建築条件付き土地は違法?トラブルや注意点まとめ【弁護士が解説】

この記事のざっくりしたポイント
  1. 「建築条件付き土地」は違法ではない
  2. 建築条件付き土地は人によって向き不向きがある取引と言える
  3. 建築条件付き土地は一から住宅を設計することができる

不動産購入で土地を探す際に「建築条件付き土地」という言葉を目にしたことはありませんか?

「建築条件付き土地」とは「売建住宅」とも呼ばれ「一定期間内に指定の建設業者(施工会社)で家を建てる」という条件のもと購入できる土地を指します。

すなわち、土地の売買契約を結んでから一定期間内に住宅の間取りや仕様を決め、指定された施工会社と請負契約を結ぶ必要があるというものです。

 

これはどういう取引になるんですか?

 
 

この取引は、土地を割安に購入できたり、建売住宅と比べて間取りをある程度自由に決められる点が魅力ではあるものの、設計プランや予算の折り合いがつかないといった理由で契約に至るまでにトラブルが多いという一面も持ち合わせています。

 

建築条件付き土地自体は違法なものではありません。

しかし住宅購入においてトラブルに見舞われないためにも、建築条件付き土地購入の前には十分な理解と判断が重要になってきます。今回は建築条件付き土地購入における注意点について、弁護士の観点からしっかり解説していきます。

建築条件付き土地は違法ではない

建築条件付き土地は違法ではない

建築条件付きで土地を販売することは独占禁止法に違反するのではないかという声もありますが、特に違法とはされていません。

ただし、建築条件が不当に厳しい場合や法律に違反している場合はトラブルが発生する可能性があります。

契約を交わす前に、具体的な土地や建築条件に関して良く確認することが重要です。

土地売買契約と建物請負契約の同時契約は違法

建売住宅の場合は「土地と建物の売買契約」という一つの契約を締結しますが、建築条件付き土地の場合は、「土地売買契約」と「建物請負契約」の二つの契約を締結することになります。

一般的に土地の売買契約を完了後に施工会社と住宅の設計プランの協議を重ね、プランが確定次第、建築を開始するため「建物請負契約」を締結しますが、この土地売買契約と建物請負契約は同時にはできません。この二つを同日に契約することは法律上違法となっているのです。

また協議の中で、もしも「間取りが気に入らない」「予算におさまらない」などプランに折り合いがつかなかったり、定められた期間内に請負契約が締結できなかった場合は、土地の売買契約を白紙解除することができます。

 

白紙解除とはどういうものですか?

 

 

白紙解除後は手付金や支払い済みの代金など全額が買主に返却され、違約金や損害金を支払う必要も発生しません。

 

土地の売買契約書のサインする際は「一定期間内に検討している建物が建たないことが判明した場合は白紙解約できる」といった「停止条件」の項目が必ず明記されているかの確認が必須です。

注意
ただし請負契約後の取りやめは違約金が発生するため、もしも業者が請負契約を急かしてきたとしてもプランに納得していない場合は慌てて了承しないよう注意しましょう。

建築条件付き土地のメリット

建築条件付き土地のメリット

建築条件付き土地で購入する場合、建築条件なしの土地と比較して割安に購入できるというのがひとつのメリットといえます。

この指定の建設業者というのは通常土地の売主である不動産会社の関連会社であることが多く、土地の売買と家の建築という複合的な取引として建物の建築費で利益を上乗せできるため、建築条件なしの土地よりも安価な価格で設定できる仕組みになっています。

そのため土地と建物を別々に購入するよりも総額でお得に購入することも不可能ではないでしょう。また完成された建売住宅の新築一戸建てとは異なり、指定の施工会社が提示する条件内では基本的に自由に一から設計することが可能です。

自分の家族構成や生活スタイルに合わせて、間取りをある程度オリジナルで設計することができるのが大きな魅力です。さらに、はじめから建築業者が決まっているため土地購入後の建築業者選びの時間や労力をかけなくてよいという点もメリットといえます。

MEMO
立地重視で特に建物の設計やデザイン、施工会社に細かい希望がなければ、おすすめの選択肢となります。

建築条件付き土地のトラブル

建築条件付き土地のトラブル

建築条件付き土地でよくあるトラブルとして、契約期間が短すぎる点や予算が読めない点が挙げられます。

建築条件付き土地の条件のひとつとして一定期間内に建築業者と請負契約を締結しなければなりませんが、この期限はたいてい土地の売買契約から3ヶ月以内で設定されています。

この期限内に施工会社と間取りや仕様を決めなければならないのですが、施工会社によってはデザインや間取りのサンプルがないところから協議を重ねていくため、打ち合わせ回数が多くなる傾向にあります。

 

予算をオーバーした場合でも対応してくれるんですか?

