マンション「管理組合」と「管理会社」の違いをしっかり解説

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

管理組合・管理会社の違いまとめ
  1. マンション「管理組合」の概要と役割
  2. 「管理会社」が行う一般業務内容
  3. マンション管理の主体は「管理組合」

マンションの将来的な資産価値を大きく左右するとも言われる項目に、建物自体の「管理」というワードがあります。

しかし建物すべての管理を自分で行うわけでなく「管理組合」や「管理会社」という名前は似ていますが、マンションに対して担う役割や機能が大きく異なる組織に業務を委託する必要があります。 今回の記事ではマンション管理において重要な役割を担う管理組合と管理会社それぞれの目的や業務内容について解説していきます。

マンション管理にそんな大事な意味が込められてたなんて…

事務員

浜崎編集長

そうなんです。両者に “管理”という文字が入るため役割や業務内容について同一に考えがちですが、それぞれ違う役割分担になっているためしっかりと覚えておきましょう。

マンションの管理組合の概要

まずはじめにマンションの「管理組合」について紹介します。 分譲マンションを購入すると、そのマンションの区分所有者たちで管理組合を結成して自分たちのマンションを管理することになります。

MEMO
なぜこのような組合を立ち上げるのか分からずにいると、マンションの将来的な資産価値を失いかねませんのでこの際に覚えておきましょう。

管理組合とは

管理組合とはマンションの所有者(区分所有者)全員で構成された組織のことを指しており、該当するマンションの管理方法や方針を区分所有法(建物の区分所有等に関する法律)に基づいて決定する役割を担っています。

またマンションの管理といっても管理すべき内容や決定しなければならない事項は多岐に渡ります。毎年1回招集される「定期総会」をはじめ必要に応じて招集される「臨時総会」、所有者を代表して建物の管理維持を進行する「理事会」など、定期的な報告や問題点・話し合いなどを行いマンションの管理を行っているのです。

管理組合の目的・役割

管理組合を結成する一番の目的はマンションの管理ですが共用部の清掃や定期的な設備等の保守点検、大規模修繕の計画、会計処理など、一部専門知識がなければならない業務も含まれています。ですのでこれらの業務を「管理会社」に委託する必要があります。

注意
必ずしも管理開始が必要というわけではないのでその辺りは確認が必要です

管理組合の主な業務は「マンション標準管理規約」によって以下のように定められています。(一部抜粋)

管理組合の主な業務
  1. 管理組合が管理する敷地及び共用部分等の保安、保全、清掃、消毒及びごみ処理
  2. 組合管理部分の修繕
  3. 建物の建て替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に関する管理
  4. 修繕積立金の運用
  5. 敷地及び共用部分等の変更及び運営
  6. 官公署、町内会等との渉外業務
  7. 広報及び連絡業務
  8. 地域コミュニティにも配慮した居住者間のコミュニティ形成
  9. 管理組合の消滅時における残余財産の清算

マンションの管理会社の概要

続いて解説していくのがマンションの管理業務全般を行う管理会社の紹介です。 マンションの価値は管理で決まるといっても過言ではないくらい重要な要素になるため、それを担う管理会社がどのような業務を行なっているかしっかり把握しておきましょう。

管理会社とは

管理会社とはマンションの管理業務を専門的に引き受ける企業のことを言います。

管理会社と一括りに言っても親会社が施工・販売したマンションの管理を請け負う「デベロッパー型管理会社」や、系列グループなどを持たない「独立型管理会社」と言ったように、管理委託費やサービス内容及び品質に違いが見られるのも特徴の一つです。

また管理組合の際も説明しましたがマンション管理といっても多岐にわたる内容を管理するため、管理会社に業務を一括して任せる「全部委託方式」や、業務ごとに専門業者に発注をかける「一部委託方式」など、手数料やサービスの品質、管理組合の負担の割合を考慮してさまざまは選択肢の中から管理会社を選定することができます。

