戸建てからマンションに住み替えるメリット・デメリット!時期や住宅ローンが残っている際の注意点

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のざっくりしたポイント
  1. 戸建てからマンションに住み替えることで生活の利便性や快適さ、住む人の負担を軽減させるなどのメリットを享受できる
  2. どのようなデメリット(注意点)があるのか把握することが重要
  3. マンションを購入するタイミングや住宅ローンとの兼ね合いに注視しておくことがポイント

近年、家族構成の変化やワークライフバランスの多様化に伴い「戸建てからマンション」または「マンションから戸建て」など住居を住み替える人が増えつつあります。しかし、これまで戸建ての生活に慣れ親しんだ人が憧れや利便性だけを求めてマンションに移り住むと、予想もしていなかったデメリットや注意点に遭遇するケースが数多くみられます。

そこで本記事では戸建てからマンションに住み替える上でのメリット・デメリットをはじめ、住み替える時期や住宅ローンが残っている場合の注意点について解決します。

戸建てからマンションに住み替えるのは60代以降の二次取得が多い

国土交通省住宅局の「平成30年度住宅市場動向調査」によると分譲マンションに住む世帯主を年齢構成別に分類してみました。初めて住宅を取得した世帯(一次取得)は30歳代が60.0%と最も高い割合である一方、分譲マンションを2回目以上の取得した世帯(二次取得)は60歳以上が40.5%(中古マンションでも60歳以上が41.3%)と最も多いことがわかります。

そのため、これまでは一戸建てを購入したら「その土地に生涯住む」などと言われてきましたが、人口動態の変化やライフスタイルの多様化に伴い60年代以降の世帯でもマンション購入を検討することなどの変化が見られます。

戸建てからマンションに住み替えるメリット

なぜ60歳以上の世帯で二次取得の住宅として戸建てからマンションに住み替えが増えているのか?それは戸建て住居にはないマンションならではのメリットが関係しているのです。以下では戸建てからマンションに住み替えるメリットについて解説します。

部屋に階段や段差が少ないので老後でも安心

現在多くのマンションではバリアフリーが標準装備されていることが多く、老後の世帯でも安心安全に暮らすことができます。一般的な戸建て住宅の場合、建物内に階段や段差があり高齢者になるに従って生活の利便性や行動範囲が低下してしまいがちです。

しかしマンションであれば基本的に室内はフルフラットに設計されており共有部分もバリアフリー対応になっているため、高齢者の方であっても問題なく生活することができます。

立地が良いので生活しやすい傾向がある

近年のマンションの傾向は駅近や駅直結など好立地かつ利便性に優れている物件も多いため、比較的どの世帯でも生活しやすい環境になります。またある程度築年数が経過したマンションでも近隣に商店街やスーパー、コンビニなどがある場合も多く、エリアによってはすべての行動範囲を自転車や徒歩でまわることも可能です。

戸建てに比べて防犯のセキュリティが高い

マンションは戸建てに比べて防犯面やセキュリティー対策がしっかり取られているため、安心安全に暮らせると言ったメリットがあります。特に近年のマンションは防犯カメラやオートロックの設置だけでなく、有人による見回りやマンションコンシェルジュの配置などセキュリティ面の強化を図っています。

MEMO
また階層が上層になるにつれて部屋に侵入されるリスクも減るため、戸建てと比べてマンションのセキュリティーは高いと言えるでしょう。

ゴミ出しが楽になる

マンションに住むメリットの一つにゴミ出しが楽になると言ったことが挙げられます。戸建ての場合、各エリアにゴミステーションが設けられており、その多くが当番制でおこなわれています。

しかしマンションでは一般的に共有部の指定された箇所にゴミを持っていくだけで終わりですし、マンションによっては、そのゴミを持っていく箇所が各階に設けられているためゴミ出しにかかる負担を減らしてくれます。

戸建てに比べて手間がかからない

マンションは戸建てと比べて手間をかけずに清潔かつ綺麗な空間を持続することが可能です。戸建ての場合、外壁の汚れや塗装の塗り直し、庭の草むしりなど綺麗な外観を維持するためには、かなりの時間と労力を費やします。

