- 中古マンションの建て替えの概要:耐用年数・条件を紹介
- 中古マンションの建て替え狙いはオススメできない理由は?
- 中古マンションの建て替え狙いが近いマンションの特徴とは
マンションを購入する際、新築と中古の2つの選択肢があります。
金額を考えると中古マンションの方がお買い得ですが、老朽化して建て替えが必要になった時にどうすれば良いのか、という問題も抱えています。建て替えれば住みやすくなるのは間違いありませんが、費用の問題を始めとして、住民に大きな負担がかかることになります。
端的にいうと、中古マンションの建て替え狙いはオススメできません。この記事ではその理由と、建て替えの概要、建て替えが近い中古マンションの特徴、そして建て替えが必要になった時にできる対策などを紹介します。
中古マンションの建て替えの概要:耐用年数・条件まとめ
最初に、マンションの建て替えの概要について紹介します。
マンションの耐用年数
マンションの建て替えは、耐用年数を参考にすることが一般的です。耐用年数には主に3種類あります。
①法定耐用年数
減価償却費を計上できる期間のことを、法定耐用年数と呼びます。
建物の構造によって年数が決まっており、鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートの場合は、47年です。建物を利用出来る期間とされていますが、実際に利用出来るかどうかとは関連がありません。
②物理的耐用年数
物理的に利用出来る期間の事を、物理的耐用年数と呼びます。技術の発展により、鉄筋コンクリート造であれば、耐用年数は100年を超えるとも言われています。
技術があまり発展していなかった頃に建てられた建物の場合は、70年前後くらいが耐用年数とされています。
③経済的耐用年数
建物に経済的価値が残っている年数を、経済的耐用年数と呼びます。
マンションの場合は、大体40〜50年くらいとされています。50年を過ぎるとマンション自体には経済的価値は無く、殆ど土地の価格のみでの取引となります。
年数が古くなってくると、現在の市場で求められているマンションの仕様と合わなくなり、価値が下がるのです。
物理的耐用年数は、仕様は別として「住める」年数を示しており、経済的耐用年数は「住みやすい」年数を示しているのです。
建て替えるための条件
マンションの建て替えには条件があります。マンションは共同住宅であるため、一部の住人だけの判断で建て替えることはできません。
区分所有者数の5分の4の賛成と、議決権の5分の4の賛成が必要になります。区分所有者とは、建物の構造上区分された一部を所有している者のことを指します。例えば301号室に住んでいる人は、301号室の区分所有者となります。
上記の条件は区分所有法で定められており、マンションはアパートに比べて多くの人が住んでいることを考えると、ハードルが高いと言えます。大規模なマンションであれば、条件をクリアするのが更に難しくなります。
国では建て替えの条件を緩和するために、区分所有法の改正を検討しており、マンションの建て替えが改正前よりもスムーズに行われることが期待されています。
建て替えに必要な期間と流れ
検討から実施まで、マンションの建て替えには非常に時間がかかります。
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その後住民は仮住まいに移動し、着工を経て建て替え工事が始まります。工事も時間がかかりますので、検討委員会の設立から工事の完了までの間に、かなりの時間を要することが分かります。
建て替えのハードルは高い
総合的に見て、マンションの建て替えは非常にハードルが高いです。住民の合意形成の難しさや、実際に工事が行われるまでに様々なステップを踏む必要があります。
また、実際にマンションを建て替えた件数自体が、少ない傾向にあります。国土交通省の「マンション建て替え等の実施状況」によると、2023年3月の時点で、マンションの建て替えは累計で282件でした。2022年末の時点で、築40年以上のマンションが125.7万戸存在します。この数は、今後10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍になると予想されています。マンションの数における建て替えの件数の割合で考えると、実際に建て替えをするマンションは少ないことが分かると思います。
中古マンションの建て替え狙いをオススメ出来ない理由!儲かる?
