- 礼金払いたくない!そもそも礼金とは?
- 礼金を払わずに済む交渉のポイント
- 礼金なしのデメリットはある?
賃貸物件を借りるには、家賃や契約内容に応じた初期費用を準備しなくてはなりません。
といっても、初期費用にはさまざまな項目があり「この項目の費用、本当に必要なの?」と疑問を持つ人も少なくないでしょう。
その代表例が、礼金の存在です。
平松編集者
岸田解説員
礼金とは
礼金とは、家を貸してくれる大家さんにお礼の意味を込めて支払うお金のことです。
昔の日本は物件自体が少なく、部屋を貸してくれる大家さんも少なかったため、家を貸してくれる大家さんに謝礼を支払う風習がありました。
平松編集者
岸田解説員
- 家賃を下げる代わりとして礼金を求める
- 部屋のクリーニング費用に使う
- 広告宣伝費に使う
家賃を収入源とする大家さんも、物件のローンの支払いやクリーニング費用、広告宣伝費などの経費がかかります。
これらを補填するために、礼金が設けられているケースもあるのです。
入居者が少ない物件は家賃を下げて募集をかけ直すことも多いですが、単純に家賃を下げただけでは物件のローンが支払えなくなることもあります。
そこで、大家さんは家賃を下げる代わりに礼金としてお金を請求することもあるのです。
平松編集者
岸田解説員
礼金の特徴は返金がないこと
礼金は、言葉通り大家さんへの謝礼として支払うお金なので、一度支払うと返金されることはありません。
礼金は法律で定義されているものでも、意味づけられているものでもないからです。
礼金と敷金の違いとは
敷金は、退去時の原状回復に使用される費用であり、借主が支払うものとして前もって大家さんに預けておくお金です。
原状回復は国交省が定めるガイドラインに基づいて行われるため、家具の設置跡や日焼けのような通常消耗や、経年劣化によるものは借主負担にはなりません。
また、敷金は礼金と異なり退去時に差し引かれる費用との差額が返還されます。礼金と敷金、その違いは返還があるか・ないかということです。
礼金の相場は家賃1〜2ヶ月分
礼金の相場は家賃の1〜2ヶ月分が一般的とされています。
国交省が発表した「住宅市場動向調査」においては、令和4年度の集計において礼金の月数が「1ヶ月ちょうど」と答えた世帯が全体の69.4%ともっとも多いことがわかりました。
礼金は家賃の額に比例するため、家賃が高い物件は当然礼金も高くなる傾向にあります。
また、礼金は大家さんや管理会社が設定するため、物件や地域によって礼金の金額に差が生じます。
まずは、希望エリアの礼金の相場を確認しておくと良いでしょう。
平松編集者
岸田解説員
礼金には消費税が発生する?
居住用賃の住宅を借りる場合は、礼金・敷金ともに非課税であり消費税は発生しません。
というのも、消費税は本来事業者が事業としての対価を得て行う取引に対してかかるものです。
住宅を借りる際は、社会政策的に消費者への大きな負担をなくすために非課税となっています。
礼金ゼロ物件はなぜ存在する?
物件によっては礼金を必要としないケースも珍しくありません。
実際、Yahoo!不動産※で東京23区の賃貸物件を調べると、全288,009件の掲載物件に対し、礼金ゼロの掲載物件は120,792件もありました。割合にして、全体の41%が礼金ゼロであることがわかります。
加えて、国交省が発表した「住宅市場動向調査」においても、令和4年度の集計で“礼金があった”という世帯が全体の44.8%であることがわかっています。※2023年10月10日現在
では、そもそもなぜ礼金ゼロ物件は存在するのでしょうか?
