- 更新時期には加入保険の見直しが必要
- 自動更新の場合は10年自動継続方式になっている
- 更新を忘れてしまった場合は無補償となってしまうので注意
住宅を新築もしくは購入しますと、後日、保険会社から火災保険更新通知などが届きます。その時、つい忘れてしまい「更新手続きをしていなかった?どうしよう?」と、困惑される方も少なからずおられます。実は無保険状態になりますと、万が一の場合に無補償となりますので、早急に加入手続きを行う必要があります。
多くの住宅に関する相談事や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントが、火災保険の更新の必要性や更新方法、積立型火災保険の注意点、保険内容の見直し、更新を忘れた時の対処法について解説します。保険の更新時期がきた場合、その時点での住宅や家財にとって、最も相応しい補償内容に修正する考え方を知ることができます。
火災保険の契約が満期になると更新が必要
火災保険の契約期間に達した場合、その都度、更新手続きをしないのといけないのですか
更新手続きが面倒な場合、自動更新という方法があります。ただし、メリット・デメリットがあります
火災保険の契約は最長10年
火災保険の契約は2015年10月より最長10年に短縮されました。2015年9月までの火災保険の契約期間は、最長36年までの長期契約が可能でした。住宅ローンの返済期間と火災保険の契約期間とを一致させることが大半でした。万が一火災などが発生して、住宅ローンの残債を処理しないといけない場合、対応し易かったことによります。
しかし台風や地震などの自然災害の多発化や大型化に伴って、保険会社の収支バランスが崩れ、収支予測も困難な状況にあります。このような要因により10年を超える保険契約の廃止となりました。災害発生に伴う被害が生じた場合、保険料が支払われます。保険料は災害や火災事故などの発生頻度により決定される参考準率というデータを基にして算出されます。
参考準率が過去のデータと比較して近年のデータと明らかに異なるようになりました。参考準率を36年に及ぶ長期間も据え置くことは保険料拠出に対するリスクが大きくなります。10年毎に見直す形式を採用することにより、リスクの軽減を図ったことになります。
自動更新の場合は10年自動継続方式になっている
10年ごとの保険契約内容の見直しが面倒な場合、契約内容をそのままの状態で自動更新できます。その場合は10年自動継続方式となります。10年自動継続方式のメリット・デメリットを下表にまとめます。
メリット | ・補償内容が同じ状態で引継ぎができる ・10年ごとの保険契約の場合、割引率が最も高くなる |
デメリット | ・自動更新は住宅ローンの返済期間内に限られる ・新たな補償が出た場合、自動継続方式を放置すると補償が付加できなくなる →新たな補償内容を取り入れる場合、途中で契約期間を変更し、再度加入し直す手間が生じる ・保険料の変更が生じた場合、変更後の保険料にて自動更新される |
火災保険の更新時期には2種類の選択肢がある
火災保険の更新時期には、どうすればいいのですか?
選択肢は2種類あり、同じ会社で更新する方法と他社に乗り換える方法があります。いずれにしても契約満了日と更新後の補償開始日とを一致させることが大切です。
同じ保険会社の契約を更新する
現在加入している火災保険の契約を更新する場合、引き続き同じ保険会社で契約更新する場合です。満期が近づきますと保険会社から契約期間満了の通知が届きます。自動継続契約に加入していなければ契約更新の手続きが必要になります。加入している保険代理店を訪問するか、郵送で必要書類などの授受をしながら手続きを行う必要があります。
現在はWEBサイト上でも更新手続きができる保険会社もありますので確認が必要です。更新手続きは契約期間満了日の前日までに完了しておくことが大切です。満期日を経過しますと再度保険契約をするまでの間は無保険状態となります。万が一のことが生じた場合、補償が無くなりますので注意が必要です。
他社の火災保険に乗り換える
現在加入している火災保険の更新を行わず他社の火災保険に乗り換える方法もあります。火災保険の契約期間を満了すれば契約解消になるため、他社に乗り換えをしても問題はありません。ただし、現在加入している火災保険の契約満了日と他社と新規契約する火災保険の補償開始日とを一致させる必要があります。もし契約満了日と補償開始日がずれますと、その期間は無保険状態となります。その期間に火災や損壊が発生しても補償が無くなりますので注意が必要です。
今はあまり見かけない積立型火災保険の更新は注意
積立型火災保険金の更新をする場合には過去と比較して契約期間の短縮と利率の低下により、積立の貯蓄機能としてのメリットが減少していますので注意が必要です。積立型火災保険は保険本来の保証機能と満期時に満期返戻金が支払われる貯蓄機能を併せ持った保険です。現在では、ほとんど見ることがなくなった保険商品です。
2015年までは利率も良く最長36年間に亘り積立ができた商品でしたので、メリットもありました。現在では利率も低いか無くなっている場合もあり、しかも最長10年間となりましたのでメリットがなくなり、商品自体がほとんどなくなりました。
満期保険金には税金や確定申告が必要になる
契約期間満了と同時に受け取る満期保険金には税金や確定申告が必要になる場合がありますので注意が必要です。満期保険金は一時所得とみなされます。20万円を超える満期保険金には他の一時所得と足して課税額を算出する必要があります。
火災保険の更新が近づいたら見直しをしよう!
