ポンジスキームは、投資詐欺で勝ち逃げするボードゲームに採用されるほど有名なワードで、投資詐欺のほとんどが該当する手法です。
最近、仮想通貨やNFTなどの分野も同様の手口で投資詐欺が広がっています。被害にあわないためにもどんな詐欺なのか、どんな手口なのかしっかりと把握しておくべきです。
今回はポンジスキームとは何かを深堀していきながら、詐欺被害にあった芸能人や詐欺者は捕まらないって本当なのか一通りの内容を解説していきます。
ポンジ・スキームの日本で起きた詐欺事件
本章では日本で起きた8つのポンジスキームによる詐欺事件を紹介します。さまざまな業種の詐欺事例が簡単にわかるようにまとめました。
オレンジ共済組合事件(1992年)
オレンジ共済組合とは、友部達夫元参議院議員の政治団体が運営していた共催団体で、この組合が1992年〜1996年にかけてポンジスキームの詐欺を働いていました。1997年に友部は逮捕され2001年に懲役10年の実刑判決が確定し、議員を離職しています。
オレンジ共済組合は、年利6〜 7%配当と謡った投資商品「オレンジスーパー定期」で約93億円の資金を集めていたものの、大半の資金は選挙費用や政界工作費、借金返済など私的に流用されていました。事件発覚後に組合は倒産して、ほとんどお金は返金されずに大勢の方が被害を受けた事件です。
平成電電事件(2006年)
平成電電事件とは、電気通信事業を行っていて2009年に破産した平成電電株式会社の元経営陣が詐欺罪で逮捕された事件です。2005年に1200億円の負債を抱えて破産したことを機に、特別目的会社の「平成電電システム」と「平成電電設備」による投資サービスの配当停止になり詐欺の容疑がかかる要因となりました。
2社の主な事業は出資金で通信設備を購入して平成電電に貸し出しリース料金を配当するサービスです。年利最大10%と謡って約1万9000人から約490億円を集めました。会社側は出資である旨やリスク説明や契約書に倒産時の対応を明記していたことを主張していたものの、詐欺で有罪となったのです。
エル・アンド・ジー(2007年)
健康食品販売を行っていた株式会社エル・アンド・ジーは詐欺による資金集めで現在は破産しています。2001年に電子マネー形式の疑似通貨「円天」を発行し、元本保証で100万円の出資で3ヶ月毎に9万円配当するとの説明で、多額の出資金を集めました。
2007年1月頃から資金繰りが悪化して、配当金を現金から円天に切り替え、さらに円天による配当も停止していったのです。さらに円天を利用できる店舗がごくわずかでほぼ偽装通貨に該当する電子マネーです。
大物演歌歌手やタレントを広告塔として利用していたため、芸能人に対しても損害賠償の請求の可能性を示していました。
最後には出資法違反の容疑で逮捕され有罪となったのです。
安愚楽牧場(2011年)
株式会社安愚楽牧場は、繁殖母牛に出資して生まれた子牛の売却で多額な利益を得られるという見せ方で多額の出資金を集めていました。バブル崩壊による金利および株価低下により、和牛の預託事業が手堅いとされて事業拡大していったものの、実態は自転車操業になっていたのです。
そもそも決算データがいい加減な管理だったこと、マネジメントの問題や牛肉の質の問題が利益から配当金をまわせなかったのが原因です。自転車操業の要因に加えて、東京電力福島第一原発事故後、解約者が加速されて破綻に至りました。
日経225先物アービトラージ詐欺事件(2016年)
ファンド会社のクエストキャピタルマネージメント有限会社が日経225先物をアービトラージ取引で運用すると謡って出資金を集めた詐欺を働きました。約60人から113億円の出資金を集めていたものの、実際はほぼ運用実績がなく出資金を配当にまわす自転車操業だったのです。
日経225先物アービトラージ詐欺事件では有名人のGACKTさんや江角マキコさん、布袋寅泰さんも投資をして被害にあいました。さらに寿司チェーンの小僧寿しも1億円出資したと報道関係者より報じられていました。
かぼちゃの馬車事件(2017年)
株式会社スマートデイズがサブリース事業で展開していた女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」でポンジスキームの詐欺を行いました。賃料30年保証・利回り8%との謳い文句で一棟1億円以上の不動産を販売していたのです。
サブリースの仕組み自体は違法ではありませんが、株式会社スマートデバイスは数々の不正を働いてオーナーを増やしていきます。
スルガ銀行と提携して書類改ざんや虚偽の説明を行い、高額融資を受けられるようにしたり、施工会社から高額なキックバックを受けとったりしていました。
