- 個人間売買とは
- 個人売買の具体的なデメリットや注意点
- 直接購入できる機会はほぼない
不動産の売買方法の中に「個人間売買」という方法があります。個人間売買は多い取引方法ではありませんが、検討している人もいるかもしれません。ただ個人間売買はデメリットや注意点があるので、それを認識した上で行いましょう。この記事ではそんな個人間売買について詳しく解説していきます。
個人間売買とは?
一般的に新築戸建てや中古マンションを購入するときには、不動産会社が仲介に入ります。逆にいうと基本的に売主は不動産会社に仲介を依頼しているので、その不動産会社を経由してしか不動産の購入ができないのです。
ただ宅建業に該当しない…つまり「利益目的で繰り返し反復して家を売る」ことをしない限り、個人が売主となり不動産会社を経由せずに不動産を売買することは可能です。言い換えると自宅の売却であれば、宅建業者でない個人の売主と個人の買主が直接売買契約を結ぶことができるということです。
個人間売買することで仲介する不動産会社が不要になるため、仲介手数料が発生しないというメリットはあります。
個人間売買って実際行われることは多いんですか?
いや、個人間売買はリスクが大きいからほぼないね。少なくとも私は個人間で不動産売買が成立している現場を見たことはないですね。
個人間売買のデメリットと注意点
前項のように個人間売買には仲介手数料が不要というメリットがありますが、以下のデメリットや注意点があることは認識しておきましょう。
- 価格の妥当性が分かりにくい
- 書類作成は自分で行う
- 金融機関の斡旋がない
- トラブルに対してリスクヘッジしにくい
- そもそも直接購入できる機会はほぼない
価格の妥当性が分かりにくい
1つ目のデメリットおよび注意点は価格の妥当性が分かりにくいという点です。この点については以下を知っておきましょう。
- 自分で調べるには限界がある
- 室内の様子や建物の状態の見極めは難しい
- 交渉も直接行う必要がある
自分で調べるには限界がある
不動産の売買時は不動産会社に査定依頼をして、その物件の適正価格を提示してもらいます。しかし個人間で売買するということは売主が提示している価格が適性かどうかを自分で判断する必要があるのです。
個人でもREINS Market Informationや土地総合情報システムというサイトで、そのエリアの成約事例を調べることは可能です。成約事例を調べることで適正価格は分かってくるでしょう。
ただ情報量は不動産会社に劣りますし全体的な不動産市況なども分からないと適正価格を算出するのは難しいです。
適正価格の算出は自力でも可能ではあるけど、やはり不動産会社が算出する査定額よりも精度は低くなります。
室内の様子や建物の状態の見極めは難しい
また査定は室内や建物の劣化具合なども加味されます。しかしプロでない限り「築10年のマンションだとどのくらい劣化するものか?」「室内が少し傷んでいるように見えるがこれは査定額にどう影響するのか?」などの判断は中々できません。
やっぱり不動産の適正価格を素人が算出するのは難しいんですね…。
交渉も直接行う必要がある
不動産会社が仲介してくれれば売主との交渉は不動産会社の営業担当者が行ってくれます。しかし個人間売買の場合には、売主との価格交渉も自分で行わないといけません。交渉には労力がかかるのでその点も個人間売買のデメリットといえるでしょう。
書類作成は自分で行う
2つ目のデメリットおよび注意点は書類作成は自分で行うという点です。具体的に不動産売買時は以下の書類を作成する必要があります。
- 重要事項説明書
- 売買契約書
- 付帯設備確認表
重要事項説明書
重要事項説明書には以下のような項目があります。
- 物件の基本情報
- 法令上の制限(土地の利用制限など)
- インフラ(水道・電気・ガスなど)
- 土地や建物の権利関係
- 建物の利用や管理のルール
たとえば、その物件の周囲に私道があれば私道負担金を支払っているかもしれません。また行政の定めによって増改築するときは既存の住宅を建築できないかもしれません。このような「重要なこと」を文章化しているのが重要事項説明書であり、素人が作成するのは非常に難しいといえます。
実際に作成することはできるんですか?