中古マンションの建て替え狙いをオススメ出来ない理由とは一体何なのか、見ていきましょう。
- 建て替え費用の負担が高額になる
- 建て替え費用に修繕積立金を使えない
- 長期的に仮住まいに住むことになる
- 負担できない場合は立ち退きになるケースもある
建て替え費用の負担が高額になる
中古マンションを建て替えるための費用は、原則として住民が負担します。
- 容積率が低く建て替えで住戸数を増やせない
- 住戸数が増加しても購入者が見つからない
上記のどちらかを満たしている場合、住民が負担することになります。建て替えが必要なマンションはどちらかに当てはまっていることが多く、必然的に住民の負担となることが一般的です。
また、購入した時点で住民も「資産」としてマンションを持つことになるので、そういった観点からも住人の負担の必要性があります。
国土交通省の「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」によると、マンションの建て替えによる住民の費用の負担は年々増加傾向にあります。2001年までは平均で350万円程度でしたが、2012年から2016年までに建て替えられたマンションの住民の負担額は、平均1100万円でした。
住民の負担は、約15年で800万円近く増加したことになります。マンションの規模によっても差はありますが、現在は1戸につき約1000万円の負担となります。住民で分担はするものの、1人あたりの金額は決して安くありません。
ちなみに、建て替えの際に戸数を増やし、それらを販売して売れた分の利益を建て替えの費用に回すことで住民の負担を減らす、ということも物件によっては可能です。
しかしこの方法を実際にやるためには、立地条件が良い事や、戸数を増やす都合上容積率に余裕が必要になるなど、限られた物件のみに適用されます。
建て替え費用に修繕積立金を使えない
修繕費用の補填のために積み立てる「修繕積立金」ですが、建て替えのために利用することは原則として許可されていません。国土交通省の「マンション標準管理規約」で禁止されており、マンションはこの規約に則って建てられています。
長期的に仮住まいに住むことになる
建て替え工事が行われている間は、住民は仮住まいに住む必要があります。
どれくらいの期間住むことになるかと言うと、マンションの規模にもよりますが、竣工から着工まで、大体1年くらいです。階数の多いタワーマンションになってくると、工事期間は更に長くなります。
住み慣れた環境から離れて住むことの精神的負担は大きく、特に高齢者への負担が大きいと言えるでしょう。
自治体によっては、仮住まいとして公的な住宅を斡旋する制度を設けている場合もあります。使われていない社宅を借り上げて、高齢者などを中心に移り住み、仮住まいとして利用するケースもあります。
負担できない場合は立ち退きになるケースもある
前述した通り、マンションの住民の5分の4の賛成が得られれば、建て替えをすることになります。しかし費用が払えない住民がいる場合、その住民は強制的に「立ち退き」を選ぶことになります。つまり、マンションを追い出されるということになります。
立ち退く場合には「売渡請求権」が行使され、住んでいる部屋を時価で管理組合に売り渡すことになります。売買契約が実際に成立するまでには、順番があります。
立ち退く住民には、マンションのオーナーから立ち退き料が支払われる場合があります。立ち退いて貰う際に、心遣いで支払う費用の事を言います。支払う義務は無いのですが、マンションの建て替えの場合は、支払いを要求されることが多いです。
立ち退き料の相場としては、賃料の6ヵ月から10ヵ月分くらいが一般的とされています。
建て替えは反対だけど、立ち退きもしたくないという主張は通らないので、注意して下さい。立ち退きの猶予期間は、1年間となっています。
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建て替えが近い中古マンションの特徴
建て替えが近い中古マンションには、どのような特徴があるのでしょうか。
- 立地が人気エリア
- 階数が少ない
立地が人気エリア
駅に近い、買い物に便利といった人気エリアに立地しているマンションは、新規入居者が見込めます。そのため、土地開発業者も建て替えに協力的になります。
階数が少ない
周りの建物と比較して階数が少ないマンションの場合、利益を得るために建て替えを行おうという考えが、管理組合から出てくる可能性があります。
建て替えをして、マンションの規模が大きくなったことで得た利益を、建て替えの費用に充てることも可能です。