MEMO
対するマンションは建物を管理する上では業務の大半を専門の企業に委託するため、常に清潔かつ綺麗な空間を維持することができます。

戸建てからマンションに住み替えるデメリット(注意点)

戸建てにはないメリットを有しているマンションですが、その一方マンションに住み替える上で注意すべきデメリットも存在します。特に戸建てとマンションでは居住する際に意識すべき点や各場所の使用方法などに大きく違いがあるため、あらかじめ把握しておくかどうかでマンションの快適さや住み心地も違ってきます。

以下では戸建てからマンションに住み替えるデメリット(注意点)について解説します。

維持費は戸建てとそこまで変わらない

戸建てからマンションに住み替える上で注意しなければならないのが月々の維持費に対する意識です。多くの人がマンションの購入を検討する際に初期費用として発生する頭金や継続的に払う月々の住宅ローン、各種税金などと思いがちですが、マンションにはその他にも管理費や修繕積立金、車を駐車するなら駐車場代が発生します。

これらの費用は物件によって異なるものの月の支払いにプラスして3~5万円程度かかるイメージです。そのためマンションを住み替える上で改めて住宅ローンを組む場合は、これらのランニングコストも踏まえた上で支払い総額を計算するようにしましょう。

マンションの規約に従わなければならない

マンションでの生活を送るためには戸建てとは異なりマンション独自の規約やルールである「管理規約」に従う必要があります。管理規約とはマンションなどの区分所有建物で所有者が快適かつ安全な生活を維持するために遵守すべき所有関係や権利、義務などが定められたルールブックのことを指します。

内容としてはマンションを利用する際の注意事項をはじめ、ペットの飼育の有無やリフォーム工事の手続き規約の整備、修繕計画の作成など多岐にわたります。

MEMO
ただし管理規約はマンションによって異なるため、あらかじめ確認しておくようにしましょう。

管理組合の「役員」は順番になっている

マンションには戸建てとは異なり該当マンションを管理・維持するために管理組合が設置されています。しかし管理組合の役員は立候補や推薦で定員に届かなかった場合順番制になっているため、マンションの規模にもよりますが2~3年に1度のペースで管理組合の役員が回ってきます。

比較的時間のある住人の方やマンションをより快適かつ安心安全に過ごしたい人、マンション管理に関する知識やノウハウがある人であれば問題なくこなすことができるでしょう。しかし時間的猶予がない場合やマンション管理に対する知識が乏しい人だと、かえって負担やストレスが増す恐れがあるため、あらかじめ管理組合の集まりについて把握しておくことが重要です。

自家用車がある場合、駐車場まで遠い

戸建てとマンションで大きな違いと言えるのは駐車場までの距離です。従来戸建てであれば自宅の敷地内や庭先に車を停めることが一般的でしたが、マンションとなると距離が遠いだけでなく地下駐車場や機械式など入出庫までにかなりの時間を要します

また、これまで当たり前に出来ていた買い物や荷物の出し入れ、重い物の搬入などが難しくなるため、あらかじめマンションの駐車場について確認しておくことが重要です。

収納スペースが戸建てに比べて少ない

戸建てからマンションに住み替えるときに長く住む上で注意しなければならないのが、マンションの収納スペースの少なさです。戸建てであれば家族の荷物を床下収納や階段下、物置、ガレージなど、自分たちの専有スペースに荷物をおさめることが可能になります。

その一方、マンションの収納スペースは限られており基本的に戸建てで収納してきた荷物を、そのままマンションに持っていこうとすると、収納しきれないといったことになりかねません。一部のマンションでは部屋とは別に個別のトランクルームや収納スペースを設けている物件もありますが、仮にあっても戸建てに勝るスペースはありません。

注意
大半の物件では付いていないため荷物が多い世帯はあらかじめどの程度の荷物が収納できるのか確認しておく必要があります。

戸建てからマンションに住み替えるメリット・デメリット まとめ

戸建てからマンションに住み替えることで生活の利便性や快適さ、住む人の負担を軽減させるなどのメリットを享受できる一方、戸建てにはなかったランニングコストや管理規約、管理組合への参加など、住む上で注意すべきデメリットもあります。

ただマンションに住むメリットに目を向けるのではなくマンションに住み替えることで、どのようなデメリット(注意点)があるのか把握することが重要です。

住宅ローンが残っている時に戸建てからマンションに住み替えるのは良いの?