今の売主がその物件を購入した時の重要事項説明書を参考にすれば作成できなくはないね。ネットで検索すればひな形もあるし。ただ当時から重要事項が増えている可能性があり、素人だとその部分を見落としがちになるというリスクはあるよ。
売買契約書
売買契約書は重要事項説明書の内容を抜粋しており、そのほかにも「トラブル時の管轄裁判所」などの記載があります。
つまり重要事項説明書と同じように売買契約書も素人が作成するのは難しいといえます。
付帯設備確認表
付帯設備確認表とはエアコンや電球などの設備関係をそのまま引き渡すか?故障していないか?撤去するか?などを表記する確認表です。この確認表がないとエアコンは付いていると思ったのに撤去されていた…などのトラブルリスクがあります。
金融機関の斡旋がない
3つ目のデメリットおよび注意点は、金融機関の斡旋がないという点です。この点については以下を知っておきましょう。
- 金融機関の斡旋は不動産会社が行う
- 金融機関ごとに特徴がある
金融機関の斡旋は不動産会社が行う
不動産を購入するときはローンを組んで購入するケースが多いですがローンを組む金融機関は仲介する不動産会社が斡旋します。そのため金融機関への事前審査や金融機関とのやり取りなども不動産会社の営業担当者に任せることができるのです。
しかし個人間での売買になると金融機関を斡旋してくれる不動産会社はいません。そのため金融機関のホームページで問い合わせ先を調べて個別に連絡をして担当者とやり取りをして書類を送って…など、非常に面倒な作業が必要になるのです。
金融機関ごとに特徴がある
さらに金融機関によって以下のような特徴があります。
- 個人事業主は審査に通りにくい
- 勤続年数が短いと審査の土台に乗らない
- 年収が低くても通りやすい
このような特徴は何度も金融機関を斡旋したことがある不動産会社しか分からないことです。言い換えると個人間売買の場合には上記のような情報がないので、審査に落ちる確率が上がってしまうということです。
仮に、ローン審査に落ちても別の金融機関で再審査することはできます。ただ、再審査している間に別の人が物件を購入する可能性がある点は要注意ですね。要は、個人間売買だとスムーズに審査できないので、目当ての物件を先に買われてしまう可能性があるということです。
トラブルに対してリスクヘッジしにくい
4つ目のデメリットおよび注意点はトラブルに対してリスクヘッジしにくいという点です。具体的に不動産売買で特に注意すべきトラブルは以下になります。
- 瑕疵担保責任
- 境界確認
- スケジュール管理
瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは、建物に瑕疵(≒欠陥)があった場合に、売主がその瑕疵を補修するなどの責任を負うことです。瑕疵担保責任を負う期間は売買契約書に記載しますし、そもそも建物の瑕疵がないかどうかは購入者として事前に調べておく必要があります。
境界確認
戸建てを購入するときには道路や隣地との境界確認が必須です。境界確認を怠ると以下のリスクがあります。
- 境界杭が破損しているので埋め込む必要がある
- 隣地と境界について合意できていない
このような事態になれば購入した後に費用負担が発生したり隣地とのトラブルになったりするリスクがあります。
境界確認は隣地の人にアポを取るなどの手間がかかるので素人が段取りを組んでスムーズに行うのは難しいです。
スケジュール管理
また不動産売買は以下のような流れになります。
- ローンの仮審査
- ローンの仮審査の承認
- 申込
- 売買契約
- ローンの本申込
- ローンの本契約(金銭消費貸借契約)
- 引き渡し
不動産会社が仲介してくれるのであれば上記一連のスケジュールは不動産会社がコントロールしてくれます。しかし個人間の場合にはお互いがスケジュール管理する必要があるので最悪の場合は「引渡しに間に合わない」などのリスクがあります。
そもそも直接購入できる機会はほぼない
5つ目のデメリットおよび注意点はそもそも不動産を直接購入できる機会はほぼないという点です。というのも不動産を売主から直接購入するということは売主が不動産の仲介を不動産会社に依頼していないということです。
そうなると広告活動や内見の案内などを売主自ら行う必要があるので非常に手間がかかり現実的ではありません。そのためほぼ全ての不動産は不動産会社を経由して購入するので、そもそも不動産を直接購入できる機会は極めて少ないという点は認識しておきましょう。
そうなんですね。どんなときに個人間売買が行われるんですか?
強いて言うなら友人や知人の売買とかかな。ただ、その場合でもリスクヘッジのために「重要事項説明書の作成は司法書士に依頼する…」などのパターンが多いと思うよ。それだけ、素人同士での売買は危険ということだね。
まとめ
このように個人間売買自体はそもそも少ない取引方法です。ただ知人や友人間で売買契約を結ぶこともあるかもしれません。その場合は上述したリスクを理解し、リスクヘッジのために司法書士に書類作成を依頼するなどを検討しましょう。