犬がうるさいと通報されたら?殺意がわくほどうるさく感じるケースもある

犬がうるさいと通報されたら?近所の犬がうるさいときの対処法も解説

この記事のざっくりしたポイント
  1. 犬がうるさいと通報されたらどうなるのかを解説
  2. 殺意がわく?近所の犬がうるさい場合の対処法とは
  3. 慰謝料を請求されることはあるのか

ペットを飼っている人にとって、ペットは大切な家族の一員です。家族にとってペットの鳴き声は気にならないものですが、周りの人にとっては迷惑になることがあります。

もし周囲の住人から犬がうるさいと言われて通報された場合、どのように対処すればよいでしょうか。

逆に、近所の犬がうるさいときにどうすればよいのか困惑している人もいるかもしれません。鳴き声でノイローゼになったり殺意がわくほど怒りを感じたりするケースもあります。しかし直接苦情を言ったらトラブルになるのではないかと心配している人もいるでしょう。

本記事では、犬がうるさいと通報されたらどうなるのか、犬がうるさい場合の対処法について詳しく解説します。

犬がうるさいと通報されたらどうなる?

犬がうるさいと通報されたら どうなる?

犬がうるさいと通報された場合、法律や条例に違反するのでしょうか。

以下では、犬がうるさい場合に関係する法律や条例を挙げて説明します。

動物愛護管理法による規定

動物愛護管理法第7条第1項は、ペットが人に迷惑を及ぼすことのないように努めなければならないと規定しています。

犬がうるさい場合、人に迷惑を及ぼしているといえます。しかしながら、「努めなければならない」とあるとおり、この規定はあくまで努力義務であり、違反したとしても罰則が定められているわけではありません。

櫻井弁護士

ただし、犬の飼育方法が悪かったり、飼い主の虐待によって犬が鳴きやまないような場合、飼い主に罰則が適用される可能性はあります。

民法上の責任

民法第718条第1項は、ペットが他人に損害を与えた場合の飼い主の損害賠償責任を規定しています。

犬がうるさく周囲の人に精神的苦痛を与えているような場合、損害賠償責任を負う可能性があります。後で説明するとおり、犬の騒音が「受忍限度」を超えたかどうかが判断基準になってきます。

なお、飼い主が相当の注意をもってペットを管理していた場合、損害賠償責任は発生しません。しかし、犬がうるさいようなケースでは、飼い主が相当の注意をもって管理したと認められることは少ないといえるでしょう。

自治体ごとの条例

自治体には、都道府県ごとに迷惑防止条例が定められていますが、迷惑防止条例には犬がうるさいときの賠償責任や罰則を定めた直接の規定はありません。よって、条例違反に問うことはできないと考えられます。

犬がうるさくて殺意がわく?仕返ししたい?体験談

犬がうるさくて仕返ししたい?殺意がわく?体験談

以下では、犬がうるさいというSNS上のリアルな声を紹介します。「殺意」というワードを用いているツイートを取り上げた上で、簡単な感想などを述べたいと思います。

鳴き声がマジでうるさい

犬の騒音が切実な問題であることがツイートから伝わります。騒音の程度や時間帯によっては損害賠償を請求できるかもしれません。

鳴き声で早朝に起こされて迷惑

早朝5時という一般人が通常就寝している時間帯に犬がうるさい場合、受忍限度を超えて違法とされる可能性は高くなるでしょう。

両隣同時の犬が吠えあっている

両隣からの犬の鳴き声がうるさい場合、お互いの犬が吠えあってさらに騒音が大きくなる可能性があります。自治体や保健所に相談したほうがよいでしょう。

早朝深夜お構いなしにうるさい

深夜に犬の鳴き声がうるさい場合、受忍限度を超えているとして損害賠償が認められる可能性があります。

たかが犬の鳴き声といえど、それにより睡眠が妨害されたり生活に支障が出るようであれば、強い憤りを感じてしまうこともありますよね。

事務員

櫻井弁護士

ただし飼い主は他人に迷惑をかけていることに気が付いていない可能性すらあるので、感情的にならず冷静に対処すべきです。

近所の犬がうるさい場合の対処法

近所の犬がうるさい場合の対処法

 

