- 取得から5年以内に売却・譲渡する不動産に対しては実に40%近い税金が課される
- 5年を経過すれば短期譲渡所得ではなく長期譲渡所得と判定される
- マイホームを売却する場合は、所有年数に関わらず控除が受けられる
不動産売却を検討しているなら「短期譲渡所得」について把握しておくべきです。せっかく好条件で売却が決定しても、譲渡所得を考慮していなければ手元に残るお金が意外と少なかった…といった事態にもなりかねません。
この記事では短期譲渡所得とは何なのか、長期譲渡所得との違いや税率、控除の要件などについて解説します。売却のタイミングを考える際の参考にしてくださいね。
短期譲渡所得とは
短期譲渡所得とは所有期間が5年以内の土地・建物を売却などにより譲渡して得た所得を指します。譲渡所得の金額は以下の計算式で求めることができます。
売却価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除=譲渡所得
取得費には不動産の購入代金はもちろん、購入時にかかった仲介手数料や登記の費用も含みます。また所有期間中に改装等を行った場合はその費用も取得費にあたります。譲渡費用とは不動産売却時に必要となる仲介手数料や印紙税、名義書き換え料などです。これらの費用が売却価格よりも小さければ譲渡所得が発生し、所得税・住民税が課されます。
ただし短期譲渡所得には特別控除があります。主な特別控除については後述しますが、譲渡所得には50万円の特別控除があります。売却益が50万円以下の場合は課税対象とはならず、確定申告も不要です。なお取得費がわからない場合には売却額の5%相当を取得費とみなすことができます。
長期譲渡所得との違い
対して長期譲渡所得は5年以上所有した土地・建物の譲渡益・売却益のことです。求め方は前述したとおりです。長期譲渡所得の場合、短期譲渡所得よりも税率が低いです。もしも購入から5年前後で売却や譲渡を検討しているなら、実行のタイミングを考える必要があります。
なお譲渡所得は売却した年の1月1日時点を基準に計算します。例えば2015年7月1日に取得した不動産を2020年12月に売却すると、実際の所有期間は5年5ヶ月となります。
しかし譲渡所得の計算では1月1日を起点とするため、4年5ヶ月所有していたとみなされ、短期譲渡所得に該当します。
上記の例では、たった1ヶ月売却するタイミングが違うだけで短期譲渡所得か長期譲渡所得かの判定が変わるんですね。
それによって大きく税率が変わります。次の章で確認しましょう。
短期譲渡所得の税額計算方法
不動産売却を行う際には税額を正確に計算しましょう。税率や計算方法を紹介します。
譲渡所得の税率
前述したように短期譲渡所得と長期譲渡所得では税率が異なります。それぞれの税率は以下のとおり。
種別 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
所得税(※復興特別所得税含む) | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
短期譲渡所得の税率は長期譲渡所得のおよそ2倍にのぼります。例えば500万円の短期譲渡所得を得た場合、負担すべき税額は次のように求められます。
- 所得税:5,000,000円×30.63%=1,531,500円(A)
- 住民税:5,000,000円×9%=450,000円(B)
- 合計:(A)+(B)=1,981,500円
同じ金額でも長期譲渡所得なら以下の税額となります。
- 所得税:5,000,000円×15.315%=765,750円(A’)
- 住民税:5,000,000円×5%=250,000円(B’)
- 合計:(A’)+(B’)=1,015,750円
このように短期譲渡所得と長期譲渡所得では課税額が2倍近く異なります。だからこそ売却のタイミングをしっかり検討すべきです。
短期譲渡所得にあたるとかなり税率が高いですね。
ただし長期間不動産を保有するとその分固定資産税がかかるし、資産価値が下がるリスクもあります。さまざまな要素を元に売却のタイミングを見極めましょう。
短期譲渡所得の控除について
先ほど少し触れましたが短期譲渡所得には特別控除がいくつかあります。控除の要件に当てはまれば大幅に節税できる可能性があるためしっかりチェックしましょう。
3000万円特別控除(マイホーム特例)の適用要件
居住している住宅を売却する場合、所有期間に関わらずマイホーム特例が適用されます。控除額は3,000万円です。マイホーム特例が適用される主な条件は以下のとおりです。
- 自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること
- 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売った年の前年及び前々年にマイホーム特例を受けていないこと
- 売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと など
(出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁)
また、この特例を受けることだけを目的として入居した家屋、趣味・娯楽、保養を目的に所有していた別荘などはマイホーム特例を受けられません。住まなくなった日から3年経過した年の12月31日を過ぎた場合も適用外です。
例えば居住していた住宅を取得から5年以内に売却し、3,500万円の利益が出た場合、マイホーム特例が適用されれば税額は以下のようになります。
- 譲渡所得 = 3,500万円(譲渡益) - 3,000万円(特別控除)= 500万円
- 500万円 × 39.63% = 1,981,500円
なおマイホーム特例が適用できないケースでは以下の税額となります。
- 3500万円 × 39.63% = 13,870,500円
その差は1千万円以上。大きな売却益が出た場合、この特例が適用されることで大幅な節税が見込めます。
つまり空き家となっている住宅などは早く売却したほうが良いですね!
そのとおり。3年を経過すると3,000万円特別控除が受けられなくなります。
その他使える控除の種類と適用要件
マイホーム特例以外にも以下の特別控除があります。
- 公共事業のための売却:5,000万円
- 特定土地区画整理事業などのための売却:2,000万円
- 特定住宅造成などのための売却:1,500万円
- 農地保有の合理化などのための売却:800万円
なお複数の不動産を売却した場合、1年間に受けられる控除額の上限は5000万円です。もし複数の不動産の売却を検討しているなら、何年かに分けて売却したほうが有利となる可能性があります。
相続税を取得費に加算できるケースについて
当該不動産を相続により取得した場合、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば一部相続税額を取得費に加算できます。譲渡所得を求める場合、売却価額から取得費と譲渡費用を差し引くことは前述したとおりです。つまり、取得費や譲渡費用が高いほど所得額は小さくなり、課税される金額も少なくなるわけです。
まとめ
取得から5年以内に売却・譲渡する不動産に対しては、実に40%近い税金が課されます。一方5年を経過すれば短期譲渡所得ではなく長期譲渡所得と判定されるため、半分ほどの税率となります。
資産価値が下がる前に売却したいと思っているなら、今一度課税額についてもしっかり確認し検証しましょう。マイホームを売却する場合は、所有年数に関わらず控除が受けられるので安心してください。