- マンションには地震に強い3種類の構造があり、「旧耐震基準」と「新耐震基準」の2つのタイプがある
- 地震に強いものの内部はかなり大きく揺れる恐れがあるため、部屋の中の地震対策は十分にしておくことが大切
- マンション住民は避難所よりも在宅避難が推奨されている地域もある
地震大国の日本において、住まいの耐久性はとても重要。
特にマンションに住んでいる方は、本当に大地震が来ても崩れないのかを事前に確認しておきたい方も多いはずです。
そこで今回は、マンションが地震に強いと言われるメカニズムや構造の仕組みについて徹底解説!
マンションで地震が来たときの対策についても詳しくご紹介するので、マンションに住んでいる方や引っ越す予定の方は、万が一に備えてぜひチェックしておいてくださいね。
マンションは3つの対策で地震に強くなっている
地震が多い日本では、マンションを建設する時にしっかりと地震対策を考えた構造で建設されています。
例えば、現在マンションを建てる際に守らなければいけない新耐震基準では、震度6〜7の大地震でも倒壊しない構造にすることが義務付けられています。
マンションの耐震基準は下記の通りです。
旧耐震基準 | 新耐震基準 | |
期間 | 〜1981年5月31日 | 1981年6月1日〜 |
強度 | ・震度5の地震で倒壊しない | ・震度5の地震でほとんど損傷がない ・震度6〜7の地震で倒壊しない |
どの時期にマンションの建築申請を提出しているかによって採用されている基準が異なるので、ぜひご確認ください。
マンションではこれらの耐震基準を満たすために、「耐震構造」「制震構造」「免震構造」の3つの構造で地震対策をしています。
浜崎編集長
事務員
強度そのものを強くするための耐震構造
マンションの軸となる柱や梁を頑丈にすることで、地震に耐えられる強度を持った構造が「耐震構造」です。
現在日本にあるマンションはこの耐震構造が導入されていることが多く、耐震構造のマンションの特徴は下記の通りです。
構造:柱や梁を太くして強度を上げることで、建物自体を頑丈にする
揺れ方:階数が上がるほど大きく揺れる
建物自体を頑丈にしている耐震構造は、地震の揺れを軽減したり抑えたりする機能がないため、地震に耐えて壊れにくくすることはできますが、揺れないようにすることはできません。
そのため、地震の揺れがダイレクトに伝わるので、3つの構造の中では一番揺れが大きいことがデメリット。
階数が上がるほど大きく揺れることから、特に高層階では小さな地震でも棚が倒壊したり、荷物が散乱したりする可能性があります。
浜崎編集長
揺れの伝わりを低減する免震構造
地面とマンションの間に、積層ゴムや免振アイソレーターなどの免震装置を挟むことで、揺れを逃がして伝わりにくくするのが「免震構造」です。
地面とマンションを切り離すことにより、地震の揺れを最も軽減できることから最新の高層マンションでは導入されることが増えています。
構造:マンションと地面の間にゴムなどの免震装置を設置
揺れ方:地面と建物を切り離すことで、揺れを軽減できる
3つの構造の中で最も地震の揺れを軽減できるので、建物への被害を少なくできるのが免震構造の特徴です。
しかし、建設コストやメンテナンス費が高いというデメリットも。
定期的なメンテナンスも必要となるため、他の構造よりも地震対策への予算がかかり、現状は大型マンションや高層ビルなどでしか採用できていません。
浜崎編集長
揺れの衝撃を和らげる制震構造
マンションの骨組みの中に制震できる部材を設置することによって、揺れの衝撃を抑制できる構造が「制震構造」です。
建物自体を頑丈にする耐震構造と併用されることも多く、階数が上がるほどよく揺れるという特徴は同じになっています。
しかし、制震部材が揺れを吸収してくれるので、耐震構造よりは建物の揺れを抑えられ、地震による室内の被害も少なくなります。
構造:揺れを軽減する制震部材をマンション内部に設置
揺れ方:制震部材が揺れを吸収するため、柱などへのダメージが少ない
制震部材には、マンションの骨組みにつけるおもりやダンパー(壁や柱の接合部分に斜めにつけるもの)が組み込まれることが多いです。
地震の揺れを吸収してくれる部材がついているため、マンションを支える柱や梁といった重要部分の損傷を最小限に抑えられます。
浜崎編集長
実際に地震が起きた時はどうすればいいの?
マンションでは、地震に強い3つの構造が採用されていることが分かりましたが、「実際に地震が起きたときの対処法が分からない」という方も多いですよね?