近所の犬がうるさくて耐えられない場合、どのような対処法があるのでしょうか。まずは飼い主に直接伝えることが思い浮かぶと思いますが、おすすめしません。

直接伝えることによって逆に口論になったり、最悪の場合飼い主から逆恨みされて危害を加えられる可能性もあるからです。

櫻井弁護士

ここでは、飼い主に直接伝える以外で主な対処法を5つ挙げて詳しく説明します。

管理会社・大家

同じマンションやアパートの住人の犬がうるさい場合には、管理会社や大家に苦情を申し立ててみましょう。管理会社や大家を通じてペットの飼い主に指導が入るため、トラブルにならずに問題を解決できる可能性があります。

市役所・区役所

市役所や区役所などの自治体では、ペットの騒音などのトラブルの相談に乗ってくれる窓口を設けているところもあります。そういった窓口が存在する場合、自治体に相談することをおすすめします。

犬の鳴き声がひどいようであれば、自治体の職員が飼い主にヒアリングをしたり、指導をしてくれる可能性があります。

保健所

その地域を管轄している保健所に犬がうるさいことを伝える方法もあります。飼い主のペットの管理方法がずさんで犬が放し飼いにされているような場合などは保健所から指導が入る可能性があります。

保健所へは匿名で相談できるのでしょうか?

事務員

櫻井弁護士

匿名で相談することはできませんが、飼い主に対しては名前を伏せてもらうことは可能です。

警察

犬がうるさい場合、警察へ通報することを考える方もいるでしょう。しかし、犬がうるさいからといって何らかの犯罪になることは少なく、民事的な賠償の問題にとどまるケースが多いです。

警察に相談することは可能ですが、民事的な問題については警察は介入せず、あくまで刑事事件化するようなケースでしか動いてくれないということを認識しておきましょう。

弁護士

市役所などの自治体や保健所は、飼い主に対し指導してくれる可能性はありますが、強制力はありません。よって、指導に従わず鳴きやまない状態が続く可能性があります。

自治体や保健所などに相談しても問題が解決しない場合、弁護士に相談することをおすすめします。

犬がうるさい場合、先ほども説明した通り、民法上の損害賠償責任が発生する可能性があります。訴訟を起こすことで慰謝料を請求できるケースもありますので、弁護士に状況を相談してみるとよいでしょう。

犬がうるさくてノイローゼになったと言われたら

犬がうるさくてノイローゼになったと言われたら

先ほども説明したとおり、民法第718条第1項は、ペットの飼い主が他人に損害を与えた場合の賠償責任を規定しています。飼っている犬がうるさくて周囲の住民からノイローゼになったと言われた場合、損害賠償責任が発生する可能性があります。

では、どのような場合に損害賠償責任が発生するか、具体的な事例を交えて説明します。

受忍限度について

どんな場合でも損害賠償責任が発生するわけではなく、裁判上、犬の騒音が精神的苦痛を与えたと認められるためには、「受忍限度」を超えたことが要件です。

「受忍限度を超えた」とは、社会生活上受忍すべき限度を超えて平穏な生活を営む権利を侵害したことをいいます。

受任限度を超えるとは、具体的にどういった内容なのでしょうか?

事務員

櫻井弁護士

どのような場合に「受忍限度を超えた」といえるかは事案によって異なりますが、裁判では主に以下の考慮要素を総合的に判断します。

受忍限度について
  • 犬と被害者との間の物理的距離
  • 騒音のレベル
  • 騒音の時間帯
  • 地域性
  • 交渉の程度、被害者と加害者との関係性

一般的には70デシベルを超えると、人は「うるさい」と感じるようです。早朝や深夜など人が寝ている時間帯では、60デシベルでもうるさく感じます。

また、交渉の程度も重要な判断要素の一つです。苦情を言っているのに放置していたり不誠実な態度を取っている場合、受忍限度を超えていると認められやすくなります。

地域性も重要です。歓楽街の近くと閑静な住宅街では騒音に対する受忍限度が異なってきます。

これらの要素を総合考慮して、受忍限度を超えているかどうかを判断します。

犬の鳴き声がうるさいとして損害賠償が認められた裁判例

犬の鳴き声によって他人に損害を与えたとして、損害賠償が認められた裁判例(大阪地裁平成27年12月11日判決)をご紹介します。

被害者は、山間部の住宅街に居住していたところ、加害者の飼い主が被害者の自宅から約30m程度離れた場所に引っ越してきました。引越し後に加害者は犬を飼い始めましたが、この犬が早朝や深夜など就寝時間帯にもかまわず大きな鳴き声を上げることから、被害者は睡眠障害を発症したとして、慰謝料を請求しました。

