リノベーションでお得にローンを組むコツとは?

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のざっくりとしたポイント
  1. 住宅ローンとリフォームローンの金利を比べると、住宅ローンの金利のほうが低い
  2. 一定の要件を満たせば、住宅ローン控除を受けることができる
  3. 住宅ローンに一本化することにこだわらないほうが良い場合もある
魅力的な住環境にある中古住宅を購入し、建物をリノベーションすることで、新築物件を購入するよりもお得に理想のマイホームを手に入れたいたいとお考えの人も多いのではないでしょうか?

事務員

浜崎編集長

大規模な改修を行う場合、まとまった資金が必要になることから、ローンを活用するのが一般的です。できる限り利息を抑えられる方法でお得にローンを組みたいとお考えの方も多いはずです。

そこで今回の記事では、中古住宅の購入とリノベーションをお考えの人向けに、住宅ローンやリフォームローンをお得に組むコツについて解説します。リフォーム一体型住宅ローンを活用した場合とリフォームローンを併用した場合(住宅ローン+リフォームローン)について具体的に比較していきます。

住宅ローンとリフォームローンの違いとは?

住宅ローンとリフォームローンはどちらも住宅に関するローンですが、住宅ローンは住宅取得のためのローン、リフォームローンはリノベーションやリフォームのためのローンと資金用途が異なります。そこでローン金利や返済期間について両者の違いがわかるように、実際のローン商品で確認してみます。

金利(変動金利)と返済期間(最長)からみる住宅ローンとリフォームローンの違い

 –住宅ローンリフォームローン
みずほ銀行変動金利0.375%

最長35年

変動金利3.975%

最長15年

横浜銀行変動金利0.440%

最長35年

変動金利1.700~2.700%

最長15年

ろうきん(中央労働金庫)変動金利0.625%

最長35年

変動金利2.000~3.275%

最長20年

住信SBIネット銀行変動金利0.44%

最長35年

変動金利2.475~4.475%

最長10年

城南信用金庫変動金利2.500~4.000%

最長25年

変動金利2.800~4.200%

最長15年

※2021年10月12日調べ、上段は金利、下段は最長の返済期間

住宅ローンとリフォームローンの金利を比べると、住宅ローンの金利のほうが低いことがわかります。金利は借入条件により変わりますが、みずほ銀行のように金利差3%以上の金融機関もあります。また一般的に住宅ローンのほうが借入金額は大きくなりますので、返済期間を長く設定することができます。

リフォームローンより金利の低い住宅ローンにまとめて借りることはできないのでしょうか?

事務員

浜崎編集長

条件を満たすことで、リノベーションの費用を住宅ローンにまとめて借りられる場合もあります。次の章で具体的に解説しましょう。

住宅ローンが活用できる場合とは?

前述の住宅ローンとリフォームローンの違いから、借りるなら金利の高いリフォームローンより金利の低い住宅ローンを利用したいと考える人も多いでしょう。しかし一般的には住宅ローンの資金使途にリフォーム費用は含まれていません。住宅ローンに一本化して融資を受けるためには、次のような選択肢があります。

<住宅ローンに一本化する方法>
  • リノベーションも融資の対象となる住宅ローンを探す
  • リフォーム一体型住宅ローンを活用する
  • ローンを借り換える

リノベーションも融資対象となっている住宅ローンは存在しますが、取り扱っている金融機関はほとんどありません。選択肢が少ないため、適した条件で借りられるとも限りません。そのため、一般的には住宅購入と同時にリノベーション資金も借り入れる「リフォーム一体型住宅ローン」や住宅ローン借り換え時の住宅ローン(借り換えローン)を活用します。

浜崎編集長

つまり、リノベーションのみの借り入れはリフォームローンしか使えませんが、住宅購入や借り換えと同時に行う場合には住宅ローンを活用できます。
そうなんですね!

事務員

浜崎編集長

金融機関によって融資対象となる資金の使い道は異なります。金融機関のサイトで公開されている商品説明書の「資金使途」を確認してみましょう。

リフォーム費用一体型住宅ローンを組むとどの程度お得になるのか?

