- 地盤改良工事とは、建物を建築する予定地の地盤が弱い場合などに安全な強度にするための工事。
- ハウスメーカーごとに地盤調査の結果が異なるため、複数の業者に見積もり依頼するのが良い。
- 軟弱になりやすい場所を避けることで、軟弱な地盤を回避できる可能性は上がる。
新築で家を建てる時、準備段階として「地盤改良工事」が必要になる場合があります。そもそも地盤改良工事とはどのようなものなのか、詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では地盤改良工事について、概要や種類、費用相場といった基本的なポイントについてご紹介します。また、地盤改良工事を実施しなかった場合の弊害や、工事が不要な土地を探す方法についても解説しています。
これから新築で家を建てようと検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
地盤改良工事とは
地盤改良工事とは、建物を建築する予定地の地盤が弱い場合などに、安全な強度にするための工事です。地盤は住宅の「基礎」となる重要な部分であるため、建物を支えられる適切な状態にする必要があります。地盤が緩いと、地盤沈下や倒壊の危険性が高くなるので、地盤改良工事は非常に重要です。
ちなみに、地盤改良工事が必要な地盤であるかどうかは、建物を支える強さを表す「地耐力(20~30KN/㎡以下だと工事が必要)」と、周辺状況などの調査で導き出した情報をもとに判断されます。
事務員
浜崎編集長
地盤改良工事の種類と費用相場
地盤改良工事には、表層改良工法・柱状改良工法・小口径鋼管杭工法の3種類があります。ここでは、地盤改良工事の種類別の特徴と、それぞれの費用相場について詳しくご紹介します。
表層改良工法
表層改良工法とは、地表周辺をセメントで固めて強度を上げる地盤改良工事です。地盤の弱い部分が地表から2メートルまでである場合に導入できます。
表層改良工法は、施工する深度が浅ければ比較的安価で実施できる点や、地中に石などが混入していても実施できるメリットがあります。一方で、勾配のきつい土地や地下水位が高い土地では実施できません。
一般的な戸建て住宅の場合、1坪あたりおよそ2万円程度で行えます。また、土地の広さによって多少変動はあるものの、1〜2日ほどの短期で完了するのも特徴です。
柱状改良工法
柱状改良工法とは、改良杭と呼ばれる地盤を円柱状に固めたものを使用して、建物を支える地盤改良工事です。地盤の弱い部分の深さが地表から2〜8メートルの場合は、柱状改良工法が実施されます。
柱状改良工法は、強固な地盤である「支持層」がなくても実施できるのが特徴です。一方で、実施後の原状復帰が難しいというデメリットがあります。
そのため、将来的に土地を売却したい場合に、柱状改良工法を実施したことがネックになる可能性があります。柱状改良工法の費用は1坪およそ5万円ほど、工期はおよそ2〜3日です。
小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法とは、鋼管を使用して建物を地中から支える地盤改良工事です。上述した2つの工法とは大きく異なり、地中30メートルまでの補強ができます。より良好な地盤に到達できるまで実施できるのが、小口径鋼管杭工法の特徴です。
小口径鋼管杭工法は、実施後の地盤強度が表層改良工法・柱状改良工法よりも高いというメリットがあります。また、高さのある建物にも対応可能です。一方で、支持層がないと実施できない点や、工事中の騒音がデメリットになります。
小口径鋼管杭工法の費用相場は、1坪5〜7万円とほか2つの工法よりは少し高め、後期は1~2日ほどです。
地盤調査の費用相場
戸建て住宅を建設する際、地盤調査に「スウェーデン式サウンディング試験」というものが用いられます。ここでは、スウェーデン式サウンディング試験の概要や費用相場についてご紹介します。
スウェーデン式サウンディング試験を実施する際の費用相場は、およそ5万円です。一般的な戸建て住宅の場合であれば5〜10万円、大きめの土地の場合であれば20万円ほどかかる場合もあります。
スウェーデン式サウンディング試験とは、先端がスクリュー状の棒を回転させ、地面に貫入させて地盤の状態を把握するための調査です。「SS試験」や「SWS試験」などと呼ばれることもあります。
25センチ貫入させるのに必要とする回転数を繰り返し記録し、およそ10メートルほどの深度まで調査ができます。
地盤改良工事をしないとどんな不具合が起こる?
