マンションの水漏れとは?原因や修繕費用、被害者・加害者になった場合の対応について

この記事を書いた人
平野 直樹
不動産コンサルタント・一級建築士

関西大学工学部卒業後、首都高速道路の設計や戸建設計など建設コンサルタントとして活躍。川を活かした街づくりや土地有効活用を掲げるシンクタンクを経た後、現在は有限会社エクセイト研究所の取締役を務める。 保有資格:1級建築士、1級土木施工管理技士、宅地建物取引士

マンションに住んでいる場合、水漏れを発生させてしまった時にどう対処すればよいのか困っている方はいませんか?

逆に水漏れ被害を受けた場合、どう対応すればよいのか悩んでいる方はいませんか?

実は水漏れ原因箇所の特定と関係者への対応を素早く行うことが鍵となります。

多くのマンションに関する相談や悩み事を解決してきた不動産コンサルタントがマンションの水漏れ原因や修繕費、応急処置、水漏れを起こした側・受けた側に立った場合の対策について詳しく解説します。

水漏れが発生した際にスムースに対処でき、損害を与えた場合や受けた場合に、保険による損害補償額で損害を賄うコツについて解説します。

マンションの水漏れとは?まとめ
  1. マンションの水漏れは居住者、または建物設備の劣化による2つが原因
  2. 入居者が原因のケースは排水溝の詰まり、排水ホースの外れ、お湯の出しっぱなしなどが多い
  3. 水漏れの修繕費は箇所により異なり配管回りは1mごとに5,000円~10,000円前後かかる

マンションで水漏れが起きる原因は主に2つ

マンションで起きる水漏れによる原因の一つは入居者による故意や過失によるものと、一つは給排水管の故障や老朽化による設備の不具合が挙げられます。

どちらが水漏れの原因かによって対処の仕方が相違するため、先ずは原因を明確にすることが大切です。

入居者によるマンションの水漏れ

マンションの水漏れの原因の一つが入居者による故意や過失となります。例えば給水管のケースではベランダで水を出しっぱなしにしていることを忘れ、階下のベランダへ大量の水漏れを生じさせた場合です。

排水管のケースではトイレにトイレットペーパー以外の固形物を流して詰まらせてしまい、便器から汚水があふれ出す状態です。

また天ぷらなどの油を使用する料理をした場合、使用した油を台所の排水口へ流しますと排水管が詰まる原因となります。油の温度が下がれば固まる性質があるため、排水口へ流すことはNGとなります。

注意

ちょっとした不注意により水漏れを発生させ後々大変な事態になる原因となります。

マンションの設備や建物によるマンションの水漏れ

マンションの水漏れの原因の二つ目はマンションの建物・設備の故障や老朽化による場合です。

外壁などにひび割れが発生し、放置しますと徐々に大きくなります。そこから雨水が浸水し住戸内に雨漏りを発生させる原因となります。

注意

排水管にも老朽化によるひび割れや管と管との接続部にずれが生じ、そこから水漏れが発生する場合もあります。

水は床や梁を横に伝っていくため水漏れ箇所を特定しにくいという厄介な性質を持ちます。

また給水管や排水管は壁や梁を貫通させて通す場合もあり、水漏れ箇所を探しにくい構造的な問題もあります。さらに工事会社による施工不良もありますので、本来ならば水漏れなど決して起こらない箇所で発生する場合もあります。

以上の原因により水漏れ箇所を特定するために要する時間が非常に長くなる場合もあります。

マンションの水漏れが多い箇所と原因

マンションの水漏れが多い箇所と原因は何ですか?

事務員

浜崎編集長

洗濯機や浴槽でのうっかりミスが意外と多くなります。他にも配管について見ていきます。

「うっかり水漏れさせてしまった!」の原因

水漏れの原因の中で、うっかりミスは意外と多くなります。例えば洗濯機を使用している場合、排水ホースが洗濯機パンの排水口から外れていることに気づかず、洗濯機の周辺が水浸しになる状態です。また浴槽に湯を張る際、湯を出し続けている状態を忘れて放置し、浴室や洗面所が水浸しになる状態です。

通常ならば浴槽から水が溢れても排水口で十分に排水できます。しかし日常の掃除を怠っていると、髪の毛やゴミが排水口を塞いでしまい排水できない事態となります。日常の掃除の有無も原因となります。

配管の劣化による水漏れ

水漏れの原因の中で配管の劣化によるものも多くなります。配管には給水管、給湯管、排水管の3種類があります。この3種類の配管は住戸内の専用部分については区分所有者の所有物となるため、専用部分の配管で発生した水漏れは区分所有者の責任となります。

MEMO

階下の住戸へ水漏れを生じさせた場合、水漏れを発生させた箇所の配管の所有者が修繕工事費用などを負担する責任を負います。

給水管の経年劣化による水漏れ

給水管は浴室や台所、洗面化粧台、洗濯機置き場、トイレに水道を供給する管となります。経年劣化や地震発生時などで、ひび割れや接続部にズレが生じ、それらが時間の経過と共に大きくなり、水漏れの原因となります。給水管の特徴は水圧がかかっているため、常に給水管の中は高圧の水で満たされています。