火災保険の更新が近づいたら何をすれば良いのですか?
建物・家財の評価額の再度算出や補償内容の適正度、無駄や不足の補償内容の抽出、契約期間の見直し、一括見積りサービスの活用となります。
建物や家財等の評価額を再度算出してみる
火災保険の更新時期が近づいたら建物や家財等の評価額を見直して、再度算出することが大切です。保険金額を決める上で建物の評価方法には「新価」と「時価」とがあります。
新価(再調達価格)は災害や事故などで建物や家財が損壊した場合、それらを新品で改めて購入する際に必要な金額を算出して、評価額を決める方法です。新価で評価された場合、建物や家財を損失しても取り戻すために必要な金額を確保できます。一般的には新価で評価されます。
一方、時価は建物や家財などを新築・購入した時点から災害や事故による被害を受ける時点までの経年劣化分を差し引いて評価額を決める方法です。時価で評価された場合、建物や家財を新築・購入するのに必要な金額を賄うことが困難となります。火災保険の体を成しません。
火災保険の補償内容が適正かどうか見直す
火災保険の更新時期が近づいたら補償内容が適正か否かの見直しが必要です。補償内容を充実させると安心は増しますが保険料は高くなります。補償内容を削ると保険料は安くなりますが、いざという時に補填されない場合があり、不安が残ります。補償内容の中で、補償対象となる財産の範囲とリスクの範囲を下表にまとめます。
補償範囲 | 補償範囲の内容 |
補償対象となる財産の範囲 | 「建物」、「家財」、「建物+家財」の中から選択 *持ち家の場合、「建物+家財」を選択するのが一般的 *賃貸の場合、「家財」のみ |
補償対象となるリスクの範囲 | ①火災・落雷・破裂・爆発 ②風災・雹災・雪災 ③水災 ④水漏れ ⑤汚損・破損 ⑥盗難や衝突事故などの人災 ⑦延焼(特約) ⑧個人賠償特約 |
見直しの中で無駄な保証があれば外し、必要な保証を追加する
火災保険の更新時期が近づいたら補償内容を確認した上で不要な補償は外し、必要な補償は追加する必要があります。ハザードマップなどと照らし合わせて、建物の立地や特性などを把握すれば、最適な補償内容を選択することができます。
【事例1】(補償削除)
河川や山が住宅の近くに無い場合や河川が近くにある立地でも高層階に住宅がある場合、床上浸水の可能性はありません。したがって「水災」の補償は付加しなくても問題ありません。
【事例2】(補償削除)
住宅の周辺には田畑が広がり隣家までの距離が相当離れている場合、類焼損害補償特約や失火見舞費用特約は不要です。
【事例3】(補償追加)
地震による火災や津波などで住宅が損壊した場合、火災保険のみでは補償の対象になりません。地震保険に加入する必要があります。
更新後の契約期間をどうするかも考える
火災保険の更新時期が近づいたら更新後の契約期間をどうするかも考える必要があります。火災保険は契約期間が長いほど保険料が安くなります。長期(2年~10年)の保険料は1年間の保険料に長期係数を乗じて算出します。長期係数は、長期になればなるほど、保険料が割安になる数値となります。保険期間ごとの長期係数を下表にまとめます。
保険期間 | 長期係数 |
2年 | 1.85 |
3年 | 2.7 |
4年 | 3.5 |
5年 | 4.3 |
6年 | 5.1 |
7年 | 5.9 |
8年 | 6.7 |
9年 | 7.45 |
10年 | 8.2 |
【事例4】
年間の保険料が5万円の火災保険を保険期間10年で契約した場合と、10年間毎年更新した場合で比較してみましょう。
