【中古マンションの価格の調べ方】成約事例から考える取引事例比較法

まとめ

中古マンションを購入時の相場価格確認や売却時の売出し値段の設定はどのようにして決めていくかです。いくつかの計算方法がありますが、中には売りやすくするためにわざと安い査定価格をつける不動産屋さんも・・・

そんな不動産屋に騙されないようにいくつかの計算方法を紹介し、最適な計算方法をご説明します。

 

両親が10年前に購入したマンションが、家族が増えて手狭になったので売りたいんです。

 
 

それで売却の価格は決まっているの?

 
 

それが、不動産屋さんに聞いてみたんだけど思った以上に安かったんだんです。

 
 

もしかしたら、不動産屋さんが早く売って仲介手数料をもらいたいので安く設定したかもしれないね。

 
 

えー!!でも、そもそもどんな計算方法でマンションの金額は査定したらいいのかな?

 
 

大きく3つの計算方法があるけど一番メジャーなのは取引事例比較法だね。他の2つの計算方法といっしょになぜ取引事例比較法が一番良いのかを解説するね。

 

取引事例比較法をわかりやすく解説

中古マンションの査定方法で不動産会社や不動産鑑定士が利用している査定方法が取引事例比較法です。

取引事例比較法とは、不動産鑑定評価で、不動産の価格を求める手法のひとつ。
同マンションで売買取引がされた事例や、対象マンションに似た条件の事例をいくつか集め、標準化補正を行い、マンションの売り出し価格を設定します。

一般的には、該当マンションに近い物件や、築年数、広さ、戸数が近い物件の中からいくつか選択します。

マンションは地域柄の相場というものがありますので、対象物件の近くでいくつかの類似マンションを比較することにより、地域の相場から適切な価格を算出しようと試みる計算方法です。

国土交通省も2019年1月30日から不動産取引価格検索システムを開設しました。

引用 国土交通省 土地総合情報システム

国土交通省も取引比較事例法をより、活用できるようにこのような取り組みを行っています。

取引事例比較法の標準化補正とは

 

こんな風にしてマンションの価格は決定されるんだね。でも、類似物件はあっても完璧に条件が一致している物件は少ないんじゃないの?

 
 

そうだね、取引事例比較法で近隣マンションや過去の同じマンションの取引事例を調べても完全ではないよね。
それを、なるべく当該マンションの条件に近づける為に標準化補正によって、より適切な価格を導き出すんだよ。

 
 

標準化補正ってどんなことをするのかな?

 

いくつかの取引事例を収集した後に行うのが標準化補正です。これからいくつかの補正方法を紹介します。

事情補正

条件は近くても極端に価格が下がって売却に出されているマンションも見受けられます。これは、早急に現金化したいため売り出しされたりなどの事情が考えられます。このような事情を考慮して補正するのが事情補正です。

 

実務で良く出くわすのが、『離婚』『破産による任意売却』です。共有で購入された新築物件が取得から1年ぐらいで売りに出される物件は離婚の匂いがするので、その場合は安く取引ができるケースがあります。

 
 

因みに売主が離婚の場合は、契約・決済時は共有者の奥さんが欠席となるので、場の空気は重くなります。

 

時点修正

不動産の価格は年々変動しています。例えば、5年前に同じマンションで売却があったがその後、近くに駅が出来たなど住環境が劇的に変化する、日本経済が急激に悪化して不動産の価格が急落したり等の理由で価格が大きく変動する場合があります。このような事情を考慮するのが時点修正です。

 

オリンピックが決まってから首都圏を中心に15~20%程度の値上がりが続いていましたが、2018年上期をピークに2019年年明け以降は徐々に値下がりをしているというのが不動産屋の実感です。

 

個別要因

場所が近い不動産でも敷地の入り口が極端な坂道だったり、いびつな土地形状の場所に建てられた不動産だったりと物件自体の特別な事情があるケースがあります。これを個別要因といって、個別の要因に対して補正を行います。

 

販売図面を見ると安いなと思って、実際に現地に行ってみるとお墓近い、ごみ屋敷が近いがケースには時々遭遇します。

 

地域要因

地域には相場があり、郊外のマンションと、都心部のマンションでは築年数や広さなどの条件は似通っていても価格は大きく異なります。 地域は異なるが条件は非常に似通ったマンションを比較する際に補正します

 

なるほど、条件が似たようなマンションを集めて、平均を出していくような計算方法ではないのね。

 
 

そうだね、色々な事情を考慮しないと適正な価格は算出できないから、標準化補正によって、より適正な価格を鑑定するんだよ。

 
 

でもマンションの査定方法って、取引事例比較法だけなの?
他には計算方法はないのかな?

 
 

他には収益還元法や原価法なんかも使われていることが多いね。

 

収益還元法による中古マンション査定

収益還元法は、主に賃料が発生するような投資用マンションに用いられることが多いです。1年間の家賃収入を還元利回りで割り、100を掛けると金額が算出できます。

還元利回りとは、近隣の収益物件の利回りや公表されているデータから算出された利回りのことです。

 

具体的な計算でご説明します。

 

月の家賃10万円のマンションAで還元利回りが7%だった場合の価格を算出します。

年間家賃収入÷還元利回り×100=物件価格

10万円×12か月÷7%×100=1,715万円となります。

詳細は収益還元法と築年数の関係についてを参照

原価法による中古マンション査定

マンションの再調達原価を算出して不動産価格を導き出す方法です。

売りに出そうとしているマンションを再度建築した場合の価格を算出しますが、これを再調達価格といいます。そして、該当マンションの築年数や補修の状況を減価修正します。

これによって原価法によるマンションの価格が算出します。

詳細は『一棟アパートは原価法で価格査定をする』を参照

3つの計算式、実務ではどのように利用?

 

マンションの価格設定方法にはいくつかの計算式があるはわ分かったけど、 実際に全部使ってマンションの価格を出しているの?

 
 

3つの計算方法は不動産物件の用途に応じて使い分けているのが実務で、取引事例比較法が一番多いです。

 

原価法はマンション査定の場面ではほとんど利用されません。理由は適切なマンションの建築価格が不動産会社では割り出すのが難しいから等です。

 

ただ、一戸建て、一棟マンションや銀行ローン審査時の担保評価には原価法はよく登場します。

 

収益還元法は居住用マンションの売却のケースではあまり利用されません。賃料がいくらになるかを算出しないといけませんし、還元利回りの調査も手間がかかる等が理由です。

 

こちらも投資用マンションのような賃料が発生している物件ではほぼ収益還元法で価格は決まってきます。また、駅近で周辺に賃貸物件が多いエリアの場合には実務ではよく利用されます。

 

近い時期に同じマンションが売り出しされている価格、マンションの売買が成立するまでにかかった日数によってある程度相場に近い価格が算出出来るため、実務上の利用は取引比較事例方が一番多くなります。

まとめ

居住用マンションの売り出し価格を調べるのに複数の計算方法から頻繁に利用されるのは取引事例比較法になります。

一般の人にはマンションの価格査定はどのような方法やツールを使うのかはわかりません。その為、財閥の名前が付いた大手の不動産業者でも、早く成約をしたいので売りやすい値段に売主を誘導する担当者は多数います。

このように、価格設定の方法だけでも知っていたら、不動産業者も警戒して、きちんとした値段を設定してくれる可能性が高まります。

 

一括査定サイトの利用は業者から複数のメールが来たり、電話番号を入れたら電話もかかってきてイヤですが、一つの不動産会社に依頼をするよりは高値での売却は可能だと思います。