キックバック代が上乗せされていたため実際の不動産価値は1億円ではなく6,000万円程度のようです。入居率40%とかなり低い状態が続き、スルガ銀行からの融資の規制がかかり、経営破綻に至ったのです。
須永解説員
ジャパンライフ事件(2018年)
ジャパンライフとは預託商法のビジネスモデルで詐欺を働いた会社です。物を購入してもらった人(オーナー)から一時的に購入品を預かり、貸与サービスで得た利益を配分する仕組みです。
ジャパンライフでは600万円の磁気時計を販売して年利6%の配当金を渡すという謳い文句で、10,000人の被害者と約2,100億円の被害をだしました。預託を受けていた商品が22,441個に対して実際に貸与していた商品は2,749個と1割程度の利用率です。配当金は貸与代から賄えずに自転車操業で配当する流れになっていきました。
被害が拡大した要因として著名人を広告塔として起用していた点があげられます。有名人がPRしている商品だから安心だと思い込み、購入に至ってしまうのです。
TKO木本さんが騙された投資詐欺
2022年にお笑い芸人のTKO木本武宏さんは、知人2人から別々の投資詐欺にあいました。最初はFXトレーダーと名乗る知人A氏から、投資の会社立ち上げや代行で運用する話を持ちかけられ、知人へ資金の支援や芸人仲間など周囲から資金集めを行ってしまったのです。しばらくすると音信不通になり、出資した資産の運用実態はなく1億円以上を騙されてしまいました。
その後旧友B氏からA氏に騙された経験があるという共通話から不動産か仮想通貨の投資を紹介されて出資してしまったのです。さらに芸人メンバーにも声をかけて被害額は5億円以上となりました。2つの詐欺事件で7億円以上の被害にあったようです。
ポンジ・スキームの飛ぶタイミングとは?予兆は?
そもそもポンジスキームの飛ぶタイミングとは詐欺師が集めたお金を持って逃げる時期を指します。ある程度まとまったお金が集まったときに消息不明になり、飛ぶ予兆は下記が挙げられます。
- 大規模なキャンペーンを打ち出す
- 連絡が遅くなる
- 配当払いの遅延が起こる
- 出金制限や出勤停止になる
飛ぶ直前は持ち逃げするお金を減らさないように出金制限をかけたり、最後に多額な金額に膨らませるために大規模キャンペーンを打ち出したりするのが特徴です。
詐欺師の一部にはぎりぎりまで利益を増やしたくて逃げるタイミングを逃して捕まってしまうケースがあります。
ポンジ・スキームで騙されたり巻き込まれたりした芸能人
TKO木下さんの事件はもちろんその他の有名な芸能人もポンジスキームで詐欺にあい多額な被害にあっています。また知らないうちに広告塔に使われていたり、高報酬でポンジスキーム商品の宣伝に加担したりと巻き込まれているケースが非常に多いのです。
金銭被害がなくても意図せずに詐欺へ協力してしまったことでイメージダウンになってしまった人もいます。
平成ノブシコブシの吉村崇さん
平成ノブシコブシの吉村崇さんはTKO木本さんからの紹介により仮想通貨の詐欺で3,000万円〜5,000万円の被害があったとの噂です。TKO木本さんの投資詐欺で一番被害額が大きかったようです。
積田編集者
野生爆弾くっきー!さん
野生爆弾くっきー!さんもTKO木本さんから投資の紹介をされて被害にあった一人です。
メディアで報じられた出資額は数百万円とされていますが、ラジオ番組で報道された金額より少し上の金額という発言もあったようです。
大御所芸人
名前は明らかになっていませんが、以前ゴールデン番組の経験がある大御所芸人も被害にあったとされています。
- アンガールズ
- サンドイッチ
- 千鳥
- バナナマン
- ブラックマヨネーズ
- 安田大サーカス
冠番組をもったことがある上記の有名芸能人の中にもしかしたら被害者がいるのかもしれません。
綾瀬はるかさんの母親
TKO木本さんの投資詐欺とは別の案件です。金銭消費貸借契約という名目で出資金を集めて運用して利息を渡すと紹介されて、綾瀬はるかさんの母親は会社の資金1億円を出資しました。
さらに広告塔として勝手に綾瀬はるかさんを使って出資者を募り、総額40億円の出資額になったようです。
GACKTさん
前章で紹介しました日経225先物アービトラージ詐欺事件でGACKTさんをはじめ、江角マキ子さん、布袋寅泰さんが被害に遭いました。
GACKTさんは紹介されたファンドへ投資するために、世田谷の事務所やスタッフの居住スペース兼自身の自宅であるデザイナーズマンション(約400平方メートル)を売却したと報じられています。
ポンジ・スキームにおける5つの手口とは?