もともと、礼金は大家さんへ支払うお礼のお金であって、大家さんが不要だと思えば支払う必要がありません。
たとえば、入居者が見つからず空室期間の長い物件がある場合には、入居者の負担を減らして空室を作らないようにする狙いがあります。
大家さんにとっては、1回きりの礼金よりも毎月の家賃収入がなくなるほうが痛手です。つまり、礼金ゼロは大家さんの厚意ということになります。
礼金を払いたくない!払わずに済む交渉のポイント
平松編集者
岸田解説員
- 契約の意志をはっきり示す
- 閑散期を狙って交渉する
- 申し込み前に相談する
- 礼金が高い物件を狙う
- 条件の悪い物件を狙う
- 空室の長い物件を狙う
- 短期解約違約金を申し出る
- 良い印象を与える
契約の意志をはっきり示す
礼金交渉を受け入れたとして、結局契約に至らなければ大家さんにとってマイナスでしかありません。
また、希望物件に対してしつこく礼金交渉を申し出たり、同時進行で他の物件にも礼金交渉を申し出たりしていると、大家さんからの印象は悪くなる一方でしょう。
印象が悪くなれば、礼金どころか入居審査に影響する場合もあります。
大家さんからの印象を良くするコツとして、不動産会社には「交渉できたら必ず契約する」と明確な意志を伝えることがポイントです。
平松編集者
閑散期を狙って交渉する
賃貸市場には、進学・就職などの引っ越しシーズンを迎える繁忙期(1〜3月、9・10月)と、引っ越しシーズンを終えた閑散期(4〜8月)があります。
礼金交渉するなら、閑散期がベストタイミングです。閑散期は部屋を探す人が減るため、空室の物件を抱えている大家さんにとっては家賃収入がなくなるリスクがあります。
大家さんからすれば、礼金を下げてでも空室をなくしたいと考えるのは自然なことです。
岸田解説員
申し込み前に相談する
礼金交渉のタイミングとして必ず守ってほしいのは、申し込み前に相談するということです。
礼金交渉は不動産会社ではなく大家さんに行うため、契約直前に礼金交渉を伝えても大家さんの承認が得られない場合があります。
もちろん、賃貸借契約を結べば諸条件に“了承した”とみなされるため、書類修正どころか礼金交渉もできなくなります。
もしも申し込み後に礼金交渉を持ちかけるなら、申込みから2〜3日以内に申し出ましょう。このタイミングなら、書類も修正しやすく交渉に成功しやすいです。
岸田解説員
礼金が高い物件を狙う
礼金交渉がしやすい物件にはある特徴があります。その一つが、礼金の高い物件です。交渉しやすい目安としては、礼金が家賃1ヶ月を超える物件。
交渉を成功させるためにも、同エリアの条件が似ている物件の情報を集め、相場をチェックしておきましょう。
礼金の相場よりも高い物件なら、説得力が高く交渉の余地が大いにあります。
条件の悪い物件を狙う
空室期間の長い物件に加え、空室になりやすい物件も礼金交渉が成立しやすくなります。
わかりやすくいえば、条件の悪い物件です。たとえば北向き(日当たりが悪い)、築年数が古い、最寄り駅まで徒歩15分以上もかかる、家賃が周辺相場より高い生活に不便な住環境といった物件は敬遠されやすく、入居者が見つかりにくい傾向にあります。
空室の長い物件を狙う
大家さんにとっては、物件の空室期間が長ければ長いほど家賃収入もなくなるため、礼金交渉が成立する傾向にあります。
空室期間が長いかどうかは、不動産会社に相談すると教えてもらえる可能性があるほか、物件情報の更新日をチェックすることで知ることができます。
短期解約違約金を申し出る
礼金交渉を成立させるテクニックとして、礼金の代わりに短期解約違約金を設定する方法があります。
短期解約違約金は、大家さんが定めた期間内に解約する際、通常の退去費用に上乗せして支払う違約金のことです。
短期解約違約金を設定することで、万が一短期間(1年未満など)で退去・解約となった場合でも大家さんにとっては収入減のリスクを抑えることができます。
この短期解約違約金の設定を、礼金交渉の材料として提案するのも一つの方法です。
良い印象を与える
礼金交渉を成立させるためには、大家さんへ良い印象を与えることが重要です。
礼金交渉の流れ
礼金交渉のスムーズな流れは、下記を参考にすると良いでしょう。
借主にできることは1と2です。申し込み後は、大家さんのみならず保証会社や管理会社での手続きも始まるため礼金交渉に適していません。
見積もりを提示されたタイミングで相談しておくと、スムーズに交渉することができるでしょう。
礼金なしなのに意味不明?礼金なしのデメリット!