実際に地震が起きてしまうと、交通麻痺・停電などによって生活必需品の調達ですら困難になることも。
誰もが自分のことで精一杯になってしまうため、自分の身は自分で守る準備をしておくことが大切です。
浜崎編集長
事務員
机の下などの身を守れる場所で揺れがおさまるのを待つ
揺れが大きいマンションでは、家具や家電の倒壊の危険性が高まるため、まずは身を守れる机の下に隠れてください。
揺れが大きくなり始めてからでは移動する余裕がなくなるので、最初は小さな地震でも毎回安全な場所に避難するクセをつけておくことをおすすめします。
特にマンションの高層階は、新耐震基準になっていても揺れが大きいケースが多め。
天井からの落下物や倒れてきた家具に挟まれて動けなくなったとしても、停電でエレベーターが停まった場合はマンション高層階への救助が遅れる可能性があります。
浜崎編集長
揺れが落ち着いたらガスの元栓など火の元をチェックする
揺れが落ち着いたタイミングで、過去の地震火災でも火元になることが多かったキッチン付近のガスコンロは元栓を閉めておきます。
さらに、火災の原因になり得る下記の場所はご確認ください。
- ガスコンロ
- 仏壇の線香
- ストーブ
- 電化製品の放電
「仏壇の線香が倒れて室内に火が燃え移っていないか」や「ストーブ等の暖房器具に布類が接触していないか」をチェックする必要があります。
また、最近増えているのが「通電火災」と呼ばれる火災。電化製品のスイッチを入れっぱなしにしたまま、停電になってしまい、通電して電力が復旧した際に火災が起きてしまうケースです。
事務員
避難の案内が出るまでは扉を開けて避難経路を確保して待機する
大地震が起きると焦って避難しようとする方が多いですが、街の状況がわからないまま外にでるのはかえって危険です。
耐震基準を満たしているマンションであれば、安全性が高い建物が多いので、まずは落ち着いて待機しながら、現在の周辺状況を把握する必要があります。
- 地域のアナウンス
- ラジオ
- SNSなどのニュース
- テレビ
テレビやネットが一番手軽に情報を得られますが、ご自身のマンション近辺の情報が届けられるとは限りません。
地域放送や地域のラジオなど、できる限り狭い範囲の情報を得られる媒体を事前に調べておくことをおすすめします。
浜崎編集長
避難できる状況になったあと、速やかに避難場所へ向かう
現在の周辺状況についての情報収集を行いつつ、安全な避難所が開設されたことが確定した段階で、すぐに避難場所に向かいます。
避難所に向かう時は、エレベーターが途中で停止してしまう可能性があるため、できる限り階段で移動してください。
マンション独自の避難場所が作られていることもあるので、より安全な場所へ避難することが大切です。
なお、避難所の人数が溢れる可能性が高い都心部では、マンション住民は「在宅避難」と定められていることも。
火災や倒壊の恐れがない場合は、周りの状況をみながら自宅で安全を確保してください。
事務員
地震に対して普段から備えておくべきこと
実際に地震が起こってしまったときに取るべき行動をご紹介しましたが、地震が起きてからではなく事前に準備できる地震対策もあります。
急に襲ってくる地震の際には、誰もが落ち着いて行動できないもの。被害を最小限に抑えるためにも、事前準備をしておくことが非常に重要です。
地震が来てから焦っていてはすでに手遅れになることもあるので、家族や自分の命を守るためにも、後回しにせず今できる対策をしておいてくださいね。
浜崎編集長
事務員
避難用の備品をまとめて持ち出せるようにしておく
非常用持ち出しバッグを用意して、避難の際には必要な備品をまとめて持ち出せるように準備しておいてください。
地震の避難で必要とされている備品は下記の通り。
食料や生活必需品は1週間分の備蓄が推奨されています。
食料 | ご飯、飲料水、非常食(ビスケット、乾パン、レトルト食品、お菓子) |
日用品 | トイレットペーパー、生理用品、ラップ、ゴミ袋、ティッシュ、生活用水 |
貴重品 | 現金、印鑑、保険証や免許証のコピー、通帳や財産証明書類 |
救急用品 | 常備薬、消毒液、ばんそうこう、ガーゼ |
避難用品 | ヘルメット、マスク、軍手、防災ずきん、スリッパ |
衣類 | 下着、毛布、予備の服 |
洗面用具 | タオル、石鹸、メガネ、コンタクト、歯ブラシ |
その他 | モバイルバッテリー、携帯電話の充電器、予備電池、乳児のオムツ、ミルク |
玄関などの避難経路になる場所に置くことはもちろん、必ず避難時にすぐ取り出せる位置に収納しておいてください。
家具が倒れて取り出せなくなる可能性もあるので、可能であれば、玄関・リビング・キッチン・寝室など分散して保管するのがおすすめです。