ポンジスキームの主な手口は下記5つです。
- 少額で投資できる
- 高い利回りで利益が大きいと匂わす
- 金銭貸借契約で投資を促す
- 高額の紹介料を支払う
- 配当金を毎月受け取ることを勧める
上記の特徴がある紹介は詐欺であることが十分高いため気をつけるべきです。
少額で投資できる
会員になる前は少額で投資できるからリスクは少ないと紹介されます。投資してから毎月、配当金が支給されることに安心して、出資額を増やしてしまい被害額が膨らんでしまうのです。
高い利回りで利益が大きいと匂わす
年利が10〜30%と謡って得られる利益が大きいことを匂わしてきます。東証一部上場の年利が平均4〜5%で、世界で最も稼いでいると言われる投資の神様のウォーレン・バフェットでさえ平均年利が約20%です。年利が数十%以上と謡っている時点で、詐欺と判断すべきです。
金銭貸借契約で投資を促す
本来出資に関しては投資信託の契約を結びますが、元本保証されるからとの理由で金銭貸借契約を促してきます。そもそも元本保証されているのは預貯金(普通預金や当座預金、定期預金、貯蓄預金)のみで、利回りも低く年利の相場は0.002%〜0.03%です。元本保証されていて利回りがよい投資はありません。
高額の紹介料を支払う
誰かを紹介して加入に至ったら高額な紹介料を支払っていることが多いです。高額な紹介料を受け取りがたいために、周囲に拡散して友人からの紹介という安心感で被害が拡大していくのです。
積田編集者
配当金を毎月受け取ることを勧める
毎月の配当金を受け取るプランと配当金を引き出さずに投資にまわすプランがある場合、最初は配当金を受け取るプランを勧めてきます。毎月お金を渡すことで安心感を与えるのが目的です。
接触の頻度が上がると相手を信頼するというザイオンス効果(単純接触効果)を狙っています。安心感と信頼感から増額することを詐欺者は期待しているのです。
エクシア合同会社もポンジ・スキームの詐欺・訴訟でやばい?
エクシア合同会社の平均年利が30〜40%の超高利回りと明示していて、社員権で出資者を集めているのはポンジスキームなのではと囁かれています。
エクシア合同会社の概要
エクシアはさまざまな事業への投融資を行う合同会社です。社員の地位や権利・義務を与える社員権に出資してもらい集めたお金で投融資に回して一部の配当を渡す仕組みで運用しています。
会社名 | エクシア合同会社 |
設立時期 | 2015年 |
代表社員 | 菊池翔 |
所在地 | 東京都六本木3-2-1 |
主な事業内容 | 金賃業 |
エクシア合同会社がポンジ・スキームの詐欺でやばいと言われる理由
エクシア合同会社がポンジスキームの詐欺でやばいと言われる理由は下記の5つです。
- 元副社長による会社の実態を暴露
- 運用実績や第三者機関へ会計監査など情報開示していない
- 2022年4月から出金停止・制限がかかっている
- 2022年11月に代表が退任する
- エクシア被害対策弁護団から訴訟提起される
2022年5月に元副社長の伊藤大輔さんからエクシア合同会社の立ち上げの経緯やポンジスキームであること、元代表はトレーダーの結果を出せていないことを暴露したのです。高利回りの謳い文句や社員権のスキームがやばいという声がさらに多くなっていきました。
2023年2月時点で210名の出資者から総額6億円の請求を受けていて、本格的に飛ぶのではとの意見が多いものの、以前から出金制限がかかることはあったとのことから飛ばないとみている人もいます。
ポンジ・スキームは捕まらない?
ポンジスキームはなかなか詐欺の立証が難しく捕まらないケースが多いのです。最初から詐欺の意思があったかどうかの立証が困難であり、飛ぶ直前まできちんと配当されていたり経営破綻の場合は元本を返金しないと契約事項に明記されていたりするからです。
持ち逃げする前から怪しいと思っていても、配当金が渡されている以上は何も言えません。飛ぶタイミングで支払いができなくなったと報告をして、返金義務を逃れてしまいます。
なかには捕まってもよい前提でポンジスキームを働く人もいます。お金はなくなったとの体裁で海外銀行に逃がした上で捕まり、釈放された後に大金を受け取って過ごす計画のようです。
詐欺の立証が困難であることは下記でも解説しています。
ポンジ・スキームとは何?勝ち逃げできる?