管理会社が行う一般業務内容

ここでは一般的に挙げられる管理会社の業務内容について紹介します。

○事務管理業務

事務管理業務は大きく基幹事務と基幹事務以外の業務に分類することができます。

まずはじめに基幹事務に該当する業務は主に会計報告における業務を指しており、管理組合会計の出納や収入及び支出の調定や報告、積立金の回収や未払いの確認、マンションを維持・修繕する際の企画立案やまたは実施に伴う調整などが含まれます。

一方、基幹事務以外の業務は、理事会や総会の開催や運営の支援業務などが該当します。

○清掃業務

清掃業務は日常清掃と定期清掃に分けることができます。

日常業務の主な役割はゴミ出し場(回収も含む)やマンションの共有部(駐車場、駐輪場など)、フロアや廊下の清掃などが該当します。一方で定期清掃はカーペットやタイル、窓ガラス、外壁など簡単には落ちない汚れを比較的大規模な清掃器具を用いて清掃することを指します。

MEMO
ここに該当する清掃範囲はすべて管理組合が管理すべき共用部になります。 ※施設や設備によって作業内容も異なる

○建物及び設備管理業務

建物及び設備管理業務はマンションだけでなく防災設備やエレベーター、浄化槽や排水設備、立体駐車場など、設備機器の状況や劣化具合を加味しながら、定期的にメンテナンスや補修、保守点検や法定点検を行うことを指します。

注意
この業務は設備ごとに専門の資格者や会社に作業を委託して行う必要があります。

ここに記載した設備機器は居住者(所有者)が安心安全に住む上では不可欠な要素であり、確実に稼働することが求められるため、この部分の点検や補修がしっかり行われているかどうかが将来的な資産価値にも直結するためこの業務は重要な内容になります。

○管理員業務

管理員業務は文字通り管理人をマンション(受付、フロントなど)に常駐させ、各所対応や応対を行うことを指します。具体的には管理会社と管理員との間で雇用契約を締結して、管理業務の委託を受けているマンションに常駐(さまざまな勤務形態有り)など日常的な管理業務を任せることです。

MEMO
この部分がしっかりすることで受付業務が滞りなく行われたり、各種設備の点検や管理組合への報告がスムーズに行われるため大切な要素になります。

○その他業務

そのほかにも管理会社が管理組合の理事会等に介入することで、マンションの管理状況や運営に適宜アドバイスを行うといったコンサルタント業務なども含まれる場合があります。また理事会や区分所有者だけではなかなか決定することが難しい長期修繕計画の立案や大規模な修繕工事におけるアドバイス等もしてくれるため、管理組合の負担を軽減させるには最適とも言えます。

管理会社にこれだけの業務を任せられる事は知らなかった!でもマンション管理を専門とするなら初めから全てを一任すればいいんじゃないですか?

事務員

浜崎編集長

もちろん管理組合の負担を減らすためには、それでもいいかもしれないけど管理会社というだけで業務を委託してしまうとかえって痛い目をみてしまうからしっかり所有者の人たちで合意して選ぶことをおすすめするよ!

管理組合と管理会社の関係性とは?

管理組合と管理会社の立ち位置や役割、業務内容には大きな違いがあり関係性についてもあくまでもマンションを管理する主体となるのは管理組合になることを忘れてはいけません。しかし管理組合を構成する所有者の方々は不動産の専門家や有識者ではないため、管理会社の協力を仰ぐことは必要不可欠と言えます。

MEMO
そのため両者がそれぞれの役割をしっかり把握して、関係性を構築していくことが求められます。

まとめ

今回の記事ではマンション管理を担う管理組合と管理会社の違いについて解説しました。

「マンション管理を専門としているならすべて管理会社に委託すればいいのでは?」

多くの方がそう思ったかもしれませんが委託する会社によってはサービスの質や委託費も大きく異なるため、結果的に価値が下がってしまうといった管理会社も見受けられます。

自分たちの資産は自分たちでしっかり管理する意識を持って、管理組合を適切に運営していくことが資産価値を将来的に維持する秘訣かもしれません。