不動産の名義変更をしないとどうなる?税金や手続きなど徹底解説!【弁護士監修】

この記事のざっくりとしたポイント
  1. 不動産の名義変更をしないとどうなるかと解説
  2. 不動産の名義変更でかかる税金についてまとめ
  3. 名義変更にかかる費用は「書類取得費用」「税金」「司法書士への依頼料」

「不動産の名義変更ってしないとどうなるの?」

「名義変更でどんな税金がかかってくるんだろう」

このように悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

手続き自体は必須ではありませんが、手続きを行っていないと相続の際に手間が増えたり、土地を売却する際にスムーズに進められなかったりすることが考えられます。

櫻井弁護士

今回の記事では、不動産の名義変更に必要な費用や手続き、そもそもしないどどうなるのかに関して詳しく解説します。財産分与、生前贈与などの細かいポイントについてもご紹介しているので、これから不動産の名義変更を実施する場合は是非、ご参考にしてください。

不動産の名義変更とは

不動産(マンション・家)の名義変更とは

マンションや家における名義変更は、登記簿に記載する家の所有者の名義を変更することです。

登記簿とは不動産の物理的状況と権利関係を法的に登録した帳簿のことで、所有権が移った場合に名義変更が必要になります。

家賃を払っていたり、住んでいたりしても登記簿に名義の記載がない場合は、他人に対してその不動産の家主であることが証明できません。

名義変更を行えば所有者が証明でき、他人に対する所有権の主張が可能です。

また、固定資産税は、1月1日時点での所有者に対して課税が発生するので、年の途中で不動産を譲渡した場合でも、元の所有者に納税義務が残ります。

名義変更を行うことで、その後の固定資産税の負担がなくなるので早い段階で法務局にて手続きを行いましょう。

名義変更が必要なケース

名義変更が必要なケースとしては下記の4つのケースが考えられます。

名義変更が必要なケース
  1. 財産分与
  2. 贈与
  3. 遺産相続
  4. 不動産売買

櫻井弁護士

ここからはそれぞれのケースに分けて詳しく解説します!



財産分与

財産分与とは、離婚した際に婚姻生活中に夫婦で持っていた財産を分配することです。

元夫名義の家を財産分与で名義変更して元妻の名義にする場合は、元夫から元妻へ名義変更する手続きを行う必要があります。

原則として贈与税、登録免許税、不動産取得が発生しないのが特徴となっています。

注意

離婚成立前に財産分与を行ってしまうと、生前贈与と判断され贈与税が課税される可能性が高くなるので注意しましょう。

贈与

贈与は財産の所有者が相手に対して、生前に財産を無償で譲渡することを指します。

不動産を贈与する場合は、元の所有者から贈与を受けた人に名義を変更する手続きが必要です。

不動産を生前贈与する場合は、受け取る側に不動産取得税、登録免許税、贈与税が発生するので贈与を受ける場合は把握しておきましょう。

遺産相続

不動産の所有者が亡くなった場合は、相続する方の名義に変更する必要があります。

相続登記の手続きを行わないでそのままにしておくと、さらなる相続が発生して、他の相続人とのトラブルに繋がりやすくなるので注意が必要です。

注意

トラブルに繋がる可能性があるので、なるべく早い段階で相続する方の名義に変更しましょう。

不動産売買

不動産を購入した後は、他人に客観的に証明するために速やかに名義変更を行うのが一般的です。

通常は不動産購入後に不動産会社から司法書士を紹介してもらい、代金支払いの当日に登記の手続きを行います。

司法書士の方と細かく確認し、納得した形でスムーズに手続きを終わらせるようにしましょう。




不動産の名義変更をしないとどうなる?

不動産の名義変更をしないとどうなる?

現状は不動産の名義変更をしなくても法的な罰則はなく、名義変更する期限も設けられていません。

住み続けるだけでは何の支障もありませんが、売却などを考えている場合は早い段階で手続きしておくことがおすすめです。

ただし、相続登記については2024年を目処に義務化することが決まっているので、ルールについて詳しく理解しておく必要があります。

相続登記の義務化

相続により不動産の所有権を取得した場合は、相続の開始及び所有権を取得したことを理解した日から3年以内に所有する不動産の名義を変更する義務が発生します。

期限内に登録手続きを行わない場合は10万円以下の過料が発生するので注意しましょう。

こうしたルールの変更が行われた背景としては、少子高齢化の影響によって所有者不明の土地が増え、土地の有効利用や再開発が難しくなることが挙げられます。

遺言などの遺贈によって所有権を得た方も同様の義務が発生するので、あらかじめ覚えておくと良いでしょう。

また、法改正後のみだけではなく、法改正以前についても対象となっているのがポイントです。

櫻井弁護士

「法改正前に遺贈を受けていたから大丈夫だと思った」と考えていると危険です。法改正前に相続を受けた場合でも今回のルールの変更は必ず把握しておきましょう!