浜崎編集長
家具や家電が倒れないように固定しておく
マンション自体の損傷は少なくても、マンションの室内は大きく揺れます。
例えば、マンションの建物が無事でも中の家具や家電が倒れて怪我をしたり、ドアが開けられなくなったりする危険性もあるので、家具類は固定しておくのがおすすめです。
- つっぱり棒
- 壁固定器具
- 転倒防止粘着シート
- 本や食器の滑り止め
- ガラス飛散防止フィルム
つっぱり棒だと見た目が気になる方が多いですが、T字型の壁と家具を固定するタイプなら見た目を損なうことなく固定可能です。
固定器具にダンパー機能がついていて、家具本体の揺れを軽減してくれるものもあります。
さらに、本や食器、ガラスの散乱を防止するフィルムやテープも販売されているので、大きな家具の転倒防止だけでなく、家中のものが散乱する被害も未然に防げます。
避難場所の確認や経路を知っておく
マンションで地震があったときに「自分がどこに避難すべきか」「マンションに避難場所はあるか」などを確認しておく必要があります。
引越し後の地域に慣れていない時期に、散策も兼ねて避難場所まで下見にいくことがおすすめです。
- 街中の避難経路マップ
- 各市町村の防災ホームページ
街中に避難経路が掲載されたマップの看板が設置されていることも多いので、ぜひご確認ください。
さらに、住んでいる地域の防災ホームページに、ハザードマップや防災ガイドマップが掲載されているので、事前に印刷して避難グッズの中にいれておくと便利です。
地震保険に加入しておく
大地震が起きてからしばらくは、マンションに損傷がなかったとしても、今まで通りの生活を取り戻すのが難しい可能性が高いです。
そこで、火災保険とセットで加入できる「地震保険」に入っておくと、地震後の生活を立て直すための資金にできます。※地震による火災は火災保険の対象外
地震保険とは?
地震による被災者の生活安定に寄与することを目的として、政府と民間の共同で建物や家財の損害を補償している保険のこと。
居住用の建物とその建物の中にある家財が対象となりますが、自動車や30万円以上の宝石などは対象外です。
マンションに住んでいても油断してはいけないポイント
マンションは地震に強く比較的安全性が高いことを解説してきましたが、全てのマンションが安全だと言い切ることはできません。
何が起こるか分からない自然災害だからこそ、想定もしていなかった出来事が起こる可能性もあるので、地震で倒壊しないマンションでもしっかりと地震対策をしておくことが大切です。
さらに、地震はどこで何時に起きるか分からないので、買い物中・仕事中・帰宅中などどこにいても家族全員が正しい判断ができる準備をしておく必要があります。
浜崎編集長
地震が起きても絶対に安心できるわけでないため早めの避難を行う
マンションが倒壊していなくても、想定以上にマンションへのダメージが大きい可能性があるため、そのまま中にいるのが危険と判断されたら早めに避難することをおすすめします。
揺れがおさまったあとは、余震に気をつけながら速やかに避難することが大切です。
人が多い都心部では、避難所のキャパオーバーで危険性が高い木造住宅住民が優先される可能性があるので、マンションの状況を見極めながら慎重に判断してください。
事務員
耐震制度の基準によっては不安な物件もある
記事の冒頭でも触れましたが、マンションは「旧耐震基準」か「新耐震基準」で建てられています。
1981年6月1日以降(新耐震基準)→震度6〜7でも倒壊しない、震度5程度はほとんど損傷しない
1981年5月31日まで(旧耐震基準)→震度5で倒壊しないが、震度6〜7程度の地震に関する規定はなし
旧耐震基準だからといって倒壊するわけではありませんが、気になる方はチェックすることをおすすめします。
浜崎編集長
まとめ
マンションが地震に強いメカニズムや地震がきたときの対処法をご紹介してきましたが、まずは普段から地震に備える意識を持つことが大切です。
突然訪れる地震は、どれだけ準備をしていても焦ってしまうもの。だからこそ、少しでも不安を取り除けるように、今できる限りの対策は全て行っておくことをおすすめします。
- マンションには地震に強い3種類の構造がある
- 「旧耐震基準」と「新耐震基準」のマンションがある
- 独自の避難スペースがある場合も
- マンション住民は避難所よりも在宅避難が推奨されている地域もある
倒壊する危険性が低く地震に強いマンションですが、マンション内部(特に高層階)はかなり大きく揺れる恐れがあるため、部屋の中の地震対策は十分にしておく必要があります。
事務員
浜崎編集長