借地権の中古マンション購入で必ず押さえたい6個のポイント

この記事を書いた人
中村 昌弘
不動産コメンテイター

都内の私立大学を卒業後、新卒採用で不動産ディベロッパー勤務。 不動産の用地仕入れや、分譲マンションの販売・仲介などを手掛ける。 2016年に独立して以降、不動産関係のライティングも業務の1つに。

借地権の中古マンションまとめ
  1. 借地権は所有権の70%ぐらいの価格
  2. 借地権はランニングコストが多めにかかる
  3. 借地権は売却時も時間がかかる
  4. 需要が高い都心エリアでは購入しても問題ない

一般的なマンションは「所有権」と呼ばれるマンションであり、建物と土地の両方の所有権を持ちます。一方、建物は所有しているものの土地は借りている状態である、「借地権」のマンションも存在します。

この所有権のマンションと借地権のマンションでは異なる点があり、人によってはメリットにもデメリットにもなり得るので注意が必要です。

そこで今回は、借地権のマンションにフォーカスを当て、購入時に抑えておきたい6個のポイントを解説していきます。

借地権の種類を確認する

借地権の中古マンション購入で押さえたい1つ目のポイントは、借地権の種類を確認することです。借地権には色々種類がありますが、一般的な居住用不動産の場合には以下3種類に分類されます。

借地権の種類
  1. 旧法普通借地権
  2. 新法普通借地権
  3. 新法定期借地権

借地権に関しては、平成4年に法律が変わりました。そのため、平成4年を境に「新法」「旧法」という呼び方の違いがあります。

旧法借地権と新法借地権は似ているので、この記事で「普通借地権」と記載したときは両方を指していると思ってください。

一方、普通借地権と定期借地権は同じ借地件でも根本的に異なります。簡単にいうと、普通借地権は基本的に永住することは可能ですが、定期借地権は期限が決まっているため永住できない権利です。

まずは自分の検討している借地権マンションが、普通借地権なのか定期借地権なのかを確認しましょう。この2つの違いについては次項より解説していきます。

借地権の種類による「更新」の違いを知る

借地権の中古マンション購入で押さえたい2つ目のポイントは、普通借地権と定期借地権の種類による「更新」の違いを知ることです。

中村編集者

単にいうと、普通借地権は基本的に土地の借地契約を更新することができ、定期借地権は期限が来たら絶対に土地を返還するという点が違いだね。

普通借地権は更新可能

旧法も新法も普通借地権であれば、土地の借地契約の期間が満了したときに、借家人(土地を借りている人)が更新の意志を示せば借地契約は更新できます。

つまり、借地権マンションの購入者(入居者)は、土地の借地契約が終わっても「住み続けたい」という意思を示せば、契約は更新され住み続けることができるということです。

この点から、普通借地権マンションの場合は、所有権マンションと同じく永住できるものと思って良いでしょう。

これは、土地を借りて住んでいる人が「来月で借地契約が終わるので来月までに退去してください」という状況になってしまうと、大きな不利益を被ってしまうからです。つまり、借家人を守るためのルールというわけです。

ただし、土地を借りている対価として地主に支払っている「地代」の支払いをしていないなど、地主が借地契約の更新を断わる正当な理由があればその限りではありません。

定期借地権は更新できない

そもそも、平成4年に新法が誕生した理由の1つは、普通借地権の場合には賃借人の立場が強すぎて、地主は一度土地を貸すと半永久的に貸しつづけなければならない状況になるからです。

そのため、新法では定期借地権という借地権が誕生し、定期借地権は期間満了時に更新できません。

ということは、定期借地権のマンションを購入すると、期間満了時は退去しなければいけないの?

事務員

中村編集者

基本的にそうだね。だから、残り45年の借地契約なら後45年しか住めないという前提でマンションを選ぶ必要があるんだよ。この点が普通借地権と定期借地権の大きな違いなので、必ず認識しておこう。

■契約期間を確認する

借地権の中古マンション購入で押さえたい3つ目のポイントは、旧法普通借地権・新法普通借地権・定期借地権で以下のように契約期間の違いがある点を確認しておくことです。

旧法普通借地権・新法普通借地権・定期借地権の違い一覧表

中村編集者

これはあくまで「新築」時の契約期間だから、中古で買う場合は「後何年残っているか?」に注意が必要です。

普通借地権の契約期間

普通借地権の契約期間は、旧法と新法で多少違いがあります。そして、更新時に設定する期間は新法の方が短くなっている点を認識しておきましょう。

上述したように、普通借地権なら借りたい意思を示せば更新できますが、新法の場合は更新時の期間が短くなっているので、長期的スパンで見ると度々更新が必要ということです。

中村編集者

後で詳しく話しますが、更新時には「更新料」が必要なケースが多いので、新法の方が更新料を頻繁に支払う必要がある点は覚えておいてください。

定期借地権

定期借地権には「一般定期借地権」と「建物譲渡特約付き借地権」があります。

建物譲渡特約付き借地権

建物譲渡特約付き借地権とは、期間満了時に地主が建物を買い取る契約です。しかし、マンションという入居用不動産の場合には「住める期間が30年」の定期借地権だと、期間が短すぎる関係で極めて売りにくいです。

そのため、法律上は30年から設定できるものの、建物譲渡特約付き借地権でも、期間は50年程度で設定するでしょう。

つまり、地主は築50年のマンションを買い取る必要があるので、資産価値が著しく低下しており、買い取るメリットは小さいといえます。

一般定期借地権の方が多い

前項の背景があるため、定期借地権のマンションといえば、基本的には新築時に50年以上の期間を定めた一般定期借地権のマンションが多いです。

中村編集者

はっきりとしたデータは見つかりませんでしたが、わたしの経験上(マンションディベロッパーに7年ほど勤務)で、建物譲渡特約付き借地権のマンションは見たことはありません。

ただ、中古を購入するときは「残存期間」に注目しましょう。一般定期借地権は期間満了時に土地を更地として返還するので、期間満了時に建物の解体が発生します。

購入価格を確認する

借地権の中古マンション購入で押さえたい4つ目のポイントは、購入価格を確認するという点です。この点に関しては以下を知っておきましょう。

借地権マンションの価格
  1. 借地権マンションは相場より安い
  2. ランニングコストに注意

借地権のマンションは価格が安いんですね?

