売買契約成立後に不動産会社からコンサルティング手数料を請求された!支払う必要はある?【弁護士が解説】

この記事のざっくりしたポイント
  1. 仲介手数料の上限以上の費用は支払う必要なし
  2. 例外として依頼者からの特別な依頼による費用は支払う義務がある
  3. 事前に説明のない費用は払う必要なし

不動産の売買を行うと、売買を仲介する不動産会社から仲介手数料を請求されるのが一般的です。

しかし中には、仲介手数料の他にコンサルティング手数料という名目で追加の支払いを請求する不動産会社もおり、トラブルの原因になっています。

 

仲介手数料も高額になることが多いので、後になって追加支払いを求められるのは困ってしまいますが、これは違法ではないんですか?

 

 

不動産が割の良い価格で売買できた際などに、その成果の一部を成功報酬としてコンサルティング手数料などの名目で請求する事例が多いようです。こうした取引は基本的に請求すること自体が違法なので、不動産会社の要求に応じて支払うことのないよう注意が必要です。

 

不動産コンサルティング料は違法?宅建法で認められている費用とは

宅建業法第46条では、不動産会社が請求することのできる費用として仲介手数料が明記されており、それ以外の費用請求はごく限られた名目でしかできません。

ここでは宅建業法に即した不動産会社へ支払う費用について解説します。

仲介手数料

不動産売買の際に不動産会社に支払う仲介手数料は、宅建業法第46条で以下のように定められており、この法令を逸脱した手数料の請求はできません。

「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買、交換又は貸借の代理又は媒介に関して受けることのできる報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる。宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない。」(宅建業法46条より引用)

尚、法律に記載されているところの「国土交通大臣の定める額」は現在以下のように決められています。

現在の仲介手数料の上限額
  • 物件価格のうち200万円以下の部分:5%+消費税

  • 物件価格のうち200万円を超え400万円以下の部分:4%+消費税

  • 物件価格のうち400万円を超える部分:3%+消費税

例えば、1,000万円の物件購入を仲介した場合の手数料は、最初の200万円部分が5%、次の200万円部分が4%で、残りの600万円部分が3%(かつそれぞれに消費税を加えた水準)となります。

しかしこの計算方法はやや煩雑なので、実際の仲介手数料は、3%+6万円+消費税としている不動産業者が多いです。6万円を加える代わりに、複雑な積み上げの計算を省略しています。これを超えた手数料を不動産業者が請求することは原則できません。

注意
もちろん手数料の名目をコンサルティング料などと書き換えても、上限を超える手数料は請求自体が違法となります。

従って、巷の多くの不動産業者が当てはまるように、仲介手数料を3%+6万円+消費税としている場合には、原則として手数料の上乗せ余地はないということになります。

売買が想定よりうまくいったとしても、追加の成功報酬などを徴収することはできません。

 

つまり、不動産業者は仲介手数料の上限以上の金額請求はできないので、コンサルティング手数料は違法ということですか?

 

 

ここまでの内容は「原則」であって、仲介手数料の上限を超えて請求を上乗せできる例外がありますので次で紹介します。ただし、コンサルティング手数料がその例外に当てはまるとは考えにくいので、結論から先に言うとコンサルティング手数料の請求は違法、もしくは限りなくグレーなものと判断して良いと思います。

 

依頼者からの特別な依頼による特別な費用

宅建業法では、依頼者の特別な依頼に応じて実施した場合に限り、仲介手数料以外に請求することが認められています。

費用請求が可能な作業
  • 特別な広告の実施(円滑な売買のために大手新聞社の紙面に掲載する広告など)
  • 遠隔地での調査が必要な場合の調査費用

ただし、いずれも「実費」に限りますので、不動産会社の利益が発生する水準の請求はできません

また、これらの追加費用を依頼者に請求するとしても、事前に追加費用について依頼者の同意を得る必要があります。

売買契約の成立時点で依頼者が追加費用のことを認識していなかったというのは、事前の同意を得ていない証拠になりますので、その時点で違法です。

また、仮に事前同意があったとしても、あくまで上記の項目に当てはまらなければ請求できません。不動産会社が仲介手数料に上乗せして費用を請求する余地は限られているのです。

そもそも不動産コンサルティングとは?

不動産コンサルティングというのは歴としたビジネスで、不動産コンサルティング専門の会社があったり、経営コンサルタントがコンサル案件の一環として受注していたりします。不動産の売買や不動産投資に関する助言、相続に向けた準備のサポートなどを行うビジネスです。

ただし不動産コンサルティングと不動産仲介業は利益相反の観点などから同一の依頼者にサービスを提供することができず、不動産仲介とは独立してビジネスを行う必要があります。

例えば、以下の業務は全て不動産仲介の範囲内なので、これらを提供した同一顧客には不動産コンサルティングサービスを行うことができません。もちろん不動産コンサルティング料が発生することもありえません。