中古住宅を購入し、リノベーションする場合のローンの組み方として、リフォーム費用一体型住宅ローンを活用する方法と住宅ローンとリフォームローンを併用する方法があります。

浜崎編集長

両者で総返済額がどのくらい異なるかシミュレーションしてみましょう。

<リフォーム一体型住宅ローンと住宅ローン・リフォームローン併用との比較>

前提条件

借入額

リフォーム費用一体型住宅ローン

3000万円

住宅ローン・リフォームローン併用

(住)2000万円(リ)1000万円

(合計)3000万円

 

金利と返済期間

0.44%/35年(住)0.44%/35年

(リ)2.475%/10年

毎月の返済額77,082円(住) 51,388円 (リ)94,156円

(合計)145,544円

総返済額

(元金+利息)

32,374,755円(住) 21,583,170円 (リ) 11,298,751円

(合計) 32,876,921 1円

諸費用885,000円(住)625,000円 (リ)220,000円

(合計) 845,000円

総支払額

(総返済額+諸費用)

33,259,755円(合計) 33,726,921円

参考:住信SBIネット銀行

住宅ローンに一本化した場合と、住宅ローンとリフォームローンを併用した場合の総支払額の差は467,166円!

事務員

金利の差の割に、総支払額の差は意外と少ないなと感じられた方もいらっしゃるかもしれませんが、今回例に挙げた住信SBIネット銀行のリフォームローンは返済期間が最長10年と短いため、最長の10年でローンを組んでも、その期間の返済額は35年の住宅ローンに一本化した場合の倍近くになります。

毎月15万円近い返済をしていくのはかなりしんどいですよね?

事務員

浜崎編集長

他の金融機関を利用することで返済期間が15年、20年のリフォームローンが組める場合もありますので、月々の返済額を抑えたい場合にはそれらも検討してみると良いでしょう。ただし、返済期間が長くなると、支払う金利の総額も増えますので注意が必要です。
ますます住宅ローンに一本化した方がお得な感じがしますね。

事務員

浜崎編集長

そうですね。ただし、その場合にも、注意点があるんです。詳しく見ていきましょう。

 リフォーム費用一体型住宅ローンを組む場合の注意点

リフォーム費用一体型住宅ローンを組むためには、住宅ローンとリフォームローンを同時に申し込む必要があります。つまり、ローン審査を受けるまでにリノベーションの見積書や工事請負契約書を取得し、リノベーション費用が確定している必要があるのです。短期間でそれを行おうとするあまりに、相見積もりの手間を省いたり、打ち合わせを適当に行ってしまっては、工事費用が割高になってしまったり、納得のいくリノベーションにならなかったりすることも考えられます。

浜崎編集長

不動産は水物ですので、気に入った物件が見つかった場合は、住宅ローンに一本化することにこだわらずに、購入してからゆっくりとリノベーションプランを立てた方が良い場合もあるでしょう。

 住宅ローン控除の適用を受けるための条件とは?

一定の要件を満たせば、住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)を受けることができます。中古住宅を購入しリノベーションする場合、それぞれ「中古住宅を購入した場合」の要件と「増改築等をした場合」の要件を満たす必要があります。住宅ローン控除の適用を受けるための主な要件は次のとおりです。

<増改築等をした場合の住宅ローン控除の主な要件>
  • 増改築等をした後の住宅の床面積が50㎡以上※特例により40㎡以上でも適用されることがあります。
  • 工事費用100万円超
  • 返済期間10年以上 など

工事費用100万円超ですので、部分的な改修でも対象となる可能性はありますが、10年以上のローンを組む必要がありますので、大規模な改修を行うリノベーション向けの制度といえます。

浜崎編集長

住宅ローンとリフォームローンを併用する場合も、それぞれの要件を満たすことで、中古住宅購入にかかる住宅ローン控除と増改築にかかる住宅ローン控除を併用することができます。

 

余裕のある返済計画を立てよう

住宅ローンとリフォームローンを併用するよりリフォーム費用一体型住宅ローン組んだ方が一般的に金利負担は少なくなりますが、場合によっては、住宅ローンに一本化することにこだわらないほうが良い場合もあります。各金融機関でローンを組んだ場合の総返済額や月々の返済額などの条件を比較するなど、事前の下調べを入念に行い、余裕のある返済計画を立てるようにしましょう。