派遣社員は住宅ローンが組めない?組める銀行は?いくら借りれる?条件やポイントを解説!

この記事を書いた人
小島 優一
宅地建物取引士

宅地建物取引士、2級ファイナンシャルプランニング技能士。生命保険会社にてリテール業務に従事した後、2014年に不動産仲介会社であるグランドネクスト株式会社を設立。 2021年より幻冬舎ゴールドオンラインにて不動産を通じて財産を守る、増やす、残す記事を連載している。 >> 詳細はこちらから

この記事のまとめ
  1. 派遣社員は住宅ローンが組めない?組める?
  2. 派遣社員でも住宅ローンが組める銀行を紹介!
  3. 派遣社員は住宅ローンをいくら借りられる?

住宅を購入する際、住宅ローンを利用する人が大半となります。金融機関に住宅ローンの申請をして審査を受け通過すれば利用できます。しかし「派遣社員が住宅ローンが組めないのでは?」と、考えておられる方はいませんか?実は住宅ローンの審査条件を通過し易くするポイントを押さえれば、正規雇用や非正規雇用に関係なく派遣社員でも住宅ローンを組める場合があります。

多くの住宅に関する相談事や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントが住宅ローンを組む条件や派遣社員が審査を通過するポイント、金利の種類、返済方法について解説します。

派遣社員の場合、住宅ローンがいくらまで借入可能なのか・住宅ローン審査に通った体験談などもご紹介しますので是非ご確認ください。

派遣社員は住宅ローンが組めない?組める銀行はある?

派遣社員は住宅ローンは組めない?

派遣社員は住宅ローンが組めないということはなく、組める銀行はあります。

しかし契約期間が決められているため長期間に亘るローン返済に支障が生じやすいと判断され、住宅ローンの審査が通りにくくなります。金融機関による住宅ローンの審査の判断基準は「安定した収入が継続的にあるか?」という点です。収入源が断たれる事態になればローン返済ができなくなります。金融機関は、その様なリスクを避けるためにも派遣社員に対して厳しい目を注ぐこととなります。

住宅ローンの借入可能額は年収の35%が限度

住宅ローンの借入可能額は年収にもよりますが30%~35%が限度となります。その範囲内ですと金融機関は収入に対する年間の返済額に無理が無いと判断します。例えばフラット35の場合ですが年間返済限度額は年収が400万円未満の場合、

  住宅ローン年間返済額は年収の30%以下:400万円 × 30% = 120万円(以下)

年収が400万円以上の場合、

  住宅ローン年間返済額は年収の35%以下:400万円 × 35% = 140万円~

となります。金融機関ごとに返済比率が設定されていますので確認が必要です。

住宅ローンの借入可能額は住宅の担保力にも影響

購入予定の住宅の担保評価が融資金額に見合う評価額になるのか否かも影響します。万が一住宅ローンの返済が滞る事態に陥りますと金融機関は住宅を差押え、競売などにかけて売却します。その売却額で住宅ローン残債に充てようとします。

新築住宅の場合、評価額も高くなりますので借入可能額は高めに設定されます。しかし築古住宅や耐震基準が脆弱な住宅になりますと評価額が低めに設定されます。そうなりますと融資審査を通過できない場合や借入可能額が低く設定される場合もあります。

派遣社員でも住宅ローンが組める可能性がある銀行

条件次第ですが、派遣社員でも住宅ローンが組める銀行はいくつかありますのでご紹介します。

派遣社員でも住宅ローンが組める銀行

上記のような銀行などでは、派遣社員でも住宅ローンが組める事例があるようです。

しかし銀行によっては「同じ派遣先に〇年以上派遣されていること」「健康保険・厚生年金保険の被保険者であり、雇用保険へ加入していること」などといった条件がついてきます。

詳しい条件については銀行に直接確認しておきましょう。

派遣社員は年収いくらなら住宅ローンが組める?条件

住宅ローンが組める条件
 

住宅ローンが組める条件には何がありますか?

 
 

年齢や職業・職種・勤続年数、年収、信用情報など、ローン返済能力の有無となります。

 

年齢

大半の金融機関が完済時の上限年齢を80歳に設定しています。例えば住宅ローンの返済期間を35年にする場合、44歳までに借入をすれば良いことになります。借入時の上限年齢は65~70歳に設定している金融機関が大半となります。例えば65歳の人が住宅ローンの返済期間を14年で借入した場合、80歳までに返済できるプランとなりますので、住宅ローンを組むことができます。

MEMO
しかし派遣社員の場合、退職金を見込めませんので40歳を過ぎてから住宅ローンを組むことは難しくなります。可能であれば40歳未満で住宅ローンを組むことを検討したいところです。

年収と勤続年数

派遣社員において、年収がいくらかというのは住宅ローン返済の原資となりますので重要なポイントです。上記でも解説しましたがフラット35の場合、年収400万円未満のローン返済率は30%以下、年収400万円以上のローン返済率は35%以下と規定されています。年収により住宅ローンの借入可能額が決まり、購入する住宅の規模やグレードも決まります。