礼金は意味不明な存在(慣習)かも知れませんが、礼金のある物件は設備や内装のグレードが高く、立地条件が良いケースも多いほか、住人のマナーが良い傾向にあります。
なにより、礼金なしで物件を探すよりもはるかに選択肢は増えるでしょう。
このように、礼金ありにはさまざまなメリットがあるのも事実ですが、当然礼金なしの物件にもデメリットはあります。
- 他の項目で費用がかかる場合がある
- 退去時に多くの費用がかかる場合がある
- 物件のマイナスポイントを受け入れなくてはならない
- 家賃が高くなる可能性がある
他の項目で費用がかかる場合がある
大家さんの中には、礼金をルームクリーニング費用や鍵交換費用に充てる人もいます。
礼金なしの場合、本来であれば大家さんが負担すべき鍵交換費用を請求されたり、入居前のルームクリーニング費用を請求されたりとほかの項目で費用が発生する可能性があるでしょう。
たとえ礼金なしでも、ほかに費用がかかればお得とは言えません。
退去時に多くの費用がかかる場合がある
退去時、日常生活で起きた傷や汚れの修繕費・クリーニング費用を大家さんが負担するのが一般的です。
しかし、礼金なしの場合は退去時の修繕費・クリーニング費用を全額借主が負担しなければならないケースがあります。
岸田解説員
物件のマイナスポイントを受け入れなくてはならない
礼金なしの物件は、長い間入居者が決まらず空室状態が続いているケースも多いです。
空室状態が続いている、ということは物件自体にマイナスポイントがあるということです。
駅から離れていたり、建物が古かったり、エレベーターがないにも関わらず高層階だったりと、なにかしらの不人気要素を受け入れなくてはならないこともあるでしょう。
家賃が高くなる可能性がある
礼金をなしにする代わりに、家賃を相場より高めに設定している物件もあります。
たとえば、同じエリアで同じような条件の物件の家賃が10,000円安かったとしましょう。
1年間の差額は12万円にも及びます。長期間入居する際は、礼金を払ったほうがトータル費用が安くなるケースもあるのです。
平松編集者
おかしいと感じる前に!礼金交渉が難しくなる6つのパターン
岸田解説員
平松編集者
岸田解説員
- 新築・築浅やハイグレードな物件
- 家賃が相場より安い物件
- 更新料がない物件
- 繁忙期の交渉
- そもそも交渉材料がない
新築・築浅やハイグレードな物件
新築や築浅、人気エリア、またハイグレードな物件は、大家さん側が条件を緩和させなくても新規の入居者が見つかりやすいため、交渉で礼金を安くする、またはなしにするのは難しいでしょう。
仮に人気要素のある物件で礼金交渉を持ちかけても、不動産会社側から扱いにくい顧客と判断され、積極的に対応してもらえない可能性があります。
家賃が相場より安い物件
物件そのものの室が高いにも関わらず、相場より家賃が安い物件は礼金が高めに設定されている可能性があります。
こうした物件も、新築や築浅、ハイグレード物件のように競争率が高いことから、たとえ礼金が高くても入居を希望する人はいます。
相場よりも家賃を安い人気物件は、家賃の値下げ分を礼金で調整していると言えるでしょう。
更新料がない物件
多くの賃貸物件では、2年ごとに更新料(家賃1ヶ月分目安)が請求されます。
更新料がない物件は、礼金が設定されていることも多いため、礼金交渉には不向きです。
岸田解説員
繁忙期の交渉
1〜3月あたりの繁忙期は引っ越し需要が高く、大家さんや不動産会社側からすれば積極的な宣伝をしなくても入居者が決まりやすい時期です。
たとえ礼金ありでも、入居希望者が増える時期にわざわざ礼金交渉に応じる必要もありません。
そもそも交渉材料がない
礼金交渉に臨むには、大家さんにとってなにかしらのメリットをもたらす“材料”が必要です。
「礼金を安くしてくれたらすぐにでも契約します」「短期解約違約金を設定するのはどうでしょうか」というトークが、まさに交渉材料になるでしょう。
しかし、何の交渉材料もなく礼金を安くしてほしい、なしにしてほしいというのは大家さん側の気分も悪くなります。
礼金交渉に失敗した場合に初期費用を抑える方法
礼金を払いたくない理由や目的が“初期費用を抑えたい”という人もいるでしょう。
この場合、あえて礼金にこだわる必要もありません。