したがって給水管から水が漏れ始めますと勢いよく漏水するため、短時間のうちに大量の水が溜まることになります。水漏れ箇所を早く特定し止水処置を施すまで漏水が続きますので、被害が拡大し続けることになります。

給湯管の経年劣化による水漏れ

給湯管は玄関横にあるパイプスペース(PSと表記)に設置された給湯器から浴室や台所、洗面化粧台、洗濯機置き場に湯水を供給する管となります。給湯管も給水管と同様に、経年劣化や地震発生時に損傷することが原因で水漏れを発生させます。

排水管の経年劣化による水漏れ

排水管は浴室や台所、洗面化粧台、洗濯機置き場、トイレで使用した水や湯を排水する管となります。排水管も給水管や給湯管と同様に経年劣化や地震発生時に損傷することが原因で水漏れを発生させます。排水管には給水管や給湯管のように水圧はかからず、水や湯を使用した時だけ流れます。

注意

しかしトイレの排水管は汚物がともに流れますので漏水しますと悪臭も発生します。漏水の度に悪臭が続くことになりますので早く処置を施すことが肝要となります。

マンションの水漏れにかかる修繕費と応急処置について

水漏れの応急処置をするために、前もって準備をしておくものは何ですか?

事務員

浜崎編集長

バケツ・タオル・ゴム手袋・ドライバーがあれば、最低限度の応急処置ができます。

配管回りは1mごとに5,000円~10,000円前後

配管(給水管・給湯管・排水管)の劣化損傷による修繕工事費用は劣化損傷の範囲や長さにより違ってきます。実際の工事単価は、1mごとに5,000円~10,000円となります。

水漏れ箇所を調査・確認してもらうことにより、見積書を提示してもらうところから始めます。

天井の水漏れは150,000円~200,000円前後

上層階からの水漏れにより天井から水漏れがある場合、配管の修繕工事費用だけでなく、天井の構成材の修繕工事費用も必要になります。修繕工事費用は概ね150,000円~200,00円といったところです。

二重天井の場合には天井材にコンパネを使用しクロスを張る形態が多くなります。一旦水を含むと強度は減少し、シミが残るため使えなくなります。

直天井の場合には建物の上階床版(鉄筋コンクリート)部分にクロスを張る形態が多くなりますので、修繕工事費用は上記金額よりも安くなります。

応急処置はバケツとタオル、ゴム手袋を用意して対応する

水漏れが生じた場合、真っ先に行うことは止水して応急処置を施すことです。応急処置にはバケツやタオル、ゴム手袋、ドライバーがあれば、最低限度の処置を行うことができます。下表に使用法などをまとめます。

※1 止水栓:給水管内に蓋をすることにより、水の給水を遮断するシャッター機能をもつ栓です。ネジの形式が多くなります。

自分で住んでいるマンションで水漏れが起きたら?

自分が住んでいるマンションで水漏れが起きたらどうすればよいですか?

事務員

浜崎編集長

先ずは止水栓を閉めて止水します。その後、管理会社へ連絡をし、次に水道・電気会社、保険会社、迷惑をかけた方へ連絡・お詫びをします。

まずは管理会社に連絡する

水漏れを発見した場合、止水栓を閉めて止水した後にマンション管理会社へ連絡します。放置した状態にしますと他にも見えない箇所で水漏れが発生している場合があり、下層階の入居者への被害が拡大する可能性があります。そうなりますと後日に多額の損害賠償を請求される可能性がありますので注意が必要です。

また配管などの設備の老朽化が原因の場合には管理会社が修繕費用を負担することもあるので、必ず連絡を入れることが大切です。管理会社を通さずに水道会社へ直接連絡をし修理依頼をすると、修繕費用は全額自己負担になりかねないため、必ず先に管理会社へ連絡するようにします。

いざという時のために日頃から管理会社の連絡先を確認するようにします。特に休日や夜間の緊急連絡先の確認が大切です。通常の連絡先では繋がらない場合が多いからです。

水道・電気会社へ連絡する

管理会社へ連絡した後に水道・電気会社へ連絡します。自宅に来てもらい水漏れの原因や他の箇所も水漏れが発生していないかを確認してもらいます。また水漏れによる漏電がないかも確認する必要があります。

自宅の電気配線もですが下層階の入居者宅も念のために確認する必要があります。少なくとも感電しない対策が必要になります。水道・電気会社から調査・診断結果を書類にして受け取りますと、後日において管理会社や保険会社へ証拠書類として利用できます。その書類により管理会社から負担金、保険会社から保険金が出やすくなりますので、必ず書類をもらうようにします。

保険会社への連絡も忘れずに

火災保険などの損害保険に加入している場合、その保険会社へ連絡することも大切です。水漏れによる被害額は火災保険でカバーされている場合があるからです。例えば自宅の床材や壁材が水漏れにより損傷を受けて交換せざるを得ない場合には通常保険の対象となります。