また勤続年数も判断されるポイントとなります。勤続年数が長い人ですと安定して働き続け、給与収入が入ってくると判断されるからです。勤続年数の規定は金融機関により異なりますが概ね1年~3年以上となります。逆に勤続年数1年未満で職を転々としている場合、借入は困難となります。

職業・職種

職業や職種によっても安定した収入を長期間に亘り得られるか否かを判断されます。それらに加え勤務先企業や雇用形態からも判断されます。一般的には正規雇用の方が派遣社員よりも長期間、安定収入を見込めると判断されますので有利になります。しかし金融機関が最終的に判断するポイントは職業や職種、正規雇用か派遣社員か、大企業か中小企業かではありません。住宅ローン返済能力があると判断されるか否かになります。

MEMO
大企業で正規雇用の人でも返済能力が無いと判断されれば借入はできません。中小企業の派遣社員でも返済能力があると判断されれば借入ができます。職業・職種は参考程度に考えると良いです。

信用情報

個人信用情報は過去に個人が行った金融取引の履歴を記録した情報です。金融機関からの借入やクレジットカードなどの返済状況、債務整理の履歴などの情報が記録されています。多額の借入や返済滞納などの記録がありますと住宅ローン返済能力に対して疑問符が付き借入できない可能性が高くなります。

MEMO
ただし個人信用情報は一定期間を過ぎますと削除されます。過去に返済滞納などがある場合、時間の経過とともにマイナス情報が削除されてから住宅ローンを申請することも考えられます。

派遣社員で住宅ローンに通った事例はある?

派遣社員で住宅ローンに通った事例はある?

派遣社員は住宅ローンの審査が厳しくなる旨はお伝えしましたが、派遣社員でも審査に通った事例あります。

今回は派遣社員で実際に住宅ローン審査に通ったという評判・口コミをご紹介します。

派遣社員の住宅ローンに関する評判
  • 派遣社員時代にフラット35で住宅ローンを組めた
  • 派遣社員で住宅ローンが通ったが金利が高い
  • カードローン100万+派遣社員夫婦でも住宅ローンが通る

派遣社員時代にフラット35で住宅ローンを組めた

派遣社員で住宅ローンが通ったが金利が高い

カードローン100万+派遣社員夫婦でも住宅ローンが通る

X(旧Twitter)では上記のような口コミがありました。二つ目の口コミにあるように、派遣社員で住宅ローンに通ったものの、金利が高くて支払いがきついという場合もあります。

今後の生活も想定してよく検討しましょう。

派遣社員が住宅ローンの審査を通すためのポイント

派遣社員が住宅ローンの審査を通すためのポイント
 

派遣社員が住宅ローンの審査を通過するためのポイントを教えてください。

 
 

団信に加入するために健康であることや担保評価の高い住宅であること、最低1年以上の勤続年数、フラット35の検討などとなります。

 

団体信用生命保険(団信)に加入するために健康状態に気をつける

住宅ローンを申請する際、銀行から借入をする場合には団体信用生命保険(団信)に加入することが条件となります。団信は債務者が死亡もしくは高度障害になった場合、ローン残高を代わりに支払ってくれる住宅ローン専用の生命保険です。その分の金利が住宅ローン金利に上乗せされます。債務者の家族にとっては債務者に万が一のことがあっても住宅ローンの返済が無くなり、住宅は債務者もしくは債務者の相続人の所有となるメリットがあります。ただし団信に加入する条件は加入時点で健康であることです。

MEMO
病気の状態では加入することができませんので住宅ローンの借入も困難となります。過去に大病を患っていた場合、回復して3年経過すれば借入をできる可能性があります。

なるべく築年数の浅く、担保評価の高い物件で審査を受ける

住宅購入の資金計画において住宅ローンで大半を賄いたい場合、なるべく築年数が浅く、評価額の高い住宅を選定して住宅ローン審査を受ける必要があります。金融機関は新築住宅においては購入価格を評価額とする場合が多くなります。中古住宅においては築年数と共に評価額が下がり、購入価格よりも評価額が下がることもあります。

金融機関は購入する住宅の評価額に見合う融資を行います。したがって購入価格と住宅の評価額が同程度であれば、購入価格に相当する借入を行うことができます。一方、購入価格よりも評価額が下がる場合、評価額に相当する借入しかできませんので、不足分は自己資金で補う必要があります。

勤続年数は最低でも1年以上は続ける

金融機関によっても異なりますが勤続年数は最低でも1年以上は続いている状態がベターです。都市銀行になりますと3年以上を条件とするところもあります。しかし金融機関の中には勤続年数が1年未満でも借入ができるところもあります。過去の勤務先の勤続年数が長い場合や購入する住宅の評価額が高い場合、自己資金の投入比率が高い場合などです。金融機関は住宅ローンの返済見通しが十分に立つと判断すれば融資実行をします。

フラット35も検討する

派遣社員の場合、特にフラット35の検討をお勧めします。その理由は審査項目に雇用形態が含まれていないからです。また審査項目に勤続年数も含まれていないため1年未満であっても借入審査を通過する可能性があります。政府の住宅政策でもありますが、職業や職種に関係なく住宅を取得できるようにする方針です。したがって、住宅金融支援機構などの政府系金融機関の活用もポイントの一つです。