- 保険期間10年の契約の場合
5万円 × 長期係数 8.2 = 41万円
- 10年間毎年更新する場合
5万円 × 10年 = 50万円
したがってトータルでは9万円の割安となります。
乗り換えの場合は火災保険一括見積もりサービスも活用しよう
火災保険の更新時期が近づき乗り換えをする場合、火災保険一括見積もりサービスの活用をお勧めします。メリットとしては以下の通りです。
- 数分の簡単な入力で保険各社から見積もりを取得できる
- 細かい希望がある場合、要望欄に記載し伝えることができる
- 各社に見積もりを提示してもらうことで、希望に合う火災保険を選択できる
火災保険の更新を忘れた、または連絡が来ない場合どうなる?
火災保険の更新を忘れ、手続きを取らなかった場合、どうすればよいですか?
無保険状態となり、無補償となりますので、早急に加入手続きを済ませることが大切です。
補償がなくなる
火災保険の更新手続きをせず契約解除になりますと無保険状態となり、災害や事故などによる住宅の損壊などに対して補償がなくなります。したがって修復や建直しを行う場合には、全額を自己負担する必要があります。
加えて自転車による事故やマンションでの水漏れ事故が発生した場合、特約で準備をしていた個人賠償責任保険も使えない状態となります。特に自転車事故により相手に重傷を負わせますと数百万円から数千万円に及ぶ損害賠償請求をされる可能性があります。
補償がない状態での損害は恐ろしい
火災保険の更新手続きをせず無保険状態の期間に自然災害による被害や火災事故による被害を受けた場合、何も補償がない状態だと生活基盤の立て直しが困難となります。また賃貸住宅に住み火災を発生させてしまった場合、家財などを全て失うだけでなく、賃貸住宅オーナーへの損害賠償も発生します。
事故が発生した場合、具体的にどれ位の保険金が出ているのでしょうか?損害保険料算出機構が「火災保険・地震保険の概況(2020年度版)」(※1)により、2014年から2019年度の事故種別による保険対象件数、保険金総額を公表しています。それらを下記に掲載します。
出典:損害保険料算出機構「火災保険・地震保険の概況 2020年度」
例えば2019年の火災・破裂・爆発の場合、1件あたりの保険金平均額は4,993,000円となっています。無保険状態になりますと、これらの金額を自己負担する必要があります。
火災保険の更新は自ら行うことを意識しておこう
無保険状態を避けるためにも火災保険の更新は自ら行うことを意識することが大切です。保険会社の中には保険加入者が更新手続きを忘れる場合を想定して、自動更新に関する特約を準備している保険商品もあります。本来ならば更新ごとに保険内容の見直しをして、更新時期の住宅・家財の状況に適した補償内容に適合させることがベストです。しかし、更新手続きを忘れて無保険状態に陥るよりはベターとなりますので、自動更新も対策の一つです。
まとめ
以上、火災保険の更新の必要性や更新方法、積立型火災保険の注意点、保険内容の見直し、更新を忘れた時の対処法について解説しました。避けなければならない状態は無保険状態です。無保険状態で自然災害や火災事故などによる被害を受けますと、取り返しの効かないことになります。
また更新時期には加入保険の見直しが必要です。無駄な補償は取り除き、必要な補償は充填する必要があります。そうすることで支払う保険料も活きた備えとなります。火災保険は他にも自転車事故や水漏れ事故などにも対応する特約などが充実した補償を備えます。万が一の場合、いつでも活用できる状態に備えられることをお勧めいたします。