礼金交渉に失敗したら、別の方法で初期費用が抑えられないか不動産会社に相談しましょう。では、礼金以外で初期費用を抑える方法について具体的に紹介します。
- 礼金なしの物件から選ぶ
- フリーレントを交渉する
- 入居日を月末に寄せる
- 仲介手数料の値引き交渉をする
- 礼金を敷金にしてもらう交渉する
- 初期費用を分割払いする
礼金なしの物件から選ぶ
礼金交渉に失敗した、もしくは礼金交渉に自信がない人は、最初から礼金なしの物件をピックアップするのが良いでしょう。
先述の通り、賃貸物件全体の4割強は礼金なしの物件です。選べる物件は限られますが、確実に礼金を払わずに済む方法としておすすめします。
フリーレントを交渉する
フリーレントは、家賃が数カ月分無償になる契約です。
フリーレント付きの物件は、たいてい短期解約違約金の特約がついているケースも珍しくないため、あえてフリーレントを交渉することで“長期的に住んでくれるかも知れない”と大家さん側も検討しやすくなります。
入居日を月末に寄せる
一般的に、家賃は申込みから2週間ほどで発生します。場合によっては、引越し前の退去物件と合わせて家賃を二重に支払うことになるでしょう。
こうした二重家賃を避けるには、引越し先の家賃の発生日を月末に寄せるよう交渉するのがポイントです。
仲介手数料の値引き交渉をする
礼金は大家さんに対して支払うものですが、仲介手数料は不動産会社に対して支払うものなので、礼金交渉に失敗した場合は仲介手数料の値引きを相談しましょう。
岸田解説員
礼金を敷金にしてもらう交渉する
礼金や敷金が高い物件は、大家さんが家賃滞納を不安視しているケースが多いです。
つまり、お金を預ければ安心できる大家さんも存在するため、礼金を敷金に変えてもらう交渉も一つの方法です。
お金を預ける、という点では初期費用の節約につながることはありませんが、礼金と違い敷金は返金される可能性があります。結果的に損することはないでしょう。
初期費用を分割払いする
まとまったお金がないなどで契約時に大きな出費を抑えたいなら、初期費用の分割もおすすめです。
基本的に現金ではなくクレジットカードやローンを組むことで分割払いができるため、不動産会社に初期費用の分割ができるかどうかを確認しましょう。
礼金以外にも返金されない項目がある
ここまでは礼金なしにしたい、安くしたいという人に向けた交渉を中心にご紹介しましたが、仮に礼金を節約できたとしてもほかの項目で初期費用はかかります。
加えて、礼金と同じように返金されない項目もあるため、これから紹介する項目が見積書に記載されている場合は不動産会社に内容を確認しましょう。
- 保証金がある場合
- 敷金が償却になっている場合
- 事務手数料等がある場合
保証金がある場合
敷金に似ている項目として「保証金」が存在しますが、この保証金が返金されるものかどうかは契約内容によって異なります。
敷金のように返金されるのか、礼金のように返金されないのかは一見把握しづらい項目なので、物件情報や見積書に記載がある場合は使用目的や契約内容を確認しておくと安心です。
敷金が償却になっている場合
敷金は退去時の原状回復費用に充てられるため、余れば借主に返金されます。
しかし、敷金が償却になっている場合や敷引きになっている場合は返金されないので注意が必要です。
さらに、敷金の返金がないだけでなく別途請求されるものが発生するケースもあります。
事務手数料等がある場合
ひとくちに初期費用といっても、不動産会社が借主に請求できるのは仲介手数料のみです。
この仲介手数料は家賃1ヶ月分+税が上限と定められており、内訳には事務手続きや大家さんへの交渉などさまざまなものが含まれています。
一方、仲介手数料が請求されているにも関わらず「事務手数料」や「契約手数料」の項目があれば、本来仲介手数料として請求されるものが二重に請求されている可能性があります。
岸田解説員
平松編集者
礼金だけでなく初期費用を総合的に考えて
礼金は大家さんや管理会社の意向に基づいて設定されるため、交渉次第で安くしてもらえる可能性があります。
しかし、礼金を安くする代わりに家賃が高くなったり、別の項目で初期費用が発生したりすると、トータルで支払う費用が増えてかえって損することになるでしょう。
岸田解説員
平松編集者