 
 

予算をオーバーした場合、再度一から練り直しといったケースもあり、時間に余裕のない場合は十分に吟味できないという懸念があります。十分に時間をかけて間取りやデザインを検討したい場合、この時間的な制限はデメリットといえます。

 

また建売住宅とは異なり自由に設計できるといっても、施工会社によっては間取りや工法が制限されているケースが多いのが実情で、注文住宅のようなデザイン性や特殊部材などを自由に選ぶことなどは難しく、必ずしも思い通りの住宅にならないことにも注意が必要です。

注意
さらに土地購入後に設計プランを練っていくため土地購入時点では建物建築費を含めた総費用額の見積もりを把握できない点も、資金計画の観点からデメリットといえるでしょう。

建売住宅や分譲一戸建てとの違い

土地と住宅をセットで販売する「建売住宅」や「分譲住宅」は、ほぼ間取りやデザインが決まっているのに対し、建築条件付き土地は一から住宅を設計することができる点が大きな違いとなります。また施工中は実際に工事現場を見学することも可能なので、基礎や壁の中など家の耐震性に関わる基礎工事部分を確認したい人にとっては安心材料となるでしょう。

一方で建築条件付き土地は購入時点で土地と建物の総額費用が不透明ですが、建売住宅や分譲住宅は最初から購入金額が明確なので資金計画しやすいことや、完成された家を見て選べる、すぐに入居できるなどのメリットもあります。

既に建築された建売住宅や分譲住宅では購入者のニーズに応えられないことや売主の事情などからも、建築条件付き土地の販売が増えている昨今ですが、メリット・デメリットを考慮し、どういった点を軸に家探しするかによって「建売住宅」「分譲一戸建て」「建築条件付き土地」を比較すると良いでしょう。

建築条件付き土地の注意点

建築条件付き土地の注意点

仕様の制限がある場合も

前述したように土地を購入したからといって、注文住宅の新築一戸建てのように自由に家を建てられるわけではないというのが注意点です。

指定の建築業者は、大手ハウスメーカーや工務店、建売住宅の分譲を主要事業としている会社などさまざまですが、施工会社によって間取りや仕様に制約が多かったり、標準仕様を強制されるという場合もあります。

 

仕様のリクエストに応えてもらえないということですか?

 
 

高度なデザイン性や特殊な部材の使用、屋上テラスや地下室などの特殊な仕様は対応してもらえないことが多く、中にはほとんど建売住宅と変わらないほど制約が多い場合もあります。

 

「まったく希望が通らない」ということを回避するために該当する施工会社に事前にどれくらい制約があるのか、どれくらいの自由度があるのかをしっかり確認することが懸命です。

MEMO
指定の建築業者が希望のところであれば全く問題ありませんが、設計プランを巡るトラブルも少なくないことを念頭に置いておきましょう。

仲介手数料は不要

不動産仲介会社から建築条件付き土地を購入する場合、仲介してもらうのは「土地のみ」となるため建物に関する請負契約に仲介手数料は発生しないことも理解しておきましょう。土地の売買においては仲介手数料が発生しますが、建物の請負先についてはもともと指定されているため、仲介手数料はかからないものとみなされます。土地と建物の請負契約の合算金額を請求するのは違法(宅地建物取引業法違反)です。もしも請求されるようでしたら悪徳業者の可能性もあるので、注意してください。

注意
また、まれに仲介業者によって、建物の「請負契約」を「売買契約」、もしくは建売住宅として「土地付き建物売買契約」に差し替えることで合法的に土地+建物の仲介手数料を請求してくる場合もあるのでこちらも注意が必要です。

土地と建物代金を一緒に住宅ローンで借りることはできない

支払いにおいては注文住宅と同様、建築条件付き土地の購入では先に土地の代金を支払うことになりますが住宅を購入する際に利用できる住宅ローンは完成済みの建物が対象となる融資なので、土地のみの購入は対象となりません。

従って建築条件付き土地を購入する際は建物が完成するまでの間をつなぐ「つなぎ融資」、もしくは「分割実行」を利用して土地の代金を先に支払うのが一般的です。このつなぎ融資は短期間の借り入れで住宅ローンでないため、比較的金利が高く設定されていることも理解しておきましょう。

また建物の住宅ローンの借り入れは間取りや仕様などのプラン確定後に請負契約を締結し、建築費用を確定しないと申請できません。すなわち、建物が完成後に融資を受けて支払う形になります。

MEMO
建築条件付き土地の場合は支払いスケジュールも案件ごとに異なるので、金利や保険の条件よりも、状況によって柔軟に分割実行してくれたり、つなぎ融資の斡旋や連携のある金融機関を見つけることが重要になってきます。

まとめ

結論から言えば建築条件付き土地は人によって向き不向きがある取引といえます。立地重視で建物にそこまでこだわりを持たないのであればおすすめですし、デザインや間取り重視であれば、自由度が施工会社によって左右される建築条件付き土地の購入は向かないでしょう。

基本的には条件ありきの建築条件付き土地ですが、昨今は一戸建てよりもマンション人気が高騰しているなどの理由から、最終手段としてごくまれに建築条件を外してもらえることもあるようなので、必要な場合は試しに交渉してみるのも手かもしれません。

 

きちんと理解していれば家をお得に購入することもできそうですね。

 
 

そうですね。トラブルも多いと言われる取引のため、事前に十分に検討してからの購入が必要ですが、条件内で納得さえできれば、建築条件付き土地は希望に沿った立地の家を割安で購入できる可能性もある取引です。住宅探しの候補に入れることができれば、一気に選択肢が広がるでしょう。