上記の特徴がある場合、築年数も踏まえて建て替えが検討されることがあります。
解説員
マンションの建て替えをするかどうかも、管理組合が判断するため、建て替えに携わる管理組合がしっかり機能しているマンションは、信頼出来るということになります。逆に管理組合が機能していない場合は、話が上手くまとまらなかったり、協議すら行われない可能性もあるので要注意です。
人気のエリアに立地している、戸数を増やすことで収益が見込める、といった場合は、購入することで儲かる可能性もあります。
しかし、基本的には中古マンションの建て替え狙いはオススメ出来ないので、上記の特徴に当てはまっている場合でも、購入の際は慎重に検討した方が良いでしょう。
必要に応じて中古マンションの売却も検討しよう
既に建て替え間近の中古マンションを購入している方は、どのような対策をするのが良いでしょうか。
仲介による売却
建て替えまで時間がある場合は、仲介による売却も選択肢に入れることをオススメします。不動産会社を通じて買主を探してもらうことを、仲介による売却と言います。
いつ、誰がマンションを購入したいと言うかは分からず、そもそも必ずしも買い手が付くのかも保証されていません。しかし、マンションは売却価格が高くなる可能性が見込めます。
不動産会社によって査定額に差が生じるので、複数の会社に査定を依頼すると良いでしょう。
売る時のコツ① 時期を見極め、計画を立てる
適切な売却時期を見極めれば、自信を持って売りにだすことが出来ます。
2021年と2022年の、首都圏の中古マンションの月別成約件数を例に挙げると、2月から3月と、9月から11月の成約件数が多い傾向にあります。月によって2021年と2022年に差がある月もありますが、売るタイミングの参考にはなると思います。
売却する際は、しっかりと計画を立てることが大切です。マンションの売却にかかる期間は、物件にもよりますが大体3ヵ月から6ヵ月かかるとされています。長ければ、1年以上かかることもあります。
マンション建て替えの話が本格的に進んでしまうと、売却するのが難しくなるので、余裕を持って売却の計画を立てるようにしましょう。
長期的に購入希望者が現れないと、売り手にとって精神的に辛くなることもあります。売れ残っていると買い手にとってあまり良いイメージを持たれません。対策としては、価格を下げて買い手が付くのを待つのが一般的です。
売る時のコツ② リフォームは基本的に不要
中古マンションを売却する際に、基本的にリフォームは不要です。
リフォームした方が高く売れる可能性はあるのですが、売り主が費用を負担しないといけません。また、リフォームをすると、その分売る時の価格が高くなってしまいます。
購入後に自分でリフォームをしたいと考えている人も多いので、あらかじめリフォームされていると買い手にとって魅力的に映らない可能性もあるのです。
売却することが目的なので、リフォームでお金をかけたにも関わらず売れなかった場合、売り主にとっては損になってしまいます。
基本的に中古マンションはリフォームがいらないのですリフォームが必要になるケースは例外としてあります。例えばエアコンやエレベーターなどの設備が故障している場合は、売却の前に修理した方が良いです。
他にも劣化が激しかったり、壁やフローリングに穴が空いていたり、傷が目立っている場合はリフォームすることをオススメします。
リフォームせずに売りに出して売れなかった場合、リフォームをすることで買い手が付くケースもあります。最低限必要な設備は壊れていないか、部屋の壁や床の状態などはチェックしておくと良いでしょう。
まとめ
- 中古マンションの建て替え狙いはオススメできない理由は?
- 中古マンションの建て替えの概要:耐用年数・条件を紹介
- 中古マンションの建て替え狙いが近いマンションの特徴とは
総合的に見て、中古マンションの建て替え狙いはオススメすることが出来ません。
安いという意味では、確かに魅力的です。新築のマンションの約半分かそれ以下の値段で購入することが出来るため、元手を安く手に入れられることで儲かる、と考えている方も多いかも知れません。
しかし購入後は、遅かれ早かれ建て替えという問題に直面することになります。建て替えの費用は大きな負担になり、住民の合意形成もハードルが高くて大変です。
建て替えることで、利益が期待出来るのであれば購入する価値はあると思いますが、そうでない場合はやめておくのが無難です。
購入を考えている方や、既に購入している方は、この記事で紹介したことを参考にしてみてはいかがでしょうか。