名義変更をしないメリット・デメリット

名義変更をしないメリット・デメリット

不動産における名義変更の概要はわかったのですが、名義変更を行わないメリットとデメリットは具体的にどのようなものなのでしょうか。

相談者

櫻井弁護士

ここからは名義変更をしないメリット・デメリットについてご紹介するので、合わせてご参考にしてください!

名義変更をしないメリット

1つ目のメリットとしては法務局での手続きや、司法書士に依頼する手間が省けるポイントが挙げられます。

登記を行う場合は平日にわざわざ手続きを行う必要があるので、手間に感じる方も多いでしょう。

また2つの目のメリットして、登記に必要な費用が発生しないという点が挙げられます。

注意

登記手続を司法書士などの専門家に依頼すると、5~6万円程度の費用が発生し、登録免許税も必要になり、相続の場合は評価額の0.4%の費用がかかるので注意が必要です。

名義変更をしないデメリット

名義変更をしない場合、将来的に親子間で相続を行う場合に手続・コストが面倒になり、負担を感じてしまうでしょう。

相続人が分からず、何人いるかも分からないという場合は専門家への依頼が必要となり、より手間がかかるのがネックです。

また、土地を売る際に、名義変更が済んでいないと手続きを進められません。

「売るチャンスがあるのに、名義変更を済ませていないから売却できない」となると損です。将来的に売却も視野に入れている場合は必ず名義変更を行いましょう。




不動産の名義変更にかかる税金・費用

不動産(マンション・家)の名義変更における費用

名義変更にかかる費用は「書類取得費用」「登録免許税や贈与税などの税金」「(依頼した場合の)司法書士への依頼料」の3つです。

それぞれでかかる費用や詳細も異なるので、名義変更を行う場合はすべて把握しておく必要があります。

それぞれ、どれくらい費用がかかるものなのでしょうか?目安が知りたいです。

相談者

櫻井弁護士

ここからは名義変更における費用についてそれぞれ詳しく解説します!「どのケースでどの税金がいくらほどかかるのか」「司法書士への依頼料相場」を知りたい方はチェックしてください!

書類取得費用

ここまで財産分与、贈与、遺産相続、不動産売買に必要な書類についてご紹介しました。それぞれの書類を発行する場合は下記のように別途で取得費用が必要になります。

※横にスクロールしてご覧ください

書類名費用取得方法財産分与贈与遺産相続不動産売買
印鑑証明書300円不動産が所在する市町村役場の窓口
住民票の写し300円不動産が所在する市町村役場の窓口
戸籍謄本450円不動産が所在する市町村役場の窓口
離婚協議書5万~10万程度自分で作成
固定資産評価証明書400円不動産が所在する市町村役場の窓口
贈与契約書10,000円~法務局
相続関係説明図弁護士事務所によって変動法務局
遺産分割協議書弁護士事務所によって変動法務局
不在籍証明書300円該当の区の区役所で請求
建築確認通知書200円~400円各自治体で指定の申請書を建築指導担当窓口へ提出することで発行
測量図約40万~50万円法務局

税金

不動産の名義変更を行う場合、登録免許税、贈与税、不動産取得税、譲渡所得税が発生し、ケースごとに課税にかかる計算方法が変わります。

櫻井弁護士

ここからはそれぞれのケースに分けて解説を行います。

登録免許税

登録免許税は、登記手続きの際に納める税金のことを指します。税率は登記の種類で下記のように異なるのが特徴です。

土地の所有権移転登記2%
新築したときの所有権保存登記0.4%
中古住宅などの所有権移転登記2%

贈与税

贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対して発生します。

税率の計算は一般贈与財産用と直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日で20歳以上の者に贈与する場合の特例贈与財産用の2パターンに分かれます。

【一般贈与財産用】※ 横にスクロールしてご覧ください

基礎控除後の課税価格200万円 以下300万円 以下400万円 以下600万円 以下1,000万円 以下1,500万円 以下3,000万円 以下3,000万円 超
税率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円25万円65万円125万円175万円250万円400万円

 

【特例贈与財産用】※ 横にスクロールしてご覧ください

基礎控除後の課税価格200万円 以下400万円 以下600万円 以下1,000万円 以下1,500万円 以下3,000万円 以下4,500万円 以下4,500万円 超
税率10%15%20%30%40%45%50%55%
控除額10万円30万円90万円190万円265万円415万円640万円

