- 不動産の紹介料とは?
- 紹介料を個人が貰うことは違法かどうかを解説
- 紹介料をもらった場合、確定申告が必要?
不動産業界では、不動産の売却・購入を検討している人を紹介して成約した場合、「紹介料」として現金や商品券などを紹介者にプレゼントする制度があります。
紹介するだけで現金などを受け取れるので紹介者にとっては大きなメリットがありますが、一定以上の金額を受け取ると確定申告をする義務も発生します。
この記事では、「不動産の紹介料を個人が貰うことは違法であるのか?」「友達を紹介するときの注意点は何か?」などについて詳しく解説します。これから不動産の紹介ビジネスを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
櫻井弁護士
事務員
不動産の紹介料とは
不動産業界では、不動産を売却・購入したい人を紹介してくれた人に対して成約した場合、「紹介料」を支払う制度があります。
ここでは、不動産の紹介料の仕組みについて解説します。
お客さんを紹介してくれた人に対して不動産会社が渡す「紹介料」
不動産の紹介料とは、お客さんを紹介してくれた人に対して成約した場合、不動産会社が渡す「謝礼金」のことです。不動産会社は不動産を売却・購入する人を探しているため、以前に取引した顧客から新しいお客さんを紹介してもらうことが多々あります。
また、取引がある司法書士や税理士から、相続などで売却したいお客さんを紹介されることも少なくありません。紹介によるお客さんは成約率が高いため、不動産会社としては謝礼金を払ってでも自社に紹介してもらいたいと考えています。
不動産営業にとって人脈は大切なものです。やみくもに営業するより、現時点で不動産会社との取引を希望している人と引き合わせてくれる紹介者は、不動産会社にとってありがたい存在です。
紹介制度は大手不動産会社でも実施している
紹介制度を導入している不動産会社は多数あり、大手でも実施しています。野村不動産や三井のリハウス、住友不動産販売など有名な不動産会社で取り入れられています。
紹介をメインにしている不動産会社も存在し、相場より高い紹介料を支払うのがセールスポイントです。近年ではアプリでも紹介制度が提供されており、従来のアナログから現代的なデジタル方式へと変化しています。
櫻井弁護士
事務員
不動産の紹介料は違法?個人でビジネスにできる?
不動産取引は宅建業の免許がないと第三者の仲介をすることは法律違反とされています。しかし、不動産取引を予定している人を紹介して利益を得るのは法律違反に該当しません。
ここでは、宅建を持たない個人でも紹介業でビジネスが可能なのかについて解説します。
紹介料は違法ではない
結論から申し上げますと、不動産の紹介料をもらうのは違法ではありません。
2016年6月15日に、経済産業省が合法と認める発表を行っています。主な内容は以下の通りです。
【経済産業省の担当者コメント】
物件の説明、契約成立に向けた取引条件の交渉・調整等の行為は、顧客と不動産業者との間で直接行い、事業者は一切関与しないとされており、「宅地建物取引業」には該当しない
経済産業省の担当者によれば、「紹介する人は法人・個人を問わず、業者を紹介するだけであれば仲介行為に当たらないため、違法性がない」とコメントしています。(全国賃貸住宅新聞より)
今まで、仲介と紹介の線引きがグレーゾーンとなっていましたが、経済産業省が公式に「違法性がない」との見解を発表したことにより、新たなサービスの創出や拡大につながることが期待されます。
宅建を持たない個人でも紹介業でビジネスが可能
経済産業省のお墨付きを得られたことで、宅建を持たない個人でも紹介業でビジネスが可能になりました。そのため、会社員が副業で行うケースも存在します。
そもそも紹介ビジネスは不動産業界だけでなく、美容院・携帯電話の紹介などで割引や商品券などを紹介者にプレゼントするケースが多く見受けられます。
不動産取引においても、あくまでも紹介だけであって実際の契約行為を行うのでなければ違法性がないため、紹介業で利益を得ることは問題ありません。
櫻井弁護士
事務員
友達を不動産会社に紹介したらお礼をもらっても良い?