また下層階へも水漏れし天井・壁・床や家財などにも被害を及ぼした場合には、通常保険の対象となります。いずれにしても保険会社から保険金を出してもらう場合、水漏れ被害箇所や水漏れ原因箇所の写真を撮っておくことが非常に大切になるので、忘れないことが肝要です。

注意

ただし保険会社により保険支給条件が異なり、保険金が出ない場合もありますので事前の確認が必要になります。

被害にあった人たちへお詫び

管理会社や水道・電気会社、保険会社への連絡が終わったら、下層階へ被害が及んでいないか確認する必要があります。すぐに対処し被害を受けている人が気づく前に当方が先に被害の確認をするために伺えば、心象的にも良くなりトラブルも小さく収めることができます。

被害を及ぼしていることが確認できれば真っ先にお詫びをすれば、被害請求も小さく収める可能性があります。保険会社とも確認を取り後日において改めて判明する水漏れ被害に対しても補償する旨を伝えると、被害者を安心させることができます。

自分が住んでいるマンションの水漏れによる被害者になったら?

自分が水漏れによる被害者になった場合、どうすれば良いのですか?

事務員

浜崎編集長

水漏れ原因を特定し原因者を特定することができたら損害賠償請求を行います。管理組合に協力してもらい、穏便に事が進むように心がけます。その際、専門家の見解を入手して説明すると説得力が生まれ、有利に交渉ができます。

マンションで水漏れを起こした相手と原因の特定

上層階からの水漏れにより自分のマンションが被害を受けた場合、すぐに上層階の水漏れを起こしている入居者へ連絡をして、先ず止水処置を施す依頼をします。そうしないと、いつまでも水漏れが続くからです。また管理会社や管理組合へも連絡をし、水漏れ原因者が管理会社へ連絡していない場合に備えます。

次に原因を特定して、それぞれが加入している保険により被害額を補償対象にしてくれるか否かの確認を行います。補償されないようであれば修繕工事費を水道業者や電気会社へ見積依頼し、その見積書を水漏れ原因者へ渡して直接請求を行います。同時に管理組合へも補償・請求状況を連絡し、客観的な立場から見てもらうようにします。

調査を拒否された場合は管理組合を通じて交渉する

上層階からの水漏れが原因であることが明確な場合でも、必ずしも直上階の入居者とは限りません。そのため先ずは直上階の入居者に連絡をして、原因を特定する調査をする必要があります。しかし調査を断られた場合、管理組合に連絡をして水漏れ原因特定のための調査依頼をしてもらいます。

その場合、地方裁判所による「正当な理由が無い限り、床下の水漏れ調査を拒むことはできない」という判例もあることを伝えていただくと調査に応じる効果があります。

注意

その際の注意点は当方が感情的になりますと、相手も感情的になり特定調査が一向に進まなくなりますので、穏便に進めていくことが大切です。

水漏れの原因が共用部分か専用部分かで賠償請求先が変わる

水漏れの原因が特定できますと、その箇所が共用部分か専用部分かで損害賠償請求先が異なります。原因箇所が専用部分である場合、その原因箇所を所有する区分所有者(入居者)が責任を取ることになり、損害賠償相手先となります。一方、原因箇所が共用部分である場合、管理組合が責任を取ることになり、損害賠償請求先となります。

原因箇所が配管の場合、床版・梁・柱などの建築構造上の問題も関りますので、管理会社や建築・設備の専門家の見解が必要になる場合もあります。場合によってはマンション建築会社の施工不良が原因となることもあり、その際には建築会社が責任を取ることになります。

MEMO

専門家による見極めが鍵を握ります。

専門家による意見を聞くことも忘れずに!

建築や設備、法律に関する専門家の見解を聞くことは後々事案を有利に進めていくためにも忘れてはならないことです。管理会社や保険会社にも争いごとに備えて上記専門家を準備している場合もありますので、気兼ねなく相談し、専門家としての見解を仰ぐことが大切です。

一方、専門家を抱えていなければ区市町村の法律相談窓口やマンションの様々な問題を扱うWEBサイト(以下参考サイト)もありますので、それらを活用してみるのも良策といえます。

専門家の見解が出揃えば非常に説得力のある資料を作成することができ相手を納得させ易くなりますので、躊躇せずに試みることが大切です。

参考:弁護士ドットコム|水漏れの法律相談

参考:不動産トラブル弁護士ガイド|水漏れ・漏水・雨漏りのトラブルの対処方法

まとめ

以上、マンションの水漏れ原因や修繕費、応急処置、水漏れを起こした側・受けた側に立った場合の対策について解説しました。

冒頭でも記しましたように水漏れが発生した場合、水漏れ箇所の特定と関係者への素早い対応が損害を小さく抑え保険金を出す秘訣となります。これらが後手に回りますと、損害額が膨らみ保険金も当てにできない状況に陥ります。

また水漏れを自身が起こした場合や受けた場合でも相手との交渉が困難になった際、建築・設備・法律などの専門家の見解が有利に導いてくれることもありますので、必ず取り入れるように心がけると良いです。

水漏れが発生しても落ち着いてスムースに対処し、管理会社や管理組合を仲立ちとして、相手と穏便に交渉を進められることをお勧めいたします。