地盤改良工事は、法律上義務があるというわけではありませんが、実施しないことでさまざまな不具合が予想されます。
- 外壁のひび割れが起こる
- 資産価値が下がる
- 安全面・健康面にかかわる可能性がある
- 万が一の際にかかる補修費が高額になる
- ドア・窓が開きにくくなる
地盤改良工事をしないと地盤の状態を把握できないため、家の重さに地盤が耐えられないという事態に発展しかねません。家自体の耐震性を高い基準にしても、地盤が安定していなければ大きな地震で家が傾く可能性が高くなります。
事務員
浜崎編集長
地盤改良工事が不要な土地を探す方法
地盤調査をしたうえで、土地によっては地盤改良工事が不要だと判断される場合もあります。
地盤改良工事が不要な土地を探す方法は、主に以下の2点です。
- 調査結果や近隣の状況を確認
- 軟弱になりやすい土地を避ける
ここでは、それぞれの方法について詳しくご紹介します。
調査結果や近隣の状況を確認
地域によっては、国土交通省の公開している「国土地盤情報検索サイト」などで、地盤調査の結果が公開されています。その土地の地盤についてもっとも信頼性の高い情報とも言えるため、過去の調査実績があるかどうか確認しておきましょう。近隣住民の方に聞き込みをするだけでも、ある程度の情報は得られます。
また、土地によっては液状化が進んでいる場合があります。液状化とは、地震が発生した際に地面が液体状になることで、建物の傾きや沈下につながる現象です。過去に大きな地震があった土地などで発生しやすいため、過去の地震情報などを調べるのをおすすめします。
家を建てようと検討している土地に液状化の恐れがないか、こちらも国道交通省が公開している「ハザードマップポータルサイト」などを活用して確認することも大切です。
軟弱化しやすい土地を避ける
地盤の弱い土地の特徴を押さえて、該当する土地を避けて建築するというのも大切です。いわゆる「軟弱地盤」と言われる土地には、以下の条件が当てはまります。
- 川・海などの水源が近い
- 過去に津波などの水害が多く起こっていた
- 細かい砂が詰まった地盤(砂質地盤)
- 標高が低い
- 傾斜地
- 埋立地
上記の土地は地盤が弱くなりやすいため、地盤改良工事が必要になる可能性が高いです。
地盤改良工事の費用を抑えるポイント
ここまで地盤改良工事の費用相場について見てきましたが、場合によっては相場以上に高くなってしまうことがあります。土地によっては100万円以上かかることも。そこで気になるのが、地盤改良工事の費用は抑えられるのかどうかです。
主に、以下のポイントを把握することで、費用の削減につながります。
- 複数の業者に見積もりをもらう
- あらかじめ地盤改良工事費用も予算に含めて考える
ここでは、地盤改良工事費用を抑えるポイントについてそれぞれ解説します。
複数の業者に見積もりをもらう
地盤改良工事につながる地盤調査は、ハウスメーカーに依頼することが多いです。建築費用と同様、ハウスメーカーごとに地盤調査の結果が異なるため、地盤改良工事にかかる費用にも違いが出ます。
事務員
浜崎編集長
ハウスメーカーごとに地盤調査の結果が異なる理由は、以下のようなものがあります。
- ハウスメーカーによってどのような地盤改良工事が必要かの判断が異なる
- 地盤調査を実施する人の技術・熟練度で差が出る
- 地盤改良工事をより上のレベルで実施したいと考えるハウスメーカーもある
- ハウスメーカーごとに地盤改良工事を独自で開発している可能性がある
上記の理由を想定し、あらかじめ複数のハウスメーカーに依頼することをおすすめします。複数社に依頼することで費用を比較できるため、安さにこだわりたい方にとっては必須です。
あらかじめ地盤改良工事費用も予算に含めて考える
家づくりの予算を組む段階で、地盤改良工事が必要になることを前提に考えます。地盤改良工事に割く予算をあらかじめ用意することで、家づくりに使用するトータルの費用をハウスメーカーに伝えられます。そうすれば、地盤改良工事が原因になる予算オーバーを防止できます。
事務員
浜崎編集長
家づくりにかけるトータルの予算 | 3000万円 |
地盤改良工事に割ける予算 | 150万円 |
上記の金額で想定した場合、土地代や建築費用を含めた家づくりには2850万円の予算を割けます。ここでポイントになるのが、地盤改良工事に多めの予算を割いているということです。
地盤改良工事の予算を多めにすることで、予算オーバーを避けられます。また、工事費用が想定より安かった場合、浮いたお金を家づくりに回せるのもメリットです。家づくりの予算はそのままで、浮いたお金を家具の購入などに充てるのもおすすめです。
まとめ
今回は、新築で家を建てる際に行う地盤改良工事について、概要や種類、費用相場を紹介しました。地盤改良工事には、表層改良工法・柱状改良工法・小口径鋼管杭工法の3種類があり、それぞれに特徴と費用相場が異なります。
軟弱な地盤かどうかは調査してみないとわかりませんが、今回紹介した軟弱になりやすい場所を避けることで、軟弱な地盤を回避できる可能性は上がります。
事務員
浜崎編集長