ポンジスキームとは投資詐欺の一種で、運用利益を配分すると見せかけて出資金を集めてお金を持ち逃げする手法です。破綻することを前提に出資金を募ります。実際にはほとんどまたは全く、集めたお金の運用実態はありません。出資金から運用利益として渡すことが多く、自転車操業の仕組みでお金をまわしています。
加入すると実際に運用利益という名称でお金が戻ってくるため、利益を得られていると信用してさらに出資してしまい被害額が膨らむのが特徴です。
詐欺であるので、投資額以上の配当金をもらうことは不可能であるので勝ち逃げもできません。
1920年代アメリカの詐欺師「チャールズ・ポンジ」の名前がポンジスキームの由来になっており、投資詐欺の大半がポンジスキームに該当します。
ポンジスキームとネズミ講はお金を集めて還元すると謡っている点は共通なことから、日本の一部報道ではポンジスキームをネズミ講のように説明されますが実際は別の手法です。ネズミ講は会員がピラミッド形式で成り立つ詐欺モデルで、ポンジスキームはピラミッド形式とは限りません。
またポンジスキームの被害にあった場合、ほぼお金が戻ってこないのです。
須永解説員
ポンジ・スキームで稼ぐ方法
ポンジスキームの配当金を受け取れる仕組みを活用して稼ぐ方法を紹介します。どの方法もリスクが十分高いため実施するかどうかは慎重に判断すべきです。
案件が無くなる前に資金を引き出す
ポンジスキームが飛ぶ前に元金含め全額を引き出せれば利益を得られることになります。配当金を得ながら徐々に元本を引き出しても構わないですし、利益確定したいタイミングで一括の引き出しでも大丈夫です。
1回で引き出せる上限額やタイミングなどポンジスキームによって条件は異なるため、契約事項をしっかりと把握したうえで利益確定までの計画を練ります。
積田編集者
【高リスク】他の出資者を紹介する
新規の出資者を紹介すると、高額な紹介料を用意しているポンジスキームが多いです。紹介すれば紹介するほど、お金を稼げるようになります。ただし、詐欺とわかっていて人を勧誘すると犯罪に加担したとみなされるリスクがあります。
ほとんどの出資者は損をするケースが多く、さらに後から出資する人はそのリスクが高まるのです。そのようなリスクがあるものを勧めることで信用は失いますし詐欺まがいと該当します。紹介料を目的に稼ぐことはおすすめできません。
知識と事前調査が大前提
ポンジスキームで稼ぐためには、仕組みやなぜ破綻するのか、過去に破綻したポンジスキームの期間や相場はいくらなのか収集して分析することが重要です。
次に早めに案件に加入することです。あとになればなるほど飛ぶタイミングまでの期間が短いため、回収せずにほとんどの方は損をして終わってしまいます。案件情報を早くキャッチできるポジションにいれることが重要です。
最後に案件選定です。利回りが高ければ高いほどリスクが大きく飛ぶタイミングまでの期間が短い傾向にあります。利益確定させる時期をしっかりと見極めなければなりません。出資金ロック期間を設けている案件はなるべく継続させようという意思が見受けられます。
そもそも案件の契約事項によっては勝ち逃げがほぼ不可能な内容もあります。安易に選ぶのではなく、利益を得られるのか利益確定しやすいのか案件を見定めることが重要です。
仮想通貨が稼げるSTEPN(ステップン)が話題
TKO木本さんが手を出したのはSTEPNなのではと噂される、歩いて仮想通貨を稼げるNFTゲームです。初期費用は約2,500円(2023年1月時点)から利用できます。既存プレイヤーの利益は新規プレイヤーの初期費用から捻出されているため、ポンジスキームに似ていると噂されていますが、ほとんどのNFTゲームは同様の構造です。
STEPNの運営はしっかりと事業活動を行っているためポンジスキームではないと考えられます。ピーク時はかなり高い利益率だと評判でしたが、2022年5月にトークン価格が30%暴落して、失うリスクが高いことがわかりました。
須永解説員
ポンジ・スキームの見分け方
ポンジスキームの見分け方を紹介します。
- 投資で元本保証、高利回りと謡っていないか
- 実在している物件か確認できるか
- 相場より高い価格設定になっていないか
- 高額な紹介料が発生していないか
- 怪しい口コミがないか
うまい話はないため、簡単にお金を増やす話であれば信用せずに疑いの目をもってきちんと調べることが重要です。
明らかにポンジスキーム案件なものもあれば、判断が難しいグレーなサービスもあります。例えば、不動産投資商品を扱うみんなで大家さんは、ポンジスキームではと噂されていますが証拠はありません。気になる方は下記で詳しく解説していますのでご覧ください。
まとめ
ポンジスキームとは出資した人に配当金を渡すと謡って出資金を集めて、経営者が集めたお金を持ち逃げする投資詐欺のことです。月々の配当金を受け取れることへの安心感で出資額を増やして被害額が大きくなる特徴をもっています。
ポンジスキームを含め投資詐欺で騙されたお金はほぼ戻ってきません。詐欺を企てて運用していたことの立証が困難であること、経営破綻した場合は返金しない旨が明記されていることにより有罪に持ち込むのは非常に厳しいのです。
逃げるタイミングで海外の口座にお金を移動させて、世間にはお金はないから返せないと言われると追及しようがありません。
積田編集者