住宅ローンを払えない人が急増中?早めに銀行に相談しよう!【弁護士が解説】

この記事のまとめ
  1. 住宅ローンが払えなくなった人が急増中?対処方法を解説
  2. まず最初に検討すべきは「リスケジュール」「借り換え」「一般売却」
  3. 一度ブラックリストに載ってしまうとさまざまな審査において不利になる
  4. 早めに手を打つことが重要

かつてない低金利が続いている昨今ですが、食品をはじめとする物価は上昇を続けており「生活が苦しい」と感じている方もいると思います。

そんな中、住宅ローンを払えない人が急増するのではという心配の声も耳にします。

実際に返済が難しくなったらどうすれば良いのでしょうか。

急増中?住宅ローンを払えない人はどうなる?

マイホームを購入する時、多くの人が住宅ローンを利用します。しかし長期にわたる返済期間の中で、リストラや失業、病気での離職による大幅な収入減などから返済が次第に困難になるというケースも少なくありません。

特に最近では物価高の上昇で、「生活費が厳しい」と感じる人も少なくないはずです。

 

住宅ローンが払えなくなってそのまま放置しているとどうなりますか?

 
 

住宅ローンの返済が滞ったまま何も対策を打たない場合は、最終的には債務不履行として裁判所によって住宅が強制売却される「競売」にかけられます。競売では、一般の市場で売却される価格の約60〜70%とかなり安く買い叩かれ、さらに周囲にも物件差し押さえの事実を知られてしまうため、精神的な苦痛を伴うこともマイナス面として捉えられています。

 

銀行(債権者)によって異なりますが、一般的な競売までの流れとしては滞納開始から1〜2ヶ月で金融機関から催促状、督促状が届き、3ヶ月目に入ると信用情報機関の事故情報(ブラックリスト)に名前が記録されます。

さらに4〜6ヶ月目を過ぎると、ローンを長い期間をかけて返済することができる「期限の利益」を喪失し、住宅ローンの残債の一括返済が求められます。その一括請求されたローンを払えなければ、裁判所を通して「競売」にかけられ売却先が決定次第、強制立ち退きが執行されるというものです。

MEMO
ただし滞納開始から競売・強制退去までは約1年半程度の期間を要するため、その間に解決策を講じることができれば状況を打破できる可能性があります。

住宅ローンを返済できなくなった場合は「競売」や後述する「任意売却」を回避するため、返済が困難だと感じた時点で早々に「リスケジュール」「借り換え」に向けて動き出しましょう。

その際マイホームを手放すことも考慮できるのであれば、売却額によって一度にローンを完済できる「一般売却」を検討することが最善策といえます。

市場価格よりも安い売却額となる「競売」では売却額を差し引いても高確率で住宅ローンの残債が残ります。できるだけ返済の負担を軽減するためにも、まずは売却を検討するか、早めに銀行に相談することが重要になってきます。

それでは具体的な救済措置について弁護士の観点から解説していきます。

住宅ローンが払えない時は銀行に相談

借入先に返済方法変更の相談

さまざまな事情で住宅ローンの返済が難しくなった場合は借り入れをした銀行に返済条件の見直しや変更をするリスケジュール(通称:リスケ)を相談することができます。

 

リスケジュールとはどういう事ですか?

 
 

これは返済期限の延長や一時的な返済猶予によって毎月の返済額を減額するもので、生活の立て直しに有効です。さらに返済期間を長期化したところで返済総額は変わらないため、銀行も応諾しやすいというポイントもあります。

 

完済時の年齢を考慮する必要もありますが融資期間は最長35年以内の延長も交渉可能です。

一時的な返済猶予については、たとえ許可されたとしても適用されるのは6ヶ月から1年程度とされています。猶予期間中は利息分は最低限払うケースがほとんどで、返済額がゼロになるわけではないことにも注意しましょう。

交渉が成立すれば、もともとの返済額が減額されるわけではありませんが、一時的に資金繰りは楽になることがメリットといえます。

デメリットとしては返済期間が延びることで結果的に総返済額が増えたり、新規の融資が受けにくくなる、ローンの借り換えが難しくなるといった点が挙げられます。

返済を滞納した後だとリスケ交渉の成立が難しくなることがあります。また審査には時間を要するため、銀行には早めの段階での相談が必要です。メリット・デメリットを考慮した上で、滞納する前の段階、具体的には返済日の1ヶ月前ほどから申し出ておくことが大切です。

住宅ローンの借り換えも検討

2016年の「マイナス金利政策」導入により超低金利が続いている昨今、もしも金利が高い時期にローンを組んでいた場合に、試算してみる価値があるのが「借り換え」です。

 

借り換えの仕組みを教えてください。

 
 

借り換えは現在の住宅ローンよりも低い金利で新たに別の住宅ローンを組み直し、現在の残高分を一括返済することで、月々や年間の返済額をおさえる方法です。借り換えの目的には主に、「総支払額を減らす」「将来の金利上昇リスクを抑えたい」「毎月の支払額を抑えたい」といったものが挙げられます。

 