戸建てからマンションにスムーズに住み替えることが可能なら自分たちが希望するマンションがあるかどうかで新たな住居を決めるのが最適です。しかし一般的には住宅ローンの残債があるため、住み替えをためらう人も少なくありません。以下では住宅ローンが残っているときに戸建てからマンションに住み替える際のポイントについて解説します。

売り先行と買い先行について

もし戸建てからマンションに住み替えを検討する場合「売り先行」「買い先行」と言った売買のタイミングについて注意する必要があります。売り先行とは現在住んでいる戸建ての売却を先に進めてしまう方法です。この方法であれば先に戸建ての売却額がわかるため、住宅ローンの残債が完済できるか、また売却益が出ればマンションの頭金に充てることも可能です。

しかし住宅が売却できた際は期限内に家を明け渡すことになるため、仮に新居が見つからないと仮住まいを探さなければならず、無駄に引越しをする羽目になってしまうため気をつけましょう。

対する買い先行とは先に新しく住むマンションを決めてから現在の住居を売却する方法です。この方法なら妥協することなく納得のいくマンションを見つけることができます。ただし売却がスムーズにいかないと、これまでの住居と新しい住居の二重ローンを支払うことになったり、売却を急ぐあまり値下げせざるを得ない状況に陥る可能性もあります。

MEMO
どちらの方法を選択してもメリットデメリットは存在します。そのため各方法の良し悪しで判断するのではなく、住宅に対する思い入れや資金力など失敗や後悔しないよう決断するようにしましょう。

つなぎ融資を検討した方が良いケース

つなぎ融資とは戸建てからマンションに住み替えを行う際に新たな住宅ローンが実行されるまでの一定期間内で生じる資金不足や支払いを解消するために利用することができるローンを指します。つなぎ融資を検討することで不足金額に対する二重ローンを回避できるだけでなく、購入までのプロセスをスムーズにおこなえるなどのメリットがあります。

注意
ただし、つなぎ融資を借りる場合でも融資によって発生する利息の支払いをはじめ、印紙代や印鑑証明、手数料などの諸費用はかかってしまいますので、あらかじめつなぎ融資を検討する上で利息などの計算をしっかりおこなっておくことをおすすめします。

戸建てを賃貸に出した方が良いケース

戸建てからマンションに住み替えを行う場合、戸建てを売却するだけでなく賃貸に出すと言った選択肢もあります。これまで住んでいた戸建てを賃貸に出すことで定期的に賃貸収入を得られるだけでなく、思い入れのある戸建てを残したまま投資物件として活用することも可能です。ただし将来的に戸建てを売却するのであれば売却する時期には注意するようにしましょう。

マイホームのように住むことを目的とする不動産は「居住用財産」と呼ばれ、居住用財産を売却する際は、譲渡所得(不動産を売却することで得られる利益)から最大で3,000万円までの金額を課税対象から除外することができます。

またその他にも10年を超えて所有している居住用財産に対する軽減税率の特例や特定居住用財産の買換え特例などもあるため、それらの特例をうまく活用することで、早期に売却した方がメリットがある場合があります。

MEMO
したがって、それぞれの特例の要件を満たしているかを確認した上で戸建てを賃貸に出すか判断するようにしましょう。

まとめ

戸建てからマンションに住み替える上ではマンションに住むことによって得られるメリットを最大限享受したいという世帯が多いのではないでしょうか。しかし、その一方マンションに住むデメリットを事前に把握しておかないと、理想の楽しい生活から一転「こんなはずじゃなかった」という後悔になってしまいます。

マンションへの住み替えを後悔しないためにはマンションに住むデメリットだけでなく、マンションを購入するタイミングや住宅ローンとの兼ね合いに注視しておくことが重要です。