- 躯体部分の寿命は50年と言われている
- 寿命の長いマンションを選ぶポイントは長期修繕計画の内容・修繕積立金の状況
- 中古マンションの購入を検討している場合築20年~25年がオススメ
マンションの購入を検討している人の中には、「マンションには何年住めるのか?」と思う人もいるでしょう。マンションが住める年数によって、購入するマンションの築年数の上限を決める人もいると思います。
この問いに対しての明確な答えはありませんが、マンションの寿命は何年か?実際の建て替え状況はどのようになっているか?を知ることで、どのくらいの期間マンションに住めるのかを予測することは可能です。
小島社長
マンションの寿命は何年か?
マンションの寿命はマンションごとに違います。また、「寿命」といっても、本当に住めなくなるまでを寿命というのか、明らかに劣化してきている状態を寿命というのかでも年数は異なってくるでしょう。
そこでこの記事では、マンションの寿命を「住むのに適した住居でなくなった状態」と定義します。まずは、国土交通省が出典している資料で、以下の項目に分けてマンションの寿命をみていきましょう。
- 躯体部分
- 設備部分
事務員
小島社長
躯体部分
結論からいうと、躯体部分は50年以上の寿命があります。躯体部分とは、基礎部分や外壁など、マンションでは主に鉄筋コンクリートが使われている部分のことです。
ただし、国交省が定めているように、以下のようなメンテナンスは必要です。
このように、メンテナンスによって寿命は変わるものの、躯体部分は鉄筋コンクリート造なので、比較的寿命は長いといえるでしょう。
設備部分
次に設備部分の寿命について解説します。国交省の資料によると、設備面での長期修繕計画のイメージは以下の通りです。
特に、上記の「交換」がその設備の寿命ということができます。給排水管なら26~30年、給湯器は11年~15年、浴室やキッチンも部分的に交換する必要があります。
いくら躯体部分が50年以上もったとしても、上記の設備部分に不具合が起これば、その時点でそのマンションの寿命といえるでしょう。
つまり、躯体部分だけでなく寿命の短い設備部分にも注目し、その部分をきちんと整備しているかがマンションの寿命を左右します。
RC造の寿命は100年超えという研究結果も
上述したようにマンションの躯体部分は50年以上の寿命がありますが、実はRC造の寿命は100年以上という研究結果もあります。これは国土交通省の報告書「中古住宅流通促進・活用に関する研究会」に記載されており、その理由としては以下が挙げられています。
- 最近建築されている住宅は性能が向上している
- アメリカやイギリスでは木造住宅でも100年以上もっている
- 基礎や躯体に関しても大規模修繕で一部更新することができる
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小島社長
税法の定め上の耐用年数は47年
ただし税法で定められている耐用年数は47年なので、たとえば金融機関の担保評価では、この耐用年数が重視される傾向にあります。
しかし次項で解説するように築47年以上のマンションは日本にも存在しますし、上述したようにアメリカでは築100年を超える木造住宅も珍しくありません。
現在のマンション状況をチェックしてみる
前項までで、マンションの躯体部分と設備部分の寿命の目安、およびマンションの寿命にはメンテナンスが重要であることが分かったと思います。次に、実際に現在のマンションの建て替え状況について、以下を見ていきましょう。
- マンションストック数
- 築古マンション数
- 建て替え状況
- 修繕金の徴収状況
事務員
小島社長
マンションストック数
国土交通省の資料によると、令和2年末時点でマンションのストック総数は約675万戸です。
引用:国土交通省
国勢調査によると、1世帯平均2.33人なので、この数字を掛けると約1,573万人の人がマンションに住んでいるという計算(国民の1割超)になります。地方で一軒家が多いことを想定し、都内や地方都市だけをピックアップすると、マンションの居住率はもっと高くなると思われます。
築古マンション数
国土交通省によりますと、築30年以上のいわゆる「築古マンション」に分類される物件数は以下の通りです。
項目 | 2020年末 | 2025年末 | 2030年末 | 2040年末 |
築30年超 | 128.6万戸 | 154.4万戸 | 172.7万戸 | 173.7万戸 |
築40年超 | 87.5万戸 | 105.6万戸 | 128.6万戸 | 172.7万戸 |
築50年超 | 15.8万戸 | 53.5万戸 | 103.3万戸 | 231.9万戸 |
合計 | 231.9万戸 | 313.5万戸 | 404.6万戸 | 578.3万戸 |
引用:国土交通省