裁判所は、犬の鳴き声が受忍限度を超えたかを判断する基準として、被侵害利益の性質、被害の程度、加害行為の態様、地域性、当事者間の交渉経過等を総合考慮して判断するとしました。

そのうえで、本件は、犬の鳴き声の音量が、深夜や早朝においても60デシベルを超えていること、被害者から苦情を言われたにもかかわらず鳴き声をやめさせる措置を取ったとはいえないという事情を考慮して、受忍限度を超えると判断しました。

慰謝料としては25万円が認定されています。

事務員

櫻井弁護士

このように、犬の騒音が受忍限度を超えている場合、訴訟を起こされて損害賠償責任が発生するケースも実際に存在しています。

「犬の騒音程度で違法になることはない」などと安易に考えず、苦情や通報をされたら早めに対処すべきでしょう。

犬の鳴き声で苦情・通報されたらすぐやるべきこと

犬の鳴き声で苦情・通報されたらすぐやるべきこと

犬の鳴き声が受忍限度を超えた場合、損害賠償責任が発生する可能性があることは先ほど説明した通りです。

受忍限度を超えたか否かを判断する基準として、当事者間の交渉経過が考慮されます。真摯に交渉した姿勢や、何らかの対策を取ったことはプラスの方向に働きます。よって、苦情や通報されたら放置せず、何らかの対策を速やかに講じるべきでしょう。

ここでは、犬の鳴き声で苦情・通報されたらすぐやるべきことを説明します。

周辺の住民への謝罪

苦情・通報された場合、まずは謝罪すべきでしょう。謝罪した上で話し合うことによって、トラブルを最小限に食い止めることができます。放置していたり無視していたりすると訴訟を起こされるかもしれません。

まずはできる限り話し合いをし、次の対処法を検討しましょう。

犬のしつけ

犬が鳴きやまない場合、犬をしつけて鳴きやませる必要があります。大きな声で鳴いた場合、犬の嫌がることをさせるとよいでしょう。例えば、大きな声で鳴いた場合、同じところをぐるぐる散歩したりして、大きな声で鳴くと面白くないことをさせられると認識させます。

他には、しつけグッズを購入して試してみるのもよいでしょう。

防音対策

犬をしつけたとしてもなかなか鳴き声が止まない場合もあるでしょう。その場合、大きな声で鳴いたとしても周囲に鳴き声が届かないような防音対策を施すほうが効果的です。

防音効果のある犬小屋や防音カーテンなどが売られていますので、できる限りの防音対策をすべきでしょう。

プロのトレーナーへの依頼

しつけをしても鳴きやまない場合、プロのトレーナーへ依頼することを検討しましょう。飼い主のしつけではなかなか鳴きやまなかったとしても、プロのトレーナーであれば正しいしつけ方法により鳴きやませることもできる可能性が高くなります。

インターネットで検索すれば、しつけを依頼できるドッグトレーナーが見つかるはずです。費用はかかってしまいますが、周辺住民とのトラブルを抱えて過ごすよりはよいでしょう。

まとめ

犬がうるさい場合の対処法と、逆に犬がうるさいと苦情を言われた場合の対処法について具体的に解説しました。

ペットの騒音は隣人関係を悪化させ、大きなトラブルに発展しかねません。受忍限度を超えた場合、損害賠償責任が発生する可能性もありますので、早めに対処することが必要です。

また、犬がうるさくて眠れないなどの悩みを抱えている人は、自治体や弁護士などの第三者に相談してみましょう。

犬の騒音は心身の健康に悪影響をもたらす可能性があります。病気になってからでは遅いため、早めの相談をおすすめします。