不動産取得税

不動産取得税は土地や家屋の購入、贈与などで不動産を取得した際に、課税される税金のことを指します。

不動産所得税を計算する場合は下記の税率が適用される仕様です。

取得日土地/家屋(住宅)土地/家屋(非住宅)
平成20年 4月 1日から 令和6年 3月31日まで3/1004/100

譲渡所得税

譲渡所得税は不動産売却時に得た利益にかかる税金を指し、「所得税」と「住民税」に分かれます。譲渡所得金額の計算方法は下記の通りです。

譲渡価額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)= 課税譲渡所得金額

また、所有期間5年以下であれば「短期譲渡所得」、5年超の場合は「長期譲渡所得」が 課税譲渡所得金額に適用されます。

【短期譲渡所得】 譲渡所得×39.63%(所得税30%+復興特別所得税0.63%+住民税9%)

【長期譲渡所得】 譲渡所得×20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)

司法書士への依頼料

地域や内容によっても差があり、5万円~15万円程度が目安になります。

司法書士事務所によって費用は異なるのであくまで参考程度に留めておきましょう。

櫻井弁護士

登記の申請のみの依頼、遺産分割協議書の作成、証明書の収集を任せるのかでも依頼料は異なります。司法書士事務所によって、報酬基準は違うので十分に確認した上で比較検討を行いましょう。



名義変更手続きは自分でもできる

名義変更手続きは自分でもできる

 

不動産に関する名義変更は自分でもできます。期間としては2週間~1カ月ほどかかることがあるので、余裕をもって手続きを行うことが大切です。

自分で手続きを行うのが面倒な場合は司法書士に依頼するという手段もあります。

司法書士に依頼する場合はまず名義変更に関する相談を行います。

無料で相談できることも多く、安心して相談することが可能です。

相談者

説明の段階では、名義変更における諸条件、かかる費用について案内されることが多くなっています。

その後、諸条件や費用について納得ができ、費用を支払った後は司法書士が書類作成を行います。

自分で書類を作る必要はなく、何度か書類作成のためにやり取りをすることがありますが、基本的には司法書士に任せることが可能です。

書類が完成した後は、申請のために必要となる書類に署名・捺印を行います。代表者の本人確認を行う必要が出てくるので、印鑑証明書等本人のみ取得できる書類も用意をスムーズに進みやすくなるでしょう。

書類が整った後は司法書士が法務局へ所有権移転の登記申請を行い、完了後は返却書類と一緒に変更後の登記簿まで送ってもらえることもあります。

MEMO

司法書士によって対応が異なるので依頼時に十分に確認しておきましょう。




名義変更の大まかな流れ

名義変更の大まかな流れ

司法書士に依頼せず、自分で名義変更の手続きをする場合は土地の所在地に対応する法務局を調べましょう。

土地の名義変更を行うのは土地を管理する法務局となるので、事前に十分に確認することが大切です。

確認が取れた後は、法務局で登記申請書を取得して作成を進めることになりますが、事前に下記の必要書類を取得しておくとよりスムーズに手続きを進められます。

必要な書類
  1. 登記識別情報もしくは登記済証
  2. 登記原因証明情報
  3. 代理権限証書
  4. 印鑑証明書
  5. 住所証明書
  6. 課税価格
  7. 登録免許税

場合によっては戸籍謄本の取得が必要になることもあるので、どのような書類が必要になるのかは法務局で事前に確認しておきましょう。

書類不足や記入漏れがある場合は、再度修正して手続きを行うことになり、二度手間になるので提出前はチェックを欠かさないことが重要です。

また、名義変更を行う場合は理由によっても異なりますが、1カ月程度の時間が必要です。

書類が多く必要になる相続の場合だと、1カ月~1カ月半かかることもあるのであらかじめ覚えておきましょう。

MEMO

登記申請書は法務局のサイトからダウンロードすることが可能です。

財産分与の場合の必要書類と注意点

財産分与の場合の必要書類と注意点

夫婦が離婚してしまった場合などで名義変更を行うケースは財産分与に当たります。

元夫婦で共同で進めるものですが、離婚が原因の場合は片方が主導して手続きを行うことが多くなります。

財産分与によって名義変更を行う場合は、分与元・分与先によって下記のように必要な書類が異なります。

分与元・登記識別情報通知(登記済権利証) ・印鑑証明書(発行して3か月以内のもの)
分与先・住民票の写し
共通・戸籍謄本 ・離婚協議書

離婚協議書の作成については元夫婦同士で行う必要があるので、お互いの確認の下で抜け漏れがないようにするのが望ましいです。

市町村役場で発行してもらう書類ではないので、自分たちで作成する必要があるのも注意点になります。また、特定の書式やフォーマットがあるわけではないので、あらかじめ把握しておきましょう。