2025年末以降は予測ではありますが、少なくとも2020年末時点で全マンションの20%以上が築30年を経過しています。そして、築40年以上は13%以上存在し、築50年以上も2%存在しています。
小島社長
建て替え状況
さて、このように築30年以上の築古マンションは意外と多いのですが、次に以下の点を知っておきましょう。
- マンションによる建て替え意思
- 実際に建て替えているマンション数
マンションによる建て替え意思
マンションの建て替えは、管理組合という入居者全員で組成される組合の意志で決まります。そんな管理組合に行ったアンケートによると、「建て替えや修繕したい」と思っているマンションの割合は以下の通りです。
建て替えや修繕、改修の方向性が出た | 21.9% |
議論はしたが方向性が出ていない | 16.6% |
議論していない | 56.3% |
仮に、議論をしたマンションだけに絞ると、「建て替えや修繕、改修の方向性が出た」マンションは約57%にのぼるということです。
実際に建て替えているマンション数
そして、実際に建て替えているマンション数を見てみると、2019年4月1日時点で以下の通りです。
工事完了済み | 244棟 |
実施中 | 23棟 |
実施準備中 | 20棟 |
このように、建て替え準備中のマンションを入れても、わずか287棟しかありません。上述したように、現在日本にはマンションが657万戸あるので、仮に1棟50戸で計算すると13万棟です。その棟数を前提にすると、たったの0.004%しか建て替えが完了していないということです。築30年超に絞っても、わずか0.6%になります。
もちろん、建て替えの意志が全くないのであれば良いですが、前項のように建て替えの方向性の話は出ているので、実際に建て替えたいけど話が進まないというマンションが多いと考えられます。
小島社長
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寿命の長いマンションとは?
小島社長
事務員
このように、マンションの寿命は「○○年」と一概にはいえませんが、以下をチェックすることで寿命の長いマンションを判断することは可能です。
- 長期修繕計画の年数と項目
- 修繕積立金の積み立て状況
- 新耐震か旧耐震か?
小島社長
長期修繕計画の年数と項目
マンションの寿命を予測するために、まず長期修繕計画の以下の点を確認しましょう。
- 30年スパンで作成しているか
- 細かい項目にも言及しているか
長期修繕計画は一般的に20年~30年スパンで策定されていますが、30年スパンで策定している方が良いです。なぜなら、30年スパンでエレベーターや機械式駐車場の入れ替え工事が発生するからです。つまり、20年や25年の長期修繕計画だと、これらの費用を読み込んでない計画ということです。
また、「細かい項目に言及しているか?」については、国土交通省が出典している長期修繕計画のフォーマットと見比べましょう。特に築古マンションは、修繕部位や数量、単価などを計画に盛り込んでいないことも多く、それだと精度の低い計画になってしまいます。
修繕積立金の積み立て状況
国土交通省の資料によると、実は修繕積立金が不足しているマンションは34.8%にのぼります。いくら長期修繕計画がしっかりしていても、修繕積立金が不足していれば十分な修繕はできません。そうなると、結果的にメンテナンスが不十分で、寿命の短いマンションになってしまうということです。ただし、修繕積立金の状況はマンション内の機密事項なので、管理組合員(入居者)しか知り得ません。
そのため、マンション購入時は仲介会社経由で、売主に確認してもらいましょう。過去に管理組合総会で修繕積立金不足による積立金増額案が出ていたか?が分かれば不足額や理由が分かります。
中古マンションの購入は築20年~25年がおすすめ!
最後に中古マンションの購入は築20年~25年がおすすめという理由である以下について解説していきます。
- 価格下落率が高い
- 新耐震物件
価格下落率が高い
1つ目の理由は価格下落率が高いからです。というのもレインズのデータによると、マンション価格は築20年を境に下落率が大きくなる傾向にあります。つまり買い手側からすると築20年を過ぎたくらいのマンションが「割安」なマンションということです。
新耐震物件
次に築20年~25年の物件は新耐震物件であるという点です。新耐震物件とは建築基準法が大きく改正された1981年6月以降に建築確認が下りている建物のことであり、それ以前は旧耐震物件といいます。新耐震は震度6~7程度の地震に対して「倒壊しないレベル」としていますが、旧耐震はそもそも震度6~7の地震を想定していません。そのため、この点を加味すると新耐震基準をクリアしている築20年~25年のマンションが良いといえるでしょう。
小島社長
まとめ
このように、マンションの寿命が何年かは明言することはできません。また、躯体と設備によって寿命も違います。ただ1ついえるのは、躯体も設備もメンテナンスが重要ということです。