もしも借り換えが成立し減額できたとしても月々1〜2万円程度なので、それでは家計が楽にならないという場合にはあまりおすすめできませんが「借り換え後の金利差が年1%以上」「住宅ローンの残債が1000万円以上」「返済期間が10年以上」の条件が揃えば借り換えを検討すべきでしょう。

残債が多ければ多いほど、小さな金利差でも借り換え効果が大きくなります。

ただし借り換えには手数料もかかり場合によっては30万〜80万円の諸費用が必要となってきます。これらを差し引いても得が出るかを検討する必要があるでしょう。借り換えをするだけでは信用は落ちませんが、もしすでに滞納してしまっている場合は信用情報機関に記録されてしまっているので借り換えが難しくなる可能性があります。

人に売却を行う

ローンを返済し続けること自体が難しいということであれば、住宅を売却するという方法も検討しましょう。滞納から3ヶ月を超え期限の利益を喪失後、競売にかけられる前に債務者が自ら家を売却することを「任意売却」と呼びます。

通常は売却できない抵当権の入った住宅を売却する特殊な売買となり債権者の合意が必ず必要になるのが特徴です。任意売却が可能な期間は約1年です。

ブラックリストには載りますが、抵当に入っていることを周囲に知られることもなく競売よりは高値で売却できるので、できれば債権者が裁判所に競売の申し立てを行う前の段階で同意を得ることを目指しましょう。

MEMO
まずは任意売却専門の不動産会社を通じて債権者に任意売却を検討している旨を伝えてもらうことが先決です。条件次第で認めてくれることがあります。
 

任意売却で注意することはありますか?

 
 

任意売却で注意しなければならないのは売却できたとしても家の時価がローンの残債を下回っていれば、残りの残債は返済し続けなくてはいけないという点です(オーバーローン)。物件が高く売れれば全額返済できる可能性がありますが、任意売却ではどうしても売却額が安くなってしまいがちです。任意売却しか選択の余地がなくなる前に債権者の合意が必要なく、比較的高く売却できる「一般売却」(グレーゾーン売却)を行うことが活路になります。

 

払えなくなりそうだと感じたら少しでも金銭的に余力のあるうちに売却するのが賢明です。

ブラックリストに載る前に一般売却を行い、物件が高く売れれば一括返済も可能でしょう。

個人再生や自己破産も視野に

住宅をどうしても売却したくないという場合は「個人再生」という手段も検討しましょう。

個人再生とは「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用して住宅を処分せずに、住宅ローン以外の借金を減らす債務整理の方法です。裁判手続によって、住宅ローン以外の債務を大幅に減額したり、長期の分割払いにすることによって個人の経済的再生を図るもので破産をせずに債務を整理することが認められています。

マイホームを持ちながら住宅ローンとそれ以外の借金があり、それらを払い続けることが難しくなってきたという場合に非常に有効な手段です。また、住宅ローン以外の借金がない場合も、残債の一括請求を回避できたり、競売を中止することができるなどのメリットがあります。

しかし利用要件が厳しいため利用できるケースはかなり限定されます。「個人再生」の利用条件、および「住宅ローン特則」の利用条件を充たしていることが条件になります。複雑な利用条件を満たしているか判断してもらうためにも、弁護士などの専門家に相談しましょう。

「住宅を手放してでも借金を全て帳消しにしたい」という場合に残るのは「自己破産」という選択肢です。

自己破産は管轄の地方裁判所に破産申し立てを行い、すべての債権を免除してもらう債務整理の方法です。住宅ローンやその他の借金も含めて返済義務はなくなりますが、住宅は原則処分しなければなりません。なお連帯保証人が住宅ローンの残債を支払うことになります。

 

個人再生や自己破産をするとブラックリストに載ってしまうんですよね…。

 
 

はい。個人再生、自己破産のどちらも「金融事故」として最低5〜10年はブラックリストに名前が記載されるため、住宅ローンを組むことができなくなります。もし免責が認められれば借金の返済から解放されますが持ち家は財産とみなされ回収されてしまうので、借金解決の最終手段として検討しましょう。

 

まとめ

以上これらを鑑みて住宅ローンの返済が難しくなってきたときにまず最初に検討すべきは、「リスケジュール」「借り換え」「一般売却」を目指すことだといえます。

一度ブラックリストに載ってしまうとさまざまな審査において不利に働きます。少しでも住宅ローンを滞納しそうな予兆を感じたときは、早めに手を打つことが重要です。ぎりぎりまで対策を引き伸ばしていると、気付いたときには手遅れということにもなりかねません。

また上記に加え家計の見直しをすることも有効です。収入を増やすために夫婦共働きに切り替えたり、保険の解約や車の売却、光熱費・食費の節約など、あらゆる角度から資金を捻出する方法を検討することも解決策の一つでしょう。

住宅ローンの返済が困難になることで「マイホームを手放したくない」「なんとか支払い続けよう」と無理をしてしまいがちですが、現状の資金繰りを冷静に把握しながら有効な対策を行うことで、競売や自己破産を回避することは可能です。先延ばしにするのではなく、早めに手立てを検討することをお勧します。