注意点として登記簿に載っている土地の情報や、手続きの費用や税金の支払いはどちらが行うか明確にしておくことが大切です。

注意

確認不足だと金額が大きい分、元夫婦同士でトラブルに発展する可能性が高いので注意しましょう。




贈与の場合の必要書類と注意点

贈与の場合の必要書類と注意点

親族などから土地を譲り受けた場合などは「贈与」のパターンになり、注意点を把握してから名義変更を行うことが大切です。

相続を行うケースと違って、贈与する側とされる側のお互いで手続きができるので、効率よく手続きを進められます。

贈与の場合に必要となる必要書類は下記の通りです。

分与元・固定資産評価証明書(年度内に発行したものに限る) ・登記識別情報通知(登記済権利証) ・印鑑証明書(発行して3か月以内のもの) ・登記簿謄本
分与先・住民票の写し
共通・贈与契約書

住民票の写し・印鑑証明書・固定資産評価証明書は各市町村役場で発行、その他の書類は法務局で発行します。

手続きを行う場合の注意点としては、相続の場合と比べて税額が上がる傾向にあるので、登録免許税が2.0%となることが挙げられます。

また、固定資産評価額4.0%の不動産取得税、土地の評価額から110万円を控除した金額にかかる贈与税も納めることも必要です。

MEMO

いくら支払うことになるのかあらかじめ把握した上で、慎重に手続きを進めていきましょう。




遺産相続の場合の必要書類と注意点

遺産相続の場合の必要書類と注意点

遺産相続にて名義変更を行う場合、必要書類は相続元・相続先で下記のように異なります。

相続元・戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍 ・住民票の除票(または戸籍の附票)
相続先・戸籍謄本(法定相続人全員) ・住民票
共通・固定資産評価証明書 ・相続関係説明図 ・遺産分割協議書 ・印鑑証明書 ・不在籍証明書、不在住証明書 ・登記済権利証 ・上申書 ・相続人全員の本人確認資料(運転免許証等)

遺産相続にて名義変更するのであれば、相続人調査を十分に行う必要があります。

例として絶縁状態にあった兄弟や、親族の隠し子など広い範囲まで相続の対象となるので、念入りにチェックを行いましょう。

また、他の注意点として遺言書があった場合は、基本的に遺言書通りの遺産分割を行うことになります。

提出する書類などにも影響してくるので、遺言書の有無についても十分に確認することが大切です。

また、遺言書がない場合は、遺産分割協議と呼ばれる亡くなった方の財産を誰が相続するのか決める話し合いを行います。

MEMO

名義変更登記をする場合は原則として、相続人全員が署名した遺産分割協議書が必要になるのであらかじめ覚えておきましょう。




不動産売買の場合の必要書類と注意点

不動産売買の場合の必要書類と注意点

動産売買を行う場合、売主と買主で必要な書類が下記のように異なります。

売主・土地・建物登記済証(権利証)または登記識別情報 ・実印 ・印鑑証明書 ・固定資産税・都市計画税納税通知書 ・パンフレット・管理規約・管理組合総会議事録(マンションなどの場合) ・建築確認通知書・検査済証 ・測量図・建物図面・建築協定書など ・物件状況等報告書 ・設備表 ・印紙、または印紙代 ・運転免許証などの本人確認書類 ・仲介手数料(半金)
買主・本人確認書類 ・印鑑
買主代理人が契約に立ち会う場合・委任状 ・印鑑証明書 ・代理人の本人確認書類

不動産売買を行う場合の注意点として売主側の必要書類が多いことが挙げられます。抜け漏れがあると、再度手続きすることもあるので慎重に確認しましょう。

売却される不動産の種類や売却方法によっても必要な書類が変わることもあり得ます。

必要書類でミスをしないためにも段取りを設定した上で書類を準備しましょう。

書類によっては交付に時間がかかる場合もあるので、必要な時期を逆算した上で調整や確認を行うことが大切なんですね。

相談者

櫻井弁護士

個人のみで調整が難しい場合は不動産会社にも相談した上で、じっくりと準備を進めるとスムーズに手続きがしやすくなります。



まとめ

今回の記事では、不動産における名義変更に関する費用や手続きの詳細をご紹介しました。名義変更の大まかな流れや、それぞれのケースで必要となる手続き方法などお役立ち情報を多く記載しています。

名義変更を行う場合は細かい注意点、税率、計算方法まで覚えておく必要があります。

知識に漏れがあると、書類提出ができなくなり、手続きが思ったように進まずに手間がかかってしまうことがあるからです。

悩んだ場合は司法書士や不動産事務所に相談しつつ、スムーズな解決を図りながら手続きを進めましょう。