不動産コンサルティングサービスができない業務
  • 物件価格の値引き交渉

  • 希望価格より好条件の取引実現

  • 登記をする司法書士・リフォーム業者の紹介
  • 住宅ローンの斡旋
  • 同乗運転による案内・鍵の手配

以上のことから、不動産会社が特別なサービスを提供しているように装っていたとしても、基本的に不動産仲介業の範疇になりますので、サービス提供を理由に仲介手数料に上乗せしてコンサルティング料を請求することはできません。

 

不動産コンサルティングというのは本来、不動産会社以外が行う業務なんですね。

 

 

はい。しかしながら適法の不動産コンサルタントでも、宅建などの不動産関連の資格を保有している者が営んでいることも多く、不動産仲介と関連性の高いビジネスであることは確かです。似通ったビジネスであることを利用して、違法な請求を行う不動産会社がいるわけですね。

 

事前にコンサルタント料の話がなかった場合は支払う必要なし

不動産売買の際に不動産会社へ支払う手数料は原則として、上限の定められた仲介手数料であり、例外的に追加費用を支払うとしても「契約前に承諾を得ることが前提」となっています。

従って、契約成立後のコンサルティング手数料の追加請求は違法ということになります。この原則を踏まえつつ、不動産会社との手数料に関するトラブルを避けるポイントについて説明します。

基本的に依頼した覚えのないものについて支払わない

まず、最も大事なことは、依頼した覚えのない費用については絶対に支払わないことです。仮に不動産の売買仲介を依頼したのであれば、支払いが発生する手数料は通常は仲介手数料のみです。

注意
悪質な不動産会社はコンサルティング料や成功報酬などの名目で別途報酬額や手数料を示してくる可能性がありますが、これらは全て違法であり、支払う必要はありません。悪質な不動産会社の話を鵜呑みにしてしまわないように注意しましょう。

事前にコンサルタント料の話がでたら、その時点で断る

より巧妙なやり方で、事前にコンサルタント料などの話を依頼者に提示して承諾を得ようとする不動産会社もありますが、こうした提示は即座に断ることが重要です。

まず誤解してはいけないのは、承諾の有無にかかわらず、仲介手数料の上限以上の支払いは先に紹介した「依頼者からの特別な依頼」に当てはまる実費でない限り発生しません。万が一承諾してしまったとしても支払いは不要です。

しかし、一度承諾してしまうと支払う必要がない手数料だとしても、不動産会社側は承諾したことを理由に、しつこく手数料を要求してくる可能性があります。その請求行為も含めて違法ではあるのですが、面倒なトラブルに巻き込まれることを防ぐためには、予め余計な手数料支払いについてはきっぱり断っておくことをおすすめします。

 

承諾したら支払わなければならないと思ってしまいますが、そういう訳でもないんですね。

 

 

正当な理由、依頼者側からの特別な依頼、手数料の事前承諾が全てセットになって始めて追加費用の請求を行う余地が出てきます。それ以外は全て支払う必要がないという原則を認識した上で、無用な手数料の打診には毅然とした対応で臨むことが大切です。

特別な費用と認められるには「依頼者からの特別な依頼」であることが前提

仮に依頼者からの依頼があり、また、それに応じて追加手数料の発生を打診されたとしても、あくまで「依頼者からの特別な依頼」に該当しない限りは、やはり手数料を支払う必要はありません。

つまり、先ほど紹介した①特別な広告の実施、②遠隔地での調査が必要な場合の調査費用以外の名目では、追加の手数料が発生する余地はないということになります。仮に依頼者側から不動産会社に何か依頼を行う場合、依頼内容が上記の二点に含まれるかを認識しておくことが重要です。

注意
もし該当する場合は不動産会社は手数料を請求することが可能となります。本来、予め費用について合意を得ることも請求の条件にはなりますが、事後のトラブルを避けるためにも、特別な依頼に含まれそうな内容を不動産会社と相談する場合は、予め追加費用について依頼者側から確認した方がスムーズでしょう。

その他の内容で不動産会社側が特別なサービスを実施したように振る舞ったとしても、依頼の有無や手数料に関する同意の有無にかかわらず、追加の手数料は請求できません。依頼をした際などに見返りとして追加の手数料を支払う形にならないように注意することが大切です。

 

こちらから依頼した場合などは悪い気がして、つい追加費用を支払ってしまうこともありそうです。

 

 

実際、依頼者から個別に相談した際などにその流れで手数料を追加されるという事例は珍しくありません。依頼者自身も納得した上で追加手数料を支払っていた事例もありました。例え依頼者が納得していても、特例以外での上限を超えた手数料の支払いは違法なので注意しましょう。

 

まとめ

 

不動産売買の仲介をしてもらった際に不動産会社に本来支払う手数料は「仲介手数料」であり、これは宅建法で厳格に上限が定められています。ごく例外として追加の請求ができる項目がありますが、これに当てはまらない限り、コンサルティング手数料などの名目で追加手数料を請求することは違法であり、支払う必要は全くありません。

MEMO
不動産会社の営業トークに乗せられて、不必要に手数料を支払ってしまわないよう注意しましょう。また、事前にそのような手数料の打診などがあった場合は、きっぱりと断ることでトラブルを未然に防ぐことが大切です。