住宅ローンの金利とは

住宅ローンの金利とは
 

住宅ローンの金利について教えてください。

 
 

住宅ローンの金利には、3つのタイプがあります。固定金利、変動金利、固定金利期間選択型です。それぞれメリット・デメリットがあります。

 

返済の完済まで金利が変わらない固定金利

固定金利は返済期間中の金利が完済まで固定されるタイプです。金利が固定されていますのでローン返済額は変わりません。金利は市場の長期金利である10年国債の金利などを基準に決められます。代表的な固定金利といえば住宅金融支援機構の「フラット35」になります。

金融情勢で金利が上がったり下がったりする変動金利

変動金利は住宅ローン返済期間中に借入金利が変動するタイプで、大半の金融機関が取り扱いをしています。金利は半年ごとに見直され市場の短期金利に連動して上下します。短期金利は取引期間が1年未満の金利のことです。銀行が企業に貸し付けをする場合の最優遇金利となる短期プライムレートに連動します。

変動金利が上下しても住宅ローン返済額がすぐに上下することはありません。ローン返済額の見直しは5年に1度となります。5年の間に金利が上がれば、5年後にローン返済額も上がりますが、それまでの返済額の125%が上限となります。いわゆる「125%ルール」です。

注意
例えば毎月のローン返済額が10万円の場合、金利上昇後のローン返済額の上限額は、12.5万円となります。しかし返済額の内訳に占める利息の割合が金利上昇分だけ高くなりますので元金返済が進まないという事態になります。

一定期間固定金利、一部変動金利の固定金利期間選択型

固定金利期間選択型は金利を固定する期間として、3年・5年・10年などの中から選択するタイプです。固定期間中は金利もローン返済額も固定されます。固定期間が終了しますと、その時点の金利にて変動金利か固定金利期間選択型を選定します。固定期間終了時点で金利が上がっている場合にはローン返済額も上がります。ただし、変動金利のように、「125%」ルールはありません

3つの金利タイプの金利水準の違い

上記3つの金利タイプは金利水準も異なります。通常は変動金利が最も低い金利となります。変動金利は短期金利が上昇すれば連動して上昇します。金融機関にとって資金調達する短期金利が貸出すローン金利を上回るリスクが低いため、金利を低くして貸出すことができます。

一方、固定金利は融資しますと金利は変わりません。通常は固定金利が最も高い金利となります。金融機関にとって資金調達する長期金利が上昇すれば、収益が縮小するリスクがあります。そのため変動金利と比較して固定金利は高めに設定されます。

MEMO
固定金利期間選択型は変動金利と固定金利の中間位となります。固定期間が長いほど金利は高くなります。

住宅ローンの返済についても理解しておこう

住宅ローンの返済についても理解しておこう
 

住宅ローン返済について教えてください。

 
 

返済方法は2種類あります。元利均等返済と元金均等返済ですが、それぞれメリット・デメリットがあります。

 

元利均等返済

元利均等返済は金利の変動が無い場合、毎月のローン返済額(元金返済額+利息)が一定となる返済方法です。メリットはローン返済額が変わらないので、資金計画が立て易いことです。ローン返済額の内訳(元金返済額、利息)の割内は徐々に変わります。ローン返済当初は元金返済額の割合が小さく利息の割合が大きいのが特徴です。元金返済額が少ないためローン残高の減少は遅くなります。したがってローン残高にかかる利息も減少が遅くなるため、ローン総返済額は元金均等返済と比較して大きくなるのがデメリットです。

元金均等返済

元金均等返済は毎月のローン返済額の中の元金返済額が一定とする返済方法です。その分、ローン返済当初の利息が一番大きくなります。したがってローン返済額もローン返済当初が一番大きくなるのがデメリットです。元金返済額の割合が一定となるため、そこにかかる利息の減少割合が元利均等返済と比較しますと大きくなります。したがってローン返済額も毎月減少していきます。元金の減少のスピードが、元利均等返済と比較しますと早いためローン総返済額も小さくなるのがメリットです。

返済方法メリットデメリット
元利均等返済毎月のローン返済額が一定ローン総返済額が大きい
元金均等返済ローン総返済額が小さい返済初期のローン返済額が大きい

まとめ

以上、住宅ローンを組む条件や派遣社員が審査を通過するポイント、金利の種類、返済方法について解説しました。契約期間が定められている派遣社員が住宅ローンを利用する場合、審査項目の中で一番ネックになるのが雇用形態や勤続年数などになります。金融機関の審査は安定した返済能力を重要視するからです。そこを補うために担保評価の高い住宅の選定や、勤続年数が長い状態でのローン申請、自己資金を多めに備えるなどが考えられます。

また国の住宅政策でもありますが正規雇用や非正規雇用に関係なく、住宅を所有できるようにするために政府系金融機関(住宅金融支援機構、日本政策金融公庫)があります。審査項目に雇用形態や勤続年数が無い「フラット35」などを活用して、理想とする住宅を確保されることをお勧めいたします。