売買契約など不動産取引の契約を行わない場合は、免許がなくても不動産の紹介ビジネスができます。ただ、友達を紹介する場合は親しい間柄であるだけに、ある程度配慮することが必要であるともいえます。
ここでは、友達を不動産会社に紹介する場合のお礼の授受について解説しましょう。
紹介料を受け取る場合は友達にあらかじめ話しておく
友達を不動産会社に紹介した場合、「謝礼金をもらっても良いのか?」と考えてしまうことがあるかもしれません。
例えば、自分が購入したマンションを友達が気に入り、友達自身も買いたいと思う場合です。特に勧めていなくても、友達のほうから不動産会社への紹介を頼まれるケースもあります。
このような場合は紹介することに問題ありませんが、紹介料を受け取るならば、あらかじめ友達に話しておいたほうがよさそうです。そのときは分からなくても、いずれ自分が購入者となったときは紹介制度のことを知るでしょう。
「なぜ、紹介料のことを黙っていたのだろうか?」と不審に思われると友人関係にヒビが入る可能性もあります。いずれ分かることですから最初の段階で友達に紹介料について知らせておくほうが無難です。
友達が受け取れる制度の会社もある
例えばママ友などに紹介する場合、いかにも利用しているという感じであると敬遠される可能性があります。したがって、友達に紹介する場合は気遣いが必要といえるでしょう。
紹介サービスの中には友達が受け取れる制度の会社もあるため、紹介することにより、かえって感謝されるケースもあります。自分が受け取って友達と折半するのも良いかもしれません。金銭面に関してはクリアでいたほうが、良い人間関係を維持できます。
櫻井弁護士
事務員
不動産の紹介料・謝礼金の相場と上限
不動産の紹介料は仲介手数料のように法的に定められていないため、不動産会社により金額には違いがあります。
ここでは、不動産の紹介料の相場や、大手不動産会社の紹介制度の内容について解説します。
紹介料の相場は5万円
一般的な不動産の紹介料は売買のケースで5万円程度です。
中には15万円を提示する会社もあり、不動産会社によって金額には違いがあります。
大手の不動産会社は5万円を提示する会社が多く、現金ではなく商品券で支払うケースも存在します。金額が高いほど多く支払う不動産会社もあるので、紹介する際はそれぞれの会社の紹介料を比較してみるとよいでしょう。
大手不動産会社の紹介制度の内容・金額
大手不動産会社の紹介制度の内容は以下の通りです。
会社名 | 紹介料の金額 | 内容 |
三井のリハウス (成約者様紹介特典) | 売買:5万円(商品券) 賃貸:1〜3万円(現金) | ・対象は個人客 ・紹介者へ進呈する商品券は残金決済お引渡し完了後に発送(売買) ・謝礼の進呈は規定手数料の支払い後、本人様名義の口座に振り込み(賃貸) |
大京穴吹不動産 (ご紹介特典) | 売買:5万円(現金) 賃貸:1万円(商品券) | ・過去に取引がなくても紹介OK ・取り引きごとに特典が適用(複数紹介が可能) |
野村の仲介+(PLUS) (お客様ご紹介制度) | 売買:5万円(商品券) | ・過去に取引があった顧客らの紹介のみ可能 ・地域や物件により、取り扱いできない場合あり |
住友不動産販売 (ご親族お取引特典、成約者ご紹介特典) | 売買:親族(最大10万円:商品券) その他:最大5万円(現金) | ・過去に取引した顧客の親族(2親等以内)が対象 ・売却検討者を紹介の場合は紹介時に3,000円分のQUOカードを進呈 |
相鉄不動産 (クラブアップス会員特典) | 売買:5~20万円(現金) | ・過去に同社と取引があった顧客からの紹介に限定 ・仲介手数料により謝礼金額が変わる ・会員登録が必要 |
東急リバブル (紹介&再契約特典制度) | 売買:5万円(商品券) | ・紹介日から1年以内に売買契約を締結した場合に限り適用 ・複数の取引を依頼された場合、特典の対象は初回取引のみ |
大成有楽不動産販売 (お客様紹介制度) | 売買:5,000~20万円(商品券) 賃貸:5,000円(商品券) 新築:10万円(商品券) リフォーム:3,000~10万円(商品券) | ・売買、リフォームは成約金額により紹介料が変わる ・賃貸は、賃料5万円以上の契約に限る ・売買は最も有利な割引のみ行い、重複割引はしない |
売買の場合、最も一般的なのは「商品券5万円」で、賃貸が1〜3万円程度となります。
上記の会社の中で最も条件が良いのは「相鉄不動産」で、仲介手数料が300万円以上のケースでは、仲介手数料の5%(20万円を上限)を現金でもらえます。
櫻井弁護士
過去に取引があった顧客からの紹介に限定している会社が多いですが、大京穴吹不動産では今まで取引したことがない人でも対象となるので、どなたでも比較的紹介しやすいといえます。
不動産の紹介料は確定申告すべき?
ここでは、個人が不動産業者から受け取った紹介料・謝礼金は確定申告すべきなのかについて解説します。
副業の所得が20万円を超えるときは確定申告が必要
副業で紹介ビジネスを行い、所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。
「所得」とは収入から必要経費を差し引いた額であるため、収入そのものではありません。
給与所得者が副業により20万円以上の所得を得た場合は、勤務先での年末調整とは別に、個人で確定申告を行う必要があります。
ただ、紹介料で必要経費がかからなければ所得は紹介料で得た金額そのものになるため、例えば紹介料が21万円で経費がゼロの場合は確定申告が必要です。
20万円を超えて確定申告しないとどうなる?
副業での所得が20万円以上あるのに確定申告をしないとペナルティが発生します。
本来納付するべきである所得税だけでなく、無申告加算税や延滞税といったペナルティが科される可能性があります。
無申告加算税に該当すると、税額が15~20%加算されるので注意しましょう。本来の税額より多くの税金を支払うことになってしまいます。
櫻井弁護士
事務員
まとめ
不動産を売却・購入したい人を紹介すると、不動産会社から紹介料をもらえる場合があります。不動産取引を考えている人が身近にいるならば、本人の承諾を得た上で紹介するようにしましょう。
紹介者自身も紹介料をもらえますが、紹介された人も割引や商品券をプレゼントされることがあるので、お互い納得の上で紹介制度を利用するのをオススメします。
櫻井弁護士
事務員