事務員

中村編集者

そうだね。だからこそ、本当に安いのか?を検証しないと、借地権のマンションを買うメリットが薄れてしまうんだよ。

借地権マンションは相場より安い

借地権のマンションは相場より安いという点に関しては以下を知っておきましょう。

借地権マンションの価格について知っておくこと
  1. マンション価格の構成について
  2. 定期借地権物件は1%未満
  3. 相場は所有権でつくられる
  4. 相場を調べる

マンション価格の構成について

そもそも、マンションの価格は「土地代+建築費用+販売経費など」で構成されています。そして、借地権の場合は土地を借りているため、通常の所有権マンションと比べて「土地代」がゼロ…もしくは安価です。

そのため、借地権のマンションは所有権のマンションよりも安価で売り出しており、中古時も相場より安価で売り出されることが通常です。

定期借地権物件は1%未満

1993年2月の定期借地権付住宅第1号の発売から2018年9月30日までで、定期借地権の物件は戸建てとマンションの合計で5万4913戸にのぼります。

一方、2017年末時点ではありますが、日本のマンション供給戸数は約644.1万戸なので、定期借地権マンションは約0.35%しかありません。

相場は所有権でつくられる

前項のように、定期借地権のマンションは世の中に極めて少ないです。普通借地権の正確な戸数は分かりませんが、所有権マンションより少ないことは明らかでしょう。

つまり、相場価格は世の中に出回っている戸数が多い所有権マンションによってつくられるので、所有権と比べて「土地代」がかからない借地権のマンションは、相場価格よりも安価であることが普通なのです。

MEMO
不動産取引の実務で築年数や広さ等の条件が同一の場合、所有権マンションの70%の価格が借地権マンションの取引価格となります。

相場を調べる

上記の背景があるので、借地権のマンションを買うときは以下のサイトで相場を調べておきましょう。

REINS Market Information

また、下記のサイトも仲介の実務で使われています。

土地総合情報システム

所有権マンションでも相場を調べることは重要ですが、「価格が安い」という点がメリットの借地権のマンションは、所有権マンション以上に相場価格を気にしなければいけません。

中村編集者

借地権は「安価であること」が魅力の1つなので、価格の検証は所有権のマンションよりも重要ということだね。また、相場をしっかり調べておくことで、値引き交渉の材料にもできます。

ランニングコストに注意

また、価格と合わせて知っておきたいのが以下のランニングコストです。

借地権のランニングコスト
  • 地代
  • 建物解体準備費用

普通借地権の場合は、地主に借りている対価として地代を支払います。ただ、借地契約の期間が決まっている定期借地権の場合は、地代の全額を一括で地主に納めている場合があるのです。

この場合には地代は発生しませんが、その分「物件価格」が多少上がります。とはいえ、土地を購入するのではなく「借りている分を一括で支払う」ので、やはり所有権マンションよりは安くなるでしょう。

中村編集者

いずれにしても、上記のランニングコストをきちんと加味して、周辺の所有権マンションと比べて価格的にお得か?を見極めなくてはいけません。

特殊な条件に注意する

借地権の中古マンション購入で押さえたい5つ目のポイントは、以下のように借地権ならではの特殊な条件を確認することです。

借地権の特殊な条件
  • 更新時には更新料が必要な場合がある
  • 建物を売却する際には地主の承諾および承諾料が必要な場合がある
  • 増改築の際、地主の承諾および承諾料が必要な場合がある

上記の更新料や承諾料については、重要事項説明書に記載があります。そのため、事前に金額を確認の上、購入を検討しましょう。

担保価値が低いことを知る

借地権の中古マンション購入で押さえたい6つ目のポイントは、担保価値が低いという点に関し以下を知っておくことです。

借地権は担保価値が低い
  • 担保価値が低い理由
  • 担保価値が低いデメリット

担保価値が低い理由は、土地を所有しているのではなく借りているからです。そのため、所有しているよりも資産価値が低くなり、その影響で金融機関からの評価が低くなり、結果的に借入がしにくくなります。

つまり、借地権の中古マンションを購入するときは、銀行ローンが通りにくいというデメリットがあります。また、将来そのマンションを売るときも、購入検討者がローンを組みにくいので売りにくい点もデメリットといえます。

MEMO
具体的には所有権マンションで物件価格の100%の融資が受けられる方でも、借地権マンションの場合は70~80%程度しか融資承認が下りないことがあります。

まとめ

このように、借地権のマンションは一般的な所有権のマンションとは違います。さらに、借地権の中にも普通借地権と定期借地権でも大きな違いがある点を認識しておきましょう。

そして、それぞれの借地権のメリット・デメリットを理解した上で、借地権の中古マンションを購入することが重要です。特に、デメリットはきちんと理解しておかないと、「買ってから気づいた」では済まされません。