈下がきっかけで施工業者や販売業者とトラブル・裁判などが起こった場合、それらが原因でストレスを感じることがあります。

建物に与える被害が「直接的被害」なのに対し、人体へ与える被害の分類は「間接的被害」です。

MEMO

間接的被害にはほかにも浸水被害などが該当します。

不同沈下の対策はできる?

ここまで触れた内容で、不同沈下が生活に多くの悪影響を与える現象であることがわかりました。

そこで気になるのが、不同沈下は事前に対策ができるのかどうか?ということです。

結論、事前に対策を取ることはできます。

といっても、確実に安全な土地を自分で探すのは決して簡単ではありません。

では、どのような手段で事前対策を取れば良いのでしょうか?

事務員

浜崎編集長

不同沈下についてのノウハウが豊富な調査会社をリサーチし、希望する土地の調査を依頼しましょう。調査会社へ依頼する際は調査内容はもちろん、保証制度などが充実しているかどうかも重要な判断基準です。

沈下修正工事にかかる費用相場・工法

不同沈下が発生している土地には、沈下修正工事の実施が必須です。ここでは、沈下修正工事の工法や費用相場について解説します。

以下では、不同沈下の沈下修正工事について、工法ごとの名称・特徴・費用相場をまとめています。

※横にスクロールしてご覧ください
工法の名称鋼管杭圧入工法耐圧版工法土台上げ工法
特徴
  • 建物下の基礎を掘り下げ、鋼管杭を挿入する
  • 支持層の深さが30メートル以内で実施可能
  • 基礎の下に耐圧板と油圧ジャッキを入れて水平に調整する
  • 安定している層が2メートル以内、もしくはN値が5以上で実施可能
  • 建物と基礎を切り離した間に耐圧板を入れて水平に調整する
  • 地面を掘らないため工期が1週間程度と短い
  • 沈下が終息していることが条件
費用相場600万円〜450万円〜100万円〜

不同沈下の沈下修正工事を検討する際は、上記をぜひ参考にしてください。

不同沈下は自分で測定できる?

不同沈下について詳細を把握するためには、調査会社への依頼が必要です。ただし、調査会社に依頼する前に自分でもできる範囲で調べておきたいという方もいるでしょう。

そもそも不同沈下は自分で測定可能なのでしょうか?また可能な場合、どのような手段がありますか?

事務員

浜崎編集長

手間はかかりますが可能です。もし手間をかけずに調べたいという場合は、スマートフォンアプリでの測定がおすすめです。

内閣府がリリースしている「じぶんの地盤アプリ」などを使用することで、簡易的ではありますが自分で不同沈下を確認できます。また、国土交通省により提供されている「ハザードマップポータルサイト」などを活用し、対象となる土地の安全性について調べておくことも大切です。

MEMO

本格的に調べるとなると、専門的な知識や道具が必要となるため、より確実な調査結果を出すためにも調査会社への依頼がおすすめです。

まとめ

今回は、地盤の一部に傾斜が発生する現象、不同沈下について紹介しました。

地盤に関連するさまざまな原因で発生する不同沈下は、建物はもちろん人体にも悪影響を与えます。

地盤の状態によって実施できる工事の種類や費用に違いも出るため、今回紹介した工事の種類や費用相場をぜひ参考にしてください。

また、地盤についてはスマートフォンアプリなどで簡易的な調査をして調べることもできます。

しかし、専門性の高い領域でもあるため、調査会社への依頼がおすすめです。今回紹介した内容で、皆さんが抱える不同沈下に関する不安を少しでも解消できれば幸いです。